• 中国農村の惨状⑴ー帰りたくても帰れない

    by  • November 2, 2015 • 日文文章 • 0 Comments

    何清漣

    2015年11月2日

    全文日本語概訳/Minya_J Takeuchi Jun

    http://twishort.com/rStjc

    この二年の間に製造業の大量倒産、公共事業と建築業の不景気によって中国の3億人の出稼ぎ労働者の行き先が再び話題になっています。3億人以上の失業者というのは米国の総人口に相当します。失業者数は社会の総労働者年齢人口の32%を締めます。数量でもパーセンテージでも如何なる社会も軽視できない事態です。

    ★なぜ彼らは郷里に帰れないのか?

    今年7月、ブルムバーグニュースは「中国3億の新労働者の現状;都市にはいられず、農村にも帰れない」という記事を発表しました。この「新労働者」(新工人)というのはこれまでの「農民工」に対して「政治的に正しい新呼称」です。記事は;2014年、全国の出稼ぎ労働者は2.74億人で8400万人が製造業、6000万人が建設業、2000万人が家事・サービス業についており、全国の農村留守児童は6102.55万人、流動児童(*戸籍がなく都市でも農村でも教育を受けらない)は3600万人に達します。

    記事が発表された時、中国はさらに大きな失業の荒波に直面し、貴州では一家4人の留守児童が農薬を飲み集団自殺する事件がおき、李克强総理は「農民は郷里にもどって起業し、一家団欒して人生を楽しめ」とゲキをとばしました。今回の5中全会(中共中央委員会第5回全体会議)では高校教育の普及が必要という提言がなされたのは農村青年が引き続き教育を受けられるようにし社会に受け入れを促進させようという意味です。

    問題は、こうして都市に住むようになった農民が失業しても、「都市の生活は(物価も高く)困難すぎて暮らしていけない」、しかし故郷に帰りたいとおもっても帰れないことを発見する、ということです。その原因は多重的で、ブルムバーグの記事ではほんの数語しか触れられていませんが、しかし中国農村の基層社会についてわかっている人ならばそのわずかな言葉から中国農村部の社会の生態がありありとわかるのです。

    ★農村の生態システムは崩壊しつつある。

    記事は「農業生態システムの瓦解」と言っていますが「瓦解」というのは「崩壊」を耳障りの良い表現です。いわゆる農業生態システムは主に、土、気候(空気、雨、水)でできています。中国農業のこの三代基本要素は深刻な破壊に直面しています。2014年4月、中国政府の発表した「全国土壌汚染状況調査公報」は調査範囲の630万平方kmの土地(国土面積の3分の2)で約5000万ムー(1ムーは1/15ヘクタール(666.667㎡)の耕地が重金属汚染を被って耕作には不適とされています。こうした土地は主に中国の長江デルタ、珠江デルタなど経済発展した地域にあります。

    中国の水資源は二つの痛みを抱えています。水資源不足と水質汚染です。「2014中国環境状況公報」のデータですと、政府の控えめな見積もりでも3分の2の地下水と3分の1の地上水が人間が直接触れないという残念な結果です。水の汚染が工業、農業、健康などにあたえる経済的損失は毎年2400億元に達します。空気汚染は毒スモッグ現象があきらかなように各地に深刻な汚染物質を含む黒い雨や赤い雨を降らせています。

    汚染物質は農業用水を通じて農産物に蓄積されます。その上過度の農薬使用で中国の有機農薬は標準を20%越えており(2014年中国農業部総経済師・銭克明の明らかにしたデータ)ます。これは中国の農産物が国際市場で全く競争力を持たないということになります。汚染と生産コストの上昇などの原因で中国の食料品は質が悪くかつ価格は国際市場より2、3割高いのです。もし政府の補助金と農産物の輸入制限がなければ中国の農業はとっくに崩壊していたでしょう。なぜ外国の安価な農産物を輸入しないのか?に対して、中国農村耕作指導小組の陳錫文ははっきりと供給と国際機市場の競争の他に、「もっと考えなければいけないのは今も農村に暮らす6億以上の農民のことだ」と述べています。

    さらに重要なことは、この十数年来、給与生活が農民の総収入の主要部分になっているということです。田畑を耕すだけでは政府の補助金が国際市場の価格より高く買い取ってくれても、一人当たりの耕作面積が小さすぎて収入はわずかなものでしかなく、出稼ぎアルバイトの収入に及ばず農民の家庭生活を維持できないのです。つまり農民工は帰りたいと願ったところでその故郷はすでに帰って暮らせるだけの物質的な条件が失われているのです。

    ★ヤクザに支配される農村

    農業生態系の瓦解と同様に深刻な問題は農村社会のヤクザ・ギャング化で、農村の基層組織の農村員会が基本的にヤクザに支配されるようになってしまっています。私は「中国現代化の落とし穴―噴火口上の中国」(2002) ですでに指摘しておきましたが、それからさらに状況は悪化してしまいました。2003年に農業税がなくなってから、政府は農村における直接の資源取得をやめると同時に、農村の社会秩序への関心も放棄してしまいましたので、農村の基層組織は次第にブラックな勢力によってとってかわられました。中国メディアの報道やレポートも大変おおくありますが、ここでは「瞭望」ニュースの 《引导好农村特殊群体》(2009年第30期)からみてみましょう。

    「瞭望」によると、農村税廃止の税収改革以来、中国農村の基層組織と農民の関係は「緊密」から「ゆるゆる」になってしまい、基層組織の組織にある種の「空白」が障子、そこに農村地区のブラック勢力がチャンスとばかりその権力を握ってしまいました。この種の勢力には三種類あって、一つには農村の特定の大家族によるもので、彼らは党と政府を助けて矛盾や紛争を解決することもありますが、管理が悪いと簡単に基層権力の「ガン」になってしまいます。その原因は大きい家族は一族で基層選挙を左右できますから自分たちの利益しかかんがえず簡単に他の小家族の利益とぶつかります。二つ目は農村の宗教勢力です。ある種の宗教勢力はいい面で積極的な働きもするのですが、悪い宗教がながす危険もすくなくありません。第三には農村の鼻つまみものやチンピラ、ヤクザが次第に元気になって基層選挙を牛耳ったり農村幹部とつるんで自分たちの政治的要求を通すというものです。

    比較的注目に値するのはこの記事の結論で、「こうした勢力は一度やっつければそれでなくなるというようなものではない。だから政府はこうした勢力をうまく利用してよい農村にするように誘導しなければならない」と言ってることです。この筆者はあきらかに中国の小学校の先生がムチをつかって悪い子どもを体育委員や労働委員にしたという教育的経験を例にだしていますが、この人が全然考えていないのは、中国の農村社会は青少年の学校社会などではないということ。

    こうした農村のブラック勢力が怖がる唯一のものは政府の権力です。政府の権力の前ではこうした連中も服従します。なぜなら彼らはどんなに悪のブラック社会勢力でも政府という国家機構には勝てないとわかっているからです。しかし金銭や物質を役人につかませれば、役人から村を治める権力を認めてもらえるわけです。しかし民衆に対しては連中が民衆側の利益や地域の利益によかれとおもって何かをするなどいうことはあり得ません。

    現段階では中央政府と農村の関係のゆるゆるさは、ちょっと国民党の時期に似ています。違いは中華民国の時代には1000年以上つづいてきた郷紳制度による自治の伝統がのこっており、土豪劣紳といえども相対的にはやはり伝統的道徳もあり、郷土社会を維持していく自身の責任がありましたから、まだその指導下の自治は良性のものでした。

    しかし、中共はこれら地主階級を殲滅してしまい、農村でそれまで権力からとおかった連中、ひどいときにはならず者のようなものをつかって「土地改革」(土地取り上げ)をやらせ、合作社をつくらせ、人民公社時代には幹部にとりたてました。伝統的な農村の自治はとっくにこうしたならずもの文化によってぶちこわされてしまっています。ですから中国政府が農村へのコントロールをゆるゆるにしてしまったら、残された権力の空白には必然的にこうしたやくざ者たちが埋めることになります。

    「瞭望」の記事を読むのはホネで、お話し的な物語のほうが読みやすいという読者は近年、中国のネットメディアに大量に掲載されている「わが故郷の零落」や「みんなの故郷はもうボロボロ」といった文章をお読みになるといいでしょう。そこに書かれているあらゆる物語はすべて同様の現象、すなわち農村社会のヤクザ化、村をおおう絶望的な空気(ある記事は「死の臭い」と書いてますね)を伝えています。

    正常な農村の地域社会は利益共同体ですが、すでにヤクザ化が悪化した中国の農村はもはや利益共同体と呼ぶのは難しい存在です。郷鎮製造業が汚染んをたれながし周囲に被害をあたえてもその企業を経営する家族はそこから利益を得ます。農村にくらす人々の大部分は目先のちっぽけな利益に目がいってしまい、いかなる公共事業、たとえそれが村民に就職のチャンスをあたえるものであってもこうした視野の狭い考えによって破壊されてしまいます。

    BBCの「みんなで中国を語ろう」という番組に以前、河南省のネット民からよせられた「農民工の故郷の現実の苦境」という文章にあった事件は深い意味をもっていました。それは「筆者の住む村では去年、ある外国資本がアパレル工場をつくったが、できあがると現地の各部門の役人が三日にあげずいらっしゃって、各種の理由をつけて飲み食いを強要したり賄賂をせびった。この種の圧力に耐えて工場が操業を開始してからは労働者が現地の村人だったため、彼らも工場からかっぱらいをはじめ羽毛服用の羽毛原料を塀越しに投げ出して盗み出し、工場は半年もたたないうちに閉鎖になった」と。このような現象は河南省だけではありません。

    中国の農村はもはや農村からいったんでた人々が戻れるような田園ではなく、「ふるさと」とはかれらの心の中にしか存在しないのです。ですから多くの「新工人」は失業し、職もないまま街でぶらぶらしても、郷里に帰りたいなどとはおもわないのです。(終)

    拙訳御免。
    原文は;何清涟: 乡村沦落 “新工人”有家难归 – 中国乡县社会生态(1) http://www.voachinese.com/content/he-qinglian-blog-china-migrant-workers-in-the-wake-of-economic-downturns/3032572.html
    何清漣氏のこれまでの論考の日本語訳は;http://heqinglian.net/japanese/

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