• 雅安救援後の中国の非政府系NGOの命運

    by  • May 3, 2013 • 日文文章 • 0 Comments

    何清漣 @HeQinglian 氏ブログ

    2013.5.3

    全文日本語概訳/@Minya_J Takeuchi Jun

    http://twishort.com/xhpdc

    2013.5.10

    2013年の雅安地震は二つの特に注目に値する点があった。ひとつは大々的に総スカンを喰らった中国赤十字の信用(即ち中国政府の信用)、二つ目は非政府系NGOの救援活動での大活躍。人々はこれら非政府系NGOの活躍を大いに持ち上げているが、どうもこうした組織が災害の後にどうなるかについては思い至らないでいるようにおもう。

    《中国赤十字会の信用は北京政府の面子である》

    中国赤十字会の信用力(public credibility)は雅安地震の義援活動で総スカンをくらった。あの郭美美事件(*中国赤十字会に関係する愛人らしい女性が「自分はこんなに贅沢な暮らしをしている、と微簿で威張って見せた事件。うやむやになった)が民衆が義援金を出すのを拒絶する主な理由となった。といっても、別に中国市民は郭美美こそが赤十字腐敗の諸悪の根源だとおもったわけではない。誰だって彼女はただの腐敗の毒の小さな芽に過ぎないことはしっている。だから、”郭美美”の真の意味は、中国赤十字=中国政府、というこの政治経済共同体の信用がガタ落ちということにあるのだ。

    中国赤十字会の政治背景を知ってる人なら、誰もが中国赤十字こそ政府主管の各種慈善事業システムの最上位の存在であり、中共政府の便利な”白手袋”だとわかっている。その名誉会長は中共総書記の江沢民から胡錦濤だった。会長の王忠禹、彭佩云は政府の省級以上の高官。現在の会長・華建敏はかって国務委員兼国務院秘書長で、11階全国人民代表大会常任委副委員長として、”党・国家指導者”の端にいるともいえる立場だ。

    この様な中国赤十字と中国政府間の切っても切れない関係は、つまり中国赤十字の信用と名誉はとりもなおさず中国政府の信用だということに他ならない。だから中国赤十字が地震後に苦境に立った事は、実際は政府が民衆によって横っ面をはり倒されたに等しいのだ。今回の地震における中国赤十字への義援金応募額はネットでは4月20日夜で14万元。これに対し、民間の「壱基金」(*深圳の李连傑氏が起こした私的募金)は2240万元に達した。これは北京にとって嘆かわしく腹立たしい極みだった。北京から見ればこれは単なる金銭の問題ではなく、重要な事は民衆がこれまで通りおとなしく政府を支持するかしないかという問題なのだ。民衆がおとなしく服さずということはすなわち政府の威信が地に落ち、面子が丸つぶれになった、ということである。

    中国政府は一貫して「国家オポチュニズム」というべき考え方を信奉し続けてきた。その時の諸情勢によって北京の”叡智”で政策を調整するのだ。だから今回、民政部門は、今後は、これまでのように義援金を地元政府機関にだけ、とか政府部門にだけ納めるように大衆に要求することはもうしない、と宣伝し、無様でひっこみのつかない事態から面子を保つ退路をつくろうとした。しかし北京はこのみっともない事態に置かれたことに対しおさまりきれない怒りをほんとうに我慢したのだろうか?

    北京は政治的威信をなんとか保とうと、ただちに各地に義援金を命じた。各地の政府に極めて効果的に強制した結果、4月の24日には民間募金機関と金額的に並ぶ1.2億元が赤十字基金に集まったが、それでも壱基金より数百万少なかった。そこで各地の政府は下部の党関係の機関に再度パッパをかけて、最後になんとか5.7億元の義援金をかき集め、全国からの義援金総額の半分にした。これでなんとか面子を保ったとおもったが、そうはいかなかった。中国赤十字は、このなかに8470万元という巨額の流用を認めざるをえなかったのだ。この巨額の募金はなんと5年前の汶川地震の救援のために著名な画家の方力钧ら100人の芸術家が作品を売って募集したものだったのだ。こうした事態に、国内のある論評は「5.7億元も中国赤十字の汚点を洗い流せない」と指摘した。

    《民意、の暫定的勝利》

    実際、非政府系NGOは雅安の救援活動で自分達の能力を十分に発揮する機会を与えられたのは基本的に民意の圧倒的な支持があったからだ。さもなくば政府は相変わらず、義援金を全部フトコロに入れ続けたであろう。汶川地震当時は中央政府と民間が共に「困難に打ち勝ち国づくり」を唱えたときは民衆の義援金はホントに誠実な心からのものだった。それは08年前の慈善義援が個人が2割以下、企業単位が8割だったのが、地震後、個人と企業が互角になったことでわかる。ある機関が汶川地震の164億元の義援金の来源を分析調査したところ、個人義援が70.12億元で43%で企業の69.26億元、社会各組織の24.27億元を越えていた。が、雅安地震では個人義援は10%に低下してしまった。

    これは中国の赤十字会=政府というこの政治経済共同体に対する市民の信用が深刻に下落していることを示している。北京が総力を挙げて五輪開催したとき、中国市民の赤十字に対する信頼は実際は政府への信頼だった。「全国の人民」の少なからぬ人達が08北京五輪に激しく感動し、中国はまさに平和的に勃興しているとおもった。それが四川地震の後の”豆腐のような建築の崩壊”だろうが谭作人弾圧だろうが、それは地方の、四川省政府が悪いだけだ、と思っていた。

    この5年間の中国政府の数々の仕業については何度も多くの文章で批判して来た。要するに中国政府が自認する08五輪の聖火の強烈な印象はすでに消え失せ、民意にはとっくに巨大な変化が起きている、ということだ。 雅安地震後、民間が義援金拠出に反対することで示した風潮は、1989年以降、中共が初めて遭遇したものだ。北京の政治トップ層は、そのネット上に書き込まれた12万の、一説には16万ともいう赤十字会に対しての“目の前から消えてしまえ”というネット民の発言の背後に、中国人の現状への深刻な不満がひそんでいることを意識しているだろう。

    幼稚園児の父母や学生に義援金を強制することに批判的な者のうち、”目に余る”何人かを当局は”お茶に招き”、ブロガーに圧力をかけた。しかし反省も謝りを認めることもしない中共は、香港の”義援金強制抗議”も許せなかった。そこで、まず香港の「大公報」4月26日号に「反中央、反民族的」と非難させ、人民日報海外版に「少数の香港人が災害義援に反対しているーそれは正当か?」という記事を書かせた.その結果、北京の思惑に反して多くの中国のネット民が香港の反義援金活動に支持を表明した。民意がこの様な有様なので、中共も圧力と五毛の大群をもってしてもこれを変えさせることはできなかった。

    《四川地震後、中国のNGOは生き延びられるか?》

    雅安地震後の救援では民間組織が重要な働きをしたのは誰もが認めるが、誰も、それがNGO自身にとって本当によいことだったかどうかについては分析されてない。最新の「アジア週刊」の表紙の見出しは『川地震救援で民間組織が鍵となる大活躍』だった。そして「五年前の四川地震に較べて、今回は政府側もいささか進歩し政府も軍も連携したが、民間組織の社会動員こそ最大の働き」と評価した。

    民間救援機構は強大な組織力と専門能力の高さをみせ、ともに連合し、立体的な救援活動を行い、透明度と信用で中国赤十字会などの官製慈善機構の方針転換を促進した。とりわけ公共知識分子(*日本で言えば知名度あるNGOリーダーみたいな感じかな)李承鹏は専門の救援隊を組織し、素早く災害地区にはいり、広報では微簿の有名人の‘肉唐僧’らが資金を集め物資を購入し、その過程を公表し透明化をはかり高度の民間救援団体を組織、一部地域では解放軍に先んじた。もしこうしたことが民主国家で起きたなら、政府は壱基金や李承鵬のような人に感謝を表すに違いない。社会の為に困難を共に担い、被災者のために働き政府の負担を軽くしたのだから。

    しかし中国政府の頭にはいまだに朱元璋(*明初代皇帝、猜疑心強く残虐で有名)の頭で「恩は君主から。臣下が勝手にやってはならない」という考えが骨絡みにしみついている。共産党の政治文化では如何なる社会組織もすべて「政治の陣地」である。それは絶対に他のいかなる社会勢力にも指を触れさせてはならない。これは共産党が国民党の失敗からしっかり学び取った教訓で、共産党からみたら、半世紀前に宿敵の国民党が政権を失った主要な原因は民間の団体(今日ならNGO)他の政党、すなわち共産党や第三勢力などの各種民主党派の存在と発展を許しておいたからなのだ。この重要な「歴史的経験」は第一代から第四代指導者まで伝えられており、NGO的な”政治陣地”を共産党が占領することは社会を把握し制御するための重要な手段となった。

    改革開放の早期からはじまって中国政府は各種の政府が実権を握る『非政府組織』をしこたま作って、「グローバルスタンダード」にあわせてもっともらしいNGO的外観をさせ、国際的に同種の組織と相互交流し、国際活動に参加させ各種の国際援助をせしめたものだ。国際機関や外国政府も中国のNGOは実際は政府にコントロールされたものとは承知しながら、知らぬ顔をして各種の援助を続けた。米国のfoundation centerの統計によると2002年から2009年、米国の同センターの対中国援助は4億3000万元(香港を含まず)で、義援金は学術、政府、政府系NGOが各44.01%、25.38%、16.62% を占め合計は86.01%にもなり、草の根のNGOが得たのはわずか5.61%だった。

    政府がコントロールできない民間機構が雅安地震で大活躍してしまったことは、北京当局にとってはとんでもないやっかい事で、政府に義援金を納めなくてもよい、というのは一時しのぎの苦し紛れの作戦にすぎない。私は経験によって知っているのだが、中国政府はこの『借り』は必ず返すだろう。ましてや中共の目からみたらこれは『朝廷』たる共産党と『反逆者』の間の民心の奪い合いなのだ。どこでそのカタキをとるか、は目下相談中、といったところ。ちょうど此処まで書き終えたとき、ツィッターをみたら、@Danmuzhiyu 「政府は村の基盤単位に、悪人が被災地区に侵入し悪事を働いている。噂に脅えてはならず、また援助物資を勝手に欲しがらない様に、と言ってる」とか。
    私は自分のこうした心配が本当に杞憂に終わってほしいと願っている。(終)

    拙訳御免。原文は《中国人权双周刊》第103期, 2013年4月19日—5月2日,biweekly.hrichina.org/article/6845

    About

    Leave a Reply

    Your email address will not be published. Required fields are marked *