• 「李嘉誠ネタ」は権力と資本のピリピリ関係

    by  • October 12, 2015 • 日文文章 • 0 Comments

    何清漣

    2015年9月30日

    全文日本語概訳/Minya_J Takeuchi Jun

    http://twishort.com/3fijc

    「李嘉誠(*世界最大の華人資産家・香港の最大の企業・長江実業グループ創設者)を逃がすな!」という話題は超ホットなネタとしていまだに余燼がつきません。ネタを最初に書いた人物から李嘉誠本人が長江地産の報告書で態度表明までおこない、さらにそこへ「人民日報」まで「困難にあって李嘉誠がともに難関にあたらずといえども、引き止めるには及ばず」という”太っ腹”な記事を掲載したということは中国人がいまだに国際資本の流動するルールを「チャンスがあれば大儲けできるオポチュニズム」程度にしか認識していないということをありありと示しただけではなく、中国の国家権力と資本のますますピリピリしていく緊張関係をみせつけたものです。この論争は権力と資本間における「代理戦争」ともいえますが、現段階の中国における資本の「三重の苦境」をあきらかに露呈しています。

    ⚫︎第一の苦境;香港資本は中国においては「名目は外国資本でも実際は国内資本」という立場。

    かつて鄧小平が改革開放政策を決定したとき、「開放」の翼の上にはでっかく「外資を呼び入れよ」とかかれていたも同然でした。90年までずっと、香港資本は外国資本の中でも最重要な存在で、台湾資本がそれに次ぎました。当時、中ソ両国の改革を比較研究していた学者はみな、世界各地の華人資本が中国の改革開放を成功させるだろうとみていました。

    当時の中国政府は香港の地理的位置とその特殊な経済の働きから、香港資本を外国資本として位置づけるという政治的決定を下しました。私は以前「中国地区治理危機の起源;経済編」の中で香港の地理的位置とそのもたらす優位性を分析しました。中共が政府権力を掌握して以来、香港はおもに中国大陸のために「国際的ブローカー」の役割をはたし、中国が西側の全面封鎖にあったときには、中国の「国際パイプ」であり、また国外からの資金、技術を導入するパイプでもあり、さらには輸出の窓口でもありました。1979以後、中国が対外に改革開放をおこない、香港商人は中国大陸投資の主体となったばかりでなく、中国の対外開放の道案内と橋渡し役でもあり、導入した外資の7割が香港資本で、それについでは台湾と日本の資本でした。

    2001年、中国がWTOに加盟した後、香港は次第に中国への橋渡し貿易の地位を失い、そのオフショア金融業務は次第に質の悪いものになってしまい、中国の紅色貴族顕官たちの官僚資本が自分たちの金を外国資本に化けさせる「裏庭」となりさがりました。これは「人民日報の「10大外資来源地」の秘密 http://heqinglian.net/2013/09/16/fake-fdi-japanese/)に書きました。香港からの投資は397.15億米ドルで外資総額の65%をしめたのです。

    1978年からWTO加入の2001年にかけての香港自体が返還前、あるいは返還直後だったので政治的配慮から中国は香港を外資として扱ったのでしたが、2001年以後は中共政治集団の内部の人間たちの自分たちの利益から、香港を経済的には外資としたのです。利益集団にとってみればこれはマネーロンダリングや資本移転の重要なパイプだったのです。ですから今、スーパー級の香港大商人と香港にある中国資本というのは中共の血肉レベルの関係者であり、徒手空拳から起業した中小の香港商人たちは他の国々で起業するか、あるいはもうとっくに破産してしまっています。しかし、「李嘉誠たち」と中共の血肉関係にある連中の立場的苦境とその「資本逃亡」はこれは避けては通れないテーマではあります。

    ⚫︎第二の苦境;外資の眼中からみれば、資本は「行きはよいよいかえりは怖い」の「資本通りゃんせ」?

    「李嘉誠たち」の話は中国人なら誰もがわかりますが、外国人にはわかりません。今年の中国の株式市場の政府命令による株式大量買支えから、最後には「中国空売り」の罪名で逮捕などということは政府による資本マーケットへの不当な干渉で、政府が悪意をもって資本の自由な流動を制限したと中国の外側の世界ではみなされています。国際投資業界では危険の臭いを嗅ぎ取って、中国の株式投資を「肉を咥えた犬」(*川に映る姿を見てワンと吠えると…というあの話かな?)と形容しはじめました。そこへ「李嘉誠を逃がすな」という話題が丁度登場したので、一層、疑惑を招き、中国政府が国際資本の流動をコントロールするのかもしれないとおもわせてしまいました。

    いわやる、国際資本の流動とは資本が異なった国や地区の間を転移することで、具体的には投資、借款、援助、輸出、買い方信用貸し、売り方信用貸し、外為売買、証券発行と流通などをすべて含みます。多国籍資本の世界の動きは国際資本の流動は流入も流出も自由です。WTOに中国が加入したとき、主要なメンバーである米欧各国は中国に将来、金融を開放し、外国資本の進入を許可するようにということは要求しましたが、メンバー国の中ではどの国も資本の流入を許し、流出は許さないなどという国はなく、つまり外資が来るのは歓迎しても去るのは制限するという事例がなかったため、このような状況への対応策は誰も考えていなかったのです。今年の中国政府の資本流動への管制は国際資本を少しく賢明にさせました。

    ただ、この種の「賢明さ」は国際資本に心配の種を増やすことになりました。万一、いつの日か中国が資本の流出を制限したらどうしよう?というわけです。ですから、彼らは中国が完全に整った資本流動の原則、来るのだけを歓迎するのではなく、資本が自由にでていくことも許すようにのぞんでいます。

    ⚫︎第三の苦境;中国の私人資本は自らの安全性について心配なのです。

    中国人の私人資本はずっと世論からは「原罪」を背負っているものとみなされてきました。というのは世間からみれば大部分の民営企業はどこだって権力とつるんで「グレーゾーン」で活動したからこそ、大企業になれたのでその財布の中身はちっとも綺麗なものではないということです。他方、政府側からみれば、やはり政府が便宜をはかってやったおかげでこうした私企業の経営者たちはそれぞれの企業の”国王”になれたのであって、脱税、申告漏れ、二重帳簿などはどの企業もやっており、弱みのカタマリのようなものです。通常、政府が金に困ってなければ、政府の役人と私企業主との関係はよく、こうした弱みは問題にもなりません。しかし、一旦政府財政がピンチになれば、あるいは私企業のバックにしていた大物が反腐敗キャンペーンなどで落馬し入獄したり、引退しようものなら私企業主たちはもう安全ではありません。この数年の四川省や山西省で束になって企業主たちがやられてしまったのは、私企業主たちはまことに同病あい憐れむ、明日は我が身か、という気持ちにさせられたのでした。

    2014年の「国有企業改革の深化についての指導意見」と「完全なる公有制実現形式に関する指導意見」で公開意見募集をおこない、私企業の株主参加を働きかけました。すくなからぬ私企業経営者はすでに中共がその巨大な万能の神の手のひらを自分たちの頭上にかざしていることを察知し、政府が「門を閉じて中の犬をぶったたく」恐れがあると察知し、三十六計逃げるに如かずと早くも大量の「海外投資」を開始したことで、外貨保有は急激に減少し、今年8月中旬のあの数日は毎日の交易量は500億米ドルにのぼり、北京は外貨準備高があっという間に干上がっていくのを痛感し(「経済学人」9月28日によると、6000億米ドルが流出)、外貨規制を強化したのでした。そして「中国空売り」の罪名で数十人の証券会社幹部を逮捕したことで、権力と資本の関係はようやくピリピリの緊張状態になったのです。

    ⚫︎李嘉誠は三重の苦境を一身に負って

    李嘉誠は香港のビジネスマンであり、その中でも北京の最高権力者に最も近い最高レベルの金持ち商人です。そして香港ビジネス界のトップエリートであり、かつて中共の歴代指導者にも接見されました。鄧小平が1978年と1990年二度にわたって接見し、彼に最高権力者の”応援お墨付き”を与えましたし、李嘉誠は香港と大陸でその道を阻もうとするものは誰もいませんでしたし、その特権たるやいかなる太子党のメンバーをも凌駕するものでした。羅天昊が発表した「李嘉誠を逃がすな」には「李嘉誠がこの20年間に中国で儲けた在府の性質は単なるビジネスを通じて得たというような単純なものではなく…、不動産の富は完全なる市場経済からなどではない。だから自分がもう中国からでていきたいからでていける、といったようなものではないのだ」と書いています。

    歴代の指導者が李嘉誠に期待したといっても、そういう望みは本来、「政府の御用商人」に対するものでした。しかし李嘉誠本人は自分は外国商人であり、私企業主であるとおもっています。だから資本の安全のために過去数年の間に香港、中国本土から一千億元をはるかに超える資本を撤退させたのです。「人民日報」は「困難にあって李嘉誠がともに難関にあたらずといえども、引き止めるには及ばず」というあえて太っ腹な一文を書いたのですが、他方では「歴代中央指導者は李嘉誠にどんな要求をしたか」と相変わらずこの問題を記事にしています。

    そこでは;李家の資本は中国政府が政策と特殊な待遇を与えてきた名目は外国資本だがその実は中国の国内資本であり、国とともにあるべきであり、いま国家経済の困難がはじめてみえてきたとき、李家が財産をかかえて外国に移るというのは実際にあまりにも中共党のこれまでの恩義に背くものである」とあります。つまり国内メディアがあからさまにしないのは、李嘉誠の資本撤退は「船が沈没する際、船員たちは自分たちが海でつかまる材木を確保するために自分たちの船を壊し始める」その始まりだということです。

    9月17日夜、李嘉誠は旗下の「長実地産」の発表した2015年予想の中で、中国経済は香港や中国内地及び海外の核心市場において持続的に発展し、経常の収入を得られる不動産投資も継続持続し、合理的な土地を保有してバランスのとれた穏やかな成長を遂げる、状況はわるくないのだ、と好意的にみている、と論評しました。すでに千億を越す資本を逃避させた李嘉誠がこうした態度をとるのは彼は自分の資本の巨大な秘密に対して分をよくわきまえており、北京にとことん、アカンベーをしてみせるなどということはしたくないのだ、ということでしょう。

    その実、香港の資本が中国から去るというのは一人の李嘉誠の問題ではありません。なぜなら外資の65%は香港の中国資本だからで、その中国資本がどうして蓄積されたかといえば、ほとんど李嘉誠と同様に権力と関係を結んでその助けを借りてつくりあげたものだからです。

    中国の衰亡の最初の兆しは2009年でしたが、資本はその後数年様子を見たのち、ついに逃げ出したのです。「李嘉誠が逃げた」という話はたちまち巨大な無数の波となってひろがってしまい、中国の現段階での権力と資本の関係は日増しに緊張を加えてきました。この緊張関係は習近平政治の(*反腐敗や贅沢禁止といった)特徴と関係がありますが、さらに言えることは中国経済の黄金時代が終わったことに関係したものなのです。(終)

    拙訳御免。
    原文は;: “李嘉诚话题”突显权力与资本关系日趋紧张
    http://www.voachinese.com/content/heqinglian-blog-war-power-20150929/2984634.html

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