• 何が華人を「脱中国化」に駆り立てるのか?

    by  • February 24, 2015 • 日文文章 • 0 Comments

    何清漣

    2015年2月23日

    全文日本語概訳/Minya_J Takeuchi Jun

    http://twishort.com/bnGhc

    2013年の正月(*中国は旧正月)には干支の「中国羊」が世界中で気持ち良さげに騒いで、英国王室までお祝いに顔をだしました。これは北京からみれば中国のソフトパワーの大成功です。しかし北京政府が決して直視しようとしないのは世界の三大華人住民達が中心になっている地域、すなわち香港、台湾、シンガポールが次々と「脱中国化」をはかり「自分らは華人(*移住先の国籍を取得した中国系住民)ではあるが”赤い中国”とは一線を画す」という動きです。

    《香港;矛盾から「脱中国」へ》

    香港の中国大陸から離れる動きは早くから生まれており、この過程は香港人の自身のアイデンティティーに対する見方からはっきりみてとれます。1997年香港返還以後、香港大學はずっと「香港市民のアイデンティティー意識調査」を行ってきました。

    2013年のそれは香港人が『中国人』というアイデンティティーへの認識が14年間で最低になっており、2014年のオキュパイセントラル運動以後、香港人の中国に対するアイデンティティー共感度はさらにさがり、1980年代以後生まれでは2.4%になりました。

    香港市大学講座の鄭宇碩教授は香港人の中国人としてのアイデンティティーへの共感度が近年、大暴落したのはいもに中共政権への不信任にあるとみており、大陸には民主がなく、自由も人権もないことを認識するに至って香港人が中国との融合を心配するようになり、さらに北京当局が香港の政治に干渉し、とりわけ香港の特別行政区行政長官選挙に介入したことが香港の若者の強い反感を生んだ、と。しかし香港と大陸の関係が尖鋭化したのはこの5、6年のできごとです。この矛盾の”前世”については私はすでに「北京の政治的智慧が問われる香港の民主派投票」http://urx.nu/hGLa と「香港占中ー北京の”退路”は何処に?」http://urx.nu/hGKP http://urx.nu/hGKP ですでに書いていますからここではオキュパイセントラル運動のあとの大陸と香港の矛盾と香港で芽生えた「脱中国化」意識についてお話ししましょう。

    「脱中国化」の象徴的な出来事といえば当然、香港大学が全員投票の結果、香港大学学生連合会(HKFS)を脱退したことです。その後、中大、理大、浸大、城大などの学生たちがFacebook上で学連脱退注目グループを結成地元団体の「新民主同盟」のメンバーによる中大地元学社は最近、学連に対して2月末までに透明度を向上させた改革案をださなければ3月には署名をあつめ全員投票にかける、という「最後通牒」をつきつけました。

    HKFSはとっくに「紅化」(*中共影響下)しており、香港大学生が全香港の民主投票を勝ち取る望みがなくなったのですが、民主投票は学連の選挙ではしっかりやることになって、これにより一連の連鎖反応が引き起こされています。また「6.4天安門記念晩会はもうやめよう、天安門虐殺はは中国の事情であって、自分たち香港とは無関係だから」、という提案もありました。これは丁度、台湾で30年以上前に、民進党が台湾独立、脱中国化を主張したのにそっくりです。あの時は、民進党は台湾と中国は無関係で、台湾は独立した政治経済体なので大陸の民主化と台湾は無関係だ、というものでした。

    《台湾;アイデンティティーは台湾人、の比率が最高に》

    1992年から台湾政治大学選挙研究センターではずっと台湾民衆の統一・独立の立場や政党への賛同の度合い、台湾人のアイデンティティーを調査してきました。最新の調査では「台湾人アイデンティティー指数」が1992年の7.9%から、毎年増えて2014年の57,1%になり、馬英九の7年間の執政期間中に、前任の陳水扁のときより加速しています。そのなかで自分は台湾人だと思う人の割合は60.6%で「台湾人でもあるし、中国人でもある」が32.5%、そして「自分は中国人である」はたった3.5%しかいません。統一か独立かという立場でもはっきり台湾人の「脱中国化」意識がみてとれます。

    李登輝の執政期間の1994から1999年には「統一独立指数」は平均5.1%でしたが、陳水扁の時期には2.9%になり、馬英九時代は11.7%に、そして2014年には新記録の14.7%を記録しました。この意味は台湾独立を支持する比率が最高になった、ということです。

    香港の「オキュパイセントラル運動」で唯一の「勝者」は台湾です。香港の「一国二制度」の惨憺たる有様をみて、台湾は自分たちの将来の姿がわかりました。2014年の九合一選挙(*統一地方選挙)でブルー陣営(*国民党)の敗北、馬英九の相場大暴落は事実上、北京の台湾における統一戦略の暴落です。

    1996年大陸の台湾へのミサイル演習事件以来、大陸の武力威嚇は多くの台湾人にあえて独立を支持しないようにさせはしましたが、同時に台湾人の大陸に対するシンパシーも弱めました。そして「大陸は武力を行使するな。台湾は独立はしない」という現状維持の人が主流になりました。この度の調査はしかし、台湾人の中国大陸に対する態度がまさに急激に変化していることをしめしています。

    陳水扁のときの「脱中国化」とはっきりと違うのは、台湾の青年はひとつの「隣国」の国民として中国の民主化に注目していることで、それは彼らが中国が民主化しないのなら台湾への脅威はずっと存在し続けるとはっきり知っているからです。

    《シンガポール;我々は中国人ではない》

    中国の毎年の新年でいつも忘れず「海外数千万の華人はみな海外に流れていった”孤児”であり、心はいつも”偉大な祖国の母親”に向いている」という宣伝です。絶対多数の中国人の目には、香港や台湾が中国の一部分というだけでなく、シンガポールも中国の切っても切れない同族兄弟である、と信じています。この認識は当然、政府側の宣伝の結果によるものです。中国国務院の華僑調査によると、2007年6月、シンガポールの中国系住民は277.5万人で、これに暫時居留の華人をくわえるとシンガポールの華人総数は353.5万人になり、だいたいシンガポールの総人口の4分の3になります。

    そのうえ、シンガポールの”国父”である李光耀の故郷は広東省大埔党溪村ですし、華語はシンガポールの第二言語ですから、中国人がシンガポール人の華人を同族兄弟だとおもうのも”理の当然”ということになります。中国国内で知られている「老華人の目に映ったシンガポール華人社会」には「シンガポールは『遠い海外の華人の孤島』である、とされ、「なぜなら歴史やイデオロギーなどが原因で中国は一部の国々に適しされシンガポールのような小国は生存して発展していくためにやむをえず中国と一定の距離を置いてきたが…隠れたつながりは大変多い」と。この”老華人”の眼中にはシンガポール人は子供を少なく産むので政府は積極的に華人を誘致している、と映ります。

    あいにくなことに、シンガポール人は実際の行動でこの”老華人”のお話は実は少数派の見方にすぎないことを明らかにしました。2013年シンガポール政府は白書を発表し2030年以前に人口が530万人から650万人ないし690万人に達すると。そしてこれ以後、シンガポール人は明確に中国大陸からの移民増加に反対を始めました。NYタイムズは2月13日に「あなたは中国人、それとも華人?」という記事を掲載し、シンガポールの「脱中国化」傾向を明らかにしました。

    記事は、「密接な言語の関係、食べ物や儒教文化、共通の習慣に根ざしたシンガポール人と中国大陸人のは本来、大変親密であるはずだが、現在では却って価値観の違いから両者の間には埋めがたい亀裂がある」ことを指摘し「中国が外に向かって中国文化や民族の理念を輸出するにつれて、在外華人の間に新たな緊張感が生まれており、シンガポールでは華僑たちはこれまで中国人や華人とよばれて、この二種類の呼称は通常は相互に代替え使用されてきたが現在では、前者は中国国籍を持っているか、中国で生まれた人を指し、後者は種族や文化上中国となんらかの関連のある人という意味になっている」、と。シンガポール人は意識的に「脱中国化」をはかり国際社会で挨拶するときも、「自分はシンガポール人であり、中国人ではない」という言い方をしたがる、と書いています。

    《脱中国化;紅色中国の政治的恐怖に関連》

    人類学的な角度から見れば人間は群れをなす動物であり、だれもが心理上特定のグループに属したいという必要性があり、こうしたアイデンティティーは民族、地域、宗教など各種の要素で自分が属する種族のアイデンティティーというのは人類社会のアイデンティティーの最も基本的なものです。

    香港、台湾、シンガポールという3地域の「脱中国化」は表面的にみるならこれまでのアイデンティティーを否定するかのようにみえますが実は、共産党の中国への拒絶、排斥なのです。

    香港、台湾の「脱中国化」の動きに、2014年9月9日、習近平は北京師範で一線の教師を訪問し、関連成果の展覧を参観したときに、国語、歴史、政治の三科目が全国統一されたときき、はっきりと古代の詩歌散文を教科書から外すことに大いに不賛成だとして、「こうした経典は学生の頭の中にしっかりうえつけ、中華民族の文化の遺伝子にすべきだ」と述べたといいます。習近平のこの話はわざと香港や台湾の「脱中国化」の骨子となる訴えをすり替えて理解しようとするものです。

    3地域の「脱中国化」というのは中国古典文化や民俗性を捨て去るというものではなく、紅色中国の妖怪を祓いたいのです。すでにおこった歴史や現実からみたら、台湾人は中国古典文化を伝え育むことでは一番すぐれていますし、長い間香港に居住している作家・金庸も武侠小説の中で「飞雪连天射白鹿,笑书神侠倚碧鸳」(*《飞狐外传》《雪山飞狐》《连城诀》《倚天屠龙记》《射雕英雄传》《鹿鼎记》などの著作群の頭文字)などで古典に対する深い理解をみせています。逆に、中華文明の祖のはずの中国大陸では文化大革命を起こし、封建文化を禁止して、文物を破壊し、祖先の墓を暴いたりする愚行を行い、中国人が最も重視する飲食文化のうちの茶の文化では、文革が終わった後残っていたのは広東と福建の「飲茶」ぐらいで、多くの中国人は粗末な濃いだけの茶の香りなどあったもんじゃないものを飲んでいます。もし台湾香港地区や広東、福建で中国茶の特色ある文化が残っていなければ中国人は日本に茶道を習いに行くしかなかったでしょう。

    上述の3地域・国での「脱中国化」は強烈な政治的信号であり、この三つの場所では中国の紅色共産党文化の拡大に強烈な恐怖を感じたからこそ、とるに至った自衛の策なのです。この種の政治価値観上の亀裂断裂は、唐や宋の詩文、元曲などの”文化”をもって埋めることなどとてもできるものではないのです。(終)

    拙訳御免。
    何清漣氏の原文は「是什么驱动华人地区“去中国化”? 」;http://www.voachinese.com/content/heqinglian-20150222/2654175.html
    何清漣氏のこれまでの論考日本語訳は;http://heqinglian.net/japanese/

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