• メディア信用失墜は帝国晩期の特徴

    by  • February 27, 2016 • 日文文章 • 0 Comments

    何清漣

    2016年2月15日

    全文日本語概訳/Minya_J Takeuchi Jun

    https://twishort.com/KHWjc

    共産国家のイデオロギー宣伝の法則として、何度も繰り返しある特定の分野で教育宣伝を執拗に実施する必要がある時は往々にして危機に直面しているからにほかなりません。最近、中国の教育部(*文部科学省にあたる)が教育関係者にすべての段階で「愛国主義教育」を行い、「教科書、学生の評価、博物館参観やネットでも愛国主義教育を行うべし」と促したことや、中共のメディア管制が日増しに強化され、資金もマンパワーもつぎ込んでいる状況のなかで発生する数々の現象は中国が帝国晩期のコミュニケーション機能喪失状態にあるということです。

    ★コミュニケーション喪失のおもな現象

    いわゆる、コミュニケーション喪失とは特定の社会システムのなかで構造的な機能が失われたことによって引き起こされる情報の欠如、情報の信ぴょう性の喪失、歪曲などの現象で、以下のように何種類かあります。

    1;当局が国民に信じてさせようとしている歴史、人物が往々にして人々がその虚偽に気がつく主要な原因になってしまう。

    教育部の文書によると、「高等教育ではさらに徹底的に学生たちに『永遠に中国共産党とともに歩む』ように指導せよ」、「中共党史や中国の歴史、革命史、改革開放の歴史を否定したり、英雄的人物を貶めるような危険性をはっきりと教えるべし」とありますが、まさにこれは既にに「虚偽に気がつく」現象が、当局にとって我慢しがたい域にまで達していることを示しています。

    この文書にある「英雄的人物」とは雷鋒(*1940年12月18日 – 1962年8月15日、事故死した兵士)や劉胡蘭(*1932年10月8日 – 1947年1月12日、地主に惨殺された女性革命家)といった「模範人物」で、党史とは中共が成立してから今日までの百年の歴史のことです。雷锋や劉胡蘭についての真実はすでに多くの真面目な研究があり、かつ多くの嘘をあばいた冷笑的な話が伝わっています。中共の党史については高華の「紅の太陽はいかに昇ったか」や、楊奎松(*華東師範大学歴史学教授)らが中共建党以来、「外国勢力」のソ連から革命資金を受けとっていた」研究や、中共のリーダーについては高文謙の「晩年の周恩来」、李志绥の「毛沢東の私生活」、9.13事件(*林彪事件)については山のように研究本があります。「改革開放の歴史」に関しては私の「中国現代化の陥穽」も当然、ブラックリストに上がっております。

    ある政党や政治勢力が自らを神格化する過程では虚偽の歴史をでっちあげるのですが、これが言論の自由のある国でなら、すぐ嘘だとばれてしまいますし、それが宣伝神格化の働きを解消解毒してしまいます。しかし中国のような独裁専制政治のもとでは歴史の真実を述べるということは極めて困難であり、すくなからぬ勇敢な人々が志をリレーのように受け渡して、何度も弾圧を受けながらようやく一筋の道が真実に至る、という具合です。しかし多くの勇気と良識ある中国の知識人たちの犠牲的な努力でそのような道はすでに切り開かれております。

    2;事件がおきても人々はメディアより「噂や口コミ」を信じる

    この方面では最近の天津大爆発事件が典型的な証明になりましょう。爆発事件発生後、ネット民は政府メディアの肇事公司の背景や爆発原因についての説明を信じようとはせず、「噂」「流言」によって真実に迫ろうとする情報戦を展開しました。この企業の背後についての各種の”流言”(新旧政治局常務委員の李瑞環や張高麗が関係しているといった)を通じて、中南海に天津地方政府に対する圧力をかけさせ、メディアに取材を許さざるをえなくさせ、最後に北京を中心とするメデイァにすくなからぬ真相を発掘させたのでした。例えば、財経ネットの8月17日の「瑞海国際会社(*爆発元)の真実の株主と事情をしる者;只峰(*社長と言われた)は小物にすぎない」http://news.ifeng.com/a/20150817/44446469_0.shtml につけられた「図解 天津爆発企業の瑞海国際の”友人たち”」http://news.ifeng.com/a/20150816/44442205_0.shtml などによって真相が浮かび上がってきました。

    インターネット時代の情報伝達の手段は様々で、中国当局は往年のように「嘘をついていいのは政府だけ、一般人が真相を究明は許されない」という時代はすでに終わっています。天津大爆発以後、ネット民が集団で「流言飛語によって政府側の嘘っぱちと戦う」やり方は、まさに帝国晩期のコミュニケーション失調の重要な例証です。

    3;政府メディアの”暴徒”と”悪人”が、民間では”英雄”に

    この現象のはじまりは2008年7月1日の楊佳事件でした。北京の青年・楊佳が上海で警察による不当な扱いをうけ、一年以上訴えても解決にならず最後に「お前らが正義をおこなわないのなら、自分が教えてやる」と上海の警察に刀をもって単身のりこみ6人の警官を殺害した事件です。当時、中国語の世界には両極の論評、政府側の暴徒とするメディアとネット上の「英雄」とする意見が現れました。

    もうひとつの例では去年の五月下旬に人民ネットで”新華社記者”の名で「超級低俗屠夫の正体」と(*ネット上の有名人である護権人士の)屠夫こと吴淦を貶めようとして書かれた記事です。しかしネットでは却って吴淦は「死んでも頭を官憲には下げない」代表として、その護権で体験した著書「豚殺し宝典」は護権人士の指導的お手本あつかいされてきたのでした。その内容はインターネットで役人たちの身元を調べあげ、発表し、徹底的に役人個人の情報を暴き出すというもので、腐敗役人の証拠や家庭の状況があきらかにされ役人や関係する人物に打撃をあたえたためにこうして官製メディアや当局からは怪しからぬ内容とみられたのですが、ネットの世界では彼こそ創造的な「非暴力」形式の過激で効果的な闘争モデルの実践者だとみなされたのです。(*吴淦は2015年5月28日から誹謗罪などの名目で福建警察により刑事拘留中)

    ★コミュニケーション喪失の原因とその結果

    その原因は当然、中国当局の情報独占と教育によるものです。
    在校中の大学生以外、中国の大人は一般に残酷な現実に次第に目覚めていきます。まず学校で受けた教育の欺瞞に気づき、つづいて中国のメディアの伝える情報の真実性を疑います。江沢民、胡錦濤時代には政治的には相対的にゆるやかで、南方系統のメディアやその他のコマーシャリズム系メディアの共同の努力のもとで、専門的な記者たちのたゆまぬ努力もあって、こうしたメディアは大衆が社会情報に接する重要なパイプでした。しかし習近平時代になってからメディアへの管制が日増しに強化され調査報道は政治的な理由と経済的な理由でついに放棄されてしまい、中国人はすでにメデイァを通じて中国の重要なニュースを知ろうとはしなくなってしまい、ますます「インターネット遮蔽の壁」を超えて外国の中国語メディアの提供する情報をみるようになりました。こうした状況のもとで、「壁越え」できる中国人とできない中国人の間でのコミュニケーションギャップは広がり、中国の現実に対する認識も分裂しました。総じて言えば以下のような方面で影響がでています。

    1;大量のストックホルム症候群患者の発生

    認識分裂は主として現在の老年の毛沢東左派です。毛時代を体験してきた老年者はみずからの若い頃の政治的な圧迫や貧困の体験を意識的に記憶から抹殺して「毛沢東時代は人々は平等で、3年の大飢饉なんかなかったし、毛沢東がやっつけたのはみな地主や金持ち、右派などの悪いやつじゃったよ」といい、当時、知識青年の恐怖だった田舎に下放される運動も「あれは青年を鍛錬する一番ええ手段だった」とみずからの青春に悔いなし、となって典型的なストックホルム症候群患者になっています。

    2;中国の青年世代を台無しに

    社会の真実についての知識なき青年たちは各種の放埓を励ます連中と生理的な要求によるセックスの消費に感覚的なゴミ情報の爆発にくぁえて利益誘導の下に当局の指揮によって五毛政治におどらされ、最後には青年の中に大量の毛左派や愛国正義少年少女がうまれます。そのみっつの特徴は病気の政治理念(中国的民主が必要で西側的民主はいらない、とかの)、内外でダブルスタンダードの「中国的特色」の民族主義、そして異なる意見を敵視して戦う、という精神です。

    3;当局自体の自惚れたメクラ的な政策決定。
    統治集団が民情を理解するためにはさまざまな情報に接しなければなりません。情報源が多ければ多いほど決定される政策もよくなります。もし情報源の多様性多元性を滅ぼしてしまったら、政府は構造的なコミュニケーション欠落の状態の中でおおくの愚かな政策をとってしまいます。中国政府の不動産投資による不動産業界の高速成長は数十の幽霊都市を出現させ、20年間消化不良になやまされる数億平米の過剰住宅を生み出し、数十に渡る業界で過剰生産能力をつくりだしましたが、すべてこれは愚かな政策決定が招いたことです。

    4;制度的なコミュニケーション欠落は中国政府とメデイァの信用を台無しに

    インターネット時代、政府が情報源を独占するのは不可能ですし、インターネットと国外メディアによって中国政府の多くの間違いや暗黒面は伝わりますし、中国政権はさまざまな形の政治的反対者を生み出しています。

    コミュニケーション欠落現象の最終結果は、中国人はすでに政府に対して政治的信頼を寄せなくなったということです。そして政治的信頼を失ったということは政府が事実上、その政治的合法性も失ったと同じです。これがまさに北京がますます暴力と嘘で統治を維持しようとして、政府と国民の関係が日増しに緊張をまねく原因となります。

    共産主義専制独裁政治が最も得意とするところは、「人間動物園」をつくりだし、オーウェルの「1984」のなかの「Oceania」(*作品の舞台)のように新聞出版、教育、理論研究などのイデオロギー部門は厳しい統制のもとにあって、暴力と嘘がその存在を支えるようにすることです。スターリンと毛沢東はうまく暴力と嘘でその統治を成功させましたが、しかし今日の専制統治は彼らの時代にはなかったインターネットが存在し、どんな嘘でも見抜くことは別にむずかしくありませんから、その結果、中共はいまや、情報コミュニケーション喪失の局面を迎えているのです。(終わり)

    拙訳御免。
    原文は;何清涟: 帝国晚期的传播失灵 http://www.voachinese.com/content/he-qinglian-blog-empire-communications-stalled-20160214/3191188.html

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