• 中国の「社会秩序安定維持」が直面する財政圧力

    by  • February 3, 2013 • 日文文章 • 0 Comments

    何清漣氏 @HeQinglian 氏ブログ

    Takeuchi Jun@Minya_J  日本語全文概訳/原文は

    ① 増々頻発する社会抗争事件、不景気は各地の地方政府のやりくりをニッチモサッチもいかない状態してしまい、中央政府も「社会秩序維持費」の深刻な不足に直面している。

    《膨大な秩序安定費

    20世紀の90年代後半から、中国各地の地方政府が各資源をあまりに酷く収奪したため、民間の社会的集団抗議事件のグラフは一直線に上昇した。

    2005年は8.7万件、06年には9万件(原注1)、08年には12万4千件、(原注2)、09年には28万件(原注3)にもなった。社会的反抗の形 は経済成長モデルの特徴によって決まってくる。経済成長が不動産と石油重化学工業、鉱山など資源性の企業に偏っているから、社会紛争もまたこの領域に集中 するのだ。

    第一のタイプは大型土地強制収容、市内では住宅強制取り壊し、農村では土地の強制取り上げ。第二は住民による環境を守ろうとする動き。重化学工業など資 源型産業は環境を深刻に汚染し、住民の健康と生存を脅かすためだ。第三は共産党下部組織の汚職腐敗に関連したもの。土地強制収容時の汚職や補償金問題だ。

    中国の「公共安全支出」(社会秩序安定維持費用=維穏費用)と中国の社会的群衆犯行事件の増加は正比例の関係にある。事件の増加とともに2009年から 中国の地方政府の仕事の重点は微妙に変化した。「発展こそが第一の任務」だったのが「発展は第一の任務、秩序安定は第一の責任」に変わったのだ。そして秩 序安定の担当組織が常設機関となった。中央から地方まで「秩序監視班」(維穏班)が設立された。

    中共中央には「中央維穏指導小組」が、その下には常設の事務機構として中央稳定事務所が、中央政法委員会の機構内に作られた。これは中共中央直属の機関 で議事を進め、各機関の調整に当たる。各省や自治区、市、県から田舎の一級道路、重要事業、企業にもすべて「维稳班」が設置され、すべて「社会秩序維持工 作指導小組事務局」と呼ばれた。

    「维稳班」は政治法律関係だけでなく、社会の様々な発展に伴う数々の異なった問題をしっかり把握せねばならないから、警察、検察、司法や国家安全部だけで なく、メディア全ての指導監視を行う宣伝部も組み込まれた。またこのシステムは膨大な情報源のネットワーク、例えば大学、高校、企業、事業所、農村にいた るまで情報員(密告者)を擁している。

    例えば新華ネットは、内モンゴルの開鲁県助役で警察の党委書記、局長を兼ねる劉興臣同志が記者に「自分は巨大な通報者網を持っておりいかなる異議や反抗 もたちまち”高度に敏感に”捕捉できる」と自慢気に語る姿を”報道”している。この「密告網」はどれぐらい大きいのか?劉興臣が明らかにした開鲁県の数字 は、警察が把握してるのは12093人という。県人口は40万人だ。そのうち18歳以下の未成年を除くと、25人の大人に1人は”密告者”が監視している ことになる。(原注4)

    社会的反抗が増え、秩序維持機構の正規化に伴い費用も急増した。財政部の中央・地方の予算執行報告によると08年の中共の公安支出は4059.76億元、09年は5140億元、10年には5486.06億元、2011年は6244.21億元である。(原注;5〜8)

    维稳支出は軍事費を越え、民生を極度に圧迫】

     驚くべき「社会安定維持費」の支出額を説明するのに研究者はよく軍事費と比較する。09年の5140億元は同年の軍事費5321億元に近く、2011年 の6244.12億元は同年の軍事費6011億元を抜いた。これらの「公共安全」への支出は主に国家の暴力装置と関係する。2011年の6244.11億 元の公共安全費予算で、武装警察、警察、裁判所、司法、検察、密輸取締警察の5大組織の予算額は5064億元で全公共安全予算の81%を占めた。

    そのうち警察部門(国家安全部と鉄道民航警察を含む)予算は3225.62億元。次いで武装警察が1046億元で、社会の紛争を解決する裁判所はたった 608.74元で9.7%に過ぎない。(原注9)。説明が必要なのは中国の裁判所と検察(監獄を含む)は西側のような三権分立国家のそれではなく、中共政 府の指導下にあるので、これは「维稳」システムの一部分をなしているということだ。

    “维稳”が既に役人の出世の重要な指標になっているため、地方の役人は嫌でも社会保障や教育など民生の仕事より優先しなければならない。2009年の地 方政府財政予算執行状況からみると、多くの地区での公共安全支出はすべて、社会保障や就職、教育、環境保護、科学技術、低所得住宅への支出を上回ってい る。

    例えば広東省の恵州では監視機材のレンタル代金だけで3664万元を使った。しかるに社会保障の中の就職補助、国営企業破産補助、養老医療保険の社会救 済系統の福祉11項目の費用は全部で5040万元である。(原注10) 広州市の07年の “维稳”への支出は44億元。社会保障就業資金の35.2億元 にくらべて遥かに多い支出だった。

    前にも述べたが、中国の社会反抗事件は各級政府の資源の過度な収奪に由来する。だから「社会安定費用」と経済発展は奇怪な循環をなしている。つまり、地 方公務員はGDPを成績挙げる為に必要だから色々な項目を大量に並べるが、一番簡単にカネを稼げるのは不動産と環境汚染工業(汚染防止規則が緩いから汚染 対策費が少ない、かゼロ)である。

    しかし地方政府が不動産を開発しようとしたら必然的に土地の強制収容になるし、工業は汚染を引き起こし、地元住民の環境保護運動を引き起こす。だから経 済が発展すればするほど、官民の矛盾は多くなり、それを押さえ込む「秩序安定」任務は増々増え、そのための費用も膨大になっていく。市や県級地方政府はど こもみんな“维稳”費用は極めて緊迫した状況だと感じている。

    2011年11月広東の汕尾乌坎村村民は政府が土地を強制収容したので数ヶ月の抗争を続け、汕尾市政府はこの村の為に大金を使った。汕尾市市書記の鄭雁 雄は内部談話で「おい、おまえら武装警察をタダで呼べるとおもとるんか?あいつら何百人も駐在してこっちの財布ぺちゃんこやがな」と嘆いた。

    【天井知らずの维稳費用に地方財政は持たない】

    2010年謝岳が聯合早報に発表した「超高額の“维稳”費は地方財政を脅かす」という一文中に「公式資料によれば“维稳”費の分担は中央が3割、地方が 7割負担」とある。謝岳は「地方政府の“维稳”費用支出でハッキリ地区に依る差がある。発達した地区程経費もかかっている。貧困地区程少ない」と。「過去 15年で下位5位は贵州、甘肃、青海、西藏と寧夏」だった。08年のトップの広東は武警と公安局、検察局、法院で400億元近い費用がかかってるが、最低 額の寧夏はわずか19億元だと。(原注14)

    しかし額は小さくても後進地区の財政に占める割合は却って大きい。谢岳によると08年、上海では公安局、検察局、法院と武装警察に6.34%が支出され たが、寧夏ではこの比率は28.4%にのぼる。これらの数字の意味するのは後進地域の“维稳”費の負担は却って先進地域より遥かに重くのしかかっていると いうことだ。多くの地域が“维稳”のおかげで借金経営になっている。(原注14)

    以上述べたのは中国経済が高度成長し、地方財政が比較的良かったときの話だ。09年以来、地方財政は減収し、地方の財政問題を解決するために中央政府 はやむを得ず全国31の省、市の地方政府の運営のために数千億元の3年債券を発行した。2012年3月から8月にかけては合計2100億元以上の債権が償 還期を迎える。だが地方政府には償還の術も無く、ただ新債券で旧債券を払うしかない。(原注15)

    2012年以来、地方財政はさらに大きな圧力に直面している。2011年に不動産市場の調整政策が出され、地方の土地財政は重大なダメージを受けた。 中国指数研究院の統計によると、12年上半期、全国の300市の土地譲渡総額は6525.98億元。前年同期比で38%も下降した。最も豊かな北京、上 海、浙江、広東でも財政収入は前年の20%〜30%だったのが10%以下に下がった。

    経済発展した東南沿海は、経済のモデルチェンジが難しく、財政収入の下降は深刻で、豊かな深圳、东莞でもすでに赤字の瀬戸際にいる。(原注16)

    【地方政府の二重の役割ー社会動乱製造者で社会秩序混乱消火活動者】

    「財経」雑誌2011年5月の『公共安全の勘定書」によると、地方政府の公共安全支出は中央政府を越えている。地方は5219.68亿元、中央は 1024.53亿元でその比率は3対1を越えている。(原注17)これは地方が依然として维稳仕事の主体である事を意味する。地方政府の”公共安全支出” が全支出の主要な部分を占める事実の裏には即ち、地方政府こそ土地強制収容活動の利益関係者(まず土地を強制徴用して後売却し、その差益を呑みこむ存在) であり、また地方の環境汚染企業の黒幕としての擁護者だ、ということだ。

    2010年の全国土地譲渡均の地方財政収入に占める比率は76.6%(原注18)、中国の腐敗官僚のなかで8割が土地に関係している。(原注19)。 この二つの数字の意味するところは、「土地譲渡金が無ければ、地方政府の財政はあっという間に崩壊してしまい、役人達は豪邸や高級車に乗り、贅沢な飲み食 いはできなくなる」ということだ。

    地方政府が環境汚染企業を擁護する背後にも経済的な配慮がある。多くの地方、とりわけ貧困地域では汚染企業は現地政府の「一蓮托生のお仲間」であり、大 口納税者でもある。例えば山東省の徳州市武城県沙窝屯は乳牛飼育で名を知られた豊かな村だったが、近年突然、少なからぬ村人が癌で亡くなるようになった。 原因は現地の大口納税の山東高新润農化学有限公司だ(原注20)。河南省元氏県の大口汚染者はやはり大口納税企業の花形会社であった。(原注21)

    こうしてわかるように、汚染が紛争と反抗を引き起こしているが、真のトラブルメーカーは地方政府なのだ。しかし地方政府は行政権、司法権を握っており、自由に暴力で人民を鎮圧できる。

    大量の事例が示す様に、被害者は法律訴訟を通じて訴えようとしても、地元の裁判所は訴えを取り上げず、あるいは無限の勢力と出費をした挙げ句に敗訴にな る。もし追いつめられて反抗すればまず地元警察の暴力で鎮圧されて、各種の罪名を被せられたリーダーは刑務所にぶちこまれてお仕舞になる。

    上述の事実の論理をハッキリさせれば事実は恐しく単純な話になる。中国の各級政府自体が各種の社会矛盾の製造者であり、公共の安全に対する最大の脅威なのである。

    “维稳”は中国ではすでにひとつの粗暴な産業連鎖をなしている。鎖の上端は地方政府の略奪で土地強制収容取り壊し、汚染源からくる財政収入、真ん中に陳 情者の暴力的阻止、世論弾圧、宣伝、密告、そして末端に司法システムと22精神病院(*なんだろう?)と牢屋があるというわけだ。

    この”新興産業チェーン”は中国の各級政府の官僚とその家族親族には巨大な利益分配の機会を提供し、上は中央の省庁や委員会、真ん中は地方政府、下は僻地寒村にまですべてこの連鎖の上にある。

    この種の「鉄壁の治安維持」の結果として却って政府は维稳上の財政投入を続けるのが極めて難しくなりつつある。また中国をして「社会安定費をかければかけるほど社会が不安定になる」というイタチごっこの奇怪な循環を繰り返す羽目に陥れているのだ。(終)

    何清漣 @HeQinglian 氏ブログ【「社会秩序安定費と財政圧力】の原文は
    http://heqinglian.net/?p=3575 にあります。原注もurlリンクで明記あり。

    Takeuchi Jun

    @Minya_J 東京

    還暦越えたセロー乗り爺だったんだが震災以来ツーリング行ってないなあ。昔、挫折した中国語の勉強も少しやっとります。不出来な猫2匹飼っちょるよ。犬も欲しいが猫とうまくいかないだろうなあ。爱骑摩托车的老头儿。

    http://www.digi-hound.com/takeuchi/

     

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