• ニセ「国連世界国民資質調査」が人気のわけ

    by  • May 1, 2015 • 日文文章 • 1 Comment

    何清漣

    2015年4月9日

    全文日本語概訳/Minya_J Takeuchi Jun

    http://twishort.com/EwZhc
    最近、またあのニセ「国連世界国民資質調査」がネット上に流れています。数年前にでたときは中身を読まないでも「また中国人が外国の権威を利用してガセネタをながしている」と思いました。なぜなら国連はこのような国連憲章の人権と民族の平等の原則に反する調査など自殺行為ですからやるはずがないのです。少しでも国際事情に通じた人なら私と同じ判断をしたでしょう。しかし、外国の権威を借りて自分を権威付けようとするのが習慣になっている中国では2006年以来、こうした「調査」のニュースは一、二年ごとに登場してネット上で人気となってろくに真偽の検討もされずに引用されています。

    《ネットで流行る『国連調査報告』》

    今回のは全世界の169国家がこの調査に参加し、この国民資質のベスト10は日本、米国、フランス、オランダ、スイス、カナダ、豪州、ドイツ、ロシア、NZ。ワースト10の方は、インド(169位)、中国(168位)、アフガン、今後、タイ、ウクライナ、朝鮮、メキシコ、スリランカ、東チモール、です。中国人の資質はインドより上でアフガンや朝鮮より下で東チモール以外は中国人がよく知っている国々です。

    この国連の名を騙った調査なるものはなにも今回初めて出現したわけではありません。2006年にはネットで「国連が全国家の国民道徳水準ランキングを発表」というのが流されて、168カ国を調査した結果、日本、米国、フランスが1位から⒊位を占め、中国は167位でビリから二番目だ、というのでした。でもこれはトップ10位と下の10位をあげただけで真ん中の諸国の順位は書いてありません。この後、このランキングと大して変わらない内容のが毎年登場します。例えば2007年、2009年、2013年にもあり、リストの順位は変わらず年だけ変えて。今年のは国の数が169になっただけですね。

    このような”ニュース”が毎年のように出現するのに業を煮やした「北京青年報」はというとう国連に問い合わせをしその結果、国連の文教部門からこれは自分たちは関わりのないものだという回答をうけとりました。そして同紙は「国連のデマ、中国が世界のビリから二番目という調査報告」(2013年9月2日)という記事で、こうしたニュースが毎年ホットな話題になるのは国民の資質がホットな話題になったときと指摘しており、例えば2013年5月には、ネットでエジプトのルクソール神殿に漢字で南京の中学生が「丁锦昊はここにきたぞ」という落書きを釘でほりこんだ話が暴露されて、多くのネットでこの調査がその傍証としてあげられました。8月23日には赤ん坊を抱いて地下鉄で小便をさせた女の乗客が蹴飛ばされたというニュースでも多くのネットで「国民道徳の水準」が熱い話題になりまたしてもこの「ランキング」の話が大衆の視野にはいってきました。

    《中国人はなぜこうした伝聞を信じたがるのか?》

    中国人はなぜこうした伝聞を信じたがるのか?それは、まず自分たちが肌身で感じていることとピッタリだからです。20年以上前から、中国人は社会道徳の大崩壊による痛みを感じてきました。この分野では中国政府の役人たちが”率先垂範”し、あとからあとからと続くかれらの”腐敗の業績記録の更新”があり、20世紀の90年代前半の腐敗が100万元だったのが、1000万元、億元、さらに何十億、何百億、千億元を超えていき、愛人の数も数人から数十人、はなはだしきは100人を超す記録保持者まであらわれました。江蘇省の質量技術監督局の陸正方、江蘇省建設庁の所長・徐其耀、湖北天門原市の共産党書記・張二江などです。

    ですから、2014年、政府メディアが軍の副主席の徐才厚の自宅から現金16億元(そのほかに封をきられてない何千万元も)や、十数トンにのぼる玉石ヒスイがみつかったときかされても、もっとすごいのがあるだろうという話をきいている中国人はもうすこしも驚きませんでした。ビジネスエリートたちも負けてはいませんが、彼らは自分のお金ですから大衆が彼らに求める道徳基準はそんなに高いものではないので、何をしようと国民はたいしておどろかないのです。

    しかし、今や知識人のエリートの代表である大学教授までがしょっちゅう道徳的な行為で国民を仰天させるようになりました。セクハラなんかはもう誰もが聞き飽きた話ですし論文の剽窃だってあたりまえの小事にすぎませんし、国際的なもので、最近では英国の医学論文専門出版社のBioMed Centralが43編の論文で、「同業者の論評」(*その論文の中身が本物である、という審査に相当する同業の証明になる)がインチキだったとして出版を取り消しましたが、この9割が中国大陸の学者のもので、中国医科大学、四川大学、山東大学、交通大学医学院が含まれています。公共の場所で人が倒れていても助けないとか長距離バスの中で公然と女性を強姦する事件がおきても乗客はみな寝たふりをしていたとか唖然とするような話もすでに中国人の日常生活の一部となってしまいました。

    「底辺民衆」は常に正しく神聖である、と美化したがるポピュリストが珍重する社会底辺層ですが、その道徳状態というのは実は別に上層人士たちより特に優れているということはありません。各種の騙し騙されに満ち満ちている村社会の様子は、多くの農村出身の知識人によって描かれた「わがふるさとは堕落した」といった文章の中にも垣間見得ます。もっともおどろかされるのはこうしたものより映画の「盲井」で描かれた障害者やその通人がが炭鉱に働きにいって、わざと事故にあって命を落としたり、その賠償をゆすり取る「人が人を喰う」話が現実のなかでもたびたびおきていることです。

    こうした事件の被害者も加害者もどちらも社会底辺層であり、最近多くの省で相次いで発生して、とうとう公安部が扱う大事件になりました。2003年に一部の社会的な責任感から映画化された「盲井」も、本来は人間の暗黒面を批判し、こうした犯罪行為をなくそうという動機から作られたものなのですが、その結果は逆に映画の真似をする事例が相次ぎ2009年にはなんと各省で一種の犯罪形態になってしまいました。映画のなかで手術をうけてわけのわからないまに身体の器官をとられてしまうという話は実際よくみるニュースとなってしまいもっとも有名になったのは河南省の農婦の徐秀英が右腎臓をなくした話でしょう。

    毎日、こうした真っ暗な話に疲れ果てた中国人が、国連調査によって自国の道徳水準が世界のビリから二番目だというようは話を証明しようというのは自国の道徳水準に対するほんとうの認識、というべきでしょう。インドの上だというのは、ひとつには世界最低の民族というのはあんまりだという気持ちとふたつにはインドの世界をおどろかせた輪姦事件のせいでしょう。

    《外国に事寄せて、今を批判するのは、古を借りて、の変形バージョン》

    近代以前は中国人は自分に重みが足りないと思ったときは故事に託して表現することが大好きでした。政治上の表現でもっとも有名な二人といえば西漢末に「古へにもどる政治を行う」と称した王莽と、もうひとりは近代の康有為による「孔子改政考」で、どちらも自分の政治改革に付加力をつけるためでした。

    しかし、アヘン戦争で中国人は列強の「黒船大砲」の威嚇のもとに徹底的に文化的な自信を失ってからは「西洋の威を借りる」が流行となりました。改革開放以前はそれは「マルクス曰く」「レーニン曰く」でしたが、ここ数十年は西側諸国の有名人の言葉に託す、というやりかたで、その有名なものは3つあります。ひとつは、息子の方のブッシュ大統領が「権力は籠にいれておかなければならない」といったという話。(*中国人の仮託 http://twiffo.com/1E4z )二つ目は「ランドの調査報告」というもので、それには中国人の特徴が列挙されていて、例えば「中国人は社会人として国家と社会に義務をと責任があることを理解していない」「中国人は世界で信仰をもたない唯一の恐るべき国家である」「中国人のいう政治というのは欺瞞と裏切りしかない」「大多数の中国人は体面と尊厳ある生活の意義がわかっていない」「中国人の価値観は私欲の上にたっている」といったものです。3つ目はヒラリー・クリントンが国務長官時代の「ハーバード大学での演説」というもので「20年後に中国は世界でもっとも貧しい国のひとつになる。なぜならば、中国の9割の役人の家族8割の富豪が移民申請をしたかしたいとおもっているからだ。中国人は社会における個人として国家と社会にたいしておうべき責任と義務を理解しておらず、勝手気儘に環境を破壊し、資源の略奪に狂奔している」といったというもの。

    ここで列挙した「外国人の口を借りて自分の言いたいことをいう」のは実はどれもそれなりの見解としての言葉ではあります。近代以来、類似した言論は少なからぬ知識人の文章にあらわれており外国人にかこつけて世の人の注意をひいたり、西側の有名人の名前や機関の名を借りて発表したのです。こうした心理はよく言えば自分の権威不足を心配してのあまり、ともいえますし、悪く言えば、深刻なまでの自信が欠如ともいえます。自信の欠乏というのは実は民族として引け目を感じている劣等感心理の一種の表現で、中国人が「愛国主義」で武装して自分の民族はえらいのだ、とおもいたがる心理の別の一面であります。つまりは自分たちを卑下する心の深さの裏返しなのです。(終わり)

    拙訳御免。
    何清漣氏の原文は;《联合国全球国民素质调查》假新闻为何屡现?http://www.voachinese.com/content/rumors-repeat-heqinglian-blog-20150408/2712276.html
    何清漣氏のこれまでの論考日本語訳は;http://heqinglian.net/japanese/

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