• 「国家のイメージとは何か」中共中央宣伝部の「ソフトパワー」の大誤解の背景

    by  • March 26, 2013 • 日文文章 • 0 Comments

    何清漣@HeQinglian 氏

    全文日本語概訳/@Minya_J Takeuchi Jun

    2013/3/26 http://twishort.com/ztedc

    最近、中国による「国家イメージ」宣伝がみてて恥ずかしくなるほど盛んである。北京は毒の霧に覆われ、上海の黄浦江にはブタの死骸がプカプカ流れ、世界の少なからぬ国が粉ミルクを買いあさる中国旅行客の購入を個数制限するなかで、中国メディアはこぞって「中国にも美貌で優雅なファーストレディが登場し、中国のソフトパワーが大アップし、国際イメージが大改善された」と宣伝している。

    このデタラメな宣伝の責任は当然、中共中央宣伝部が「ファーストレディ」に必要な資質は何かという点で完全に錯覚してからであって、ファーストレディたる習近平夫人彭麗媛女史本人にはなんの責任も無い。この誤解は一に中央宣伝部が「ソフトパワー」とは何か、「国家イメージとは何か」について中国独特の解釈をしているからであり、二には中国官界の長年の悪しき習性が無意識に出てしまったからだ。それは女性の美は「資源」である、という考え方にほかならぬ。外交とは内政の延長で有るからそう考えているのであれば、宣伝に利用しても、別にそれが悪いとか、自分達がヘンなことをしている、などとはおもい至らないのだ。

    ファーストレディが国際社会で敬意を払われる、というのは君主制国家における皇后や、女王のそれとは違う。ファーストレディは別に血統的にすばらしい、とかの有利さがあるわけではなく、その気質や社会イメージは自分でつくったものだ。中国と米国の政治体制と文化面の相違は大変大きなものがあり、ファーストレディの人柄や物腰が発揮される機会や場面というのはそう多く無い。で、この一文では中国の政治体制と比較的似ている20世紀のアルゼンチンを比較してみようとおもう。

    アルゼンチンはかって世界にその名を知られたエバ・ペロン夫人がいた。マリア・エバ・ドゥアルテ・デ・ペロン。芸能界出身で絶世の美女。演劇で財産を築いた。が政治の世界に飛び込んでからは社会に合わせて自分のイメージをあらためて作りなおした。アルゼンチンは当時既に民主制度を敷いていたので社会底辺層も膨大な票を持っていた。エバは夫のペロンを助けこの労働者票を獲得するため、自らが貧しい家庭の出身であることを大いにアピールしたのだった。

    その出身が労働者の共感を呼び、エバは政治団体descamisados(*?無シャツ党?)の指導者となり、貧乏人や孤児、社会的弱者のために奔走するポピュリズムの闘士になった。最盛期には「貧者の聖母」とまで呼ばれた。ただエバ支持者が重視したのは彼女が自分達の権利や利益のために奮闘してくれたということであって、美貌は「花を添える」ものでしかなかった。

    だが中国民衆今日に至るまで自分達がどんなファーストレディが必要かわかってない。ネットでは「国母の様だ」だのまるで皇帝時代のような言葉がいっぱい飛び交っている。「南方巡行」(*巡行=じゅんこう=は皇帝用語、鄧小平のときも使われた)などいう言葉も連想する。政府と人民の関係で、潜在意識的には中国人はまだ自分達は皇帝時代に生きているとおもってるのだ。

    それなら、中国伝統文化的な「国母」を例にとろう。「国母」という言葉の本意はその美貌を指すものではなく、徳行を指す言葉だった。つまり「皇后は天下の母であり、万民に対し母のような慈愛を持つ」ということであった。歴代皇后には10指に余る賢い皇后がいた。だが歴史書はその皇后達の徳を讃えており、その美貌を讃えてはいない。わずかに光武帝の皇后、陽麗華が帝と苦難を共にし徳容兼備で最高と言われている。

    別に彭麗媛女史に徳が無いというわけでなない。長年の報道をみると、親しみやすい人柄で、みだりに威張らず、質素を好み良妻賢母型で公益にも関心をもち、08年の四川地震には自ら赴いて舞台に立ち、そこでボランティアとして現地で心のケアを受け持つ看護に当たっていた16歳の娘の習明澤とバッタリであったといわれる。06年には彭女史は衛生部の要請でエイズ予防のボランティアとして活動した。去年十月にはファーストレディとしてテレビに初めて写ったときはエイズ患者の見舞いにいく姿だった。このような性質は中国高官の夫人ではきわめて珍しい。

    習近平が中共のトップになったときはまさに社会矛盾が激化し、生態環境が危機を迎えていた。政情に限っても 彭女史の活動空間はペロン夫人のような自由広大なものではないが、彼女の本来のイメージが社会底辺層をなだめるのに向いていたろう。だが中央宣伝部はなにを勘違いしたかこのような方面のイメージではなく、反対に「中国はついに美貌優雅なファーストレディを得て、国家イメージとソフトパワーをアップした」などと見当違いの宣伝にこれつとめてしまった。この「国家イメージとソフトパワーアップ」にはなんともお粗末な解釈で、中共貴族階級の成り上がり根性が丸見えで、泣いていいのか笑っていいのかわからない。徳ではなく色香を重視するのは中国の欲張り官僚や成金の女性を見る目そのものだ。

    外交は内政の延長上にある。中央宣伝部がなりゆきでこの基準をもって、自分達の「ファーストレディ」像を作ってしまったのは彭女史にとっても不幸なことであった。 この拙劣な宣伝には別の目的が隠されていたという説もある。李剣芒(*著名ブロガー)は「ある説によると香港メディアが彭女史を褒めちぎるのは国内の人々の習近平夫妻への反感をあおり立てるため、という説。真偽は不明だが宣伝の愚劣さみるとありかも」と述べた。

    《中共のソフトパワーの誤解》

    中国と世界の関係はアヘン戦争以来ずっと問題だった。現代の文明時代における苦難と歴史の重み、現実問題との混乱は中国人に西側文明に対して劣等感と優越感の混じった気持ちをもたらした。毛沢東の時代には門を閉ざし鎖国、鄧小平の改革開放後、西側世界の文明とますます多くの接触が増えた。鄧小平は個人的魅力のあるリーダーで外交で本領を発揮するタイプだったが開国当初で「国家イメージ」などさして気にする必要は無かった。だがポスト鄧時代の江沢民・胡錦濤時代にはいかに対外国家イメージをつくるかが問題になった。ただそいっても江・朱、胡・温時代の中央宣伝部は国家イメージとソフトパワーへの認識はどちらも今の中央宣伝部ほど無茶苦茶ではなかった。

    国際社会の普通に考えられる「ソフトパワー」は先に拙稿『ファーストレディ』とネットの反響」で紹介した様に「文化、政治価値観と外交政策」であって、「如何なる国もファーストレディの容姿を『ソフトパワー』などとしたことはない」のだ。だが中共はずっとそうした西側の常識や価値を拒否し西側の「ソフトパワー」への考え方も明らかに受け入れるのを望まなかった。

    中国がこの10年近く、巨額の資金をつかって全世界106か国に360個所もの「孔子学院」をつくってきたのは、「毛鄧三科」(*爺注;毛、鄧、江沢民の「3つの代表」、胡錦濤の「科学発展観」の共産党理論)では「中国のソフトパワー」を世界に広める事はできないとわかっていたから、やむを得ず、かって毛沢東が徹底して批判した孔子様の名前を引っ張りだして、中国の「ソフトパワー」の看板にしたのだった。以下、孔子を代表とする中国の伝統文化がどうして一国の「ソフトパワー」になる、と思われたのか説明してみよう。

    中国の伝統文化には無論「ソフトパワー」などいう言葉は無い。だた国家の実力には似た様な解釈がある。なかでも老師と孟子の「三宝説」が代表的だ。老子は国王は「慈」、「倹」、「敢えて天下の先と為らず」を三宝とした。第一の「慈」は君主の庶民への慈愛。老子は春秋時代の乱世に逢い、王室は衰微し、諸候は覇を争い、天下は混乱し、民は苦難に喘ぐ時期だったから、統治者に民を我が子のように愛する事、すなわち「慈」を求めた。第二の「倹」は、勤倹節約の意味で、老子は国を治めるには統治者自らが倹約を約束し民を養生させる、つまりみだりに兵を用いず民の負担を軽くしてこそ人々の暮らしを安んじうるのだ、と。第三の「敢えて天下の先と為らず」は統治者たる者は利益の前に先を争う様なことをしてはいけない、という意味で、北宋の范仲淹の「天下の憂いを先に憂い、天下の楽しみを後に楽しむ」はここからきている。孟子は土地、人民、政治を諸侯の「三宝」として、もし諸候が宝石や金銀などを宝物とするようなならきっとその上に禍いが降り掛かるだろう、と述べている。

    中国政府がまだこの先も統治を続けたいのであればまずもって「清潔な政府、清潔な環境」を国家イメージの大黒柱にしなければならない。長年、金銭外交(経済援助とご用聞き外交)と「大宣伝」を「ソフトパワー」とするやり方は尊敬どころか物笑いのタネだ。少数の『中国大好き派』の学者、たとえば米国の沈大偉などが中国政府に対する善意からアドバイスしている。今の様に中国中央宣伝部が「ファーストレディの美貌」を「ソフトパワー」と馬鹿みたいな勘違いをしてるなら、この政府は世界の文明に近づくどころか反対に遠ざかっているのだ、と。(終)

    拙訳御免
    原文は voachineseblog.com/heqinglian/2013/03/state-image/

     

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