• 魏則西事件が「社会問題」として処理される理由

    by  • May 28, 2016 • 日文文章 • 0 Comments

    何清漣

    2016年5月4日

    全文日本語概訳/Minya_J Takeuchi Jun

    https://twishort.com/Vszkc

     

    中国西安科学技術大学の学生の魏則西が不治の病で亡くなった事件は本来は一件の医療トラブルです。この種のトラブルは中国では毎年たくさん起こっておりマラソン医療訴訟になっています。しかし魏事件はなんと奇跡的に「社会的事件として処理」されることになりました。メディアは黒幕を暴き、ネットでは「ついに光がみえてきた」という書き込みも少なくなりません。この「光」はつまり中国の医療改革を促進させるだろうというものですが、そう断じるのはまだ早いでしょう。ここではこの事件がなぜ「社会的事件として処理」されることになったのかという要素を分析しますので、読者はご自分で判断をなさってください。

    ★事件の追求が中国医療体制の進歩を促進するか?

    2014年4月、魏則西は検査で骨膜悪性腫瘍と診断されました。これは珍しい癌で、世界でも有効な治療手段がなく極めて生存率も低いものです。魏の場合それも中・晩期でした。つまり検査結果がでたとき魏は死が避けられないことを知っていました。しかし生きる本能は人間の根底的な本能ですから、たとえ一縷の望みでしかなくとも魏の一家は手術や化学治療、放射能療法などのこれまでの治療が功を奏さなかった後も、魏は「百度」のネット検索で一番トップにでてきた北京の武装警察第二病院を探し、それにすがって4度の生物免疫療法を受けたのでした。

    清華大学の何霆博士と清華大学病院の著名な免疫学専門家の林欣に雑誌「知識人」がインタビューした内容によると、 魏が最後にうけたDC-CIK療法は中国では治療の主要な方法ではあるが、その発明された米国ではまだまだ臨床試験段階だというこで治療手段は依然として模索されており、治療結果も予想できないということです。2011年、ノーベル生理学/医学賞受賞者の米国カリフォルニア大学の免疫学者と細胞生物学者のスタンマン自身も自分の研究してきたワクチン療法で命を医者の予想の一年あまりから4年に伸ばせただけだったとのことです。(ブルムバークニュース2016-05-02)

    もし、魏の主治医の李主任がこうした事実を告げて、魏や家族にやるかどうかを決めさせたのであれば話はこんなにややこしくならなかったでしょう。しかし、李主任はその効能を大げさに伝えるという過ちを犯しました。彼は魏に「この技術はスタンフォードの研究によるもので、私たちの研究協力パートナーであり、成功率は8割から9割で、魏のカルテをみれば20年だって問題なく生存できる」と言ったのでした。

    結果は魏は一家の貯金を全部叩いてそのうえ借金までして去年の年末までは持ちこたえましたが主要は肺に転移し、医者も余命1、2ヶ月と通告。魏は結局、生への思いとこの世への恨みを飲んでこの4月12日に亡くなったのでした。

    アメリカではこの種の臨床試験段階の治療については医者はその効果を保証しませんで、自ら望んで試験に加わろうという患者とは同意のサインを交わしますし、その協約には病人が治療効果や副作用など知るべきあらゆることが記されており、また医者の免責事項も書かれています。中国の医療体制ではこの部分が欠けており、医療紛争における責任が曖昧模糊としているのです。もし魏の事件がこの制度を改め、tゆうごく医療の監督体制にこのふたつの部分がつけ加わるというのであればこの事件の最大の社会効果といえるでしょう。

    ★中国メディアはなぜ突然、軍隊がバックにいることを大々的に報道した?

    中国宣伝部には昔からメディアが医療事故報道にかかわることを厳禁しています。それはひとつには専門家でなければわからない領域であり、記者にはそのような知識がないこと、ふたつには軍隊や武装警察のマイナス面にかかわるニュースだからで一律に報道禁止です。ですからもしメディアが報道できたということは必ずや上部からの命令によるものです。

    今回の事件で攻撃が集中したのはふたつあり、ひとつは病院の背後の軍隊勢力。ふたつ目は百度の広告でした。どちらも一般の医者患者関係をはるかに超えたものでした。

    中国の医者と患者の関係は大変劣悪なもので医療と薬の経営が分かれていない体制は患者に高い出費を強いるばかりか、患者の医者に対する信頼を傷つけています。医者と患者の間のトラブルはたえず(医者から見たら医療トラブル、患者から見たら患者の権利)あるのですが、普通は医療事故は専門家の鑑定をまって司法解決の道をさがしだすもので、今回のような「社会的問題として取り扱う」というパターンは極めて稀です。しかし民衆の医療体制に対する不満は特定の軍隊病院に向けられたものではなく、すべての病院に対してのものです。

    軍隊の病院が社会に解放されたのは80年代に出現した事情からです。私が深圳にいたとき解放されている軍隊の病院はすくなくとも二箇所あって、ひとつは三九集団医院、ふたつ目は武警医院でした。しかしこうした医院は地方医院と同じで外部の医師を金でやとって診療させていました。積年のトラブルに訴えはたえなかったのですが地方もどうしようもなく基本的にはお手上げのままでした。

    今回、魏則西の事件があっというまに「社会的な問題として処理」される医療事故となったのはこの事件が暴露された時がまさに習近平中共中央総書記が全力で軍事改革を進めているときだったということからです。早くも2月27日、新華社は中央軍事委員会は近日中に「軍隊と武装警察がお金をとってサービスすることを全面的に停止させる通知」を出すとのニュースを流しました。いわゆる軍隊の有償サービスというのは軍隊や武警の病院が社会に有償サービスをすることも含んでいます。

    しかし、軍隊の病院が有償サービス提供は軍隊の重要な財源のひとつであり、それをやめさせるというのは軍の重要な「金のなる木」を切り倒すとおなじです。3年以内に、とかいっても、軍側の利害関係部門はきっと実施をなんやかんやいって遅らせて、復活のチャンスを伺うことでしょう。

    魏則西の事件はまさに習近平の軍隊改革に「民意の応援」をもたらしたわけで、これが中国メディアが軍事が関係する医療事件に大々的に介入してきた本当の理由です。この事件がただ民意を重んじて当局が積極的に民意に応えたのだろう、などとおもうのはまったく政治的な経験のない人だけです。

    ★ネット民はなぜ百度を熱心に叩いた?

    百度は今回、偽りの広告ために罰を受けました。5月2日、中国インターネット情報事務局は調査班を百度に派遣し、ために百度の株価は8%近く値下がりしました。

    百度が今回中国ネット民の猛烈な攻撃の的となった原因は魏西則が北京武警病院の情報を百度の検索から得たからです。この講習の怒りが百度の嘘の広告で金儲けしているという点に向かったとき、中国の官製メディアもつぎつぎに尻馬にのって、百度は利益を人命の上に置いていると批判しました。例えば人民日報は百度は金儲けのために信じてはいけない医療ルートを広めたと。メディアはあらに広告法46条の百度が審査責任をはたさず、56条の広告責任者は連帯責任を負うという条項をもちだしています。

    大衆の百度にたいする憤りは長い間に蓄積されており、今年1月に百度が血友病のビュオニンのフォーラムの主催権をある企業に売り渡し、その企業がそのフォーラムで怪しげな医学的提言を行ったので、ネット友は百度BBSが金儲け主義だとして、4割の病気関連BBSはビジネスで企業と組んで金儲けしているといわれました。百度はのちにこうしたビジネス協力BBSはやらないと声明をだしましたが、しかしネット友は高血圧など人気の疾病に関しては依然として企業と組んでBBSを開いているということを見つけ出したのでした。

    さらにネット友は百度は政府側に情報を手渡しているとしており、この恨みは積年のもので今回のチャンスに借りを返そうという動きでもありました。情報を封じられたことを深く恨んでいるネット友の立場からみればこうしたものの見方は成り立つのですが、しかしだからといってそれは政府が百度を厳しく処分しようとしている理由ではありません。前に毒ワクチン問題が起きた後に、国務院が「大衆の怒り」を理由に内部に処理の指示をだしたことを考えてば、今回の懲罰は「大衆の怒りをなだめる」というのも当局の危機管理政策の一環だったといえるのです。

    以上、縷々述べてきましたが魏則西事件は中国の現段階における医者と患者側の極度の緊張関係、社会的信頼の破産といった矛盾が集中しておこったものです。中国人はこの事件で長年溜まってきた怒りを吐き出し、政府側は政治的必要からこの事件を「社会化処理」することを許したのです。政府側のやり口をみるに、こえは中国当局が毒ワクチン事件のあと、また「大衆の怒り」にたいしての政治的選択だったのです。

    効果からみて、中国当局は民意を利用して軍隊や武警の有償サービスをやめさせ、軍改革の大計画を推進し、また関係した病院の医者と百度を罰することによって「大衆の怒り」を鎮めるという手柄をたてました。しかし、朝野双方のこの事件にたいする重視の理由はあまりにもバラバラで、はたしてこれが医療体制改革にむすびつくものかどうかはまだかなり疑わしいでしょう。(終わり)

    ⚫︎約10時間後のツィット追加;HeQinglian
    May 04, 9:22pm via Twitter Web Client
    「その後の最新情報によれば宣伝部は各メディアに扱いを下げるように要求し、メディアの独自取材・記事は不許可に。習近平はこの事件を自分の都合、つまり軍隊の有料サービス廃止のために利用したいだけで、まともな方向の医療体制に向かうことはありそうにない」(关于魏案的最新消息是:宣传部门要求报道降温,各媒体不得自行采写,需用通稿。证明我的看法没错,习近平对此案的处理主要是为己所用,促使军改(军队停止对社会的有偿服务)。最正确的方向本是促成医疗体制改革,这点看来不太可能。)

    拙訳御免。
    原文は;何清涟:魏则西案“社会化办理”的背后
    voachinese.com/..03/3314612.html

    何清漣氏のこれまでの論考は;heqinglian.net/japanese

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