何清漣
2016年5月24日
全文日本語概訳/Minya_J Takeuchi Jun
5月23日、騰讯財経(テンセント)に、国家新聞出版ラジオ映画テレビ総局は動画共有サイトの 優酷、土豆、聚力を含むインターネット動画webサイトに対して6月10日までに国有株主として拘束性のない協議に合意し、これらに対して少なくとも1%の特殊管理株を持つというニュースを掲載しましたが、これでロイターなどのメディアが報じていた情報がついに裏付けられました。
中国の評論家はこれをもって正しくも「中国版公私合作経営Web 2.0時代」と呼びました。中国政府がいかなる深謀遠慮を持っているかということはこれよりまえに2015年に出された「国有企業改革深化に関する中共中央・国務院の指導意見」、通称「国営企業改革法案」にすでにはっきりと述べられていました。ただ当時、文中にあった「混合所有制」による私有化というのは、「私企業を公有化するもの」であって、「公営企業を私営化する」ものではないと、私は「国営企業改革法案の目的地は『公』か『私』か?」(heqinglian.net/..soe-reform-2015;《国企改革方案》的风姓公还是姓私?)で指摘しておきました。
★なぜ、ネット動画企業が突破口に選ばれたか
ネット動画企業を突破しようというのは二つの必要を満たせるからです。一つには情報コントロールの必要性。インターネットは現在まだ正式にはメディア産業とはされていませんが、もうメディアはインターネットなしにやっていけません。ネットがなければ即時性の伝達はできませんから、インターネットを制することはつまりメディアを制することです。ある人はこの国有特殊管理株はたかだか1%で、大したことにはならないと述べていますが、これは全く中国政府を甘くみているもので、政府のこの1%の特殊管理株というのは監視要員を張り付かせるための建前にすぎません。この1%がなくたって、政府が監視地点を設けることをどの企業もあえて拒否はしないでしょうが、中国政府からみれば、自分たちの権威の上にこの1%の持株をくわえることは「手始めのご挨拶」みたいなものなのです。
二つ目は中国政府が久しくやり方を考えていた「私企業を政府のためのものにする」という必要性を満たせることです。2015年の「国営企業改革法案」が出た時に、「国営企業改革法案の目的地は『公』か『私』か?」(heqinglian.net/..soe-reform-2015)でその18条が「様々な方式で国有企業に民間企業の株を持たせることを激励する。それを国有資本の投資、運営、企業の資本の運営のプラットフォームとして作用させ、市場 方式を通じることによって公共サービス、ハイテク、環境保全、戦略的産業を重点領域として、発展の潜在力の大きな、成長性の強い非国営企業に対する株式投資をおこなわせる」であることを指摘しておきました。
これはつまり、前途があまりよろしくない民営企業はご安心を、国営企業はあんたらのところにはいかないから。でも景気がこれからよさげないいところなら、自分たちは招かれないでもいきまっせ、ということで、儲かりそうな分野の企業株を購入し、あるいは資源を売りつけに行くがこれは逃れることができない、ということです。製造業と比べるとインターネットなどの科学技術企業は当然、「発展の潜在力が大きい、成長性の強い」陽光の当たる業界です。
というわけで、中国政府から見るとこうした文化産業の経営を選び、特殊管理株1%を獲得するのは「理の当然」のことであり、これらの民営企業がそれを望むかどうかというのはおそらく考えてもいないでしょう。
腾讯財経ネットの文章では「2014年、国務院事務局の文化企業発展を支持する文書の中にははっきりと『特殊管理株制度の範疇は重要なモデルチェンジが必要な国有産業』と規定されており、民営企業はそのなかにはふくまれていない」「事実上国有企業の文化にかかわる機関や国営企業改革で特殊管理株がつかわれた先例はない(*文化機関、それも民間の企業を規制するために特殊管理株制度はつかわれたことがない)」とまだ一縷の望みを託しています
でも、もし腾讯CEOの馬化騰が自分は習近平の訪米のお供をしたほどなのだから特別に皇帝に謁見できる、とか思っておいでなら、一緒に行った百度の社長の李彦宏がいまどうなっているかをみればわかるでしょう(*軍隊の有料サービス廃止に利用された魏則西事件を指す twishort.com/Vszkc )。中国で生きている限り、「共産党の政策は月のようなもので新月から満月までどんどん変わる」のです。法律だっていつでも好きに変えられるのですから、ましてやただの政府文献などに先例がないなどというのはなんの意味もなく、いつでも「先例」などつくれるのです。
★硬軟両様の「中国版公私合作経営Web 2.0」
「国2013年の『改革を全面深化』させる光量的な文献に初めて”特殊管理株”が登場したときには『モデルチェンジの必要な重要国有企業のための特殊管理株制度」としかかいてないから、今回の有資本がインターネット動画webサイトを経営する企業の株取得というのは試験的なものではないか?まさか全面的な展開はしないのでは?」とある人からきかれたのです。
で、はっきりと「儲かる業界なら最後にはすべて国有資本が入ってくることはまぬがれない」と答えました。2015年の「国営企業方案」の第16条は、「その現地の施策を堅持し、業界の施策により、企業の施策により、独立すべきは独立させ、制御すべきは制御し、参加すべきは参加し、合併を強行してはならず、すべてを覆い尽くしてはならず、タイムテーブルは設けず、機が一歩熟したら一歩前進する。改革はルールにのっとって、厳格に過程を尊び、公正公開で、混合所有制企業の各種出資者の利益権益をしっかり守り、国有資産の流出を断つ」とあります。
この種の重要文献は私の経験では一語一語しっかりと逐語的に読み込まねばならず、ネット時代のようなざっと目を通すやりかたでは重要な点を見逃してしまいます。「改革はルールにのっとって」から始まる部分はそれほどでもありませんが、しかしその前の部分はしっかり読み込まねばなりません。「その地の、その業界の、その企業の施策」「タイムテーブルを設けず」というのはつまり好き勝手にいつでも始められますよ、ということです。ある企業が今日、国有株の対象になっていないからといって、翌日もそうだということはまったくないのです。
さらに、「1950年代の社会主義改造みたいな残酷なやりかたで商工業者があつかわれ、最後に所有者はスズメの涙ほどの利息しかもらえなく、全部なくしてしまうことにならないのだろうか?」と聞いてきた人もいました。
これはそんなことにはならないでしょう。時代がもう完全に違います。
1950年代の「ブルジョア商業、工業社会に対する社会主義改造」は当時の商業、工業界の人々はもうすでに「三反」「五反」運動(*1951/wiki;ja.wikipedia.or..%81%8B%E5%8B%95)でその恐ろしさを教訓としてうけとめていましたから、農業や手工業の社会主義的改造より簡単にやれました。「三反」「五反」の最盛期には蓋つきで上海だけで1000人が飛び降り自殺しました。上海の商工業界の人に当時のことを聞くと「今日は落下傘降下兵は何人?」というのが「何人自殺した?」という意味でした。
香港は毛沢東にかつては中国民族商工業の四第代表の一つと表彰されたのですが、それが飛び降り自殺を強いられたのです。上海の”冠生園”(*白兎印の有名食品企業)の創立者の洗冠生は侮辱に耐えかねて飛び降り自殺しました。毛沢東が「商工業の社会主義改造は説得、動員、批判、組織的な過程を経て、ウリが熟して落ちるように、水が低きに流れるように自然にやる」といいましたが、商工業界はすでに「三反、五反」の体験で毛の真意と「説得、動員」のあとに何が来るかをしっかりわかっていましたから、「時の流れを知るものは英傑なり」とばかりに荣毅仁(*中国国際信託投資公司の創設者で、のち1993年から1998年まで中華人民共和国副主席)のように「赤い資本家」が率先垂範するなかで、ドラや太鼓を打ち鳴らし、良い子になって自分の経営してきた産業を中共に引き渡しました。1956年末までに全国の資本主義商工業はすべて国有化され、中共は「世界的意義のある偉大な歴史の事変」をなしとげました。万の数におよぶ諦めの悪い資本家や零細企業者が自殺しても、「当然の罪の報い」でした。
習近平はそこまでやる必要はありません。彼が民営企業の株を持ちたがるのは主に金の儲かる企業に一口乗って、コントロールしたいからです。企業も欲しいわけですが、それには能力ある優秀な経営者も必要とします。もし企業を全部国有化し、企業家を追い出したら誰も金を稼いでくれません。国有企業の経営者たちがどんな連中かは習近平ははっきりとわかっています。ですから「混合所有制」を推進するにあたっては硬軟両様の構えで、例えば、説得、動員、利害を説いて企業に「ちょっと株をださせて」政府と合資させるでしょう。現在の中国の民営企業家はみな長年政府と友誼をあたためてきたエリートたちですから、当然、政府の「説得、動員」が「乾杯しよう」という意味で、これを断ったらつぎには苦い「罰杯」が来ることを承知しています。
最後に、自分の稼業が心配な民営経営者の皆さんへ、2015年の「国営き企業改革方案」をしっかり勉強することをお勧めします。それでこの方案の要点は「すべてを国有化」することではなく、「混合所有制をすすめる」ことにあることがわかります。この「混合」の意味はふたつあって、一つは私企業が国営企業の株を買って株主になるのを奨励することです。ただ株の比率は国有が多数で私企業は従属的な地位であって、政策権と決定権はありません。二つ目は国営企業が私営企業の株主になることです。この方案がでてからもう半年を過ぎましたが、政府が奨励している国営企業株を私企業が購入した「先進事例」は耳にしません。ひょっとすると「先進」は誕生の過程にあるのかもしれませんが。いま目に入るのは政府が自ら、「曲げて」私企業株主に参加させてよ、という姿ですね。で、ネット動画企業はこれからも儲かりそうですし、また情報コントロールは中共の一大事業ですから、それで「一等賞」に選ばれたのです。(終わり)
拙訳御免。
原文は;何清涟:公私合营2.0版始点:国资入股视频公司
voachinese.com/..23/3343374.html
何清漣氏のこれまでの論考は;heqinglian.net/japanese