• 牛乳投棄;大自然の究極の復讐 

    by  • January 19, 2015 • 日文文章 • 0 Comments

    何清漣

    2015年1月13日

    全文日本語概訳/Minya_J Takeuchi Jun

    http://twishort.com/zvwhc

    最近、中国の中小規模の酪農家が牛乳を捨て、乳牛を屠殺処分する現象が頻発しています。農業部(*省)は止むを得ず緊急制限措置をとらざるを得なくなり、1月8日に声明を出し酪農家の原乳が売れない現象に対して補助すると発表しました。中国の大学の「(*マルクス主義)政治経済学教科書」では80年代にはこうした牛乳の投棄を「資本主義経済の危機が必然的に招く現象」と説明しておりました。では「資本主義の生産過剰の危機」がなぜ「中国的特色の社会主義」、とりわけ「中国の高級牛乳業発展の黄金期」といわれたいま起きたのか?その背景は注目するに値するできごとです。

    《外国の粉ミルクはなぜ中国製を打ち負かす?》

    牛乳投棄はまったく予期せぬ出来事でした。なぜなら2014年は本来「中国乳製品業政策がしっかり地に根を下ろした一年」と言われており、業界の専門家もメディアも国内乳牛業界は黄金期を迎え、この先数年はそうだろう、と言われていたのでした。それが秋になって「厳冬期」を迎え、例えば2013年のキロ6元だった原乳価格が2014年9月には3.9元と急降下、一部の乳業会社は損害が増加し、農家が原乳を売ろうとしても買い取りを拒否しました。それで結局酪農家は牛乳を投棄し乳牛を屠殺するしかなくなったのでした。「悪辣な資本主義の生産過剰現象」がなぜ突然、社会主義の中国で出現したのでしょうか?

    業界内では様々な分析がおこなわれており、結局は原乳価格の下落と輸入乳製品の増加が国内産牛乳が外国産に価格競争で勝なくなった、としています。国内産粉ミルクのコストが外国産に比べ高すぎ、と。例えばニュージーランドの原料価格は大変安く1トンが2.1万から2.2万(*多分「元」?)なのに、中国産だと3.5万以上になると。コストと価格がもともと勝負にならず、中国乳製品企業は国内産の原乳購入を減らしているというのです。

    《中国粉ミルク生産は最初から欠けていた二つの要因》

    中国が開放政策を始めた頃、かつて国際分業の「比較コスト理論」、つまり大量の投資を呼び込み、中国の価格低廉な土地と労働力を利用して相対的に安価さで優位に立ち「世界の工場になる」という成功を十数年の長きにわたって成功させてきました。しかし乳製品に関しては中国はまったくこの「比較コスト理論」を考えずに、自国条件を帰りまず無理やり肥大させようとしてきました。

    2008年に三鹿メラミンミルク赤ん坊被害事件が暴露され、全国的な怒りが巻き起こりました。「人工衛星を飛ばし、ロケットで宇宙にいける我が国になぜまともな粉ミルクが作れないのだ?」と。原因をたどっていくうちに生産業者は原料のミルクに問題があるからだ、とし、一方、原料酪農家は「絶対にズルはしていない。それは餌のせいだ」とし、餌の問題は中国政府が最も言及したくないテーマである土地汚染問題に及びました。王岐山が副総理のとき、2011年に人民代表大会で有名な話があります。「以前は中国人は腹一杯飯を食えなかった。まったくお恥ずかしい。いま、食えるようになったばかりでもう食品問題とは」と。

    食品安全問題は大変複雑で、専門家が指摘する結論は「連中がおれに被害を与えるなら、おれも連中に被害を与えてやる」という相互に危害を加え合う構造で、その過程は大体次の通りです。まず企業自身の責任、たとえば粉ミルクにメラミンを加える、食品に発がん性のあるスーダンレッドなどの着色剤を加えるなど。そして食品の原料が汚染されている。これには二種類あって、第一は生産加工工程のなかでの人による汚染。たとえば、野菜に農薬を使いすぎる、キクラゲの加工に硫酸銅をつかうとか養殖に大量の抗生物質やホルモン剤を与えるなどです。日本に輸出した中国毒入り餃子事件は河北の天洋食品がつかってきた原料に劇薬農薬のメタミドホス残留物が入っていたからでした。第2番目は土地そのものの深刻な汚染が原因のケースです。汚染された土地で育つ農産物は当然汚染され発がん物質を含みます。

    現在、中国はカドミウム、ヒ素、クロム、鉛などの重金属汚染された耕地面積が三億ムーにのぼり、高知総面積の20%になります。この種の土地からとれた農産物は各種の発がん物質を含んでいる可能性があります。多くの乳牛はうまれたときからこうした各種の原因で汚染された飼料で育てられます。合格する牛乳がだせるすべもありません。ネッスルなどの外国ブランドも中国の地元原料を使っているので、その源は中国製造と似たようなものでやはり質的な問題を抱えています。本来なら酪農の天国になるはずのモンゴル草原もとっくに放牧過度で深刻な砂漠退化現象がおきており、その面積は3867万haにのぼり、利用可能草原の6割以上です。オルドス草原の砂漠退化面積はさらに高く68%以上になっています。こんな汚染された土地で人間が栽培した牧草で育てる酪農業界は最初から外国と競争するには条件が悪すぎるのです。

    《中国乳業は最初から「阿斗」(*劉備の息子、助け甲斐のないダメ野郎)なのよ》

    2008年9月にメラミン事件が爆発して中国乳業製品はのきなみ大打撃を受けました。しかし中国政府はほとんど真剣に国産乳業問題を反省する姿勢をみせず、逆に国産乳業の大々的な支援政策をとりました。2月後に、国家発展改革委など13部門が「乳業整頓と進行計画要項」を出して、乳製品の生産企業に金融と財政政策で支援しするとともに、乳業基地建設の援助政策も決めました。この後毎年国産乳業支援の政策が出され全国の乳業の情勢に重大な転機が訪れました。専門家によると2000年から20013年まで、三鹿メラミンミルク事件がおきた2008年を転換点として、中国の乳製品類総生産は1000万、2000万、3000万トンと大台を更新し続け小規模乳業は淘汰され、分散型から集中型の大規模な産業に変化して行ったのでした。

    市場の粉ミルクに向けられた消費者の疑念に対しては、中国政府は国産品の質に対するチェックを強化しただけでなく大々的に外国産に対する質の問題を取り上げ、2008年にはミードジョンソンの製品からメラミンを検出し、2009年にはDumex製品にも疑いがあるとし、2011年にFriso、Abbott、Dumex、2013年にはニュージーランドの乳製品に’ボツリヌス菌”が見つかった事件などなどを問題とし、どの事件も外国企業が巨額の罰金を支払い、汚名を被りました。2013年には政府が300億元もの乳業振興再編成計画に、党機関紙の人民日報と 中央テレビまで乗り出して、「レッテルだけの外国粉ミルクはなぜ流行?」といった記事、番組を発表して、「現在マーケットで売られている100以上の舶来粉ミルクの8割は国内企業がレッテルだけ借りて生産している」と報道しました。「企業は5100元払えばニユージーランド企業のレッテルを貼れるし、1万ちょっと払えば原産地がニュージーランドだというレッテルも貼れる。こうしたレッテルだけの舶来ミルクは火事場泥棒みたいなもんで質は保証なし」とも。

    外国粉ミルクメーカーへの重い罰金とその信用を傷つけるという両面攻撃によって、中国乳業は2014年の「黄金発展期」を迎えることができました。同年7月、伊利は世界10位以内に入りましたし、アジアではトップに立ち中国のメディアは「中国は全世界の乳業業界の地図を書き換えるだろう」と誇らしげに書きました。問題は、政府はコストを度外視して自国産業にテコ入れすることができても、自国民の消費者の国内粉ミルクに対する心配をなくしてしまう力はない、ということです。国産品は安く売られていても外国製品と競争する力はないのです。外国製品の醜聞が暴露されてもやはり中国では外国産のほうが歓迎されているのです。

    そして国内で販売されている外国製品に疑いの目を向ける中国人は、本物の外国製品を世界中で買いあさりはじめ、最終的には世界の粉ミルクをさがしもとめるという連鎖ができ、外国では販売制限が課せられる始末です。政治のトップ層とその家族の食品安全のために中国では食料品の特別提供制度があります。その連中の飲む安全なミルクのために中国は大量の牛の飼料の牧草を海外から輸入しています。例えば米国のカリフォルニア州からムラサキウマゴヤシを輸入していますが、この牧草は大量の水を必要とするために、日照りがつづくと現地では中国に輸出することにたいして反対する激しい論争がもちあがっています。

    以上述べてきたように、中国の酪農はもっか苦境にありますが、その原因は大自然の最終的な復讐なのです。ひとつには中国の環境汚染の深刻さ、とくに土壌と水の汚染が最終的には牧草に至り、そこから粉ミルクの安全が損なわれています。二つ目は草原の深刻な砂漠化で、それが中国で牛を飼うコストが高すぎるようになってしまいました。生産コストは政府が補助金を出せば一定期間は競争できるようにすることができましょう。しかしいつまでも続けることはできません。 いわゆる粉ミルクの安全性の問題はさらに消費者の信用に影響します。市場占有率がいつまでつづくかはまったく保証できません。この種の政府が無理をして育てた業界というのは競争力に欠けるのです。ですから、今後の中国の乳産業の発展はやはり市場の主導に任せたほうが一番よろしいのです。(終)

    拙訳御免。
    何清漣氏の原文は;奶农倒奶:大自然的终极报复 http://www.voachinese.com/content/heqinglian-20150111/2593679.html
    何清漣氏のこれまでの論考日本語訳は;http://heqinglian.net/japanese/

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