• スパイの元締め馬建・国家安全部副部長の表と裏の顔

    by  • May 1, 2015 • 日文文章 • 1 Comment

    何清漣

    2015年4月2日

    全文日本語概訳/Minya_J Takeuchi Jun

    http://twishort.com/NBWhc

    この30年来、中国の商人が政治経済の舞台上で演じた巨富蓄財物語の突拍子のない話の数々たるや、いかなる小説家の想像をも絶したもので、それも数限りなく揚子江の波のようにあとからあとからすごくなってきました。それでもこうした商人たちがどこまで到達できるか、持ちこたえられるかというのは中国的特色のビジネス界での遊泳能力のほかに、そのバックにどれほどの有力者がいるかどうかにかかっています。

    四川の劉漢(*周永康の腹心、2015年2月9日死刑執行)、山東の郭文貴(* wiki;2013年に58億元で、中国富豪番付323位から、翌年には155億元で74位)はどちらも「政商同盟」の道を歩みましたが、後者は海外に逃れたばかりか、まだおおっぴらに世間に顔を出して”抗議”しています。これは当然、そのバックの庇護があったからです。海外のスパイ工作を長年担当してきた国家安全部副部長の馬建の神秘的な権力は確かに「政法界の皇帝」といわれた周永康よりさらにスゴイものがありました。

    《国家安全部門の力が官商結託の武器となる》

    中央規律委が馬建を逮捕したのは周到に準備して一気に行ったものでしょう。ですから彼に関連する数々のニュースは周永康のときのように逮捕して半年もかけて、やっとメディアにすこしずつ、息子や娘、親戚兄弟と順番にでてきて、最後に当人に至るといったようなものではありませんでした。

    馬建が1月9日に逮捕されて、「環球人物」雑誌が1月16日に「反スパイ活動の責任者、国家安全部高官・馬建の失脚」という記事を発表し4つの可能性を分析しています。第一は馬建と北大方正集団の李友・前総裁との関連、そして令計劃(*第17期中国共産党中央委員、党中央書記処書記)、周永康(*第17期中国共産党中央政治局常務委員)との関連、さらに指導者の会話などを盗聴した非合法活動が挙げられていました。

    郭文貴の名前は当時、財新ネットの1月16日にでた「方正紛争は表面上は収まりつつあるが、水面下の暗流は奇奇怪怪」という文にでてきただけです。この文章は方正集団と政泉持ち株会社の間のトラブルを紹介したものですがこれを読んだとき「話のつづきはまだまだあるよ」という作者の合図を読み取りました。

    当時はたしかに「水面下の暗流」の真相が何かはわかりませんでした。しかし、3月24日から、中国内の「三大メディア」が前後して「出動」します。騰讯財形は当日に「郭文貴とその秘密の『盤古界』」、財新ネットは「郭文貴の高官狩り;血盟から反目へ」、財形ネットは26日に「郭文貴のすべて」、財新週刊は3月30日に「権力ハンター郭文貴」と。

    これらの文章の最も注意をひかれるところは、登場人物の目がクラクラしそうな様々なビジネス界での争いでは実はなく、郭文貴と国家安全部門の関係にあります。「関係部門の調査によれば、馬建はみずから権力を握った部署において、なんと郭の国内経済犯罪の大罪を擁護したばかりか、技術的手段も供与していた。郭と馬建のうちと外からの攻撃のもとで、国家安全系列の力は官と商の結託の道具となった。当部門の幹部多数が取り調べられている」とか「郭文貴がたらし込んだ役人のなかには国家安全部門と関連のある特殊なメンバーが含まれ、これが本人の神秘性を高め、そのビジネス活動に巨大な便宜をあたえた」とあるところです。

    RFI(仏国際ラジオ)中国ウェブサイトの上海特約記者・曾国星は大変鋭くもこの事件はなにか異常なところがある、と「郭文貴の物語;情報機構の権力掌握闘争」という記事(3月27日)で上述の多くの報道の関連する内容をまとめて、この事件のキモは「郭文貴の事件の肝心なことは反腐敗政策にあるのではなく、情報部門の権力の組み替えにある。今回の郭文貴事件の全面暴露は、郭文貴の火遊びが自滅を招き馬建という郭の情報部門における直接の盟友を失脚させたようにみえるが、それよりも新たな権力掌握者の意図はこの事件を徹底的に洗い出して情報部門を直接掌握することにある」といっていますが、慧眼というべきでしょう。

    《馬郭結盟の”人たらし”》

    馬建が使っていたマネーロンダリング係は郭文貴だけではなく、郭のバックも馬建一人ではないかもしれません。(財新は「馬建は郭の重要な盟友の一人にすぎない」と郭も「もっと上の指導者も知っている」と自称していました)しかし、今回は馬建に話を限っておきます。財新の郭についての報道「郭文貴の高官たらしこみ;結盟から反目へ」には、馬郭の結盟の始まりと道のりが見えます。

    「2006年、馬郭同盟の人たらしが始まり、ここから郭文貴には『悪運が極まれば幸運がやってくる』という転換点がおとずれた。極めて重要なこの結盟以来、彼は戦わずして勝つようになった。しかし、18回大会以後、形勢は逆転。「ある特別な身分の人間の保護傘のしたで人に知られない”虎の威を借りた狐”の虎狐連合はビジネスライバルの見本となった。その資本運用の輸血式モデルが失敗して、氷山の一角が暴露された」(*郭は経営は下手で、借金トラブルや訴訟で何度も逃亡している。)郭文貴は南華早報の3月30日の独占インタビューで馬建との関係を聞かれて密接な関係を認めたばかりか、「彼がいなかったら今日の自分はない」とまでいいきっています。
    では、この「氷山の一角」とはなんのことでしょう?

    財新の文章のエピソードでは、郭文貴が劉志華の事件での60分のビデオは(*北京の超一等地をめぐって対立した北京副市長の劉の収賄の証拠映像を中南海に垂れ込んで失脚させた)特殊な部署からのパイプで入手したもので直接、中南海に届けられ、高層指導者たちが激怒した結果」とあり、この特殊なルートは馬建が提供した。こうして2006年「摩根センター(*郭の行っていた北京の大商業ビル群建設)」は失地回復してここが明らかに転換点となった。(ジジの蛇足;つまり田舎の不動産業者が、強引に資金繰りも怪しい首都の超一等地の開発計画を実行し、それに反対した東京都副知事の首を飛ばしてしまった、みたいな感じらしい。)

    馬建の力の威力を借用する目的は劉志華といった文官に対してだけではなく、2008年、北京の金泉広場プロジェクトで北京の保利企業との協同のトラブルでも、最終的には和解で収束したこと、これが真の凄みをみせたものであった。というのは保利の親会社である中国保利グループは軍側の企業であり、理事長は総参謀装備部の少将・賀平、つまり開国少将の賀彪の子であり鄧小平の娘鄧榕の婿なのだ。賀は2010年に退職した。このような超トップの名門の婿殿の旗下にある企業とさえ「和解」できるという力はものすごいとしかいいようがない。この一戦の戦績が「郭のビジネス相手はことごとく道を憚って譲る」という伝説を生み出した。相手が恐れ憚ったのは、郭文貴ではなく、その背後にいる馬建だったのである。

    民族証券を手に入れるにあたっても、国家安全部は郭の政泉が不動産購入するにあたって、北京国資委、北京産権交易所に安全部からの公文書を出し馬建はみずから安全部の名において自分が表面にでて排他的な条件を要求して政泉企業が唯一の購入者になるようにして、郭文貴と少数の国家権力機関の職員が内外で結託して優良な数十億の国有資産を流失させたのである」と。

    国家安全部副部長の馬建をバックにした郭文貴のビジネス活動を展開する上での重要なツールのひとつは録画ビデオ。「ある情報では、郭は自分の河南裕達国貿ホテルや、北京盤古ホテルで指導的な役人と接してホテル内の高級娯楽施設で贅沢品や女をあてがい堕落させて引っ張り込むと同時にひそかにビデオ装置などで指導幹部の面目丸つぶれになる画像を撮影していた」と。これらの録画は馬建自身が国家安全部で経済事件を調べる時の武器のひとつにもなる。いま馬建が逮捕され、郭が海外逃亡し、こうした昔の「締め上げ道具」の一部はかならずや中央規律委の手に入ったでしょう。いまごろ盤古で豪遊していた賓客たちはビクビクものでしょう。

    《馬建の話はまだいろいろ先へのびる》

    馬建は獄に繋がれたとはいえ、その腐敗の成果はまだちょっと暴露されただけです。たとえば6棟の別荘に6人の情婦がいて、私生児が二人いるとか、郭との「悪魔の契約」だとか。しかし、馬建の話の山はまだ先でしょう。というのもいくつかまだ展開されていない事件の筋があるからです。

    その1;「環球人物」雑誌によると、馬建は令計劃(*逮捕、秘書の王様)、周永康事件と関係し、指導者の会話を盗聴していた。

    その2;郭文貴のバックの「馬建以外にもさらに大物がいる」。郭自身が劉志華を「現在中共最高指導部の一人で彼が私のために便宜を図ってくれた。何年もの知り合い」と。(*曽慶紅の名前がなぜか頭に浮かびますな(^^;))

    その3;財経3月26日の「郭文貴のすべて」では2013年末、郭は香港の上場企業のデジタル王国会社で8億4000万株をもっており、ここの株主には戴相竜の婿の車峰がいる。車峰も盤古の巨大ビルに不動産管理会社を持っている。2013年1月1日のNYタイムズは「戴相竜の親族が平安で一儲け」という記事でこの一家族と平安保険の間の話を掲載し平安保険は数多くの紅色貴族家庭の財産を預かっているといわれている。

    第4には郭文貴はいま海外に逃れて、いまだに様々な嘘とも本当ともつかない情報を流しており、外界はその真偽の弁別に追われていますがということはつまり、この話はまだ継続中、ということでもあります。

    そのやりくちと底なしの様相からして、馬建は現代中国のスパイ組織をつくりあげた戴笠に比肩できる存在です。李軍林監督は馬建に関する報道をいみたあと、ブログに「国家新聞出版ラジオ映画テレビ総局様;これ映画にしていい?スパイ、国家安全部、エロ、兄弟、反目、裏切り、忠誠、離反、表と裏社会、罠の中の罠、反腐敗、囲い込み、なんでもある。中国におもしろい映画のテーマがない、なんて誰がいったのさ?」と書き込みました。

    中国では官商は「紅」、役所にくっつく劉漢のような悪い勢力は「黒」です。馬建は「紅」でありながら、その手法は「黒」です。ですから、馬建という中共情報部の高官は今の中国の「紅」と「黒」を一身にあつめた絶品の存在といえましょう。(終)

    拙訳御免。
    何清漣氏の原文は;安全高官马建的红黑之路
    http://www.voachinese.com/content/heqinglian-blog-majian-20150401/2703567.html
    何清漣氏のこれまでの論考日本語訳は;http://heqinglian.net/japanese/

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