• 人民日報の指す「鉄帽子王」は誰? 

    by  • January 19, 2015 • 日文文章 • 0 Comments

    何清漣

    2015年1月17日

    全文日本語概訳/Minya_J Takeuchi Jun

    http://twishort.com/tZyhc

    「人民日報」の1月15日、16日と連続して発表された論説委員の文章は、まず習近平の進める反腐敗政策には「鉄帽子王(*後述)など存在せず」と述べそして「腐敗問題と政治問題は相互に密接に関係し、わが党の指導と党の団結統一に深刻な危害を与えている」としました。鳳凰ネットも思わせぶりに「今年の腐敗摘発の対象の大虎は去年より低くない」と述べました。そこで「では、人民日報が指す、『鉄帽子王』というのは誰のことなのか、ということが問題になってきます。

    《鉄帽子王と伝説の「赤い免罪符」》

    中国のこの二年間の反腐敗の摘発のやり方を「人民日報」(*中共機関紙)の特殊な政治的地位からして、そこから流れてくる消息は決して軽んじてはならないので、私はこれを「”風”向き先導型」と呼んでいます。いわゆる「赤い免罪符」というのは巷間に言われる「中央政治局に入れば死刑にならず、常務委員になれば罪は問われない」ということです。しかし、周永康事件で後者のルールは破られました。ですから人民日報は「鉄帽子王」という四文字を使ったのです。

    この呼称は清朝の封建時代の爵位制度から借用した用語です。清の皇族の爵位継承方式は二種類ありました。 ひとつは子孫が親の爵位を継承するにあたっては一レベル位階が下がるのを通例としていました。ただこれとは別にそのひとの功労への報酬として子がそのままの地位を引き継げた場合もありました。清代には全部で12人の諸王の後継者が地位を減じられませんでした。これは皇帝からの恩賜酬功であり、これを「鉄帽子王」と呼んだのでした。このうち8人は清朝開国のはじめにたてた功労ある皇帝の親戚にあたり、他の4人は中後期の皇室の権力闘争の中で手柄を立てたことによります。

    人民日報のいう「鉄帽子王」を考えてみると該当するのは江沢民、胡錦濤の中共総書記経験者と、三人の総理経験者である李鵬、朱鎔基、温家宝に元常務委員で太子党の若頭格だった曽慶紅らが浮かびます。しかし、「腐敗問題と政治問題は相互に密接に関係し、わが党の指導と党の団結統一に深刻な危害を与えている」という言い方からこの罪状にあたりうるとすれば江沢民、曽慶紅の二人だけがあてはまりそうです。

    《「風向きの噂先導型」の反腐敗パターン》

    中国でこの二年みられる「噂を先に風として流す」やり方は毛沢東がかつて愛用した「風を吹かせる」やり方の精髄です。毛は誰かをやっつけたいとおもったとき、まず小さなグループの中で「”風”小会議」を開き文書で誰をやっつけるか知らせると同時にそれをどうやるかについての戦略をきめました。ですから、人民日報論説委員の文の社説に次ぐ、しかし普通の論説ではないものはこれは風を吹かせた後の動員ラッパなのです。

    王岐山の創った「噂先行方式による反腐敗モデル」のやり方はネット民の間では「六歩曲」とよばれ、まずうわさがばらまかれ、家族、親戚が槍玉にあがり、文章や会見で言い訳させ、つぎに政府が公にして、大陸メディアの示唆で香港や外国メディアが取り上げ、政府が財産や地位を剥奪し、地位も名誉も失う、となります。特に最初の第一段階の「噂をばらまく」はその後に続く5ステップに比べて、その深きこと兵法に型なく水の如し、です。

    この「噂風を吹かせる」にはよく二つの部分があって、ひとつには外国メディアに流して「風」を吹かせることで責任媒体は回り持ちで今日はどこそこ、あすはあそこに、という具合。二つ目は違ったレベルの指導者談話で虚実取り混ぜた噂を流して、疑心暗鬼を起こさせるものです。そして最後にはそのある談話部分は跡形もなく消えてしまうのです。例えば中央規律委副書記の楊暁于が2014年の5.26談話で「調査の重点は18大会後に「まだ悔い改めないで現在重要な地位にいるか、もっと抜擢されそうな者であって、それ以前の大物の罪は問わない」みたいなことを言っていましたが、今からみるとこれは該当者を油断させるための嘘話のようです。別の一面では例えば習近平や王岐山が直接会見で述べた各種の談話で、彼らが決めていた反腐敗目標は最後には基本的に十把一絡げにマスメディアの饗宴に供するようなものです。

    《”政治問題”を持ち出し…山を叩いて虎を震え上がらせる》

    薄熙来事件の初期、温家宝は確かに「路線闘争」というレベルで問題にしようとしましたが、しかし党内には少なからぬ反対意見があり、連座する者が多くなりすぎるとやばいというので「汚職腐敗」だけ限定して「家族の責任は問わない」とし”政治問題”という用語は使われませんでした。しかし、周の事件では違います。「国家機密漏洩」という言葉で世界の耳目を集めたばかりか最近では周の量刑まで論議されますし、周、薄熙来、が共謀したという『ひと騒ぎする話』にまで及んで世間を仰天させました。1月12日の人民日報系の「中国経済週刊」では周永康は死刑か死刑執行猶予の可能性があると分析。中共対外宣伝室のメディアである鳳凰ネットは周永康が薄熙来と「ひと騒ぎをやる」密談をトップ記事にしました。(《凤凰周刊》2015年第2期(总第531期)これは初めて周永康がかつて重慶で薄熙来と密談したということを明らかにしたものです。

    「話の中身は徹底的に鄧小平の改革開放路線を否定し両人はさらに毛沢東が晩年に提起した中国社会の主要矛盾は依然として無産階級と資産階級の社会主義の道と資本主義の道の矛盾である、といったことは今でも正しく、鄧小平の改革開放路線は調整されなければならない…周と薄の政治的立場と価値観はぴったり一致して「いっちょうでかいことをやるか」と。さらにこの記事は昨年69歳の周永康は「政治局常務委員が二期以上連任してはならない」(7下8上=満68歳で退職し、67歳以下の政治局員は昇任できる)の退職制度に違反して仲間を募り、背後で暗躍して留任しようともくろみ、全国人大委員長の座を狙い、ある種の勢力の裏の支配者になろうとした。同氏に周永康は懸命に自筆の手紙を書きまくり、党内に極めて大きな反発を生んだ」と。

    「路線闘争」という4文字は中共においては小さな問題ではありません。この罪名は罪の大小、やそれにかかわる人数がどれぐらいになるか、を決定します。もし周永康に「継続留任を狙って背後操縦を企図する密謀」なら「反逆をたくらむ」大罪です。

    《今年、2015年の反腐敗の三つの観点》

    「人民日報」や「鳳凰ネット」が相次いではなった「メッセージ」をみて、また最近の中国メディアの対外宣伝メデイァが放つ各種の情報から考えると習近平は最近、三つの大きな仕事をやってのけました。まず反腐敗を通じて軍部と国家安全部の系統という難しい相手の「硬い骨」を断固として噛み砕き、次に紅色貴族中の「官二代目」には「山を叩いて、虎を震え上がらせる」計で 自らの家族を率先垂範してビジネス界から身を引かせ、模範を示しました。三つ目は国家級大物の周永康事件の性質を「反逆を図った」という色合いに塗りつぶしたのでした。

    では、今年の反腐敗運動はどう進めていくのでしょうか?鳳凰ネット1月16日評論で「新たな老虎は去年より格下ということはない」というのはどうも「演目の予告」のようです。

    1;反腐敗には「鉄帽子王」を動かす必要がある;江錦恒(*江沢民の長男、2015年1月、中国科学院副院长から中国科学院上海分院の院長に降格;https://zh.wikipedia.org/wiki/%E6%B1%9F%E7%BB%B5%E6%81%92)は最近、定年前に退職しました。国内報道では江は「年齢原因で中国科学院上海分院の院長はつとまらない」から、となっていますが、この職は副大臣級で退職年齢は65歳です。江は1951年4月生まれで65歳にはまだ1年3ヶ月もあります。またこの職は閑職ですがそれをわざわざ繰り上げ退職させるというのは現在の支配者が対外的に「もう江沢民は力を失ったのだ」と宣伝するためだとみることができます。

    もう一人の「大虎」に喩えられるのは前政治局常務委員、国家副主席の曽慶紅です。最近の国家安全部系統の大地震は、この系統の実際のボスであった曽慶紅には嬉しい話ではありません。最近拘留された国家安全部副部長の馬建は曽慶紅の「秘密兵器」と呼ばれ、かつては国家安全部第10局(対外保防偵査局)でもっぱら外国駐在の人員、留学生を監視し、敵対する組織活動を警戒する部局です。この種の仕事はつねに一部の極めて重要な特殊工作を担当し、多くが直属の単線命令系統です。馬建の職務の重要性を考え、共産党国家の権力闘争をがいまだに特務系が現職総書記に対抗する前例をみると馬の拘束というニュースは重大なシグナルという意味をもって見るべきでしょう。

    2;反腐敗と政治問題を関係づけて;1989年の天安門事件のあと、中共のトップ層では「路線問題」(つまり政治的イデオロギー問題)で打倒の目標になったものはいません。「鳳凰週刊」が外宣部のメディアの重鎮だということを考えるならば、最近トップで周永康と薄熙来の「大きなことをやっつける」密謀という記事、人民日報1月16日の論説委員の文章が「腐敗した関係圏」の特徴は「腐敗問題と政治問題の相互浸透であり深刻に党の団結と統一に危害を加えた」と、習近平の最近の談話で「反腐敗は『絶対にタブーとする相手を作らない』という話を考えたら「人民日報」のいう「鉄帽子王」は誰のことか、ほとんど呼べばすぐ出てきそうです。

    3;紅二代をいかにビジネス界から退かせるか?;これについてはちょっとまえに「習近平の号令、紅二代はビジネス界から身を引け」を書きました。

    習近平の最近の談話でこれは国内外の世論が北京の反腐敗の誠意のほどを測るひとつの絶対的な物差しです。習近平の最近の談話はまさにいま全国的に旗をあげ太鼓を叩いて学習されており「高圧体制」「すこしも容赦なし」「劇薬で治療」「骨をわても毒を出す」といった反腐敗の決心をあらわす言葉が溢れかえっています。反腐敗に参加するすべなき一般庶民は、じっと今年の反腐敗の成り行きに注目しています。(終)

    拙訳御免。
    何清漣氏の原文は;「谁是《人民日报》所指“铁帽子王”?」http://www.voachinese.com/content/he-qing-lian-20150115/2602015.html
    何清漣氏のこれまでの論考日本語訳は;http://heqinglian.net/japanese/

     

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