• トランプ現象の背景ー米国中産階級の衰退ー

    by  • April 9, 2016 • 日文文章 • 0 Comments

    何清漣

    2016年3月7日

    全文日本語概訳/Minya_J Takeuchi Jun

    https://twishort.com/o7fkc

    2016年米国大統領選挙ではメディアが包囲攻撃をしているにもかかわらず共和党のトランプ候補の独走ぶりがますます勢いづいています。スーパーチューズデーのあと、共和党内の一部のエリートたちはたまりかねて50人を超える外交政策に造詣の深い人士が連名でトランプ反対署名を集め、ローニー候補は公開の席でトランプ氏を詐欺師でありインチキ野郎だと非難し、英国の知識人もトランプ氏に罵声をあびせる大合唱に参加しました。

    ★罵るより、米国社会の現在進行中の変化に注目を

    米国のソーシャルメディア上では実はトランプを擁護する意見以外に、社会主義者のサンダースにもすくなからぬ若者たちが支持を寄せているという光景がみられます。ですから米国の政界や知識人は本当はトランプ氏を罵って満足するよりトランプ支持者たちはなぜそうした選択をしたのかということを理解したほうが賢いのです。

    米国の主要メディアのトランプ氏を評価しない理由は;トランプ支持者の学歴が低く大学卒以上の人は18%しかおらず、それ以下の層が46%を占めている。収入も偏っており、五万ドル以下が4割。五万ドル以上は33%しかいない。また白人に偏っており、年齢も高齢者が多く91%の支持者は白人で58%が男性で、支持者の半数は45歳から64歳、34%が65歳以上で30歳以下の支持者は3%しかいない、ということです。

    Initium Media(*香港メディア)のワシントン駐在記者は頑張って取材して「トランプのボランティアに叩き出された」という記事を書き、トランプ支持者がどういう集団で、その支持理由はなんなのかを記事にしました。その「俺たちがトランプを支持する理由」は三つです。

    ひとつは、「『*政治的な正義』(ポリティカルコレクトネス/少数派への配慮など)なんかじゃないのが正義なんだ」という主張。スーパーチューズデーでの多くの州の投票において、共和党支持者調査では4割が次期大統領は従来のワシントンの政治体制に属していない人物が望ましいとしています。彼らはトランプが簡単でわかりやすい言葉で話し、「ポリティカル コレクトネス」的な話をせず、トランプが政治経験のない「フレッシュな」ところを好んでいます。

    第二には「白人は新少数派」ということです。インタビューに答えた人々は「『文化の坩堝』は米国の核心的価値であり、外来文化はみなこの坩堝の中で溶かされ、キリスト教徒英語を核心とする米国文化になるべきだ」と思っています。

    第三には旧移民は新移民に反対だということです。インタビューに答えた人々ももとはと言えば移民なのですが、彼らは違法移民は米国の病根だとおもっています。45歳のバージニア州の建築業者フレディ・ブルゴフの「違法移民はこの国の貴重な恩恵を被り資源を奪ってるくせに国家には何も貢献しやしない」という言葉が代表的と言えましょう。

    無論、こうした見方は民主党の主流や一部の共和党の人士からみたら「正しくない」ものです。しかし、2016年大統領選挙で選挙民の示した政治的な分裂はこれまでの「ポリティカルコレクトネス」が一部の米国人をうんざりさせてもういい加減にしてほしいという気分にさせていることをはっきり示しています。こうした傾向を軽くみてはならず、米国政界と学会はこの変化に関心を持つべきであり、これまで熱心に扱われてきた同性愛とか移民とか少数民族の末裔の平等な権利とかいった問題にくわえて、この長年にわたっておろそかに扱われてきた人々の政治的な態度を研究の中心に据えなければなりますまい。

    米国の大学生の間ではだいぶ前から「何が米国の最弱者であるか?もし君が白人で男性で、中産階級で、性的には正常タイプだったら、君こそが弱者である。なぜならば少数者の子弟とか、低収入とか、同性愛とか、女性の権利とかいったものならある権利擁護組織からの援助は全く得られないからだ」という話が笑い話ではなくありました。このほか、トランプ支持者のなかには米国ではその貢献に対応する分け前を得るべきだという考え方があることも注意に値しましょう。

    ★米国で憂慮される変化;中産階級の急速な縮小

    欧州政治の左傾化は1960年代からの始まったのですが、米国の左傾化はそれより20年以上遅れてきました。小ブッシュが大統領だった次期には「新保守主義」と言われましたが、左傾傾向の前に確かな構造を築くことはできませんでした。オバマ時代には中道左派路線でしたが、今回の2016年の大統領選挙では共和党の穏健的中・右と民主党の穏健的中・左はどちらも人気がなく、却って両極端の意見が歓迎されているのはいったいどうしてでしょうか?

    そのひとつの理由は米国社会階層構造に変化が生まれているからです。中産階級が減りつつあるのです。2013年に米国中産階級の家庭の人数はすでに5割を切っており、トランプ支持者のなかの年収が5万ドル以下の階層のすくなからぬ数がここ数年で低収入に陥った元中産階級でしょう。

    米国はもともとはラグビーボール形の構造を持つ社会で、中産階級が大きくなったのは第二次世界対戦後の20世紀50年代の始めで、米国の中等クラス収入の家庭は第二次対戦時より倍に増え、中産階級が全人口の6割前後を占め、貧乏人と金持ちが少なかったのでした。

    ところが米国の人口統計局の数字では米国の中産家庭の収入水準は1999年を頂点として、以後次第に下がり始めました。2014年8月発表のデータでは三つの方面から中産階級衰亡の傾向がわかります。

    ① 2000年から2011年、米国中産階級家庭の純資産は7%現象し、68828万元ですが、米国の最も富裕な家庭の純資産は反対に11%増加し、630754米ドルになり、インフレ率を差し引いたら、米国中等家庭の実際の生活水準は1989年より下がっています。2000年と比べても4000ドル減です。

    ② 米国の中産階級家庭の総収入が全所帯に占める割合も下がっており、1970年に62%だったのが、2011年には45%になっています。

    ③ 米国人の自宅所有比率も下がっています。アメリカンドリームの基準のひとつが自分の家を持っているかどうか、でした。20世紀の90年代半ばから次第に上昇しはじめ、1995年の64.7%が2004年には69.2%になり、これが現在までの最高記録ですが、2005年以後は下がり始め、それが住宅バブルの破裂の始まりとなって、2014年の第3期には64.4%まで下がってしまい、1995年の水準に戻ってしまいました。

    ④ 収入の差が拡大

    ワシントンポストによると20世紀の50年代、米国の大会社のトップの収入は一番おおくても普通の労働者の50倍でしたが、いまでは350倍になっています。

    ⑤ 中産家庭の生活水準の全面的低下

    20世紀の50年から60年代、米国の中ぐらいの収入のある家庭では通常、夫が外で稼いで妻が主婦でなお3人の子供をもつことができました。夫一人の収入で普通の住宅と二台の車、さらにバカンスにでかけられたのです。現在では3〜4人の家族の中程度の収入の家庭ではもし20万ドルの家を買うなら頭金に2〜4万ドル払って、以後、毎月1400米ドルの住宅ローンを払い、車にも700ドルかかります。それに医療保険をが毎年4000ドルから5000ドルかかりますから、バカンスに回す費用はほとんどありません。

    政治史を研究したならわかりますが、金持ちが国内政治を主導すれば保守的になり、貧乏人がやれば変革方面に力が入ります。どちらも社会の動揺を招きます。米国はずっと中産階級が主体の社会の階層構造を誇りとし、中産階級家庭が人口の大多数を占めることは社会の安定のためにも社会の消費推進のためにも有利で、国家の経済発展を促進するとしてきました。しかし、現在、米国の中産階級の退潮、減少は避けて通れない問題となっており、米国の将来の趨勢に関わり、政治のカギとなっています。過去数年、共和、民主両党の主流派はまったくこれを解決するための政策をだせませんでしたから、選挙民はどうしようもない絶望の中で、極端派に目をむけはじめたのです。これがつまり今年の大統領選挙において両党の候補者の政治主張が極端化している原因です。

    ★米国大統領選挙は米国だけの話ではない

    2016年米国大統領選挙はこの20年来の政見の分裂が最も大きい大統領選挙です。中間・右派を代表するトランプは米国を例えば「光栄ある孤立」に回帰したいとしており、ヒラリーの政治主張はオバマより更に左よりで、オバマの健康保険改革の成果を廃止しないで守ろうとするばかりか、民主党をさらに積極的に移民政策の実現や、富裕層への課税、ウォール街への金融監督強化を訴えています。

    全世界の指導者でただひとつの国のリーダー、つまり米国の大統領だけが毎日世界の様々な事務に対応しています。第二次対戦が終わってからずっと米国は世界に「国際秩序」という公共サービスを自らお金を出して提供してきました。つまり「世界の警察」としての役割です。ある意味では米国の大統領は世界の大統領なのです。地域の衝突や民主、人権、戦争への姿勢や関与の程度といった事柄をどのぐらいかかわるかということを決定してきました。この役割は費用は膨大にかかるわりに人気はなくわりに合わない役割です。その利益をうけている側からもあまり大した賞賛はえられません。

    しかし、米国が「光栄ある孤立主義」に戻ろうとすると世界はまた心配になります。トランプの政治主張は明らかに英国の左派人士には不人気で、英国のファイナンシャルタイムズのコラムニストは次々にトランプ攻撃の隊列にくわわっており、最近の「いかにトランプブームを見るべきか」などがその代表作でしょう。

    私は米国在住のウォッチャーとして、米国は今後確実に二つの問題に注目せざるを得ないとおもいます。それは階層構造の変化がひきおこした政治変化と、国際社会において米国が長年受け持って提供してきた「国際秩序」という公共サービスの役割はどうなるのか、という点です。この役割は超強力な軍事的実力が必要であり、さらに超強力な経済的実力も必要なのですから。(終わり)

    原文は;何清涟: 川普现象背后:美国中产阶级在萎缩 http://www.voachinese.com/content/voa-news-qinglian-he-usa-election-20160305/3221317.html

     

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