• 『屌丝』なる言葉にみる社会の生きづらさ

    by  • April 29, 2013 • 日文文章 • 1 Comment

    何清漣 @HeQinglian 氏ブログより

    April 15, 2013

    日本語全概訳/@Minya_J Takeuchi Jun

    http://twishort.com/Eomdc

    4/29/2013

    私が「屌丝・ディヤオスー(*爺注;最低ダメキン野郎ぐらいの意味かなあ…こういうのは語感がイマイチわからんです。)」という言葉に注意を向けたのはツィッター上のある不愉快な経験がきっかけだった。

    今年の1月に「南方週末」事件で自由を求める同紙を支持する文を書いたら多くの私の”ファン”の心を傷つけてしまい、彼らは「南方週末はかって韓寒(*中国の有名ブロガー。ブログで賛否両論をまきおこした)を支持したから、あなたは支持すべきでない」というのだった。彼らが他人である私の言論の自由にかくも煩わしく干渉してくるのにうんざりして、最後にブロックしたら、その中の1人が別人に托して捨て台詞に「おれは屌丝、あんたなんかへっちゃらさ」と言った。この台詞はいささかかっての「失うものを持たぬプロレタリアートは何者もおそれない」に似たところがあって、中共政権発足後の3つの時期に流行した言葉を想起した。どれも「プロレタリアート」に関係する言葉だ。

    文革;プロレタリアート黄金時代;

    文革期はどんな争いごとでも腕まくりして「オレは労働者階級(又は、貧民下中農民だ)、何もこわくないぞ」と。80年代には作家の王朔が「オレは何も怖れぬならず者(流氓)だ」で生き生きと乱暴者が社会の規則を馬鹿にする”カッコいい”様子を描いた。この話と「屌丝」の相通じるところは、話し手が社会底辺層に属し、傲慢と卑屈の奇怪に混じり合った言い方だという点だ。

    しかし更に細かく見ると、3種類の言い方は皆、身分型社会の言葉でも、その意味が社会環境を反映する点で大きな相違がある。「労働者階級」と「貧下中農民」という二大階層は文革時期と今では天地の差がある言葉だ。当時は「中国人民の偉大な指導者毛沢東」は「労働者階級は一切を指導」し「未改造知識分子と労働者農民を較べれば、知識分子は汚く、最も清潔なのは労働者農民であり、その手が黒く、足に牛の糞がついていても資本家やプチブル階級よりキレイなのだ」だった。

    なんせこんな「聖旨」が下ったのだから、当時の社会では逆身分差別が流行し、労働者・農民が体制によって政治的地位を獲得し、労働者階級は「無産階級の先鋒隊」ですべての階級のトップとなり結婚相手としてもモテモテだった。政治的地位が高かったから、この両階層の特徴である教養の無さや挙止の乱暴さ、生活のセンスの無さは全て大いばりの”政治的資本”になった。

    この時期、自ら「労働者階級」「貧農下中階級」というのはこの両層の特徴である「無教養」のレッテルを自分に貼ることは階級の誇りでもあった。これは頗る中国的特徴であって、社会主義国家だったソ連ですら、労働者農民を尊重したとはいえ、教養や教育がないことをもって自らを誇り、それを”政治的資本”となすなどということはなかったのである。

    《ならず者の無産階級者の精神が一向に衰えずにいること》

    「おれはゴロツキ(流氓)でコワいものなし」は著名作家の王朔が作中人物に中国社会文化に対して言わせたある種の深刻な認識であった。 ある人は王朔が風刺したのは社会の枠からはみ出し通常の社会から認められないで、一切を破壊したいという欲望を持つ 一種の”無宿者”だと指摘した。

    この論評は半分しかあたっていない。もしならず者の精神を”無宿人”(遊民)特有のものとするなら中国文化への理解を欠いている。無宿者(身份丧失者)は必ずしもならず者(流氓)の精神を持つわけではないし、その逆もまた然りだ。ならず者精神の核心は社会の規則を破壊する快感の中から得られる満足感であり、もし自分が強大な力を持ったら他人や世界に言うことを聞かせたいという欲望である。小者は前者で満足し、オオモノは後者で快感を得る。共通点はどちらも他人の願いや利益を考慮しない点で有る。

    私の中国文化のなかのならず者(流氓)精神への理解度は、中共の文化の認識が深まるとともによりこちらも深まって来た。毛沢東の指導した農民革命というのは実は無宿者を主体としたならず者(流氓)革命であり、その無宿者精神は不可避的に中共政治文化に浸透していったのだ。それは知識分子と人類の文明に対する蔑視と、破壊行動の中から得られる満足感である。

    最も典型的な例証は毛沢東が中国伝統文化、西側の文明、ソ連が代表する共産主義文化を「封建・資本主義・修正主義」と分け、全てを否定したあと自分が好きな様にした。 この種のならず者精神はもうひとつ大きな特徴があって、すべて自分が占有したり理解できないものは全部破壊してしまう。例えば明末の张献忠(*残酷な殺戮を好んだといわれる農民軍指導者)天下を得られないとわかると、屠殺し満足した。

    しかし、1940年後に産まれた中国人にとっては、毛沢東に代表されるならず者文化を認識するには一つの過程を経なければならない。私も今世紀初めになってやっと理解したことだ。それは、中国の政治エリートがならず者(流氓)化し、社会の最下層がゴロツキ化し、地方基盤政権がギャング化するなかでわかったことで、王朔の「おれはならず者(流氓)で何も怖れない」は実は中国文化の重要な一翼である江湖(*任侠道)文化を理解する鍵だということだ。(筆者注;他の一翼は儒教中心の士大夫文化)。

    中国エリート層の流氓化は大変明白である。役人の腐敗のひどい内幕は世間を魂消させている。(例えば下劣な色情日記等)。一切かまわぬ搾取は中国の生態環境を崩壊寸前にした。自分が育った土地と資源を搾取し人命の危機まで陥れ人倫の基まで無くし、人体器官や死体の売買を行い、社会構成員の尊厳、政治の失敗者の尊厳もゼロ。上がこうだから下も倣って弱者の生存資源を平気で奪う事件もよく暴露される。生き残る為には密告、スパイ、タレコミ屋、五毛、なんでも、それも威張ってやる。

    山西省の黒磚窯事件や陕西省の数年前の”ブタ殺し”は騙して炭坑で働かせ、殺して事故に偽装し、家族になりすまして賠償金をせしめる。社会下層成員が他人にいささかの人間性もなく暴力悪事を働いた例で有る。

    《社会の沈下傾向の言語表現》

    「屌丝」という言葉はみな下品極まる言葉だと皆知っている。それは中国社会の上昇への道が厳重に閉ざされた産物だ。社会底辺層の絶対多数が各種の努力、大学・大学院進学などしても運命を変えることができないとき絶望する。だからこのような呼称で自らの社会位置を呼ぶ。毛沢東次代の人をネジ釘扱いしたのとは違う。ネジ釘はすくなくとも器械の部品であった。「屌丝」の意味は自分が世界にいてもいなくてもいい存在だということだ。

    このような下品きわまる用語で自己規定するのは、自己蔑視の上に、一種の自慰的な誇りもある。多分、「屌」の字は“老子不屌你”、“屌你妈,老子不玩了”あたりからきたのだろう。(*屌;〈俗〉陰茎.男性生殖器)こうした貧しいものが自虐的になることは歴史上にもあった。たとえば魏晋南北朝の門閥制度が底辺の英才が上昇する道を断ったときとか。が当時の自虐はこれほど広汎な社会的認知はなかったし、今日程「自分は人ではない」といった所まで至ってはいなかった。南北朝時代にはまだ貧乏な英才でも自らを重んじガッツもあり、自分に相応しい地位を争った。その結果が随唐時代に門閥が衰え科挙が盛んになったとき「朝は田舎野郎でも夕方には平民宰相」という言葉が産まれた。)

    正常な社会とはいかなるものか?経済学説史上独自の地位を持つソースティン・ヴェブレン(*有閑階級の理論の著者)の回答は不変の原理だ。彼は下層階級と上層階級は必ずしも敵対するものではない、と論じ下層階級は一見みえないが実はしっかりした共同的態度、労働者が管理者に取って代わろうとするのではなく、ただ模倣しようとする。彼らは自分達のシゴトが社長のよりカッコわるい、とはおもっていてもだが彼らの目的は別に自分達より上の階級を無くそうというわけではなく、自分がそのより高級な一員になる方法をつくろうとするものだ。まさにこのような心情が社会の平衡をたもつ。つまり、社会的に上昇するパイプがある社会ならば人々はより高級な階層を目的とし、これが人類の文明の進歩と活力の源泉になるのだ。中国社会のエリートのよからぬ行為は、社会底辺層に反エリート感情を産み、反感に至らしめる。

    台湾の人がエリートと草の根、という対の言葉を翻訳するにあたって上手に、エリートを「菁英」とし、これは草花の「菁英」だが、意味としては草の根っこがなければ「菁英」もないわけで気が利いた翻訳だ。とてもいい。人々に「草の根は卑しいけど生命力は強く、かつ「菁英」の根本をなす。草木の栄養分のなくなった「菁英」階級は早晩、その生存の根本を失う。(終)

    拙訳御免。

    (原载何清涟VOA博客,2013年4月12日,voachineseblog.com/heqinglian/2013/04/grassroots-asdiasi/ … ,www.voachinese.com/content/he-qinliang-20130412/1640621.html …)

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