• 中共政府は僵屍(キョンシー)国営企業に勝てるか?

    by  • April 9, 2016 • 日文文章 • 0 Comments

    何清漣

    2016年3月4日

    全文日本語概訳/Minya_J Takeuchi Jun

    https://twishort.com/TRdkc

    3月1日、ロイターの「中国政府は今後の3年間で『鉄鋼業、石炭産業を中心とした僵屍企業』の500万〜600万人の労働者を削減する」という ニュースは西側を驚かせました。中国ではこれを「政治は左、経済は右」として、国営大企業の労働者削減は経済政策が”右”に向いたからなのだとトンチンカンな論評を加えていますが、これは完全な誤解です。中国でいう「左」と「右」は極めて『中国的』な言い方なのですが、この国営企業問題を整理して理解できるようにしてみましょう。

    ★民主社会主義者のユートピア思想

    中国の一部に存在する”社会民主主義者”は「政治は右、経済は左」という主張をします。

    彼らの「右」というのは西側の三権分立民主政治のもとで、国民の政治的、経済的権利や民族自決権、婦女児童の権利、同性愛や女性の権利などもふくむ諸権利が保障されていることを指します。そして「左よりの経済政策」というのは彼らにとっては「守られる就業」「高福祉」「低税収」「分配の公平」です。逆に「右よりの経済政策」といったらそれは、「就職状況は市場需要まかせ」、「低福祉」、「高い税負担」、「分配の不公平」を意味します。

    実際には欧米諸国の経済には彼らが思っているような純粋の「右モデル」だの「左モデル」は存在しません。こうした社会民主主義者達の理想とする「左よりの経済政策」というのは、左翼思想の大本営とでもいうべき欧州でさえ現実には実行されておりません。欧州各国の高福祉は重い税負担を通じて社会分配を相対的に公平にするものですが、しかし別に「就職先の保障」しているわけではなくて、実業率はずっと高止まりしたままです。2016年1月のデータでEU諸国の平均失業率は10.3%で、失業問題が深刻な上位3カ国では、ギリシャの24.6%、スペインの20.5%、クロアチアの16.4%です。

    つまり、EUと米国などの西側国家の経済政策の『右』とか『左』とかいうのは政府が就職を保護する政策を採用しているのではなく、主に現在の税金と福祉の上で労働者と企業に重税を課し、それを失業者や弱者のための各種福祉の補助金にしているということです。

    ですから、中国の一部論者のいう「政右経左」の夢たるや、共産主義のユートピアの夢よりもっと非現実的なものです。この夢は民主制度の権利と長所と一緒に、社会主義の経済保障を両方とも欲しい、というものだからです。

    中国では文革を知らない世代の多くの若い人々が国営企業の古手の労働者のでっちあげた「毛沢東時代には失業がなかった」という神話を頑なに信じたがっていますが、こうした神話では数千万の知識青年達が「上山下郷」運動で山村や僻地農村に追いやられたこと、この知識青年達はつまりは失業青年だったということを意図的に忘れようとしているのです。

    この種の毛沢東時代の美化の極め付きは数年前、ネット上で流行した「今日やっとわかったけど、オレ達はみな生殺しに生き埋めされるんだぜ」という文章でした。これは「30年前は…」という六つの書き出して、作者の脳内で美化された「計画経済の長所」を並べ立てたものでした。また「もし君に金があったら」という文章は「市場経済の罪悪」を並べあげて責め立てています。こういう言い方は国営企業の労働者達と毛沢東左派に極めて受けの良いものなのです。

    ★政府もついに「僵屍企業」減らしに

    中共政府がこれまで全社会的に失業をなくしたことなどありません。中共が政権を建設していた初期にも都市では「安月給、多就職先」で「一人のメシを3人で食う」やり方で就職先を増やし、一方で「地主、金持ち、反動、悪人」のいわゆる搾取階級家庭の出身者の仕事のチャンスを奪いましたが、それでもやはりすくなからぬ失業者が「社会の暇人」として存在していました。

    1950年代後期にから始まったのが、労働年齢になった都市の青年を辺境建設の名において無理やり、彼らを新疆などの建設兵団に送り込むことや、彼らを「上山下郷」として農村にやることでした。鄧小平の行政改革以後、経済発展政策をとることによって、私営経済方式によって都市の青年は自ら脱出口を考えられるようになりました。

    しかし、一群の国営企業だけは、これぞ社会主義の優越性を示す「壊れっこない鉄のメシ茶碗」の見本として人減らしは大変難しい存在でして、朱鎔基総理の期間に国営企業改革が進められ、1998〜2003年の間に2800万人の人減らしがおこなわれたのですが、中央政府がこのために支出したのは731億元(112億米ドル)の配置換え資金でした。そうまでしてもこの国営企業の人減らしはずっと国営企業労働者や香港などの中国労働組合から非難の的となりました。

    胡錦濤・温家宝時代では、朱鎔基の「大企業を大事にして小さな企業分野は自由化する」という方針で独占的な国営企業を「共和国の長男」として傾斜配分的に援助したました。こうした国営企業は給料や福祉、その安定性からいってもはるかに外資や民間企業を上回っており、国営企業に就職するということは中国人にとっての職業選択のなかで公務員につぐ、すばらしい選択肢だったのです。これらの国営企業の成長時期におけるサラリーや福祉制度は中国社会の羨望の的でした。

    しかし経済衰退の時期ともなると、これらの国営企業はえらく厄介な問題となってきてしまいました。というのは人員削減がきわめてやりにくいからです。で、生産品の売れる先がないという状況のもとで、地方政府は銀行に債権を強制的に発酵させ、こうした赤字運営の国営企業を支え続けたのです。

    これらの企業は長期にわたって損をだしつづけたために「僵屍企業」と呼ばれています。

    2015年12月に中央経済工作会議が招集されて、「積極的に生産能力過剰を妥当な方法で解決しよう」ということが2016年の五大任務の筆頭に挙げられ、そこで2017年末までに金を稼ぎ出せず、負債が高額で普段に損を垂れ流し続け、半分、稼働していないようなキョンシー企業を清算すべしと言及されたのです。

    これらの僵屍企業は鉄鋼、石炭、セメント、ガラス、石油、石油化学、鉄鉱石、非鉄金属の8大産業に集中しています。これらの企業は長期にわたって損をしながら経営をつづけてきており、2015年12月初めの生産者物価指数(PPI)では40数ヶ月、負債増加状態が継続しており、8割が赤字で利益は紙のように薄いのです。こうした産業の「生産能力過剰解消」の任務はきわめて重要です。これらの企業は中国株式市場の上場A株の1割を占めます。

    こうした僵屍企業は世界でも中国政府というこの非市場経済で政府が企業に干渉する国家でしか存在しません。ハンガリーの経済学者エルナーセン(*?音訳)は社会主義国家の政府が国有企業に無条件の援助を与え、国営企業の労働者に「鉄のメシ茶碗」をあてがう制度を「父親主義」の産物だといいました。市場経済国家のなかでは、私営企業だろうが公営企業だろうが、職員雇用はもっぱら企業の需要に応じておこなわれます。たとえ強大強力な労働組合があって雇用者側と交渉したとしてもせいぜいそれは人減らしに際しての好条件を引き出すことであって、銀行に僵屍企業を養え、などということはありません。「労働者手帳」の厚さが1キログラムもあるフランスでさえそんなやり方で労働者の就職権を守ろうとはしておりません。

    ★政府は労働者に「鉄のメシ茶碗」を提供する方法がまだあるのか?

    中国政府はずっと全知全能だと自認してきましたから、国営企業の大失業問題についても中国内の労働者はきっと政府はなんらかの対策があるはずだと思っており、国外のチャイナウォッチャーは「政府は解決の方法があるや否や?」といった問題を提起しています。

    残念なことですが、この失業の”ブーム”に対して中国政府はもう力尽き、なんの計画もありませんで、労働者をなんとか慰撫懐柔することに重点をおいて、社会の衝突をそらそうというだけで、彼らの再就職を助けようというものではありません。

    生産能力過剰の最たる石炭業界と鉄鋼業界を例にとりますと、どちらも中国では就業人口のきわめて多い業界で、石炭産業は580万人の従業員を擁し鉄鋼業は331.8万人、セメント業界は106.36万人です。石油化学業界なども膨大な労働力をかかえています。

    政府がこうした企業をなんとか維持したいと願うのは主として「世の中の平穏維持、治安対策」の配慮からです。こうした大型の鉄鋼業、石炭業、ガス業というのはみな工業都市にあり、労働者は一般に「労働者一族」で祖父の代から孫にいたるまで親子、兄弟、夫婦がみな同じ業界で働いており、失業しようものなら他に収入源がありませんし、他の業界に就職できる可能性もあまり大きいとは言えないのです。

    また工場地区の居住地の労働者は「お互いに知り合い同士」の社会ですから、簡単に集まって互いに応援したりできます。また抗議しようとすれば地元に住んでいるのですから組織するコストもきわめて安くつきますので、抗議活動がおきたら相当厄介なものになってしまいます。こうした点から、もしこれらの労働者が集まって抗議を始めたりしたら、沿海地区の全国各地から集まってきた砂粒のような「農民工」とちがって、対処が難しくなります。これが地方政府がこうした企業を維持したがる主な理由のひとつです。

    私は「2015年の中国経済のキーワードは「失業」」(http://heqinglian.net/2016/01/02/unemployment/) と、「2015年、中国の「集団性事件」
    http://heqinglian.net/2016/01/23/2015-social-conflict-events/) で中国の深刻な失業現象とその原因、および去年の集団制事件の新しい特徴と中国経済の衰退の関係を分析しましたので興味のある方はごらんください。

    最後に、このテーマで論じた問題を簡単に言えば、現段階で経済衰退によって失業がおこるのは世界中どこでもある現象。しかし各国の社会保障制度の違いから失業者を支える社会の力は同じではありません。しかし失業問題と政治上の「左」「右」を直結して高度にイデオロギー化して論じる珍なる風景は中国だけでありましょう。

    (終わり)

    拙訳御免

    原文は;何清涟:国企失业潮缘于市场挤压,非关政策向右 http://www.voachinese.com/content/heqinglian-china-economy-20160302/3217574.html

     

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