• ★中国の「WTO市場経済地位」承認の獲得を考える★2016年1月5日

    by  • January 10, 2016 • 日文文章 • 0 Comments

    人民元のSDR通貨入り(*人民元のSDR入りーそれは強心剤?それとも鎮痛剤? http://heqinglian.net/2015/12/02/yuan-sdr/ 人民元SDR入りー春風は堅い氷を溶かせないーhttp://heqinglian.net/2015/12/08/yuan-sdr-2/)の後、中国が国際貿易関係各国によって完全市場経済国として認められるのは、「水が来れば溝が出来るように、自然に成就する成り行き」だと北京は期待していました。しかし、意外にもアメリカが、EU(欧州連合)諸国に対して、「中国に『市場経済国の地位』 (* MES/MarketEconomyStatus; 反ダンピング調査に使用される概念)を与えてはならない」と警告しました。そこで、中国では「米国陰謀論」が再燃しました。これは、中国側からすれば、「中国を市場化経済の国と認めないのは、経済問題のみならず、政治的な問題だ」ということになるからです。(訳注;中国は世界貿易機関・WTO加盟以来、国際貿易各国が中国を完全市場経済国として認めるよう取り組んできた。「市場経済国の地位」の獲得は、中国の輸出入貿易の発展に対して有利に働く)

    ★問題の由来

    2001年、中国はWTO加入を求めて「WTO加入議定書」に署名しました。この議定書の15条は「中国の製品に対してダンピング違反の調査を行う時は、自動的に中国産品の国内価格と輸出価格を比べるのではなく、第三国の価格と比較する。この待遇は15年間とする」と規定しています。

    北京にとって不愉快なのは、「属国属領」の香港、マカオ、台湾が「独立関税区」という資格でWTOに加入しているのに、それらの上位管轄国である中国が、同等の待遇を得られないことでした。これについて、WTO加入主席交渉代表だった龍永図は、この『市場経済国の地位』問題で譲歩したのは、「交渉が大変厳しく、自分たちにはもっと他の方面で妥協しなければならないことが山ほどあって、やむを得ないことだった」と言っています。

    この後、中国政府側は、大々的に不公平な待遇を受けているとの宣伝を繰り広げました。西側国家が、発展途上にある中国経済発展を抑圧しようとして、「非市場経済国」とする規則によって一連の貿易障壁を設け、特に反ダンピング規定を攻撃手段として使ってきたと主張しました。中国は「市場経済国」ではないと見なされ、中国企業は反ダンピング調査、つまりダンピング税を決める際に差別された。それは、中国産品の輸出金額と代替国の価格を比較されて、ダンピングの幅を決定されたからだ、と言うのです。中国からみれば、こうした反ダンピング調査は、中国企業の発展を制限してきたものなのです。

    中国商務部は常々、中国は何回反ダンピング調査をされたかを公表しています。2007年には、「中国は連続12年、反ダンピング調査を一番多く受けた国家である」。2009年には、「全世界の7割の輸出奨励金調査が中国の産品に向けられている」。2014年には「中国は18年間、世界で最も反ダンピング調査を受けた国だ」としています。

    ★中国はWTOの他の国々から規則破壊者だとみなされている。

    前に「TPP(環太平洋経済連携協定)はなぜ中国を仲間はずれに?」で指摘しましたが、中国はWTO加入後に、為替レート操作や、国営企業に対する大量の資金補助、輸出価格の操作、知的財産権の審判、投資誘致措置への深刻な操作などを含む厄介事を次々に引き起こすので、WTO内では批判の声が絶えません。米国だけでも、中国に対しては輸出補助金、海賊版政策、自動車関税、タイヤ、有毒パネルなど多くの項目で訴訟を起こしています。中国のこうした「隙間狙い行為」は他のメンバーには受け入れ難く、確かに世界の多くの国々は、「もう、うんざりだ」なのです。そして、ますます多くの国々が中国を除いた別の公正、公平、高能率の世界経済組織を作りたいと思っています。これが、ここ数年のTPP成立の過程で、参加国が一致して中国を排除するのに同意した理由です。

    長年、世界で反ダンピング調査を受けている国家としての中国への疑いは、主に、鉄鋼、化学工業、機械と電力設備に集中しています。WTOが発表した2014年全世界貿易救済(*ダンピングへの異議申し立て)調査統計によると、中国は、世界の27%の反ダンピング調査、31%の反輸出奨励金調査を受けており、依然として貿易救済調査の最大のターゲット国です。2014年、WTOのメンバー国によるダンピング調査実施の申し立ては236件で、申立件数が多いのはインド、ブラジル、オーストラリアの3国です。件数はそれぞれ38、35、22件です。中国は全世界の27%、合計63件の反ダンピング調査を受け、基本的に2013年(75件、26.1%)と同じです。

    事実ははっきりしています。中国は、WTOのメンバーから反ダンピング調査を最も多く起こされている国なのです。中国は、これを各国の中国に対する差別だと見ており、他の国々は、中国がWTOの規則の隙間を利用し、規則破りをして利益を得ていると見ているのです。

    ★中国の「「市場経済地位」」に関する個別談判戦略

    中国政府は、「WTO加入議定書」に基づき、2016年末には自動的に「市場経済国」になる、と主張しています。ですから米国やEUなどの国々は、中国のこの解釈に対してどうするかを決めなければなりません。中国から見たら、中国に「市場経済国の地位」が与えられないのは大変不公平です。ですから米国を頭とする西側国家の封鎖を突破するために、各個撃破交渉で、事前に世界各国に自分の「市場経済国の地位」を承認させようとしています。中国商務部の統計ではこれまでに、全世界でロシア、ブラジル、ニュージーランド、スイス、オーストラリアなど81の国家が、中国の「市場経済国の地位」を認めています。しかし米、EU、日本、カナダなどの多くの国々や地域、経済組織は、いまだに承認していません。

    2015年末までのWTOのメンバーは161カ国です。もし、EUが中国の「市場経済国の地位」を認めたら、中国は一挙に28カ国を獲得出来て、WTO内部で中国の「市場経済国の地位」を認める国が109カ国になります。これは中国がメンバーの3分の2の承認を得たことになり、三国志的に言えば「天下三分の計の二つ分を勝ち取った」ことになり、これは米国を孤立させ圧力を与えることになります。

    ですから、中国はEUの承認を特に重視しています。英国・「ファイナンシャル・タイムズ」の2015年12月29日付記事で、EU委員会は最速だと、2016年2月に中国に「市場経済国の地位」を認める提案をする可能性があるとしています。その後、EU理事会とEU議会でこの提案を認めるかどうか、となります。

    欧州各国の内部では意見が分かれています。伝統産業は反対の姿勢を強めており、もし中国に「市場経済国の地位」を与えるならば、もはや中国のダンピングに対して反ダンピング税を課すことが出来にくくなるために、鉄鋼、窯業、紡績などを含む欧州の伝統産業は壊滅的な打撃を受けるだろうとみています。欧州鉄鋼連盟は、いったん中国にそのような地位を認めるならば、大規模な就職先喪失と工場閉鎖が起こるだろうとしています。

    「ユーラーヘルメス信用保険会社」(*パリに本社を持つ信用保険会社)の経済研究部の見積もりでは、もし2016年末に中国が「市場経済国の地位」を獲得したならば、ユーロ圏の損失は70億ユーロになり、ドイツが最も大きな打撃を受け、その損失は25億ユーロで、イタリア、フランス、スペンの損失はそれぞれ6億、8億、3億ユーロになるだろうとしています。

    「米国経済政策研究所」(*EPI、経済政策提言を行う米国のシンクタンク)では、もし中国に「市場経済国の地位」を認めるならば、EU域内で350万の仕事が脅威に直面するとしています。米国商務省は、2015年12月の中国輸出ステンレス製品から255.8%の反ダンピング税を徴収し、中国の世論はこれを、EUに対して中国の「市場経済国の地位」承認を阻止するためにやったのだとしました。

    EUは、中国の「市場経済国の地位」を承認する姿勢です。EU官僚は、工業業界がEUが全ての保護手段を失うなどと言うのはオーバーだと文句を言っています。一部の役人の推計では、付加価値の高い産業製品が中国の廉価な原材料を使って製品を作れば、中国の「市場経済国家の地位」から利益を上げられるはずだとしています。

    ★WTOの現状、西方国家は誰に文句を言う?

    実際、中国が世界の舞台に登場してからやったことを総合してみれば、西側国家は自分たちが恣意しい的に、あるいは黙認してきた中国の違反行為をもう一度検討すべきです。西側国家では米国だけが一貫して、中国の違反や人権侵害を阻止しようとしてきましたが、EUは基本的には中国に協力してきました。発展途上国は、政治的な、あるいは経済的な配慮から大部分は皆、中国政府の国際社会における支持者であり黙認者です。

    中国はもちろん完全な市場経済国家ではありませんし、今に至るまで重要資源は依然として国家が独占分配しており、政府の経済事務に対する干渉は後を絶たないどころか、ますます強まってきています。2015年に北京政府が、中国のA株市場と外為市場に対して行った干渉行為は、世界中が知っています。そのような状況の下で、人民元はSDR入りの資格を欠いていたにもかかわらず、IMFは「人民元をSDRに入れる目的は中国の経済と金融改革を推進するためだ」として、「通貨の自由兌換だかん」という条件を「自由使用」に改めたのでした。ロイター電によると、これはIMF専務理事・クリスチーヌ・ラガーデの「賢いアイデア」だったそうです。人民元がSDRに入るには、IMFの基準を変更せねばならず、比較的高難度でした。それに比べると、「市場経済国の地位」は、ただ認めれば良いだけですから、はるかに簡単です。それから推測すると、中国がEUの承認を得るのは難しくないでしょう。いつになるかだけの問題です。

    私の見方は、WTOが元から決めていた「市場経済国の地位」という基準は、中国は確かに到達出来ない基準です。しかし、WTO各国は自分たちの利益のために、中国は少なからぬ国家が「市場経済国」と見なしてくれるでしょう。大勢の向かうところに、米国も人民元のSDR入りと同様、流れに従うしかないと思われます。
    拙訳御免。
    原文は;何清涟:衡量“中国市场经济地位”的标尺 http://www.voachinese.com/content/heqinglian-blog-china-economy-20160104/3130843.html

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