• 3難題を快刀乱麻に”解決”ー人民代表大会観察

    by  • March 10, 2015 • 日文文章 • 1 Comment

    何清漣

    2015年3月10日

    全文日本語概訳/Minya_J Takeuchi Jun

    http://twishort.com/RsMhc

    近年の両会(人民代表大会・中国人民政治協商会議 )で国庫のフトコロに直接関係する主な話題は三つありました。❶反腐敗で没収した巨額のダーティマネーは何処へ?❷養老年金の赤字はどうする?❸地方の債務の穴をどう埋める?です。この度、政府は快刀乱麻を断つがごとく、この3つの問題を”解決”してしまいました。

    《大虎のダーティマネーは中央国庫へ》

    まず腐敗の金の問題は中国共産党第十八次全国代表大会(2012年11月)以前、億に上るのも珍しくなく、その行方はどうなるかについて、検察院はお役所的な曖昧な回答ですませてきました。私も2014年に「中国のダーティマネーは何処へ?」http://urx.nu/ieG1 で分析し、役所側の回答では到底、疑惑を解消できないと指摘しました。近年の大虎事件では数十億から数百億、千億にものぼる金額が取りざたされ、この問題はもっと追求されていました。

    3月5日、全国政協委員でアモイ大学の田中群教授は会議でこの問題を取り上げ、「8項規定のあのような、反腐敗で追徴した資金は何処へ行ったのだ?なぜもっと直接、庶民が反腐敗はいいとおもえるような例えば農村教育にとか農村の汚染解消にとかいった方法でこのような欲張り官僚たちが民の膏血を搾り取ったものを民に返すというわかりやすい方法がとれないのか?」と。

    中国政府は明らかにこれに対してしっかり回答を準備していました。今年1月24日、中国共産党中央委員会事務局、国務院官房が出した「刑事訴訟関連の財物の処置に関する工作をさらに一歩すすめる意見」が下級政府に対して出され、3月2日には新華社のニュースで広く知らされました。

    要点は;すべて最高検察院、公安部の事件または他の指定された地方の重大事件で関連財物はすべて一律に中央国庫の専門口座に納入せよ。事件の関連経費は中央財政が保証し、必要なら事前に経費を支給する。(これ以前は重大事件が地方で起きた場合、事件担当の部署が押収財物から一部分を取る方式で、関係者の間では「司法救済」と言われていた)

    つまり、これで腐敗関係のマネーがどこへ行くか、という件は一件落着で、中央と地方の腐敗マネーの利益関係はやっと調整されました。ただ「いかにして膏血を民に返還するか」という問題は宙に浮いたままです。

    《養老年金は3本足で。政府にだけ頼るのはダメ》

    中国の社会保険システムに危機、というニュースは今年1月に発表されました。現行の社会保険の5つの危険の中で養老と医療が占める割合が最大なのです。「中国養老年金発展報告2014ー期間損益型をモデルチェンジ」という報告で計算すると;一つは隠れた債務が大きく、2012年を基準にすると都市の職員の基本養老年金の隠れ債務は86.2兆元で2012年のGDP比の166%をしめる。二つ目は収支バランスが崩れ枯渇しそうだ。北京大学の鄭偉らの計算では養老年金基金は2037年に収支赤字になり、2048年には保険基金が尽きて枯渇する、と。

    もし社会保険を続けたければ、今の職員の納める金額を増やすか、退職職員の待遇を下げるかしかありません。前者は全く不可能です。国務院の馬凱副総理も認めていますが、中国の養老保険費の納付基準はむちゃくちゃ高いのです。「5つの保険と1つの積立金.五険一金」(养老、医療、失業、労災、生育、住房)は給料総額の4割から5割になっています。つまり働く人の手にする給料は総額の6割にならないのです。

    ある計算では、月給が一万元だとすると労働者が手にできるのは7454.3元なのに、経営者側は14410元も出さないとなりません。この種の状況では企業の負担は大変重く感じられ、近年、外資企業が次々に中国から撤退する原因のひとつはこの中国の労務コストが他国にくらべてはるかに高くつくことがあげられます。

    清華大学の白重恩教授の計算ですと、中国の社会保険納付率は181か国の中でナンバーワンでBRICs4か国の中でも他の3国の平均水準の二倍、北欧5カ国の3倍、G7国家の2.8倍、東南アジア隣国の4.6倍です。専門家の一致した意見では中国の未来の財政と企業がもし社会保険で潰れたくなければ社会保険規模を少なくし(納める金を減らす代わりに補償も下げる)が唯一の選択できる改革の道だということで、さもなくば企業、政府、国民もすべて押しつぶされてしまうだろうと。

    3月6日、財政部部長(*大臣)の楼継偉は記者会見で改革方案をテーブルに出して、養老年金は三本柱で、第一が強制的な社会養老保険、第二が企業年金と職業年金、第三は個人の商業健康保険や商業養老保険購入、だとしました。政府は第一の管理と改革の基礎の上に、すでに第二に一種の税優遇措置を推進しています。第三は第一や第二と比較できない、補完的なもので今後テスト地域をきめて成功したら全国に広げようというものです。

    楼部長の話は大変専門的なのですが、ぶっちゃけて言えば;以前は中国の大多数の都市の労働者は養老保険に頼っていたが、今後はこれを低減させ、もし快適な老後を送りたいなら、みんな企業年金と職業年金を、それがなければ自分でお金をだして商業保険を買いなさい、ということだ。政府は君らに優遇税制をプレゼントするよ、と。

    楼部長のアイデアは結構ですが、しかしここで口出しせざるをえないのは、中国の保険業というのは長年、「トラがウサギの餌を食べてしまう*」ようなもので、その状況はシャドー銀行と大差のないもので問題だらけなのです。中国人はもし自分の手中のお金が余って困ると、商業保険を買って、中国の金融保険事業を助けました。

    (✳︎爺注;中国のこの種の保険は「ポンジスキーム」といわれており、つまり;「詐欺の一種で、「出資してもらった資金を運用し、その利益を出資者に(配当金などとして)還元する」などと謳っておきながら、謳っていることとは異なって実際には資金運用を行わず、後から参加させる別の出資者から新たに集めたお金を(やはり運用せず)以前からの出資者に“配当金”などと偽って渡すことで、あたかも資金運用が行われ利益が生まれてそれが配当されているかのように装うもののこと」(wiki)が常識となっている。)

    とはいえ、楼部長の率直な物言いは賞賛に値します。長年政府が人々に空約束ばかり言っていたのにくらべて、「改革が必要で、人民に責任を負ってもらわねばならない」というのは実際的で、すくなくとも人々にはっきりこれからは自分が責任を負う必要があるのだ、とわかって、雨のふらないうちに傘を準備させることができるからです。

    《地方債務の大穴はどうする?》

    地方の借金はこの3年間、ずっと中国政府の悩みの種でした。人民代表大会の季節にはいつも政治協商委員がでてきて、「中国の債務問題は深刻だが、危機は絶対に起きない」などといってましたが、中国政府はやはり気にしていたようです。2014年に「父親の愛」を発揮して、9月に『43号文書』を出して、地方に勘定は払ってやるよ、という親心をみせ、地方政府は2015年1月5日以前に本当の借金額を報告すべし、そしたら中央で地方の債務を払ってやる、といいました。

    もともと正直に報告したら立身出世があやうくなるのでいつも少なく報告してきた地方政府はこれで”希望をもって誠実に”報告したものです。その結果、地方債務は一瞬のうちに”ビッグバン”を起こしてものすごい額になり、財政部はとても「父親の愛」など発揮できないことを発見したのでした。でしかたなく今年1月29日に下部に対して「地方政府の残存債務の初歩的処理分別結果を自ら調べる工作実施に関する通知」を出して、さきに上がった報告は不合格で、もう一度報告せよ、といいました。この意味は地方政府はなんでもかんでも中央に押し付けるな、ということです。

    2015年の両会では、財務部長の楼継偉は記者会見で新方式とは;債務を改めて整理して、前の門を開き、後ろの門を閉ざす、中央は「完全に公益性の地方が償還責任のある部分」の債務は引き受けて償還する。例えば、最近財務部が批准した3兆元の債務の置き換えなど。これは将来は地方政府が債務残高を分別した基礎の上に、そのうち政府の直接債務に属する部分は短期や高い利息から解放して、長期の定利子に変えて政府が直接負担するが他の部分は地方政府に「再度調整」するように、ということです。

    しかし、地方債務の本当の解決方案のキモはここではありませんで、経済発展戦略の調整にあります。李克强総理は「政府工作報告」で2015年には不動産市場の平穏で健康的な発展を促進する必要について述べました。以前の両会では「コントロール」「抑制」「合理復帰」などの言葉に比べて、業界の人々は「支持促進」は「聞いたことがないほど結構な言葉」と喜んでおり、これで両会後には第四回目の不動産刺激政策が出るだろうから、景気もよくなるだろうと期待しています。そして政府報告には「政府借り上げ住宅」の政策が書かれています。

    つまり政府が住宅を買い戻し、一部の住宅を

    公営住宅や立退き者用住宅等にする、というものです。この政策は実際2014年に福州、四川、安徽、江蘇、遼寧などの多くの都市でおこなわれ効果的だったので全国に広めようというものです。地方政府が買い上げることにより不動産の在庫問題の解決と、こうした住宅を建設する費用を集める困難を解決しようというものです。

    地方政府は長年にわたって「土地財政」をやってきて不動産によって経済を支えるのはお手の物の道です。今、中央政府が政策の口を緩めようとしているのは、地方政府の目には「これからどんどん金が流れ込む」と見えるでしょう。ただこのやり方では不動産バブルを圧縮するだの経済構造を調整するなどということは無理な話です。

    簡単に言えば長年、解決できなかった無茶苦茶な大福帳を政府は快刀乱麻で断ち切ってそれぞれに異なった方法で”ケリ”をつけました。腐敗関連の金は中央へ。そのなかからおこぼれがあるかと期待していた庶民が分前にあずかれるか否かは中央政府の気持ち次第。養老年金の重荷は少なくとも半分は民衆に分担させて、「政府の負担をへらして自力更生と呼ぶ」ことで解決。そして地方債務は政策を小出しにして地方政府に自分で解決させる。「中央政府はやることがたくさんあって、ポケットには余計な金ないので全国人民よ、どうかわかってね」、ということです。(終)

    拙訳御免。

    何清漣氏の原文は;【两会观察】:三笔糊涂帐,“解决”有妙方 http://www.voachinese.com/content/heqinglian-20150308/2672385.html
    何清漣氏のこれまでの論考日本語訳は;http://heqinglian.net/japanese/

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