• 金持ちマルクス主義者と貧乏マルクス主義者の利益の裂溝

    by  • July 26, 2014 • 日文文章 • 1 Comment

    何清漣

    2014年7月24日

    全文日本語概訳/Minya_J Takeuchi Jun

    http://twishort.com/LKSfc

    ここ1、2年の中国政治をウォッチしていると大いに研究に値する現象があります。つまりエリート層と底辺層の政治的亀裂が深刻に拡大していることです。中共政権トップが官僚汚職撲滅と18回大会後の権力闘争に追われ、中産階級の民主憲政要求には人々を「世間を騒がせた」罪で牢屋に放り込んで厳しい態度をとっているのですが、これに対して地方政府の官僚達は汚職撲滅の圧力を当面やりすごそうと事なかれ主義に徹していますので農村地区に対する締め付けがいささかゆるんできています。それによって底辺層政治においてポピュリズムが台頭してきました。

    陕西地区の靖辺地区に出現した「土豪を打倒し田畑を分けよう」という事案はこのような状況の下で生まれました。多くの論者が喝采を送ってますが、はたしてこれが中国が必要としている今後の方向につながるものかどうかを分析してみましょう。

    《底辺政治のポピュリズムの勢い》

    6月1日、陕西・靖辺県の84戸400人以上の農民が自ら「土地分配工作隊」を組織し他の村と土地使用権で争っている70ムー(1ムーは1/15ヘクタール=666.667m2)を測量し自分達で分け合ってしまいました。参加した村民達は自分達の行動を「土豪を倒し田地を分けた」と称しています。言い分は2点あって、ひとつはこの土地は1979年に一括請負にだされてから帰属権をめぐって争いがあり現在、西峁組に帰属しているが本来は東邦組や前溝組など4つのグループ所有である。二つにはこの70ムーのある1314ムーの林は西峁村の王治忠が一括請負しており、王治忠は権力があるのだから皆でこの「土豪」をやっつけたのだ、と。

    記者の調査した事実の来歴では、この土地は20世紀の50年代から二度分けられて二度統合されています。いまの帰属は1963年に確定したもので西峁のものになっています。王治忠の父、王建国は1979年に口約束で西溝村グループから千ムーの荒れ地を一括請負し、1984年に王建国、郝耀军ら7人が西峁組と協定を結び、この荒れ地を一括請け負いました。資金・尽力を投入して土地は現在のような林地になりました。

    2008年以前は地元農民たちもこれに対して全く文句はありませんでしたが、2008年になって靖辺県工業団地が楊虎台村の土地収用にかかるとこれまで一文にもならなかった荒れ地が急に大枚の補償金がはいることになり村民達はその補償金の分け前目当てにこの荒れ地の所有権をめぐって争いを始めました。(詳しくは「土地争いが陕西北部の四百農民の私的分配を招く」中国新聞ネット2014年6月22日 http://news.163.com/14/0622/02/9VAF9U3R00014AED.html

    王治忠の父親がこの土地を一括請負したときは普通の農民でした。それが「力のある土豪」になったのはその一括請負の後のことです。現地政府が土地争い問題と判定したのは契約関係の事実からです。この種の話は中国の農村ではゴロゴロあります。荒れ地を請負にだすときはまったく値打ちがなく、永年の努力と資金投入の結果経営が軌道にのり収穫時期を迎えると現地の農民が契約変更を求め分配のしなおしを要求するといった騒ぎは実に多く、2009年政府はこの種の問題の法的根拠になるようにと「調停仲裁法」をだしました。

    《政府と底辺層の土地ゲーム》

    中国の経済改革は実は資源の再分配をめぐって展開してきて、資源の(*乱掘、収奪などによる)”赤字”が発展を支えるモデルでした。今や全国で出現した資源の枯渇と広大な環境汚染、そして残された最もカネになる資源が土地で、それをめぐって政府も民間もその『打ち出の小槌』に熱い視線を送っています。2008年から2013年に全国の公共財政収入は61330.35億元から129143億元と倍増し土地収入は2008年の10375億元から2013年の41250億元に3倍増です。

    政府は資源を支配する絶対的権限で土地を強制収容し、全国的に市、鎮、村の三級地方政府が共謀して農民の土地を奪うのは至る所に見られる現象で、全国で発生した20万の集団抗議事件の3割以上をしめます。各種の土地争いともなればもっと多く、その中で陕西靖辺の集団対個人、村級組織対個人、個人同士の争いがあります。「農村土地請負紛争事件精選」という本には各種の事案例が紹介されています。

    土地紛争がかくも頻繁におきる根源的な理由は中国の農村の土地集団所有制によって所有権が「あってないような状態」である事が原因です。この状態は政府にとっては農民の土地をとりあげるのに都合がいいですし農民にとっても「集団所有」という名目で他人の財産をうかがい隙あらば契約を軽視してうまいことやるチャンスなのです。

    土地収用が引き起こした官民衝突や農村で頻発する土地紛争の根本的な解決は土地の私有化です。所謂農村の社区再建などは、私有化問題を解決してから、よってたつ制度ができてからあらためて論じればいいのです。今の政府がやろうとしている「*新市街化政策」は財政上の必要からだけしかみていない近視的な政策です。(*何清漣氏の「新市街化計画」についての論考は→「新開地化計画の巨額資金は何処から来る?」http://urx.nu/aqOj 「就職口の無い新市街化計画は流民を生み出すー”新市街化”の問題点2」http://urx.nu/aqOu 「新市街化の問題点ー中国に貧民窟はない、の虚栄の陰にー”新市街化”の問題点3」http://urx.nu/aqOz

    就職が大変困難で失地農民は実質上の流民となるしかないわけで、流民社会は毛沢東の「土豪を倒し、田を分ける」にあたっては社会的基礎となりましたが、憲政法制国家の基礎ではありません。

    習近平時代になって中共上層部の分裂が深刻になりやむを得ず各種のやりかたで権力を集中させ、一方、民主主義への恐怖から一切の社会階級の政治参加を拒絶しています。ですから限られた政治参加(建言、提案など)も多くは茶坊主のようなものばかりで、中産階級の政治参加はもともとネット言論に限られていたのがさらに弾圧されて言論空間も日増しに縮小させられています。

    ”新市街化計画”(新城镇化)を主要な内容とする『経済改革』は底辺層の流民化をさらに加速します。共産主義政治はもともと胎内から『理想病』にかかっており、「搾取者を搾取せよ」と有産階級を消滅させます。しかし、その現実病はかえって三つの独占(権力、資源、真理)によって必然的に新たな特権階級を生み出します。ソ連共産党もその他のすべての共産国家でも避け得ないことでした。

    中共はかつて経済改革で危機を脱しましたが、共産貴族官僚集団が権力とカネを利用してまた新たな危機をうみだしました。現在中国社会の最深層の矛盾は実は「富めるマルクス主義者」(統治集団)と貧しいマルクス主義者(社会底辺層)の矛盾です。

    富めるマルクス主義者はイデオロギーにしがみつく理由はまず政治的合法性、そしてそれ以外に西側の自由主義価値感に抵抗・制御する価値感をもたない事です。どちらも本来の”イデオロギーの純粋性”とは全く無関係なことなのです。

    問題は中共はかってマルクス主義共産主義理論の中国土着化を図ったときに「土豪をやっつけ田地を分配」というスローガンこそ最も人々の心を捉えたものであって、それで底辺層を社会主義革命に動員できたということです。中共が政権を奪取してから後も、イデオロギーは昔の革命党だったときの特徴をひきついでずっとこの種の思想を国民の頭の中に注ぎ込んできました。

    かつての中共の土地革命と土地改革が群衆を動員し教育するのに必要であり、それがあったからこそ彼らが「搾取は罪だ」と認識し、「搾取者を搾取する事は神聖な革命だ」と認識させたとするなら、現在の底辺層はこうした理念をあらためて再注入される必要なく「底辺の人々こそ神聖」「土豪をやっつけ田地分配」「搾取者を搾取する」という考え方はそれこそ小学校から教育を通じて、あるいは映画や文学作品を通じてもうあますところなくしみ込んで思想の一部になっておいます。さらに中国的市場経済」の備えた「中国的特色」によって彼らは理の当然として自分が貧しいのは他人が金持ちになったからだと思っており、とくに欲張り汚職役人が搾取したからだとおもっています。

    「お前等が権力で金持ちになるなら、俺等も暴力で取り返す」というわけです。いま、政治の亀裂の一方では富めるマルクス主義者が銃砲(*軍隊/警察)で自分達の既得権益を守り、もう一方では億で数えるほどの社会底辺層が「自分達の分け前」を取り返そうとしています。

    指導層は自分は人民全体の、後者もふくめての代表だと称して人民の為に家財産の面倒をみているのだ、としています。一方、後者は「その家や財産はもともと俺たちのもので、いまみんな分け前がほしいんだから、そのためには革命をやらにゃならん」といいます。つまり昔の毛沢東が指導した革命をもう一度やるべえ、というようになってきています。こうして中国はすでに制度的な解決の出口がみあたらない状態になっているのです。(終)

    拙速御免。
    原文は;「中国穷富马克思主义者的利益裂沟」 http://biweekly.hrichina.org/article/19560 《中国人权双周刊》第135期    2014年7月11日—7月24日)

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