• 中国銀行・国営企業と労働者の「囚人のジレンマ」

    by  • April 9, 2016 • 日文文章 • 0 Comments

    何清漣

    2016年4月4日

    全文日本語概訳/Minya_J Takeuchi Jun

    https://twishort.com/mPpkc

    4月3日、中国国家開発銀行の高官は企業の生産能力過剰と銀行の不良資産をなんとかするために最初の債務の株式転換の規模が1兆元になることを明らかにしました。2015年10月の中国財政部の月報が示すところによると9月30日までの中国国有企業全体の債務総額は77.7兆人民元に達し、中国のGDPの総額を超えました。そして今、中国政府は朱鎔基時代の「債務を株に変える」(*銀行の不良資産を株として銀行が保持して、企業が黒字になったら株を上場してそこから返済をうけるスキーム。株が値上がりすればうまくいく)故知に習って中国の銀行、国営企業、従業員の三社を政策的な負債と利益の一体パッケージとしようとしていますが、すでに抜け出せない泥沼状態になっています。

    ★中国政府はなぜコストを無視してまで国営企業を救おうとするのか?

    「囚人のジレンマ」というのはゲーム理論の「ノンゼロサムゲーム」(*勝負がつかず終わりが見えないゲーム)の代表的な例で、個人の最善の選択が集団にとっての最善の選択にはならない、というものです。これまでずっと国営企業の職員の給与は主に経済政策から考えられてきたため、つまりは国有商業銀行の貸し出しでキョンシー(僵屍)企業を食わせてきて、結局中国の国営企業と職員労働者、銀行の三者を「囚人のジレンマ」に陥らせることになりました。職員労働者の「鉄の飯茶碗」を守り、国営企業の職員労働者の利益を尊重し、国際労働組合のNGOと世論の『正義の訴え』を満足させることは政治的には「絶対の正しさ」でありました。しかしその結果、大量の資金を投入して国営企業の赤字運営を支え、大量の売れない生産物を作り出し、銀行には巨額の不良債権が山積し、中央銀行は不断に紙幣を刷り続け、インフレの危険を中国人全部の上に転化ましたがそれも維持しかねるようになったのです。

    こうしたことは米国では起こりえません。米国の銀行は国有ではありませんから、政府は銀行に「社会の安定のために」と企業への貸し出しを迫ることはできません。EUなどの高度福祉国家では企業収益が悪化して労働者を首切りしなければならないときは企業代表と労働組合が交渉を重ねたあと、組合も企業がまるごと潰れて元も子もなくなるか、一部の人員削減を飲んで企業を生き延びさせるかという選択を迫られ、最後には一部の労働者の解雇を受け入れます。幸いEU国家の失業者はみな失業救済制度がありますから、生活水準は影響を受けますが飢餓に襲われることはありません。

    中国の社会保険体制は全世界で二つとな独特なものでして、労働者はその所属する『単位』(*職場)の属性、すなわち党政事務機関、国有、私営企業、外資系企業などのクラスにわかれており、全社会的な失業救済システムはありません。私営企業と外資企業の仕事は不安定で制度的な失業保険もありません。しかし国営企業は「中国の長男」扱いで、政府は各種の政策で、給与はもちろん福祉や仕事の保証も私営企業とは比べものにならないほど手厚く傾斜配分され、国営企業に就職することは中国人にとっては公務員に次ぐおいしい選択だったのです。

    中国政府が国営企業の政治経済的地位を維持する必要があったのはおもに国営企業の受け持つ政治的な役割からです。それは、

    ① 国営企業は中共政権の経済的基礎であること。資源と業界を独占することによって巨額の利益を政府にもたらす。

    ②には国営企業は非正常な政治活動にとっての小さな金庫であって、大量の非正常的な政治費用は国営企業から支払われて、統治集団の政治的な資本でした。

    ③には国営企業の多くは紅二代目たちの飯の種。21世紀の最初の10年間の国営企業改革でこうした紅二代目は経営幹部になったり株主になったして大量の株式を労せず手にしました。資産数億や数10億の超大型国営企業の中で持ち株がたとえ1%だとしてもたいへんな分け前となります。

    経済が成長しているときはこうした大型国営企業の給料や福祉はきわめて高く、他の企業労働者の羨望の的でした。経済衰退期になると外資企業や私企業はつぎつぎにリストラを実行しましたが国営企業はしませんでした。なぜなら中共イデオロギー教育は「労働者階級は指導階級である」としており、その「指導階級の労働者」というのは国営企業の労働者のことでした。これにくわえて中国各地で労働者をリストラしようとして経営者が殺されるという事件が多発しておりましたから、企業経営者だって我が身が火だるまになることを望みませんでした。また地方政府も社会の安定維持を理由に銀行に赤字国営企業の損害補填貸付を要求しました。これらが国営企業に大量のキョンシー企業が生まれた理由です。

    中国の大型国営企業の負債状況は以下の数例から管見できます。

    いわゆるキョンシー企業は中国株式市場のA株企業の中に266社あり、1割をしめます。そして鋼鉄、石炭、セメント、ガラス、石油、石油化学、鉄鉱石、非鉄金属の8部門に集中しており、これらの企業で8割をしめます。中国企業のなかで「世界の500企業」に入っているのは100社ありますが、そのうちの16社が赤字企業です。なかでも中国アルミは「A株赤字大王」と言われ、2014年度の純赤字は163億人民元になります。鞍鋼グループは800億の銀行負債を抱え、2015年の純損益は43.76億元、渤海鋼鉄の債務は1920億元です。

    国営企業のこうした経営状況は中国の金融システムを敗血症の病人のようにしてしまいました。つまり新鮮な血液(資金)を一箇所からいれても、他から悪い血(悪性債務)が噴き出してしまうのです。現在すでに改革以来第三回目の不良債権ですが、この三回にはそれぞれ色々な原因があるのですが、ひとつだけ不変の原因はつまり、銀行が国営企業に大量の資金を貸し与え続けたからです。

    中国の銀行業界の不良債務の来原は幾つかの大経済領域からきています。その最大のものは不動産企業、大型国営企業、巨大な地方政府の債務です。不動産業界を例にとると、全国の年に売れない住宅は4.3億平米あり、住宅は44.4億平米あり、合計48.7億平米でこれは不動産関係の貸金で銀行を押しつぶすほどの巨大な石が乗っかっているようなものですが、これに次ぐ、第二の原因が国営企業なのです。

    中国政府は故意に銀行の真の不良債権率を隠しています。2015年9月から10月、国際金融業界と投資業界は中国政府側の発表した銀行不良資産率にたいして論争し、中国銀行監査会の発表した1.5%という数字に疑問を呈しました。国際金融アナリストたちの一致した意見では中国の本当の不良資産率は政府発表データより高く、リヨン証券では8.1%に達するとみています。これは政府側の発表の1.5%の6倍です。この意味は中国の銀行は中国のGDPの十分の一にあたる7.5兆元の資本不足だ、ということです。

    キョンシー企業の大量の債務はとっくに銀行の不良債権になっています。興業戦略研究所のレポートではもし二年以内にこうしたキョンシー企業が全部倒産したならば7割の利息付きの債権も不良化し、影響をうける債務は10671億、年平均で5309億であり、その1割は債権で9割が銀行債務です。毎年新たに4800億の不良債務が銀行に与える圧力は大変なものです。銀行がキョンシー企業によって潰れないようにするために、中央経済工作会議はキョンシー企業を整理することを2016年の6大経済任務のひとつにあげています。

    ★「囚人のジレンマ」は一蓮托生あの世行きの道

    注目に値することは銀行、国営企業、職員労働者三者が「囚人のジレンマ」に陥ったのはこれが初めてではないということです。東北地方を例にとりますとかつて朱鎔基が現代企業制度改革をおこなったとき、東北地方の国営企業の労働者を大量に解雇し、やっとのことで調整をおこなって自体がやや好転したことがありましたが、中国政府は2003年から大東北地域振興政策を打ち出し、東北の国有経済をもう一度大発展させたのでした。

    今回の「囚人のジレンマ」と前回のそれがどこが違うのでしょうか?朱鎔基時代には中央政府の権威ははるかにいまより高く、地方政府はブツブツ言いながらも総じては服従しました。今、中央政府が「キョンシー企業の清算」を命じてもその経営者と地方政府は共謀して企業の実際の経済状況を隠し、銀行に融資させようとするでしょう。

    「経済参考報」の記者が最近、東北中西部の十余省を調査し「過剰企業が貸し渋りを恐れてでっち上げ」という記事は鋼鉄、石炭、非鉄金属などの業界のすくなからぬ企業が完全に借金依存のキョンシー企業であるが、しかし一部の企業は銀行が貸し出し中止をすることによって資金ショートすることをおそれ、故意にバランスシートをでっちあげており、赤字を黒字にみせかけ融資を継続させていると指摘しています。
    記事は全国工商聯冶金企業商会の元名誉会長の趙喜子があきらかにした資料を引用して、70の国有鋼鉄企業のうちちょっとでも儲かっているのは10社にすぎず、その他の企業はみな赤字だが、しかしすくなからぬ企業のバランスシートは「儲かっていることになっている」ことになっている、と。
    例えば、ある鋼鉄企業は20億元儲かったことになっているが、我々が調査してみたら、この金は資産を売って得たもので、それを「利益」に計上していた。こうした状況は銀行にとって危険を加速させます。

    この種の状況はまさに「囚人のジレンマ」です。囚人たちが互いに協力して真実を白状しないのが全体に最も良い結果を得られる(無罪釈放)されます。企業は貸金をだましとって生産を継続でき、管理者と職員は「仕事」が継続して得られ、地方政府も失業労働者との争議に直面しないですみます。この種のゲームではまず銀行の協力が必要です。なぜなら銀行は国家の創業によるもので、お金は預金者のものですが、銀行の管理者は地方政府と良好な関係を維持しなければなりませんから、不良債権は最後には中央政府がなんとかするしかないのです。

    予見できることは2016年の中国政府が過剰生産力をなくし(赤字国営企業の閉鎖)、巨額の銀行負債を減らし、600万の国営企業従業員を削減しようとしてもこの三者に内在する関係から、囚人のジレンマから逃れる方法はないのです。歴史の経験は、権力のシステムの中では上下の協力単位はすべて口裏を合わせてごまかすことができるが、マーケットだけは権力の呼びかけに応えない。例えば2015年の中国株式市場が一例です。

    ですから、政府は企業、職員労働者、銀行の三者が協力した「囚人のジレンマ」によって人質にされますます泥沼にはまり、最後はみな一蓮托生であの世行きになるでしょう。(終わり)

    拙訳御免。
    原文は;中国银行、国企与职工深陷囚徒困境
    http://www.voachinese.com/content/he-qinglian-blog-china-banking-state-business-workers-dilemma-20160403/3267498.html

    (*囚人のジレンマ→ウィキ;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%9A%E4%BA%BA%E3%81%AE%E3%82%B8%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%83%9E

     

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