• 読書メモ②ーISISイデオロギーの物の怪

    by  • December 2, 2015 • 日文文章 • 0 Comments

    何清漣

    2015年11月26日

    全文日本語概訳/Minya_J Takeuchi Jun

    https://twishort.com/5b3jc

    いささかの疑いもなく19世紀から20世紀は物質文明と精神文明の両方を前後して使うことによって世界を征服した西側の世紀でした。ISISの出現によって西側が最も苦慮するところはISISの立国以来、その”聖戦士”たちのすくなからぬ部分が欧州連合から生まれたことです。一番意見がまとまらない点はいかにISISに対応するか、これはテロ組織なのか、それとも人類社会に初めて出現したテロ国家なのか?それが突出しているのは狂人の集まりなのか、それともイデオロギーによる強力な粘着集団なのか?という点です。

    ★欧州の青年がISISに身を投じるのは貧困と失敗ではない

    英文ウィキの統計では2014年9月までに約2600〜4000人の欧州人がシリア戦争に加わっていますが、そのときの”聖戦士”はわずか20000人から31500人です。欧州文明が育てたムスリムの二三代目は”聖戦士”となったわけですが、その意味は西側の価値観がこのグループに対しては融合に失敗したということです。

    これまでイスラム主義が欧州で流行する原因はムスリム青年の失業、貧困、欧州の主流社会に溶け込めないからだ、と言われてきました。これは大変、流行中の見方であり、かつ左派系人士の「圧迫への反抗」というモデル理論にぴったりでした。チャーリーヘブド・テロ事件にせよ、11.13パリテロ事件にせよ、メディアの第一の反応がこれでした。

    フランスの人口の1割がムスリムで、ISISに身を投じた”聖戦士”は1200人から1400人以上とみられます。チャーリーヘブド事件以後、ドイツの放送局がドイツのユダヤ人女性作家で長くパリに住む Gila Lustigerにインタビューした記事が「フランスのイスラム主義」(2015/5/8)として発表されています。彼女は二年間かけて工業都市や犯罪多発居住区、移民の多い小都市、警察、政治学者、犯罪者、社会学者、社会補導員やサラフィー主義者(*サラフィーヤ。シャリーアの厳格な施行やイスラーム国家の樹立を求めるなど政治性が強いものの、基本的には非暴力的)を取材した人です。その結論はサラフィーヤの主力は若い男子で極めて強い暴力思考と常に暴力の準備をしている。彼らの両親はマグレブ地方やブラックアフリカから来たが、時分たちはフランス生まれで「民主主義が発展しても、自分たちはその国家に属してはいない、排斥されていると感じ、挫折感をもっており、それによって極端なイスラム主義崇拝者になった」でした。

    こうした見方をする人は大変多いのです。欧州のムスリムグループについての文章はみなこのグループの子沢山、失業、生活保護受給、犯罪者化について書いています。パリテロ事件発生後、「ベルギーはなぜテロリストの巣窟になった?」という記事が広く読まれましたが、そのなかの一節の表題も「就職差別が過激派を育成」でした。

    しかし、さらに多くのイスラム研究者は欧州のムスリム青年がテロ分子になるのは貧困のせいではない、と考えています。

    2015年11月19日、ドイツの「DIE WELT 世界報」は「医師や技師がなぜ聖戦に?」という文章で、記者はドイツの双子兄弟が自爆事件を引き起こした話から書き始めています。この兄弟は日の当たる道を歩んでいたエリートでした。警察の一家に生まれ、一人は軍隊へ、たの一人は法科に進んだのですが、数ヶ月で自分たちがそれまでしりもしなかった信仰に身を投じたのです。

    記事によると9.11事件後、すくなからぬイスラム学研究者は若い人々の過激化について相当な研究をおこなってきました。そして豊かであるかどうかとか教育程度や将来性といったことが必ずしも決定的要因ではないとみています。ドイツの安全部門が把握するドイツからシリア、イラクに向かった700人のドイツ人の情報には高校卒業生、大学生、専門技術者が全部いました。英国の状況はさらにこの結論を強化するもので、多くの比較的良好に社会に溶け込んでいたムスリム、たとえば医者やエンジニアなどの高学歴者でもシリアやISISのために戦闘にむかったのです。研究者はこうした高学歴の人々が参加したからこそISISは今のやり方でうまくやっていけるのだと考えています。

    この記事の結論は、ISISに加わった豊かで教育程度も高い者たちのなかには社会の不公正に対して戦おうとする人々も少なくないというものでした。こうした豊かなムスリム信仰の篤い人々は同胞が世界中で圧迫されていると固く信じています。たとえば、2011年の9.11テロ分子のリーダー、ムハマド・アダはハンブルグ大学の技術系大学生で、それまでは十分ドイツ社会に溶け込んでいたのでした。

    多くのイスラム学者は、ムスリム教は集団主義を主張するのに対して、西側の価値観は個人主義を尊ぶことから、欧州のムスリムの二三代目の青年たちはイスラム主義に帰属感を見出す、とみています。「彼らを駆り立てるのは宗教的狂熱ではなく、”擬似的な親族関係”という帰属感で、つまり兄弟的な情感やいたわりのようなもので、かつ天国にいって戦友と永遠の兄弟的な関係を持てるという点なのだ」という人もいます。

    ★ISISはどのような政治実体なのか?

    つづいて、何人かの西側の研究者によるISISの政治実体の研究です。この分野の文章は大変多く、そのうちから代表的な二編を選びました。ISISとは何かを理解したい向きは読むべきかとおもいます。

    2015年2月、米国の「アトランティックマンスリー」に掲載されたGraeme Woodの「ISISとは何か?」では、「ISISはアルカイダと違って、政治と宗教が一体になった国家である」と指摘しています。

    アルカイダのロジックをこのはるかにアルカイダを超えた組織にそのままあてはめてはならないのです。ISISはすべての主な政策と法律をすでにもっており、すべて自らサイト、車のナンバープレート、文房具、硬貨にいたるまで、「預言者のやりかた」でひろく告知し、大小をとわずすべてマホメットの教えにしたがい守るというやりかたです。プリンストンのISIS研究者のボナード・ヘイカルは「あの変態的な(”聖戦士たち)は中世の伝統のなかから奴隷制や磔刑、斬首などを選んで持ち出してきたのではなく、彼らはまるごと自分たちが中世期になってそれをそのまま現代社会にもってこようとしている」と指摘しています。

    筆者はISISの提唱する奴隷制度や各種の極端に明らかな宗教的性格は、彼ら以外のムスリム社会でも受け入れられないものですが、しかしだからといってそれが宗教性がない、これまでの世界が終わりを遂げて、新たな千年間を支配する至福千年期が訪れるというミレニアム信仰を持っていないなどとは言えないのです。米国はISISとアルカイダの根本的な違いがわかっておらず、その結果、対策が馬鹿馬鹿しいものになっている、と指摘しています。

    ISISの資金源に関してもたくさんの報道があります。2014年までにISISテロ組織は2兆ドルの資産を手元に収め、毎年の収入も20億ドルにもなります。その方法は各種の名目で企業や個人を恐喝脅迫するとか、シリアに入国するトラックから800ドルの通行費をとるとか、イラク北部の拠点でも200ドルの通行料金を徴収するなどしていますし、パルミラ遺跡やアラブ、ラッカなどの考古学遺跡から略奪した骨董品の売買でも稼いでいますし、税金や罰金なども毎月3000万ドルが入っています。(RFI(フランス国際ラジオ)中国ウェブサイト/IS略奪財産2兆ドル)

    直感的にみても、アルカイダの移動盗賊団的なやりかたではなく、ISISは領土を広げるために陣地を攻略するだけにはとどまりません。スターリンや毛沢東と同様に彼らは政権を樹立し、ラッカ当局はこれまでに14の省をもうけ、その7つはシリアに、5つはイラクにあります。

    そして、ISISはマホメットの予言にある「ダビク(シリアの寒村)の戦い」で”ローマ軍”を破ることを期待しています。(* ISにとって「ダビク」は特別に意味のある決戦の地である。ムハンマドの言行録によると、「ローマの軍」がダビクの地で野営し、イスラム軍と衝突する。「ダビク」の勝利は一方で、この世の終わり、終末へのカウントダウンでもある。「ダビクの戦い」はISにとっては最終的な勝利につながる象徴的な意味を持っている/ブロゴス;http://blogos.com/article/128086/

    これは世界最後の戦いです。予言の書によればこの戦いの敵はローマですが、現在の”ローマ”とは誰のことかについては諸説あります。ローマ教皇はいま軍をもちません。しかしそれが東ローマ帝国で、その首都はイスタンブールだという説からトルコだという説もあります。そのほかにローマはどこのキリスト教国の軍隊でもいいし、米国は完全に合致するともいわれます。”聖戦士”たちは戦闘中に米国兵士をみるとISISのツィッターはまるでパーティで主人が第一の客人を迎えたように欣喜雀躍するという話もあります。

    数日前、国連安保理で決議が通り、米、英、仏、露4国軍隊が現在、戦争準備中です。4か国の指導者層がISISに対してどう見ているかとか軍事行動が一致に達するかということはさておき、たとえ暫時、一致をみたところでISISを徹底的に消滅させるというのは難しいとおもわれます。「暗黒帝国の死の旗 ISISのイデオロギー研究」《黑暗帝国的死旗:ISIS意识形态研究》がはっきりのべていますが、西側の人を感動させるが脆いものの見方である「君たちが銃を持つなら私たちは花を持つ」では根本的にISISに対応できないのです。「事実上、西側が間違っているのはその恐怖は”銃”ではなく、彼らのイデオロギーと価値観なのだ。ISISの宣伝能力はこれまでの過去のいかなるテロ組織とも比べ物にならない。たとえ西側軍隊が物理的にISISを消滅させることができても、思想上でこの暗黒帝国の蠱惑に打ち勝つことは難しい」「なぜなら実体的な政府というのはISISにとっていささかも意義のあるものではなく、そのイデオロギーは本来、超世俗的な、超国家的なものなのだ。宗教の極端なイデオロギーこそISISの大地であり、インターネットは彼らの空気であり、政権というのは彼らにとってゲーム板の包装紙のようなものにすぎず、いつでも捨てて構わないものなのだ。そしてまた別の地方でふたたび発芽するのだ」とのべています。

    どの時代も人類の現存の知恵では解決が難しい問題があります。私はISISという専制独裁主義よりさらに恐るべき極端な宗教主義が人類にもたらす困難と当惑がまさにそうだとおもえるのです。

    (終わり)
    本文のドイツ語資料はドイツの友人・野罂粟@WilderMohn から提供されました。感謝。

    拙訳御免。
    原文は;媒体札记(2): ISIS的意识形态之魅 http://www.voachinese.com/content/he-qinglian-blog-isis-ideology-reviewed-20151125/3074515.html

     

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