• ランドの選択、汚染か病気か

    by  • March 10, 2015 • 日文文章 • 0 Comments

    何清漣

    2015年3月6日

    全文日本語概訳/Minya_J Takeuchi Jun

    http://twishort.com/kmLhc

    柴静女史のドキュメンタリー映画「ドームの下で《穹顶之下》」が論議を呼んでいますが、毒スモッグはもはや焦点ではなく、動機や陰謀論、パフォーマンすだ、とか悪意に満ちたものになってしまいました。その中では二つのテーマがそれでもまだ検討に値するといえるでしょう。ひとつはエネルギー転換の巨額の汚染防止費用はどうして調達する?というのと、APECや人民代表大会の時には北京に青空が戻るのにどうして一時的なもので終わってしまうのか?ということです。

    《ランドが北京にあたえた選択;お金を使って汚染を防止するのか病気を治療するのか?》

    「中米空気外交事件」をまだ覚えているひともいるでしょう。2011年10月に、潘石屹が北京の米国大使館の空気測量データを発表し、米国大使館の発表した数字と中国のそれが食い違い、中国の公衆はは前者を信じて自国政府を信じませんで、最後には中国外務省が米国が中国の空気データを発表するのは内政干渉だと非難し国際的なもの笑いのタネになりました。

    2013年12月初め、米国の環境保護局長ジーナ・マッカーシーは毒スモッグの中国を訪れました。出発前に彼女は中国の放つ汚染空気はいままさに米国西海岸に向かって吹いている」と公の場で述べて、中国滞在中、南方周末の取材にも遠慮なく「中国の直面する空気の汚染が今回の訪問の目的」と述べ、技術と研究で援助したいと述べたのでした。

    米国の「援助」の結果は1年後、米国戦略研究機構のランド・コーポレーションのレポートとなりました。同報告は過去10年、中国の環境汚染のコストは毎年GDPの10%になると指摘。これは韓国や日本の数倍になり、米国の水準も超えている、と。空気、水、土壌汚染の中で空気汚染のコストは最も高く、2000年から2010年、空気汚染のコストはGDPの6.5%に登り、水は2,1%、土壌汚染退化は1.1%と。

    ランドは中国の空気汚染対策に3つの政策を提案しました。

    1;石炭、木材、ゴミなどの燃料を使うかまどや炉は汚染拡散の重要な元になっているので街中では住宅、商業施設で石炭や、伝統的な家畜の糞などの使用をやめ
    2;石炭発電を、特に主要人口が集中している所と周辺でやめて、他の低汚染エネルギー、天然ガスや原子力、風力、太陽発電に変える。
    3;排ガスを撒き散らす車の製造禁止や旧式車両の強制退場、です。

    ランドの大気の質を改善する方法は主としてエネルギーの転換です。その政策コストは大変高くつき、もしエネルギーの転換を行うなら、毎年今より1400億ドルから1600億ドルかかります。しかし現在の大気汚染がもたらす健康悪化のコストがGDPの6.5%だとするなら(2012年このコストは5350億ドル)、空気の質改善と経済生産の増加はこれらの政策が必要とするコストを補うことができるでしょう。

    《エネルギー転換の家庭でどう民衆を説得するか》

    ランドの政策提案は大変合理的で、コスト収益も大変はっきりしています。政府の毎年の汚染回復費用1600億米ドルで社会メンバーの健康のためのコストを5000億ドル余減らせるのです。政権の安定性から考えても、人民の健康という視点から考えても、中国政府はこの報告の提案を受け入れるべきです。しかし、それにかかるコストは報告に書かれている金額だけではありません。

    ほかにも問題が山積みなのです。APECや人民代表大会の青空の出現は政府と国民に空気はきれいにできるのだという一定の自信をもたらし、政府がしっかり決心さえしてやれば青空白雲が回復する希望があると。しかしこの希望を持つ人々はひとつ見逃しています。APECなどの時の青空は、政府が強制して一ヶ月前から北京及び周辺の工場の生産を停止させ、車の乗り入れ制限をし、各機関に休暇をとらせ、飲食業を停止させているからです。

    すなわち、経済を休眠させて、年を半分眠らせてやっと実現しているのです。今後、規定通りやろうとするなら必ずや以下のような問題点にぶつかるでしょう。

    ❶失業圧力に直面;製鉄業とセメント業は汚染源の大元ですが、しかし全国の建築業はこの二つが大変盛んです。中国には800社の鉄鋼企業があり就業人口は350万人。セメントは3500社あり90余万人。鉄鋼業でもし汚染基準を上げて、汚染者が汚染防止費用を払うとしたら、損益分岐点を下回る鉄鋼企業の大部分は閉鎖となり、地方政府は税収がなくなるばかりか、大量の失業圧力に直面します。

    ❷中国人にコストの高いエネルギー源を使わせるためには政府の大量助成が必要。

    クリーンエネルギーを使うには中、高収入階層にはあまり問題ではありませんが、人口の7割を占める低収入層にとっては極めて重い負担です。今年2月3日の新華社の発表では「高コスト時代のクリーンエネルギーによる熱供給の道はどこに?」はこの問題を論じています。太原、蘭州、ウルムチなど「石炭からガスへ」をスタートした地方で調査し電気暖房などクリーンエネルギーの熱供給方式をとった都市ではクリーンエネルギーは「供給しきれず」「十分暖かくなく」「話がまとまらない」です。

    山西の崇光科学技術会社は太原の4つの「石炭からガスへ」の地区などに熱供給しましたが、その責任者の張福柱は「天然ガスの価格はこの二年間にずっと上がり続けており、現在1立米3.85元で、計算するとスチーム暖房は1平米あたりのコスト7元以上になる。もし住民から基準通りセントラルヒーティングの費用を徴収するなら、企業は損をする。なぜならコストが赤字で、去年わずか4地区でやっただけでも5000万元の赤字がでた。低収入居住区に対する政府の補助が極めて大きかったので最終的には会社は損も得もなかった、と。これで想像できる通り、全国でクリーンエネルギーを推し進めた場合、補助金のプレッシャーは極めておおきいものです。ですから、「石炭からガスへ」を推進する都市は基本的には「大荷物を背負って排気ガス減量につとめるが、クリーンエネルギーで大損して悲鳴をあげる」状態なのです。3月3日には王志安が「毒スモッグマクロ調査」で、安徽省などで補助金と引き換えに作物の麦わらなどを燃やすことを農民に停止させましたが、その金額が不足だということで農民の協力がえられず、農民たちは大気のクリーンさよりお金を重視していることがわかった、と。

    多額の補助金は中国経済が上向きな時はやりやすいですが、現在は下降局面で政府財政の圧力は大きく、大規模な国家補償となると必然的に課税を伴います。今回、柴静の映画が政府に課税の理由を与えるものだ、という言い方はこの点からでてきたものです。

    《公衆の参加が毒スモッグ退治のカギだが》

    中国の環境汚染の原因は政治と経済の制度の歪みからきており、「公有地の悲劇」に「誰も監督管理できない政治権力」が最後に政府と企業の間で汚染形成の共犯関係になっているからです。しかし民主化してからなんとかしようと思っているなら中国は住めない土地になってしまうでしょう。難しさからいえば、空気、土地、水の汚染のなかでは空気はもっとも簡単なほうなのですし、いわゆる、政治制度との関連も一番弱いのです。

    ロンドン、ロサンゼルスでもかつて悪性スモッグが発生しましたが最後には政府、企業、社会メンバーが共通認識に達してこれをなんとかすることに成功しました。ですから英米の経験に学んで、今からなんとかしようとすれば希望はあるはずなのです。

    しかし、中国での毒スモッグは単純に資金を投入しさえすれば解決するという問題ではありません。中国の現体制の環境保護には致命的な欠陥があります。すなわち大衆は政府の言うことに従うだけで大衆が環境アセスや監視、管理など重要な役割部分に参加することは極力厳しく排除するということです。ロサンゼルスの数十年になるスモッグ対策の経験からみると、立法、司法、政府の監督といった法律上の措置以外に、大衆の参加が必要不可欠なのです。立法とういう面では中国の法律の条文は完璧にできていますが、しかし司法と政府の監督というのはこれまで見るべき成果がないまま、大衆はずっと政府に排除されてきました。

    大衆参加はずっと政府によって排斥されてきました。中国には2006年にとっくに「環境影響評価公衆参加暫定法」ができているのですが、条文の不完全さ以外に、もっと深刻なのは形式だけに流れていることです。ランドが中国の空気改善に提供したエネルギー転換のアイデアは米国や日本では(日本の司法は厳格で、”法匪”とさえいわれるほど)、しかし中国ではこのような制度環境では、たとえ政府が受け入れても実施の過程でさまざまな障害があり、最後には捻じ曲げられてしまうでしょう。

    柴静女史の「ドームの下で」が発表されたのはまさに人民代表大会の前夜で、中国政府は本来ならこの映画のすさまじい効果を借りて、中国の環境保護に大衆の参加を推進すべきでした。しかし中国の世論環境の劣悪さが、本来なら討議しなければいけないすべてのこと 例えばお金を汚染防止につかうのか病気防止につかうのか、巨額の費用はどこからだすのか、環境保護の公衆参加などなどが、みな「柴刈り」(*柴静女史への悪口、いじめ)舌戦のツバキの飛ばし合いのなかに埋もれてしまいました。ただただ残念というしかありません。(終)

    拙訳御免。
    何清漣氏の原文は;http://biweekly.hrichina.org/article/26069 ;
    何清漣氏のこれまでの論考日本語訳は;http://heqinglian.net/japanese/

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