• 中国政治生態の”大躍退”

    by  • May 27, 2013 • 日文文章 • 0 Comments

    何清漣氏 @HeQinglian ブログ

    2013年5月27日

    日本語全文概訳/Minya_J Takeuchi Jun

    http://twishort.com/4Vtdc
    2013年5月31日

    最近、中国の『红旗文稿』・『人民日報』・『解放軍報』が連続して3つの文章を発表した。「憲政は資本主義に属するの論」「党性は神のもの論」「宇宙の真理論」とでも名付けようか。「9号文件」「大学で教えてはならない7つのこと」(*爺注;共に今年、四月下旬に出された西側文明の言論自由、党批判などを教えることを禁止する通達)を出してから、この屁理屈とこじつけの文書をまたしても世に問うということは中国の政治生態が改革開放の初期に較べて”大躍退”していることを表している。それは北京が朗々と謳い上げる『三つの自信』(爺注;2012年11月、胡錦濤が18回大会でだした路線、理論、制度が正しいとする見解)を証明するどころか、反対にその政治的弱さを表明しているのだ。

    《「憲政は資本主義論」は「人治」論の提灯持ち》

    揚暁青は「憲政と人民民主制度の比較研究」で「憲政なる理念は資本主義社会に属し、社会主義のものではない」という内容の論点を表明した。これは改革開放初期の「商品経済の姓は社会主義か資本主義か」や「ブルジョア的人権の観念」論争を思わせる。「商品経済の姓…」は今から見たら馬鹿馬鹿しい論争だが、鄧小平の「不争論」(*爺注;ごちゃごちゃいわんで改革開放だ!みたいなw)の一言で論議はお仕舞になった。「人権概念」の前に「ブルジョア的」の字をつけた「ブルジョア的人権の観念」は1980年代の「精神の汚染を浄化せよ」だの「ブルジョア自由化反対」まで続いた。当時、一部の党内進歩派のベテラン理論家が「全ての善きもの、人権や自由、民主を全部、ブルジョア的といって専売特許を認めってしまったなら、社会主義には一体何が残ってるというのだ?」と皮肉った。こうして、「人権」は段々中国においても「ブルジョア階級のもの」ではなくなってきたのだった。

    江沢民時代になって、世界と人権についても対話をはじめ、1998年10月「公民権と政治権利の国際条約」に署名した。人民代表大会では今日にいたるまで未批准だが、これは当時の中共政府が徐々に国際的なレベルに軌道を合わせようとしていたことを示している。

    世界が認めている「憲政(デモクラシー)の理念」というのは法律の上に何も他の権力が無い、とする法治主義にほかならない。1997年中共15回大会で正式に「法に依る統治」が提出され、完全な社会主義法律体系を一歩一歩作って行き、国際社会と軌道をすり合わせすることが強調された。胡錦濤時代の初め頃までは「法に依る統治」は依然として、中国の政治が向かう方向だという基調も保たれていた。

    ところが2005年になって情勢は変わり始めた。胡錦濤が「徳を持って国を治める」とか、「カラー革命に反対する」とか、さらに「社会主義民主政治を建設しなければ」といいだしたのだった。胡錦濤は江沢民時代の半開放の形態から後退したが、ここでも注意すべきは鄧小平から江、胡までは中国は「世界標準価値」の「法治至上」の憲政理念を否定したことはなかったということで、「人治」などと公然と主張すれば国際社会の異端児になると承知していた。

    しかし、それが今や、党のメディアが公然と「憲政は資本主義のもので社会主義とは違うのだ」などと論じるようになったというのは、北京が紅色貴族資本主義体制を維持する為に、自ら世界文明から外れることを決めた事であり、これは明らかな政治的後退である。

    《「宇宙の真理」と洪秀全の「天のお言葉」》

    解放軍報の「我等の信仰する主義はまさに宇宙の真理である」はもう世迷い言としかいいようがない。人類社会には二種類の真理しかない。一に科学的真理、ニュートンの法則とかアインシュタインの相対性原理とかだ。もうひとつは宗教的真理。すなわち神だけが把握する宇宙のすべての生物が従う究極の真理のこと。それを中共は自ら宇宙の真理を把握すると称したのはつまり、自分は神であると宣言したに等しい。「人民日報」の劉亜洲の文章は「党員は党性を信じるのはキリスト教徒の信仰と同じ」というにいたった。これはもう「私は光であり、塩であり、真理である」とし「汚れたバッチイ暗黒の見かけは本当の私ではなく、肉体にすぎない」みたいな話。(爺蛇足;イエスの山上の垂訓は「あなたがたは地の塩であり光である」と信者を励ます言葉であり、自分に向けて言った言葉ではない。)

    こうした文章の作者達は党への褒め言葉探しに焦って党を神に喩えるのはマルクス主義に反し、中共の過去数十年のイデオロギー教育にも相反することだとおもいつかなかったに違いない。マルクス自身は無信仰で、宗教を骨の髄まで嫌っていた。中共もマルクスの名言の「宗教は麻薬であり人民の阿片」をずっと言い続けて来たのに、である。

    中共は「改革開放」以来、次第に「文革」時代の”毛沢東の神の声が下る”式の神権政治から抜け出し、西側文明につながる門を少し開いた。しかし、いまや中共は自分自身を「神」とし、「宇宙の真理」を把握したと称するに至った。これは「人から神へ」の道であり、太平天国の乱の洪秀全が蜂起が失敗に終わる前、毎日「天のお言葉」で自分を励ましたのを想起させる。1863年冬、首都天京(*南京)が清軍に包囲され、弾も食料も尽き、幹部の李秀成は天京を放棄するように進言したが 洪秀全は「我は神の聖なる詔を受け、天下万国の唯一の真の指導者で怖いものはなにもない。鉄壁の守りは汝が守らなくても誰かが守る。兵が無いというが我が兵は水より多し」と行って退けた…後は皆さんご存知だろう。(*爺蛇足;1864年包囲されて病没)

    《屁理屈こじつけの背後に有る虚弱》

    習近平は中国を何処に導いて行くのか? ロシア訪問での「靴論」以後、一連の奇妙奇天烈な理論がつぎつぎに登場し、脚光を浴びようと争っている。「禅譲論」(宋魯鄭)、新国父論、7つの不教論、憲政資本主義論、党性神論、宇宙新理論。かくて習近平政治改革者論はソ連解体以来、中共が他山の石として総括した経験は山ほどあるのだが、ただソ連の政治制度そのものに原因があった、ということだけは忘れてしまっている。

    元中央委員会政治局員兼書記ゲンナジー・ジュガーノフ ロシア連邦共産党党首の総括は適切で冷静な言葉だといえるだろう。 ジュガーノフは、ソ連解体とソ共産党滅亡の原因は ❶独断的イデオロギー、❷ほしいままの政治暴力による権力独占、❸特権と利益の独占だった、としている。

    中共も毛沢東時代から今に至るまで3つの独占構造をもっている。即ち、

    ❶ 権力の政治法律制度の独占、一党専政の構造、如何なる監督も批判も受け付けない、何の制約もない権力、である。

    ❷ 経済利益の特権制度の独占。政府が資源分配の大権を握り、企業だろうが個人だろうがすべて政府の資源に甚だしく依存し、役人が国家の国王の如き存在になった。政治利益集団に対する利益の傾斜配分制度を形成し、役人の給料、福利、住宅、医療、交通、子女の教育、海外旅行や各種の文化娯楽など、庶民が望むべくも無い手厚い待遇の数々だ。最近では食品の安全問題がおき、高官だけが特別安全食品を入手出来る。庶民の子弟が就職難にあっても、官僚特権集団は社会的地位上昇へのパイプを独占し、紅二代、官二代が親の後を継ぐのが大っぴらになっている。30余年の経済改革で中国は約3億人が一日2㌦以下の暮らしをしているとき、これら特権集団は数千万から数十億米ドルの超級富豪階級になっている。

    ❸ ”真理”の独占(鄧小平が始めた世論の独占の改変)のイデオロギー。中共は一度もメディアコントロールの手を緩めたことはなく、学校教育を通じてイデオロギーを注入し続け、最高指導者が交替するたびにその内容は”豊富”になり、いまでは「毛鄧三科」(*毛・鄧に江沢民の「三つの代表」論)に加え「宇宙の真理」にまでなった。

    鄧小平が「実践が真理かどうかをはかる唯一の基準だ」としたから、「真理」(*毛やマルクス主義の)の本体そのものが最終的、唯一のものではなくなり、江沢民以後、中共指導層は自分の思想や言論を「メインのメロディ」に格上げするようになった。で、習近平は政権をとってこの半年、党メディアをつかって中共が信奉する理論は”宇宙の真理”だとまで言い出したのだ。中共の”3大独占”に対し人々の間には恨み、怒りが渦巻いているが、北京はそんなことはおかまいなしに、政治上の言葉群はますます強硬になり、今やもう譫妄状態に向かいつつ有る。

    どうしてこんなことになったのか? その原因は「政治的合法性」(*共産党統治の正当性)が危機に陥ることによって産まれた極度の虚弱状態だ。

    鄧小平は「実践だけが真理を明らかにする」として、「毛沢東主席の決めた政策と発言はすべてやる(两个凡是)」(*華国峰の方針)に挑戦し、改革でもって毛の時代に逆行しようとする混乱をただした。その十余年の間に中国人民が獲得した実際の恩恵は程度はまちまちだったが比較的公正だった。江沢民時代も”メインメロディ”はあったとはいえ、”非主旋律”(違った意見)もまだ存在していた。中国経済の発展がまだ「上げ局面」だったからだ。

    しかし、習近平が権力を引き継いだ時には、中共の政治実践ーつまり紅色貴族資本主義の醜悪さーは最早、いかなる批判にも耐えられないものとなっていた。これが北京が大急ぎで、自己を「宇宙の真理を握っている存在」だなどと宣言しだした原因なのである。(終)

    拙訳御免
    原文は;www.bbc.co.uk/zhongwen/simp/focus_on_china/2013/05/130527_cr_china_big_backwards.shtml

    About

    Leave a Reply

    Your email address will not be published. Required fields are marked *