• 香港の政治的禁書を考える

    by  • January 23, 2016 • 日文文章 • 0 Comments

    何清漣

    2016年1月12日

    全文日本語概訳/Minya_J Takeuchi Jun

    https://twishort.com/N6Kjc

    最近香港の銅鑼湾書店の五人の出版業者が失踪して香港と国際社会の関心を集める大事件になりました。彼らが”失踪”した場所、時期、方法は違いますが、それをやった勢力はすべてひとつの共通した方向を指しています。つまり「中国大陸の『秘密の部門』」によるものだ、ということです。世界の関心は「この五人は一体どんなタブーに触れた本をだそうとして、中共当局が『捕えろ!』となったのかに集まっています。事情通はそれが「習近平の愛人たち」の話ったからだとも漏らしています。

    ★政治発禁本がなぜ香港でひとつの産業にまでなったか?

    香港ではこの種の書籍に対しての分野は非常にはっきりしています。すなわち政治的スキャンダルやゴシップであり、政治的発禁本の中の看板商品なのです。1990年代の始まりから政治的発禁本は大流行しました。それ以前、香港の「争鳴」雑誌が政治的なスキャンダルやゴシップの独壇場でした。「政治的スキャンダル&ゴシップ(八卦)」とは雑誌記事が政治に関係し、深刻なものからそうでないものまで様々な内容で、特に真偽のほどが判明し難いものをいいます。90年代「争鳴」に強力なライバルが現れました。明鏡出版社が各種の政治本を出し始め、そのスタイルは「争鳴」にそっくりでした。中でももっとも有名なのはおそらく「中共太子党」でしょう。この種の雑誌や本は香港旅行に来た大陸の旅行客が親しい友人用にもちかえるみやげとして流行ったのです。

    「父親と呼ぶには重すぎる」(叫父亲太沉重)はこの種の有名人政治家ゴシップ本の有名な例で筆者の艾蓓が自らを周恩来の私生娘と称した本でしたが、ほかにも香港では少なからぬ深刻な政治的発禁本が出版されました。例えば李志绥の「毛沢東の私生活」や、高華の「紅太陽はいかに昇ったか」、張戒の「毛沢東の知られざる物語」などがあります。私の「中国現代化の落とし穴ー噴火口上の中国」(草思社, 2002 )も中国国内で2年間に13の出版社を訪ね廻った挙句、どうしても中国国内では出版できずに香港で出版したのでした。こうした内容のある政治的発禁本は私も読んだだけではなくて、友人たちにも勧めたり、買ってあちこちに送ったものでした。深圳で当局に隠れて秘密に大量に印刷されて3〜40元で海賊版が酒場などで怪しげなおっさん達によって売られるようになって、こっちはいちいち送ったりしなくても済むようになってだいぶ節約になりましたっけ。

    ただこうした本のなかにはもう完全に政界のつまらないゴシップものもあり興味がわきませんでしたが、でもそういう本は真面目で深刻な政治的発禁本より遥かに大陸の旅行客には人気があることは知っていました。以前、誰かに「どうやってこの種の本の真偽を見分けるのだ?」と聞かれたことがありました。私は、ひとつには作者が誰かをみる。例えば李志绥のような作者でその仕事が長年毛沢東のそばにいたならその「回顧録」の信用度は高い。高華は長年、中共党史の研究をしてきた歴史学者だし「紅太陽」は大量の分厚い中身ある資料から書き出したものでこれは歴史物のいいものだ、とか。二つにはその本の種類からみて、セックスめいた話に偏ったものはたんなるゴシップで必ずしも本当とはかぎらない。一般の読者にとってはもっとも難しいのは深刻なテーマに関する政治的なゴシップだが、これは「虚偽は細部に宿る」で、例えば中南海の元老たちがある大事をめぐって喧嘩となった時に、その言葉や表情から動作までまるで現場にいたかのように描かれているのは変です。「壁に耳あり」的に漏れ聞いたのであれば表情だのなんだのはわからないはずです。もし本当にそんなことがその場で漏れたというのならば、中共当局は現場にいた人間をどれほど居ようが全員ひっくるめて捕まえてしまいますよ。そうした本は一種の「大衆文学」でしょうね。現代史研究の学者でそんな雑誌や本を資料の来源にする人はいないでしょう。

    公平にみて「有名政治家のスキャンダル&ゴシップ」は香港の出版業の柱のひとつです。が、だからといって香港の出版界がゴシップやスキャンダル好きだ、とか責めるわけにはいきません。もし誰もそうしたゴシップやニュースを知ろうとお金を払わなければそんな商売はなりたたないわけです。世界中の人が知っていますが中国政府は今に至るまで世論、報道、出版を厳しくコントロールしてメディアは日陰の身のままです。ですから、中国大陸の旅行者は香港の政治禁書を真相を知るひとつの手段としているのです。経済学用語でいえば「需要が供給を生み出す」ので、香港のそうした出版業が繁栄しているわけです。

    この種の政治ゴシップ本が一分野になっているのにはさらにいくつかの原因があります。ひとつには政治に関する真面目な本で筆者もよい場合、「十年一剣を磨く」ような時間をかけたよい本、例えば高文謙の「晩年の周恩来」とかさきほど列挙した本などはかけがえのないものです。ふたつには中共が真面目な政論雑誌をつぶしにかかったからです。1990年代の香港にはまだ何種類かの真面目な政論雑誌がありました。例えば昔の文匯報の副編集長だった程翔とその同僚の劉鋭が天安門事件のあとに社をやめてつくった「当代」雑誌や、李怡の「九十年代」などです。これらの雑誌に掲載された記事は質も高かったのですが、読者は学者とか文化人で売れ行きは「争鳴」のようにはいきませんでした。しかし、それでも中共はこうした雑誌を許しませんでした。彼らは資金源を断つことによってこれらの雑誌をつぶしました。例えば「当代」の資金を出していた人物は大陸に投資しており、その利益のためにやむをえず中共の要求を呑み、「当代」への資金を打ち切りました。三つ目は97年の香港返還以後、香港ビジネス界が中共の要求に迎合して多くが中共の宣伝メディアに参加し、その先駆部隊となってしまったのです。

    以上の三つの原因によって、香港の報道出版の自由はいまや政治禁書の出版というものに集中的にあらわれている状態になりました。これらの出版社の大多数は家内産業のようなもので、マンパワーや経営コストをできるだけ抑えないと市場化時代に生き抜いていけませんし、銅羅湾書店ぐらいの規模になるのだって大変難しいことなのです。

    ★2009年以来、ゴシップネタは中共が提供

    2009年から香港の政治的禁書出版は997年7月1日に香港の主権がイギリスから中華人民共和国へ返還されて以来、初めての黄金期を迎えました。18回党大会前後の政争で最高権力レベルの闘争が白熱化して、周永康・薄熙来側(背後には曽慶紅と江沢民)と、習近平、胡錦濤、温家宝を一方の側とする権力をめぐる決戦闘争の中で周永康側は仕事の関係(*警察や情報機関)で習・温側の弱みを握っており、それを国外のメディアに提供するやりかたで相手の家庭の秘密をバラしたのでした。有名なのはNYタイムズが温家宝一家の巨額財産や習近平の姉や姉の夫の財産です。国際記者連盟(ICU)が発表した「中国オフショア金融レポートの秘密」は世界のニュース界でも特大の事件であり、その報道の中からは江沢民、周永康、曽慶紅などのいくつかの家の子弟の企業は掲載されていませんでしたが、習近平、胡錦濤、温家宝、鄧小平、李鵬の5家族の新旧政治局常務いいインとその他ハイクラス100の家族の子弟の企業の資料が暴露されたのでした。(参考;世界に「盗賊型政権」を認識させた「中国オフショア金融報告」の意義 http://heqinglian.net/2014/01/28/capital-flight-japanese/

    このなかで李鵬の家族の話は別に政治的ゴシップでもなんでもなく実際のことです。2014年2月27日、広州の「時代週刊」は「三峡ダムが個人的私的な金儲けマシンに堕している」と指摘し「退職した老指導者が三峡ダムプロジェクト口や手を挟んでいる」という記事は国内メディアが続々と転載して、さらにその退職老指導者というのは李鵬のことだと指摘しました。3月9日に香港の「アジア週刊」が載せたトップ記事の「李小琳(*李鵬の娘)の王国オフショア企業の秘密を暴露」という記事は金銭にくわえて色情的な内容でおおいに注目を集めました。この報道がその後も罰せられなかったということからみて、この記事のネタとなった「関係筋からの資料」は李鵬に圧力を加え三峡ダムの経営陣をそっくり入れ替えるのが目的だったのでしょう。この前の2001年11月24日には中国国内で「証券市場週刊」が「摩訶不思議な華能国際」という記事で国有企業の華能国際は実際は李鵬の家族企業であり、その夫人の朱琳、息子の李小鵬が特権を利用して華能を米国、香港、中国で上場したことや、さらに李鵬の次男の李小勇が昔かかわった、新国大詐欺事件(1998年、この後シンガポールに”移民”)のこともつけくわえられ、まるで李鵬一家の財産の内幕百科事典のようなものでしたから。(参考;長江に詫びるべきは誰か?ー三峡計画の3つの出鱈目のツケ⑴ http://heqinglian.net/2014/04/17/three-gorge-1-japanese/ 「人は天に勝つ」の傲慢ー三峡計画の3つの出鱈目のツケ⑵ http://heqinglian.net/2014/04/17/three-gorge-2-japanese/ 三峡計画の腐敗の背後にある巨大な影ー3つのツケ③ http://heqinglian.net/2014/04/20/three-gorge-3-japanese/

    中国メディアは誰がそそのかしたかわかりませんが、この時期に「紅二代目」たちの行跡を「まともに」報道したのです。たとえば「中央国営企業高級幹部のなかの七光り連;保利グループ名誉理事長の鄧小平の女婿」(中国新闻周刊网,2013年6月3日)では毛沢東の姪子の毛遠建、李鵬の娘の李小琳といった大物がらみの連中も列挙しました。人民ネットの2014年12月22日にだした「解放軍現役高級幹部の紅二代」では張義侠をトップとする27人のいわゆる「紅色のバックを持つ」高級軍人たちを出身やその父親の行跡などを含めはっきりと書きました。そのときはまさに習近平が軍の郭・徐勢力を粛清しにかかっていた時期でした。(参考;習近平の軍の大掃除と平和提案 http://heqinglian.net/2014/07/05/xi-peace-appeal-japanese/

    香港のメディア界の有名人である程翔が雷霆881放送の「朝のはじまりの出発」という番組で取材をうけ、銅羅湾書店の責任者が秘密裏に逮捕された原因を分析しています。彼は銅羅湾書店の客筋がおもに中国内陸人であること、毎年の売り上げが数千万の商売であることを指摘。自分も中国大陸からの客が箱ごと何箱もそうした禁書を買っていくのをみたことがあるとして、香港には出版の自由があるからそれが中国内陸の政界の闘争、内ゲバの延長として中国本土の異なった派閥が利用して相手側に不利な書籍を出版するのだ、と。程のいうとおり、たしかに2009年以後の香港の政治的禁書の出版状態はそういうものでした。

    ★政治ゴシップ書籍を生むものは中共自身である。

    上述のこうした国の内外、英語、中国語のメディアのすべての内容が香港の発禁書の豊富なネタになり、出版社は耳をそばだてさせるようなタイトルさえつければ中国大陸からの旅行者が喜んで買っていくわけです。その結果、香港と内陸の間にある羅湖税関の検査役人は大忙しですが、いくら彼らが頑張ってもどうしても結構な数の禁書は網の目をのがれ中国国内に流れ込んでしまい、それが噂を何倍にも何百倍にも広げる最高のネタ本になります。こうした状況に中国当局はお手上げで、もし噂を打ち消したいと本気で願うなら、国家級の重点課題として研究院を立ち上げ、最後には専門の学部をもうけて研究しなければなりますまい。でもそんな研究ができたとしてもおそらくその結果はさらに中国大陸の人々に香港の禁書を是非ゲットしたい、とますますおもわせるだけでしょう。

    この香港の政治ゴシップ本の源をたずねれば、おそらく中共も認めざるを得ない歴史的事実にぶつかります。それは中共が自分でこうしたことを始めた張本人だというkとおです。かつて蒋介石と宋美齢夫人が中共が香港で地下出版した本によっておおいにけなされたのでした。この二冊の珍妙なる本は50歳過ぎの読書人ならみたことがあるでしょう。一冊は「金陵春夢」で作者は唐人、本名は厳慶澍、もう一冊は「侍衛札記」で作者は宋喬、本名は周楡瑞。この二冊が香港における政治ゴシップ本の原点です。中身は大陸の人々に蒋介石の本名は「郑三发子」(*実は裕福な商人の子供ではなく、どこの馬の骨かわからない出自だ、みたいな話らしい。http://baike.baidu.com/subview/9095755/9101063.htm)だとかいった種類のゴシップを信じさせようとするものでした。

    と以上、述べてきたとおりもし犯罪の親玉を検挙しようというのなら中共自身です。一つに香港の政治禁書に膨大な需要マーケットを提供して、ふたつに、自分たちの内ゲバの話を香港政治禁書業界にどんどん豊富なデータを提供してそれを肥え太らせてきたのですし、三番目に、どっちの側も香港の報道の自由を利用して相手の顔に泥を塗りたくろうとしてきたのですもの。(終)

    拙訳御免。
    原文は;香港政治禁书:中国出版管控之果
    《中国人权双周刊》首发,转载请注明出处:
    http://biweekly.hrichina.org/article/31342

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