• スノーデン事件 ネット冷戦の意外な序曲

    by  • June 26, 2013 • 日文文章 • 0 Comments

    何清漣氏@HeQinglian

    《中国人权双周刊》第107期   2013年6月14日—6月27日

    日本語全文概\Minya_J Takeuchi Jun

    http://twishort.com/Ww2dc

    2013.6.26

    2013年6月に発生したスノーデン事件は米国情報部門の歴史で最大の馬鹿げた完全なる敗北だったと言える。その最大の意義は中米露3国の得失ではなく、米国人の一部が騒いでいるプライバシーと国家の問題でもない。それは世界がもう一度インターネットの働きを認識しなおすこと。つまり1人のITエンジニアが一国家の安全システムをひっくり返す事が可能だということだ。かってのスパイ戦に較べれば主役から退場までがびっくり仰天の連続であった。

    《ネット時代、国家の安全は紙の如し》

    まずNSA(アメリカ国家安全保障局 )が内部的にこれを防止できなかったことに皆驚いた。米国はインターネットの父、ともいえ今に至るまで技術的には高度である。しかし、スノーデン事件は米国のネット時代の安全防御能力は大変脆弱なものだ、ということを明らかにし、NSAの外部企業でわずか一ヶ月しか働いていない人間が、役に立つ情報を自由にコピーし悠々と「戦略的ライバル」国家に自由に持ち込んでしまった。NSA高官によると、スノーデンが持ち出したNSAの全資料は米国に巨大な損害を与えるもので、もしこの身分も高くない契約社員が(コンサル会社ブーズ・アレン・ハミルトンはこの点を強調している)が米国情報史上稀に見る無茶苦茶な完敗をもたらすなら、米国諜報部門の管理は、ただのビジネス企業の機密管理にも及ばない弛んだものだったということになる。

    実際、米国情報機関は被雇用者の忠誠心の問題に直面している。ネット時代の安全管理はネット以前のそれとは違った新しい問題だ。たとえばトップクラスの管理者と専門の技術員の間には知識のギャップが存在する。高級管理者の多くは45歳から50数歳でIT技術に対しては専門職員に遥かに及ばないから、技術的な管理ではただ技術者におんぶにだっこ、これが管理を難しくさせているわけだが、この問題はなにも米国ばかりでなく世界中でおきている。

    だが、他の国家はスノーデンのように最初から情報を集めて世界に漏洩させようという目的で入社して(香港の「南華早報」による)、彼に対する安全資格審査に関わった機関が粗忽きわまるものであった、という問題は抱えていない。この点からみると、管理が現状のままならば、第二、第三のスノーデンが相次いで起きる事は決して不可能ではない。これは、米国はネットのハード面では素晴らしい機材を作り出せても、内部の人間に簡単に逆用されてしまうが、事前に一体その人物がその剣の先をどちらに向けるかは知る術が無い、という大問題をつくりだしてしまうのだ。

    米国はずっとこの新伝達手段であるインターネットは専制政治を瓦解させる武器という見方をしてきた。2009年にイラン大統領選挙で抗議する側がツィッターを組織して街頭抗議を行ってから、「ツィッター革命」の幻想は米国政府と人権組織を「ネットの革命力」として過大に考えて来た。ところが今回のス事件は国家の安全の最大の脅威になりうるというこの利剣の別の面をみせつけた。もちろんこの働きは特定の国家に対してだけではなく、全ての国家にあてはまる。ネット依存が高い国家程、国家の安全度は脆弱になる、ということだ。

    《スノーデンは米の戦略を失敗させた》

    スノーデンの政治的無知と軽率な行動は、米行の国家安全局の長年にわたるネット監視システムを高度な危機に陥れただけでなく、今後、米、中、ロシアがネット冷戦に突入する危険も生み出した。スノーデンは21世紀のネット戦で「自由への道」の茶番劇を演じた。米国の公共の安全に必要な情報収集行為をオーウェルの「1984年」の監視支配者たるビッグブラザーと為し、却ってホンモノの「ビッグブラザー」ともいえる中国のフトコロに飛び込み、自由の無い国で自由を求め、人権が扼殺されている国での人権保護を得ようとした。

    香港(=北京)と他と共同で作った逃亡ルートは更に滑稽だ。北京の支配下にある香港から、ロシア、キューバ、ベネズエラ、エクアドルと。これらの国家は人権だろうが自由だろうがすべて世界のリストでは下の方にある国家だ。スノーデンは自分は「世界の人民の自由」と称したが、彼に庇護を与えようという国々はすべて人権面では芳しく無い国家だった。

    これらの国家はスノーデンを利用して、米国の人権方面の道義イメージを泥沼にひきずりこんで、そのうえを足で踏みつけようとした。この事件で、未来の国際ネット冷戦の3大主役はみな登場した。スノーデン自身の命運はもはや世界にとって大して重要ではない。というのは彼はすでにその使命を終えたのだ。彼は

    ⑴ 米国政府はいま、自分達が作った膨大な監視装置でプライバシーを侵害して、インターネットの世界各地の人民の基本的自由を侵し、

    ⑵に米国は中国をネット攻撃して秘密を窃取している、と言明した。

    この2点は米国を道徳的な高みからひきずりおろして、米国のソフトパワーに大損害を与えた。この冷戦序曲で米国の機密が大量に漏洩した事はまさに米国政府高官が認めざるを得なかった様に、米国と同盟国に巨大な損失を与えた。

    中国は大変上手にこのスノーデン事件を利用した。習近平・オバマ会談で米国が61000回も世界各国を盗聴攻撃していたことが暴露されて、攻撃をうけた中国こそ、最大の被害者だと証明できたしスイス銀行機密保護法がスイスの下院で討議されているときに、CIAが汚い手でスイス銀行家をスパイにする工作を暴露して、法の修正を拒絶させ、長年の欧米の独裁者の金庫に対するこれまでの努力を水泡に帰せしめた。スノーデンが暴露した2009年のG20におけるロンドンサミットで参加者の電話を盗聴したことは、丁度また八カ国サミットの初日だったという偶然は大変疑わしいものであった。

    《インターネット戦争三国志》

    今の世界ではインターネット強国は米国、ロシア、中国である。その戦争での力は技術だけではなく、指揮系統と組織系統の効率と厳密さにある。たまたまこの点では米国は技術で優勢だが、他の点では相対的に弱い立場である。

    ❶ 米国の情報組織のシステムは成員に対するコントロール力が弱い。米国はウィキリークス事件にはじまり、Bradley Manningとスノーデンが相次いだことで、民主国家は人間のコントロールで専制国家に及ばないことを明らかな事実としてみせつけた。専制国家は人間を道具としてみるし、道具は独立した思想等無い。組織構成の点でいえばロシアと中国はもっと効率的に工作要員をコントロールできる。

    ❷ に米国はネット戦争を実施するならば、必ず厳格な法的制限を受け、人道や倫理などに縛られるが、中国とロシアはその種の考慮は必要とせず、最大限の打撃を相手に与えることだけ考えれば良い。2009年の米国全国研究委員会報告はこの弱点を十分に理解していた。たとえば、ネット戦争に参加する人員がネット戦を理解していないことや、ネット戦争実施に相当する法的保証が欠けていること。法律と倫理の方面でも防御に関しては合理的な法的出発点があっても攻撃にたいして反撃するには相当する法律がないことなど。この報告は公開されていて、中国、ロシアなどが分析評価できるわけだが、中国、ロシアの自国のネット能力の評価報告は公開などされていない。

    ❸ ネット戦争を支持する世論の上でも米国は劣勢だ。まず米国国内世論ではネット監視は法律的には合法で、監視状況も一般に公開されている。2001年の「愛国者法案」や2009年7月の「President’s Surveillance Program,PSP」のように。しかしテロ攻撃が自分の身に降り掛かって来ない時、米国民の間には多くの反テロ活動への監視に不満の声がある。NYタイムズなど左派系の大新聞などが沢山これを批判している。 さらに人々の長年形成された「先入観や心理状態(思い込み)」は世界の世論を米国に対しては特に厳しく、同じ事が米国で起こると厳しく批判を受ける傾向がある。それに大して中国やロシアはそうではない。

    例えばこの3つの国は全部、国内を監視しているわけだが、その中で米国の監視体制がもっとも公民の人権という要素を考慮している。中国はまったく考慮しておらず、その目的は一党専政の維持にあり、異議分子を監視しているのだ。しかし、米国の監視は自国の国民から反対されているだけでなく、その正当性は内部の技術員、スノーデンのような政治的に無知な青年に疑われ、反逆される。スノーデン事件以後、中国こそが真の「ビッグブラザー」だということが忘れられて、米国が一身に非難を受けている。

    このままいけば、すでに始まっているネット冷戦で米国は必ずしも勝利を得る事はできない。当然、米国が敗北を重ねたとしても、領土などの面では大した問題にならないが、世界の大きな構造的枠組みは変化するだろう。

    中共が現在、国内の多くの問題を抱えており、習近平が必ずしもネット冷戦をエスカレートさせようとはしていないのは幸いであろう。ロシアも国内に批判があるばかりか、国際エネルギー価格が下降しており経済の先行きが怪しいので好戦的ではない。かくて、今回のネット冷戦の序曲の中では、中国もロシアも「節度をたもった大儲け」で好結果にホクホクと鉾を収め、米国だけが面子をぶちこわされて、さらに散らかったゴミの山を処理しなければならないのであった。(終)

    拙訳御免。
    原文は;biweekly.hrichina.org/article/8498
    何清漣氏のこれまでの評論の日本語版はここ;heqinglian.net/japanese/

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