• 「中国で政変がおきる」期待感への簡単分析 

    by  • April 5, 2015 • 日文文章 • 0 Comments

    何清漣

    2015年3月19日

    全文日本語概訳/Minya_J Takeuchi Jun

    http://twishort.com/0BQhc
    去年から北京でクーデターが起きるという噂がずっと海外の中国語ネットで流れています。去年の北載河会議(*中共トップ会議)で「廃帝」(*李克强更迭の噂)の類です。こうしたことは事実にはならなかったのですが様々な噂は最後に米国の数人の「中国通」にまで影響を及ぼし、「もし習近平がさらに”反腐敗摘発”を続けるなら追い詰められた官僚たちの恨みを買ってやがて政変に発展するかもしれない」と思うようになりました。予想されているクーデターの形式には様々なのでが、相変わらず主役としては当然軍隊だといわれます。そしていまでは頗る多くの人がそれが中国民主化の契機になるのではないかと見なしています。そこでここでは「クーデター」の可能性とそれが中国民主化の契機になるかどうかを考察してみましょう。

    《政権内部に”クーデタ”やる気は有るのか?》

    王岐山の反腐敗摘発のやり方は「兵に常法なし、水に形なし」と役人たちに規律というものをはっきり自覚させた上に、「反腐敗キャンペーンは永遠に続く」と宣言しており、役人たちにとっては頭上に「ダモクレスの剣」がぶら下がっているようなもので、いつもビクビクしています。

    杨鲁军(*経済学者)の《闽地记事三部曲》の福建省の役人の不満を例にして役人が反腐敗に不満を持っている様子を「まさか反腐敗がずっと常態化するとはおもわなかった。県の部署ではみんな一人一人裸にされてチェックされてるから…一部の人間は役人になったのは間違いだったかとおもいはじめている。金も、美女も無縁でうまい酒も飲めないなんて…こんな下っ端の役人やっててもしょうがないからやめようかとおもう」と書いています。

    作者はさらに「私は反腐敗キャンペーン時代の役人の原動力とインセンティブの構造問題に気がついた。中共の旗の下で偉大な理想の呼びかけに応え、党の使命と良心と覚悟を決めて、というのは畢竟、市場経済の法則とは距離がありすぎて、市場経済は生産性や等価交換、世俗的な意味の個人の成功や幸せを重んじるわけで下っ端の役人たちにただ仕事のために身を投げ打って奉仕しなさいというのは、全体として現実的とは言えないだろう。私はこんなことが続けば中国では大規模な下っ端役人の辞表提出の波がおこるんではいかと…」と言います。つまり、一番習近平の反腐敗を恨んでいるのはこうした膨大な中国の官僚集団だというのです。

    習近平が反腐敗を始めたとき、私は「ソ連のアンドロポフに似ている」と書きました。というのは官僚集団と反対を唱える人士にともに豪腕をふるって、労働規律を再度厳しく命じ、禁酒令を発しKGBを使って社会生活を監視させたので当時、アンドロポフに対しては不満がいっぱいでした。彼が病で死去して、ソ連は短いチェルネンコ時代に入ってホッとしたものでした。しかし習近平はまだ若く強く、健康でピンピンしていますから、よほどの突発事件でもない限り彼の任期満了前に総書記をやめるというのはないでしょう。ですから、一部の人は「クーデータ」を考えたがるのです。

    《クーデターの困難;正当な理由はあるのか?》

    たしかに習近平の反腐敗キャンペーンをやめてほしいという官僚はきっと山ほどいるでしょう。その中には表向きは「習王様の反腐敗を断固支持する」とか言ってるのもいるでしょう。でも、問題は「誰が、どんな大義名分でクーデターを発動できるか?」です。これはクーデター後に、実行者が他の人間に潰されるか否かという生死にかかわる大問題です。例えば「道に外れた王の暴戻を誅す」みたいな大時代な呼びかけではなんだかヘンでしょう?習王と腹心の摘発係の王岐山がこれまでやってきた”暴政”は主として反腐敗の一事だけですから、一般庶民の暮らしは胡錦濤時代と比べて別に変わりがないのです。しかし、だからといって、習近平が自由な言論を厳しく取り締まり、異議人士らの反対者を弾圧したのはケシカランというような大義名分では中共党内では全くアピールしません。

    ですからクーデター実行者は事が成功するとしても、そのあとすぐに他の党内の勢力によって政治的に正しいとされる大義名分のもとに打ち倒されてしまうでしょう。「君側の奸を切る」(懐刀の王岐山を倒す)方法は習近平の反腐敗の決意に動揺が生じて、習と王の間に亀裂が見られるようになってからなら有効でしょうが、今の所そうした形跡はありません。ですからハーバード大の馬若徳が記者の取材に答えたときに予測した、粛清された汚職官僚たちが団結して立ち上がる、などという可能性はほとんどゼロです。

    この集団はとっくに共通の信仰によって結びついた仲間ではなく、利益によってのみ紐帯を維持しているだけなのです。いま、最高権力の中心の反腐敗のプレッシャーにであって大半が考えることは自らの保身だけです。例えば郭正綱の妻の呉芳芳が商売に関して査察をうけたとき、その父の郭伯雄が思いついた方法は浙江商人のグループに電話してなんとか助けてやってくれということで(鳳凰ネット週刊、3月15日 郭正鋼浮沈録、最若手少将 とそのビジネス妻)であって、軍隊の昔の仲間とどうやって「クーデター」を起こすかということではありませんせした。文官なら当然、こんなきわどいことを考えるなど更にありえません。

    《誰がクーデターを起こす能力があるのか?》

    クーデターの主なやり方の形のひとつは側近の参与です。中共の歴史上では1976年10月に4人組を捕まえた有名なクーデターの具体的な執行者は毛沢東の親衛隊長の汪東興でした。汪東興は軍事を握る葉剣英と同盟を結び、中は中央指導警衛の汪東興が4人組を捕まえ、外は葉が軍隊と連携する手はずと整え一挙に成功させ、毛沢東の妻の江青を逮捕して、「反革命集団の主犯」としたのでした。

    習近平の反腐敗の圧力のもとに不安でたまらない実力者のうち、誰がクーデターをおこなえるでしょう?外からの推測では前政治局常務委の曽慶紅、つまり噂の「慶親王」(*清王朝で罪を問われないとされた「鉄の帽子の王」になぞらえられた)であり、江沢民の大番頭です。しかし曽慶紅はどうもいまやそんな力はないようです。大番頭の地位は令計劃の手にわたってもう10年も経っていますから人事は全部変わっています。

    2015年の人民代表大会の前夜に、2007年から中央警衛局局長だった曹清は北京軍区の副司令となり、元副局長の王少軍が曹清の後を継いで中共中央警衛局の新しいボスになっています。 軍隊の方はといえば江沢民の二人の腹心の郭伯雄と徐才厚は一人は取り調べ、一人は病死しており、軍では相前後して数十人が逮捕されて、みなビクビクものです。たとえ誰かが軍を率いて造反しようにも「習近平の反腐敗はわれわれ軍部の利益を損なうぞ」といった呼びかけの下に部下をクーデターに参加させようとしても無理でしょう。もし本当にそんな人物がいたら、腐敗を憎む軍内部からたちまち通報されてしまうでしょう。

    君側にいる人物でクーデターを図るなどという確率はほとんどゼロだとしたら、では刺客を雇うというのはどうでしょう?問題はいかなる代価を出したらそんな刺客を購えるか?です。薄熙来と王立軍の主従がいい例です。王立軍は薄熙来についてから、あっというまに国際的にも名を知られる有名人になりその権勢はもちろん大学教授になったり特許考案者になったり数々の栄誉につつまれました。抜擢してくれた薄熙来の恩は大変なものです。しかし、最後の肝心なときに薄熙来を裏切り薄夫婦を下獄させたのでした(*裁判で薄熙来に不利な証人になった)。これが薄熙来が自分のために死んでくれるだろうと期待した部下のありさまです。

    《クーデターは中国に民主化の契機になるのか?》

    最後に、クーデターが中国に民主化をもたらす契機になるという見方について、それが現実的かどうか検討してみましょう。この説を唱える人というのは政変の歴史をよく考えたことがあきらかにないですね。それは誰が権力から一番近く、そして誰が王冠を獲得できるのかということを、です。クーデターの後の権力の帰趨には二種類あります。ひとつは政変後も依然としてもとのイデオロギーが有効に継続する場合、権力が別の人物に移るだけです。例えば華国鋒、葉剣英、汪東興の3人が政権を手中にしたのですが、依然として「二つのすべて」(*「毛主席の決定した事は支持し、毛主席の指示は変えない」)を奉っていました。そして政権が鄧小平の手に写って改革がはじまり、一定の時間が経って政争が一段落してから変化がおきました。

    二つ目はクーデター実行で、民意の上にたちながら、結局最後には民衆は得るものはなにもなく、ただあらたな権力者の成功に手を貸しただけ、というケースで例えばエジプトの2011年のジャスミン革命や2013年の二次革命がそれです。ジャスミン革命の結果は組織的力量をもつムスリム同胞団が民選を経て大統領をだしましたが、二次革命の結果エジプト軍部政府がよみがえりました。街頭で石を投げていた人たち、つまり革命参加者たちは自分たちの状況をなんら改善できなかったのでした。

    当然、軍事クーデーターの結果、民心に答えたというケースもあります。たとえば1999年10月のパキスタンではムシャラフ陸軍参謀総長は時の首相だったシャリーフ大統領との確執からクーデターを敢行しました。このクーデターが民選政府を転覆させた一つの重要な原因は、シャーリフ大統領執政の時期には国内の経済が持続して下降衰退し、外債は320億米ドルにものぼり、輸出も下降し財政赤字が拡大して国内民衆の不満が大きかったのです。ですからクーデター成功後は、国内の民衆は国家が失った”民主”にたいしてはちっとも残念がらなかったのです。権力を握ってからムシャラフは民衆の信頼を得るために)自らの財産を公開して、反腐敗をおこない清廉潔白なイメージをつくりだし民衆の支持と擁護を獲得し、金融環境をととのえ、その後の経済発展のために必要な基礎を固めたのでした。

    ムシャラフ型クーデターが中国の政治的な反対者たちの望む政変のパターンでしょう。ただ方向は反対で、専制を民主に変えたいわけですが。しかし、見渡して中共のなかにそのような人物がいるとおもいますか?以前はこうした異議人士たちはいろいろ文章を書いて「軍の中に民主の神がいる」お話をつくりだし希望をかきたてたものです。2009年には温家宝をもちあげて、彼こそ党内の代表的な改革派の人物だと期待していました。こんな芝居をまだ見飽き足りないというのでしょうか?

    以上述べた通り、「永遠につづく反腐敗キャンペーン」は終わらせたいというのは確かに中国の官僚たちが広く抱いている正直な気持ちでしょう。ですから一部の人々が「政変」の噂をながして、習と王岐山の二人に「反腐敗キャンペーン」をやめさせたいと願っているのでしょう。しかしそれが「政変は中国の民主化の契機になる」にいたっては、もう渺茫たる、あだな望みにすぎないのです。(終)

    拙訳御免。
    何清漣氏の原文は;浅析“中国即将发生政变”的期望 http://biweekly.hrichina.org/article/26419
    何清漣氏のこれまでの論考日本語訳は;http://heqinglian.net/japanese/

    Share Button

    About

    Leave a Reply

    Your email address will not be published. Required fields are marked *