• 「二人っ子」解禁と労働力の関係

    by  • November 2, 2015 • 日文文章 • 0 Comments

    何清漣

    2015年10月31日

    全文日本語概訳/Minya_J Takeuchi Jun

    http://twishort.com/Lwtjc

    10月29日、中共中央委員会第5回全体会議(5中全会)公報が発表され7つの要点が明らかにされましたが「2人目の子供の出産を全面解禁」がトップでした。

    ★「全面解禁」の目的は民意慰撫

    公報によると高齢化の危機(60歳以上の人口が10.1%)に対応するために、中国が夫婦が二人の子供を育てても良いという政策を全面的に実施するとしています。

    この「二人っ子政策」の第一のポイントは民心の慰撫です。経済の退勢が如何ともしがたい時に、「困った時にこそインスピレーションが湧く」で少しでも明るいニュースを作って民心を得ようというわけです。

    この政策に民心を慰撫する力はあるでしょうか?ある、と言えますがしかし限界があります。というのはこの政策によって真の利益を得るのは都市住民で中共党の政治機関に勤務する中低層の公務員と企業のサラリーマンなのです。これらの人々はこれまで一人っ子政策に違反した時の罰則で仕事を失ったり、巨額の反則金をとられるのが怖くて一人しか子供を産めませんでした。

    中国の農村地区の大多数は二人っ子かそれ以上子供がいます。農村地区は実はとっくに第一子が女の子だったら二人目を生んでよいという二人っ子政策になっています。しかし実際には最初の子が男であっても罰金をおさめれば二番目、三番目、時にはもっと沢山生んでもよかったのです。中国メディアは農村の貧しい家庭は一般に子供が沢山いる家庭だと報道してます。とはいえ四川省遂宁市蓬南镇三台村村民の何洪のように17年間に11人の子を産み、別に罰金を収めずかつ10人はちゃんと戸籍もあるというのはさすがに珍しいケースですが。

    中高級官僚のなかには、実はもうとっくに愛人という形で複数の子供をつくっています。ただ彼らが失脚したあとでないとそれがバレないのです。もっとも有名なエピソードは前の党中央書記処書記・令計劃のケースで7人の長期的な愛人に5人の私生児を産ませていました。お金持ちたちは別に左遷されたり首になったりする心配がないのでより多くの「子供を自主的に持つ権利」を得ています。またお金で生育権を買うこともできます。(監督の張芸謀は婚外子3人のために748万元=約1億5000万円=の罰金を払いました)。あるいはその妻や愛人を米国やカナダにやって産ませてその国民にすれば中国戸籍なんか別に必要なくなります。

    中共の党政にかかわる機関の事務職や教育機関で働くような人々だけが二人目を産もうとしないのです。中国青年政治学院の副教授だった楊支柱は2009年、妻が二人目の子供を産んだために罰せられてクビになり、中国で有名な上訴難民となり、生活は激変しました。(*楊は罰金を拒否し解雇されると、「私売ります」のビラを持って街頭に立った)。今になって「二人っ子政策」が発表されたことは「遅ればせながらの公平」といえましょうし都市人口の主体である人々にたの社会グループ同様の子供を持つ権利が与えられたと言えるでしょう。

    ★中国の高齢者は”20年後の労働力”に期待できるか?

    二人っ子政策を採用した主な理由はつまり老齢化の危機が迫っており、労働力の供給増加が必要だからです。政府も学者もみなこれが一番の確かな理由だと口をそろえます。

    このお話の間違っているところは ①現在あわてて中国人の子供を育てようとしても労働力になるのは20年先の話である。 ②現在の老齢化の危機がもし本当に労働力の欠如なら、中国に今、労働力過剰問題はなく、逆に労働力の深刻な不足があるはずです。しかし悲しい現実は;中国は今、労働力が全面的に過剰になっており、質の低い労働力も、教育を受けた修士以上の学歴を持っていても仕事を探すのが困難で、外国企業のサラリーマンだって大量に仕事を失っているということなのです。

    中国の失業人口は最低に見積もっても3億人以上です。(温家宝前総理が2010年3月に出席した中国発展高レベルフォーラムで明らかにしたのが「中国の失業人口は二億」という数字。経済学者の林毅夫が2015冬季ダボスフォーラムで中国は1.24億人の製造業の就職先を失う、と述べた)。現在中国の労働年齢人口は9.4億人で失業人口は3億に達し、真実の失業率は32%相当です。(「低出生率が労働力危機を招く」説ー反産児制限派の悪い冗談ーhttp://heqinglian.net/2015/02/01/birth-control-japanese/

    現在、中国メディアは失業の波が外国企業から、東莞の輸出加工企業、鉄鋼企業、石炭産業などの資源型企業に及んでいると報道しています。「第一経済日報」の最近の報道によれば、相対的に安定している国営企業でも「隠れ失業」現象が増えています。こうした危険には企業の雇用要求が現象(同期比で30%減)、一部の省や市では失業の危機が募っているなどといわれます。

    ですから、中国人にとっていえば政府に子供の養育権を返せと要求するのはストレートな現地の要求であって、「人口ボーナス」が消えたからとかいう問題と一緒にする必要などないのです。

    高齢化時代の老後問題危機の解決のために二番目の子供をというのが政策であるなどというのはまったく「梅干しを思い出して喉の渇きを止める」ようなもので現在の失業という問題をどうにもできないでいるのに、20年先におおきくなる労働力が、いまもうすでに出現している高齢化の危機を緩和してくれるのを望むという、まったくもって自分も他人も欺こうというものです。

    現在、中国青年の失業現象は深刻ですくなからぬ若者が親の脛をかじらざるをえないのが現状です。20年後に成長する青年の世代に高齢化問題を解決してもらおう、などというのは川の中でいまアップアップしている人に対して「焦るな。なんとかかんとかがんばって生き延びたら、大きくなった子供は家も、車も大丈夫。素晴らしい未来はこれから来るんだよ〜」というようなものです。

    今日がない人に、明日はありません。今日の灰色の社会に明日の光明はありえません。ここ数日、ネットには《【红镇调查】中国农村后代之殇:从留守儿童到乡村混混》中国農村の今後の憂いー農村の留守児童問題が伝えられていますが、これは教育にかけた養育の結果がいかに恐ろしいかを物語っています。

    ★一人っ子政策から社会全体の計画的育児へのモデルチェンジの時

    米国政府は中国の二人っ子政策を歓迎しつつ、今後は産児制限をもうけぬように希望しています。米国の人権派の人々というのは人口問題、経済問題がわかってない人たちで、ただ人権にだけ注目しています。しかし、それでもその人々の主張の一点だけは中国政府も考えたほうがいいでしょう。それは産児制限政策ではなく、社会全体が計画的出産・育児をおこなうことです。簡単にいえば、家庭の規模をどうこうする権利は民衆に返して、政府が口出ししないことです。

    中国が一人っ子政策をとった(1980年)のは当時の社会条件のもとではまったく無茶だったとはいえません。しかし実践の過程で一人っ子政策は完全に罰金を徴収する集団が私腹を肥す利益集団になってしまい、強制産児制限の実行過程で数々の非人道的な暴行が相次ぎ、全社会的な反感と国際社会の非難を浴びました。

    しかし一部の反対派はやはり行き過ぎというべきで、彼らは故意に日本や台湾、香港かいずれもかつては産児制限運動をおこなったことを無視したり、政府による産児制限政策と社会の計画的出産・養育の違いを故意に混ぜこぜにしています。これは中国の未来に有害無益です。私は「中国的计划生育应向社会节育转变 (2012年4月 未訳)」ですでにこうした経験を紹介して、それぞれの家庭が自分たちの経済能力に応じた子供の数を決めて家庭の大きさをきめる必要性を述べています。

    現在、中国は社会の計画ある子育てを実行する条件は成熟しており、すくなくとも都市部と相対的に発展した農村地区では人々はもう子育てのコストと子供の未来の関係を理解するようになっています。

    2013年に実施された「単独2人っ子政策」(*夫婦のどちらかが一人っ子なら二人まで子供をもてる)が出された後でも条件をクリアしてさらに子供を産もうという人々は思ったより少なかったのでした。「単独2人っ子政策が不人気ーどう調整すべきか」という一文によれば、2014年北京の第二子申請した夫婦は2.8万組で、夫婦のどちらかが一人っ子の家庭のたった6.3%でした。つまり圧倒的多数の条件を満たす家庭でも二人目を生むことを申請しなかったのです。筆者はこれは北京の状況だが全国もあまり変わらない、としています。

    つまり今回の二人っ子全面解禁政策というのは実際にはこの二点を考慮してつくられたものです。;

    ①経済的なコストから条件がある多くの家庭でも実際にはたくさんの子を希望しない。
    ②事実上、都市の公務員やホワイトカラー以外の中国人で二人以上子供がほしい人はもう二人生んでいる。

    上海市婦人連盟は今年3月19日に「今後5年の上海女性発展要求」のレポートで「45歳以下の上海の既婚女性では15.1%しか二人目の子供を望んでおらず、半数以上がはっきり『一人で十分、二人目はいらない』と答えている」。そして子供養育のコストがその理由のトップにきています。

    この調査はまたしても「教育程度がうみたいこどもの数をきめる」という人口学の定理を証明しています。「調査によれば教育程度の比較的低い人は教育程度の比較的高い人にくらべて二番目の子供を欲しがっている」「郊外農村地区の女性は市街区の女性より第二子への希望が多い」「大学以上の教育を受けた女性は子育ての面倒を見る問題がから二番目の子をほしがらないという数は4割を超えた」「しかし地方からきた働く女性には老後の備えとして二番目の子供を欲しがる傾向がある」としています。

    以上の調査から明らかなように、二人っ子政策を実施してのちも養育コストや自分の生活の質を落としたくないといった理由から中国の都市部と発展した地区では怒涛の出産ブームなどはおきません。貧困地区の「多く生んで多く育てる」というのは人々の考え方が変わらないと調整はつかないでしょう。

    政府がやるべきことは日本やシンガポール、台湾、香港などの社会的な育児経験を参考にして、強制ではなく政策的な誘導によって中国の一人っ子政策といったものから社会全体が少なく産んでしっかり育てる、というような形にモデルチェンジしていくことです

    技術的な進歩や経済構造の転換によって多くの伝統的な職業が現在失われつつありますし、社会生産は人力資本や人数でもなくその質(受けた教育水準と学んだ専門)によって決まるようになりました。中国はチャンスに恵まれないお国柄であり、家庭環境が子供の教育のチャンスの良し悪し、塾にいけるかどうか、留学のチャンスや就職チャンスの有無を決めてしまいます。両親の教育程度が高ければ子育ては有利になりますが、それでも他の社会条件は普通の庶民にくらべて有利だというわけではありません。(終わり)

    拙訳御免。
    何清漣氏の原文は;全面放开二孩与养老及劳动力供给有何关系? http://www.voachinese.com/content/heqinglian-second-child-policy-china-20151030/3030436.html

    何清漣氏のこれまでの論考は;heqinglian.net/japanese/

     

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