• 中国はなぜ千元札を出さないのか?

    by  • November 18, 2014 • 日文文章 • 0 Comments

    何清漣

    2014年11月5日

    全文日本語概訳/Minya_J Takeuchi Jun

    http://twishort.com/hcOgc

    中国政府は「経済刺激策をしない」という”約束”を守るために、相次いで「微刺激」とか「緩和に向かう」といった貨幣政策を採っています(*爺注;言い方だけ変えて実は刺激策の意味w)。今年8月には銀行は7000億元の新たな借款を設け、金融官僚は外向けには「中国の通貨政策の方向にはまだ緩和できる余地がある」としましたが、内部の消息通はみな「通貨緩和政策」とは貨幣発行量を増やす、インフレ政策だとわかっています。でも、本当の通貨膨張率がいくらかは外国人には知ることのできない「国家機密」です。人々がわかることは今や百元札などは「お金」というに値しない「小ゼニ」みたいなものです。ところでかつて千元札が出るという話があったのに結局でなかったのはなぜでしょうか?

    《貨幣紙幣造りのコスト》

    古今東西、貨幣鋳造にはコスト計算が欠かせません。印刷の原盤製作といった一回性のコストを除くと、千元札を作るコストは百元を超えることはまずありません。ある人が人民元のコスト計算をしたところ、1元札のコストはその9割でした。100元札なら額面の5%、ざっと5元程度でしょう。小銭のコインはコストが高すぎて多くの国家ではすでに発行をやめています。オランダ、フィンランド、北欧3国、イスラエル、豪州、NZ、仏、西、南ア、スイス、ブラジルなどでは一桁コインはとっくにやめてますし、カナダも1セントコインをやめようとしているそうです。

    この十余年来、中国経済はすでに高度に貨幣化されており、銀行の報告によると中国の貨幣供給量(M2)の残高は13.8兆米ドルで世界第1位の通貨大国です。「中国通貨の深刻な超過発行」(21世紀ネット、2013年1月28日)によると、2009年以来、中国中央銀行の貨幣供給量は日本、米国、ユーロ圏を抜いて、世界最大の「貨幣印刷機」になったといわれます。2012年の前世会の新造貨幣供給量26万人民元のうち、中国発行分は半数近くを占めます。同報告は一人当たり平均収入の差異をならすと中国経済の貨幣化の度合いは全世界でも先頭のほうだといいます。

    中国はどのくらい超過発行してるのでしょうか?参考までに、
    ⑴中国通貨発行速度はGDP増加速度よりはるかに早く、2012年までに中国の10年間のM2増速は平均18%、GDPは9.5%でした。
    ⑵ 2011年末中国のM2とGDP比は1.89倍。
    その結果人民元の購買力は急速に下がり、中国は持続的な高度なインフレ状態が継続し、このような状況のもとで一部専門家は大額面紙幣の発行を検討することによって流通と紙幣印刷のコストを削減することを検討しました。しかしこの話は一瞬で立ち消えし、中国政府は熟慮の結果、高コストで紙幣を発行し続けるほうを選び高額額面の紙幣の新発行にオッケーをだしませんでした。

    その主な理由は心理的要素で、インフレをあからさまにすることによって、民衆心理に恐慌をおこさせたくなかったからです。多くの人々が中国経済は不安定だとおおっぴらに語り、民衆もそう信じていたからです。

    《千元札発行拒否は、インフレ隠し》

    以下、幾つかの要素が中国政府の熟慮の中身です。

    ⑴ 歴史の教訓;国民政府が敗退前夜、俗に「金元券」改革を行い、中共政府はこれが国民政府崩壊の主要な原因だとみてきました。金元券は1948年8月に発行開始され1949年7月に流通停止になり、使用されたのはわずか10か月間程度でしたが、貨幣価値は発行時の2万分の1まで下落しました。国民党政府の宋子文にこの政策を勧めた経済学者の冀朝鼎は実は中共の周恩来直属の高級スパイでした。冀朝鼎は国民政府に対しての工作成功の功績は数年前まではあきらかにされませんでした。しかし毛沢東、周恩来、鄧小平ら高級幹部はみなこれを知っており、インフレに対しては極めて警戒心をもっていたのです。

    周恩来が生きていた頃、外国記者が中国人民銀行がいくら資金を持っているかという質問に答えた態度にこの問題に対する高度な警戒心がみてとれます。周はなんと「18元8角8分」だと答えたものです。これは中国人民銀行が発行している貨幣の種類、すなわち10元、5元、1元、5角、2角、1角、5分、2分、1分札の合計が「18元8角8分」になるという「頓智クイズ」のお手本のような答えです。

    インフレを武器にして敵の国民党を見事にやっつけた体験を持つ中共は当然、高額紙幣の発行問題について極めて慎重なのです。そして、すくなくとも「高額紙幣」ときいただけで民衆の中国経済への信頼をゆるがせかねないのでは、という警戒心をもっているのです。

    ⑵には現実的な考慮からです。百元紙幣の購買力の減少は一貫して中国メディアの話題です。10年前には100元札は本当に「大きなお札」の価値があったのがいまではただの一貨幣単位にすぎなくなったといわれます。「銭江晩報」が「百元の値打ちはいくら?50年前は135斤(1斤=500グラム)の豚肉が買えたのに、いまでは7斤しかかえない」(2012年7月18日)という記事を載せたことがあります。

    この記事では様々なデータが列挙されています。例えば50年代には百元は400kgの米か135斤の豚肉、80年代なら238kgの米、71斤の肉2010年だと百元は20kgの米か7斤の肉、となります。

    年配の人々はみな人民元の価値減少は知っていますが、しかしそれはゆっくりした過程での話です。人間の記憶は結構いい加減なので、こうした記事だってみんながネットで読むなどということはありません。しかし、もし千元札が実際に発行されて、汚職役人には便利でしょうが(*爺;洋服ダンスほど溜め込んで捕まったのが最近もおりましたな。百元札だとああなるw)、でもそれは人々に人民元の価値下落をしょっちゅう思い起こさせることにもなります。特に低賃金サラリーマン層にしてみたら月給一枚の千元札に何枚かのお札だけの給料は嬉しくありません。

    ⑶ 他国の経験。特にソ連とジンバブエのそれ。

    ソ連のルーブルはかって世界でもっとも影響力のある貨幣でした。しかし、1989年にソ連が体外に為替レートを改革してもともとの固定制度から二重為替制度に変更すると発表したときには30年来最大の波紋を呼び起こしました。1990年11月1日、外国為替以上の米ドル対ルーブルの比率は元の1;0.6が1;1.8に跳ね上がりました。1991年12月25日のソ連解体後はルーブルの地位はもはや前とは違って1993年にロシア政府が史上最大のルーブル改革を行い新ルーブルに切り替えた時には大暴落し1ルーブル2ドルだったのが1400ルーブルが1ドルにまでなってしまいました。

    歴史上、いかなる通貨制度の改革もみな不公平な富の再分配を引き起こします。ルーブルの暴落は以前のソ連国民が長年貯めてきたお金や国営企業私有化のなかから得た財産をゴミ同然にしてしまいました。ソ連解体後、国営企業私有化がおこなわれ ソ連市民一人あたりにつき1万ルーブルの私有化券が配られ、国営企業の株を買うことができたのですが、これはみかけは大金のようでもこうした証券の額面は貨幣改革以後、三文の値打ちもないものになってしまったのです。国際的なエネルギー価格が値上がりしてロシアの経済がやっと好転するまでこうした状態でした。中共が長年来、何度も繰り返して強調している「ソ連某国の教訓」といううち、通貨のインフレはその一つなのです。

    ジンバブエの例はさらにひどくて、インフレの最悪の時期には1000億の額面で1米ドルと等価でした。ジンバブエの経済危機は1980年に始まり独立を勝ち得て以来のインフレ率は2.200.200%となり2012年にようやく多少好転しました。2008年までにジンバブエ政府が発行した紙幣は百万、一千万、そして最高額は五億の額面でした。当時、ジンバブエは世界で唯一”億万長者”が飢えている国と言われました。そこではもはや枚数ではなく、秤を使って貨幣がはかられました。こうした貨幣の下落、インフレの暴走は「ジンバブエ化」と言われるようになり、発展途上国としての中国にも教訓となったのです。

    以上述べたすべてが北京が断固として千元札を発行しない要素です。

    しかし、中国の中・上層階級はすでにインフレという事実をとっくに感知していますから、様々な手段で財産の保全を図っています。例えばゴールド投資、骨董や不動産、海外への資産移転です。反応がもっとも鋭敏なのは外国為替市場でここ数年、常に発生している外貨準備だかの高騰下落からも窺えることです。今年の9月に中国は人民元換算の外貨準備高が突然、6000億元以上減ったのは、1000億米ドルの資本が外国に逃げたことに相当します。これは中国はからまた資本が外国に逃げ出す季節がはじまった、ということを意味するのです。(終)

    拙訳御免
    原文は「中国为何不发行千元大钞?」http://www.voachinese.com/content/heqinglian-blog-china-currency-20141103/2506879.html
    何清漣氏の論考の日本語拙訳は;http://heqinglian.net/japanese/

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