• 責任を果たさなかった米国メディアー2016年米大統領選挙ー

    by  • July 15, 2016 • 日文文章 • 0 Comments

    何清漣

    2016年7月9日

    全文日本語概訳/Minya_J., Takeuchi Jun

    https://twishort.com/nUHkc
    2016年米大統領選挙では新聞やテレビといった伝統的なメディアの仕事は人々を失望させました。彼らは自らの社会の監視者という職責を忘れ、「ポリティカル・コレクトネス」(*少数者に公平であろうとする姿勢。狭義では差別的な表現をなくす用語を使う努力)にばかり力を入れるあまり、客観性、公正性を失ったばかりでなく今回の大統領選挙を全く意味のない口角泡を飛ばす舌戦にしてしまい、人々が伝統メディアに愛想をつかして代わりのメディアに情報を求めるようにしてしまい、ソーシャルメディア(*電子掲示板やブログなどのインターネットサービス)を発言の舞台にしてしまいました。

    中国では「非新聞」の創始者の卢昱宇(@darkmamu) とガールフレンドが中国当局に「騒動挑発罪」で逮捕されました。彼らのサイトは集団性事件(*群衆が集まって政府などに抗議する)の情報を専門に発表していたのです。国外からはあまり注目もされず支持へのアピールもろくになかったのですが、しかしその白黒正邪は外の世界もみなわかっていますし、これが中国政府のメディア弾圧だと知っています。しかし、世界のメディアからその模範とみられている西側メディアは現在、別の種類の問題に遭遇しており、それは「ポリティカル・コレクトネス」というイデオロギーの罠がメディアの力を失なわせています。少数のメディアはこの問題に気がつき始めましたがしかしその陥穽から抜け出せないでいます。

    ★「ポリティカル・コレクトネス」がメディアを片目に

    米国の主流メディアの大メディアはおしなべて左傾していますが、この傾向が2016年の大統領選挙で「片目をつぶる(選択的失明)」(*故意に自分たちの都合の悪いことには目をつぶる)こととなり、最悪の事例では新聞業界の守るべき倫理に反することもありました。

    6月中旬、Yahoo麾下の主席映画プロデューサー・Katie Couricが米国の銃器の現状を記録した「Under the Gun」を作りました。彼女は何人かの銃器所有者に「あなたがたはどうすれば銃器購入者の背景調査の穴を無くせると思うか?」にたずねました。しかし、この一時間にわたる取材でインタビューをうけた人々がいかに銃器を管理しているかというまっとうな部分はきれいさっぱり削除され、ただこうした人々は10秒ほどぼけっとした顔で映し出されるだけで、いかに自分勝手なバカな白人であるかという印象を与えるシーンで使われました。これがソーシャルメディア上で暴露されても、この製作者は別になんら処罰されることもなく、主流メディアはこれを報道しませんでした。その理由は、現在民主、共和両党が反テロでとっている態度が異なっており、民主党はテロ事件の頻発を銃器コントロールが不十分だからだとしてイスラム国との関連はみとめたがりません。当然、事実を切り貼りしてから米国大衆に知らせようというのはメディアだけではなく、米国政府機関もそうです。フロリダ州の銃乱射事件でも犯人が警察にかけた電話録音からはイスラム国にふれた部分はカットされていました。

    ただ幸い米国は三権分立制度です。この録音の完全版は最後には下院議長の強い批判をうけて公表されました。しかしメディアの選択性報道の傾向は業界の自律に任されています。2016年の大統領選挙では伝統メディアは自分たちの影響力の衰えに愕然としています。これまではメディアが世論を誘導してきました。今ではメディアはやむをえずネット情報(主にソーシャルメディア)の後を追いかけざるをえず、さらにメデイァが集中攻撃をあびせて嘲笑したはずのトランプがなんと共和党内の10指以上の候補に打ち勝ってしまったという事実をつきつけられ、メディアのエリートたちをして「どこに問題があったのだろう?」と考えこませています。

    1989年に天安門事件を取材し二度のピューリッツァ賞に輝くNicholas Donabet Kristofは怒りと疑問をこめて「メディアはトランプのポチか」(NYタイムズ3月28日)を書きました。彼は「我々メディア人の多くはトランプを嘲笑したが、事実は彼が我々を掌中でもてあんそんだのだ」という事実を認めています。メディアが冒した過失は三つあるとして、
    ①トランプに対して十分な事実や確信にかかわる調査をしていない。
    ② トランプの責任を他人におしつけるやり方を十分報道せず、選挙民に彼を正直な人間だとおもわせた。
    ③ 米国のサラリーマン階級の痛みを見て見ぬふりをして、期せずして大衆のトランプへの共鳴を生んだ。
    と指摘しています。

    わかりやすく言えば前者2項の失敗はトランプの正体をはっきりさせなかった、ということです。この点は私は同氏は同業者に対して厳しすぎるような気がします。NYタイムズなどのメディアもこの方面ではいい仕事をしています。トランプの私生活からこれまでのやってきたこと、彼の家族の私生活、その弁護士、友人、緊密な関係にある事物のマイナス情報などはほとんど掘り出してきていますし、読者や視聴者がうんざりするほどで、それが原因となってこうしたメディアに対して疑問を持つようにならせたぐらいです。この種の大衆の反応は中国のことわざでいう「モノ極まれば、必ず反転す」です。BBCのNick Bryantの「米大統領戦;「メディアのトランプへの”依恋症”」(BBC,2016年6月4日)はこの点を深く反省しています。

    ★ポリティカル・コレクトネスの陥った「片目をつぶる」こと

    私は第三点のメディアの過失について大いに同意します。「米国のサラリーマン階級の痛みに目をつぶり、それによって意識せずにトランプの伝える情報に大変大きな共鳴を引き起こした」にです。

    米国の2016年大統領選挙で社会主義を主張したサンダースと、ポピュリズムのトランプがあれほどおおくの選挙民を引きつけたという事実は「米国にどんな問題が出来したのか?」と気がつかせてくれました。私もいぶかしいおもいで大量の情報を集めてやっとわかったのですが、世界の民主主義の模範のはずの米国が禁煙では富の分配の不均衡が急速に拡大しており、2015年10月1日の「フォーブズ」ネットの記事では米国の富分配はますます深刻化して、富の偏在の溝はますます深まり、アリアンツ(*独の保険会社)のレポートのジニ係数は米国が80.56、普通に使われている言い方だと0.8だといいます。こんな数字がどうやってでてきたのか知りませんのでこれについての論評はしません。別のより信用できそうなジニ係数だと、2010年の0.44です。記事では分配がこんなに不公平なのでは「アメリカ合衆国」というより「アメリカ分裂国」に改名したほうがいい、といってます。しかしこうした報道は米国の何社かの主流メディアではほとんどお目にかかりませんし、かれらは自国の貧困より他国の貧困の方にはるかに注意を払っています。

    米国のメディアが米国の社会の実情から乖離している点については今年の三月に、トランプ現象の背景ー米国中産階級の衰退ー heqinglian.net/..us-middle-class
    を書きました。そこでトランプがすくなからぬ共和党支持者に選ばれる理由は大に米国社会階層の構造的な変化で中産階級が20世紀の50年代初めには全人口の6割だったのが、2013年には半数を割り込んでいると指摘しました。4月22日の米国労働統計局のデータにあらわれた警告はさらに強くなって;2015年の全米の8141万家庭で家族の誰も働いていない家庭が1606万、19.7%に達したといいます。この意味は米国の5家庭に1家庭は誰も仕事がないということです。のちにまたトランプ現象から伺える米国政治の「三つの乖離」 heqinglian.net/..ump-us-election ここでは第一レベルの乖離はエリート階層が普通の米国人の生存への焦慮に痛みを感じなくなっていること、第二の乖離は米国のエリートが国際社会の責任と自国民への責任の間で方向を見失っていること。三つ目の乖離は米国外交政策が国際的な期待に応えようとして国内選挙民のそれとは一致していないことをあげました。ピュー・リサーチセンターが5月5日に発表した民意調査では57%の米国人が米国が自らの問題を解決することを望んでおり、たの国々も最大限自分たちの問題を自力で解決してほしいと望んでいるという結果でした。

    ★米国青年の社会主義的思潮

    「外交政策」2016年7月号に掲載された「Why Young Americans Are Giving Up on Capitalism(米国の若者の資本主義離れ)」は今年4月のハーバード大学のアンケート調査を引用して、米国の青年の資本主義に対する支持率は史上最低になったと報じています。18歳から29歳の年代の回答者のうち51%が資本主義に強烈な拒否感を示しており、資本主義を支持するのはたった42%でした。33%の回答者は社会主義を支持していると表明しました。ハーバード大のこの調査と2012年のピュー・リサーチセンターの調査は期せずして一致しています。2012年のピュー・リサーチセンター調査では46%の18歳から29歳の青年が資本主義を支持していますが、47%はしていません。

    この記事の筆者はこれに理解を示しており、まず近年の大学生の家庭の実情を「大学生は借金の泥沼におちいっており、かれらの中にはは最低賃金ではたらかざるをえなかったり、無報酬で働かされている。また高収入で外聞もよろしい仕事というのはみな大都市に集中しており、そうした都市の家賃は過去10年で3倍から4倍に値上がりしている。こうした低賃金の仕事をしたくないが、しかしそうしないと高い家賃を払えないというにっちもさっちもいかない状態にある」としています。結論は「実は米国の若者の困窮の度合いは別にこんな調査をしないでもかれらの空っぽの銀行口座や、低収入の仕事をみたればすぐわかることだ。こうした現象を批判するのに別にイデオロギーなど必要としない。現状そのものがそれ自体に十分反対している」と書いています。もし米国の「外交政策」を読んでいるのだと知らないでこれを読めば、まるで中国のことを書いた記事のようではありませんか。

    メディアは「第四権力」と言われ、メディアで働く人々はだいたい米国人記者のプリッツの「もし国家を大海を航海する船にたとえるならば、ニュース記者は船上の見張り人である。無限にひろがる海の上ですべてのものを観察し、不測の雲や暗礁の危険を察知すればただちに警告をあたえるのだ」という名言をご存知のはずです。これは全世界の報道記者に勇気を与えてきた言葉であり、優秀な者はこの職責の誇りを忘れたことはありますまい。しかしこの職業への期待は近年ではもうなくなってしまったようです。2016年の大統領選挙で伝統メディアのやったことは人々を失望させました。かれらは自らの職責を忘れ、「ポリティカル・コレクトネス」ばかり気にかけてその客観的公正さをさまたげたばかりか、今回の大統領選挙をつまらないツバの飛ばし合い合戦にして民衆を失望させてしまい、民衆は別のメディアであるソーシャルネットワークメディアに自分たちの意見を表明する舞台に選んだのです。(終わり)

    何清漣氏の原文は;何清涟:从2016年美国大选看媒体失职《中国人权双周刊》hrichina.org/ch..-mei-ti-shi-zhi

     

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