• スノーデン事件の多重反応

    by  • June 18, 2013 • 日文文章 • 0 Comments

    何清漣氏 @HeQinglian ブログ
    2013.6.17

    日本語全文概訳/Minya_J Takeuchi Jun

    http://twishort.com/4Lzdc

    2013.6.19

    最近のスノーデン機密漏洩事件は多重の反応を引き起こした。この前CIA職員は米国が最大のハッキング帝国であるとして、米国国家安全局は全地球規模で少なくとも61000回のネット攻撃をかけ。そのうち数百回は中国大陸と香港が対象であり、同時にそれは米国人民を監視し、米国人の自由を深刻に侵犯していると。中国のネット上では米国民主主義の虚偽を攻撃するのがここ数日の最も強い論調である。この事件の米国と中国の反応の差は大変興味深い。

    《激昂から冷静に》

    スノーデン事件が暴露された当初、米国民は政府に対し強烈な道徳的な反発が起きた。1971年、NYタイムズのペンタゴン機密文件事件 (*爺注;ベトナム戦争泥沼化の原因を暴露)で有名なダニエル・エルスバーグが立ち上がり、スノーデンは民主体制のために計り知れない巨大な貢献をしたとして、英雄だといい多くの人々が賛同した。ワシントンポストは6月11日、米国政府の大規模監視プロジェクトの暴露に関わったフリーのドキュメンタリー映画監督Laura Poitrasの談話を伝えた。それは「我々は秘密の法廷で秘密の法律に対して、秘密の解釈を下しているが、これは間違っている。これでどんな民主が達成されるというのか?」「これでは秘密の規定が有権者の目を覆い、法律の主人ではなく法の袋にとじこめられ政府機関と官僚が責任を追及される怖れが無いままにし放題となって、憲政を有名無実のものにしてしまう」と述べた。

    幸いな事にネット時代は誰でも皆自分の観点を表明することができる。ワシントンポストのの報道に対して、Richard・Burger(爺注;TVタレント)は「スノーデン・国家安全局と英雄主義と中国」と題してこの事件に驚いた様子をみせている米国人を皮肉った。「映画でも、本でも国家安全局がネットやメールをチェックして、膨大なデータを集めているなんてことは誰でもとっくに言ってるし、それはアメリカ人が2001年10月26日に『愛国者法案』(US Patriot Act)にサインしてその権利を情報機関に与えたからだ」、と指摘したのだ。そして、スノーデンが暴露したネット監視の話は、別に違法な活動ではなく、スノーデン自身の観念に合わなかったにすぎないと。そして自分は「スノーデンの行為は犯罪であり、彼を刑務所に送るべきだ」とのべたのだった。

    冷静になった米国人はやっと、9.11事件発生後、ブッシュ大統領が2001年10月26日に「愛国者法案」にサインし情報機関に米国人の安全のために、裁判所の許可無く監視行為を行えるようになったことを思いあたった。だから、これは政府の道徳的な問題なのではなく、米行国家安全局の監視は関連法規に違反するかしないか、という問題なのだと。かくして米国人の討論は「個人の自由、市民のプライバシーと国家安全の3つはどうバランスをとるべきか」「愛国」と「売国」の境界をいかに設定するか、ということになった。

    《必要悪?》

    スノーデンの指摘した主な2つの点は;

    (1)米国は中国にネット攻撃をしかけ他国の情報を盗んだ。

    (2)米国政府は秘密に建造した巨大監視装置でプライバシーを侵害し、インターネットの自由と世界の人民の基本的自由を侵害した、
    という事だ。

    第一の点は中国政府に極めて有利である。というのは北京はこれで中国が米国のネット攻撃の被害者であるとして、米国が「中国側のハッカー攻撃」を責めるのを逆に反撃できた。世界各国のうち、ドイツの首相はオバマ政権とこの問題で話し合うとし、ロシアのプーチンはこの話はとっくに承知していた、としてネット監視計画は各国にあり、必要な事は監視が法律を守って行われているかどうか、だと述べた。他所の国にスパイを放つというのはどこの国でもやっていることだ。勝負はその中味の実力次第。核戦争冷戦時代各国がそれぞれ活動の限界ぎりぎりで、お互いに”ルール”を尊重しあってやりあっていたが、現代のネット戦争ではそんなことはない。オバマが習近平との会談で持ち出したのは実はこの問題なのであった。

    スノーデンの第二の問題であるいわゆる”秘密監視”だが、私は大量の資料を調べてわかったのだが、この種の監視は別に秘密の操作ではない。2008年に米国は「外国情報監視補助法案」の要求によって、米国司法省、国防省、CIA、国家安全局と国家情報委員会の検察官達が連合して「President’s Surveillance Program,简称PSP)報告番号2009-0013-ASで公開されている。(www.fas.org/irp/eprint/psp.pdf を参照)

    この報告は米国市民に対して911テロ後、米国大統領の指導下で、国家安全局がその情報収集能力を拡大し米国国境内でテロ攻撃を防止する為に(アルカイダメンバーがかかわるとみられる)米国との間を往来する通信活動の内容を含む新たな情報活動をする権限を与える、と。この報告はPSP法案がテロ活動において果たす役割を紹介し、この計画に対する異なった見方や、合法性の評価などがふくまれている。この文書の存在はスノーデンやLaura Poitrasの批判が的を得ないものであることを示している。米国政府はこう答えるべきだった。「現在の監視は法的根拠があるか、濫用か否か?」。米国情報機関が6月15日に発表した最近の機密解除文書は上記の問題に答えようとしたものだ。私は米国の法治を信じており、残る問題は米国人が法によって解決するとおもう。

    スノーデンの「監視は米国人民の自由を審判する」という説は、彼が政治学の知識がほとんどゼロに近いことを示している。無政府主義者でないかぎり、様々な政治学の学派でもすべて「政府には必要悪というのが必ず存在する」ということは認めているのである。民主制度は人民と政府の間に結ばれた一種の契約関係であり、契約関係の中で民衆は個人の権利のある部分を国家に譲渡し、国家は市民の安全と福祉を守る責任を負う。軍警察情報機構は一種の必要な国家安全の装置である。マルクスは民主主義国家の軍隊を「人民を抑圧する暴力装置」とよんだ。しかし、そのマルクス主義理論が樹立した社会主義国家の暴力装置の残忍さは遥かに、マルクスが批判した資本主義国家を越えている。

    《北京の”スノーデン・カード》

    北京はいままでのところ”スノーデンカード”に十分満足している。スノーデンの非難によってハッカーが犠牲者になり、米国の道徳的正当性を泥沼にひっぱりこんだのだから。環球時報は時を逸さず「自由と人権は米国が対外道徳戦争につかう2刀流の匕首で、特に中国を突き刺すのに使って来た」。「米国の真実と虚偽の一面をはっきり見て馬鹿やお人好しにもならないようにすべきだ」と。中国内のネットではスノーデンを英雄として賛美する以外に、あっというまに出た結論が「天下のカラスはみな黒い(どうせ皆悪者)米国は民主主義ってうそばっか」。つまり民主と自由は追求に値せず、自分達中国の制度がいい、という意味。

    しかし、この「切り札」をこれ以上切り続けるのは難しいだろう。まずスノーデンが北京管理下の香港に逃げたことは誰が見ても背後になにかいわくがありそうだ、と感じる。Bloombergニュースによると米国の防諜部門では現在、スノーデンが中国に利用されていないか、個人の財政状況、女性関係などを調査している。米国下院の情報委員会マイク・ロジャース委員長は「動機、関係者、何処に最後に行くのか、なぜそこに留まるのか、生活はどうするのか、中国がかかわっているのかなど全てを知る必要が有る」と述べている。北京がさらにこの戦いを続けようとするなら、中国との関連問題はさておき、FBI、CIAが中国高官と家族の在米資産と他の外国の財政状況をちょっと暴露するとかになれば中国政府はどう対処する?

    更に重要なのは、もし中国がさらにこの論議をすすめるならば、中国大衆も段々、米国政府の監視目的は公共の安全の必要からでており、北京の監視は中共政権のためにやっているのと違うということに気がつきかねない。米国は大規模な殺人殺傷事件をおこすテロ分子に打撃をあたえるために情報監視し、中国が打撃を加えているのは主に政権に異議をとなえる人達なんだ、と。

    英国のフィナンシャルタイムズのコラムニスト・Gideon Rachmanは6月14日、「西側政府がネット監視戦争で勝利へ」の一文では、スノーデン達がネット時代にプライバシー問題で米国と西側政府に挑戦状をたたきつけたが、西側政府の安全保障機関が大量の情報を集めていたというだけでなく、それをおおいに濫用していた事を証明しないかぎり、この論争は西側政府の勝利に終わるだろう、と述べた。

    スノーデンの行く末はこれからの米中のレスリングで決まるだろう。ただ願わくば、この事件の余波が中国の「米国民主は嘘っぱち」といった人間動物園レベルからぬけだして、民主憲政を深く認識する方向にいってほしい。(終)

    拙訳御免。
    原文は www.bbc.co.uk/zhongwen/simp/focus_on_china/2013/06/130617_cr_snowden.shtml

    何清漣女史のこれまでのブログの主な日本語訳は heqinglian.net/japanese/ で読めます。

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