• グローバル化と難民問題ー動揺止まぬその基盤

    by  • September 5, 2016 • 日文文章 • 0 Comments

    何清漣

    2016年8月19日

    全文日本語概訳/Minya_J., Takeuchi Jun

    https://twishort.com/wGSkc

    2015年から始まった欧州の難民危機から2016年の英国のEU脱退、さらに極めて不安定な米国大統領選挙まで、世界を広い眼で見ようとする少数の学者・ウォッチャーらは期せずして民主制度の危機を考え続けてています。第三波の民主化以後、民主、人権などの普遍的な価値観は民主制度が全地球規模で広まっていることと密接に連携し、それによってこうしたグローバルな政治秩序が強烈なチャレンジを受けているのです。前モルガン・スタンレー・アジア会長のスティーブン・ローチは政治的に米国のエリートの主流の人ですからトランプを総体的には否定はしていますがある一点で「トランプの言ってることは間違っていない。グローバリズムはすでに支離滅裂だ」とも述べているのです。

    ★グローバル化と自国利益の衝突

    今年5月、前世界銀行のエコノミスト、ブランコ・ミラノビッチとイェール大の政治学教授・ジョン・E・ローマーがハーバードビジネスレビュー誌上で指摘したのは;グローバル化の流れの中で、中国とインドという二つの発展途上国が急速に上昇して世界の不平等の度合いは大幅に下がった。しかし多くの先進国の内部では貧富の文化は却って不断に拡大している。1988年から2011年までに発展途上国家の下層家庭の収入はほとんど変化がなかったし、増加の速度も遅かった。多くの国々、とりわけインド、米国、ロシアといった大国では国内の貧富の差は加速している。国内の不平等にばかり眼が行くと、全世界的な不平等という観点を忘れがちだが、ここから引き出される厳しい結論は、つまりグローバル化発展は世界全体の収入を上昇させ大きくグローバルでの収入の格差を縮小するが、しかし同時に国内の不平等の加速を招く、ということだ。

    米国の現実もこの結論が正しいことを証明しています。20世紀の50年代初め、中産階級は全米人口の約6割でしたが、2013年には人口の半分以下になりました。今年4月22日、米国労働統計局の資料の警告はさらに強まり、2015年には全米で8148万家庭があり、そのうち誰も働いていない家庭は1606万人で19.7%になった。つまり5家庭に1家庭は誰も働いていないことになる。少なからぬ米国労働者と一部のホワイトカラーはこうなったのは仕事の機会が外国に流れたことと、移民の大群がやってきてチャンスを奪ったグローバル化のせいだとみているのです。

    今年5月9日、ワシントンの移民研究センター(CIS)が発表した移民費用の最新報告では、証明書のない移民家庭が毎年受け取る福祉費用は5692米ドルで、米国生まれの家庭が受け取る福祉費用の4431米ドルを上回っています。このレポートはもっとも福祉費用を受け取っているのはメキシコと中米の移民家庭で、彼らが得る納税者の納める連邦福祉費用は平均8251ドルで、米国生まれの米国人の86%より多い、としています。

    こうした状況から生まれる疑問は、一国の政府たるものはまず先に自国の貧乏人の面倒をみるべきか、それとも外国移民の面倒を見るべきか?というものです。こうした疑問は「ポリティカル・コレクトネス(*政治的・社会的に公正・公平・中立的で、差別・偏見が含まれていない言葉。差別・偏見を防ぐ目的を大事にしようとする立場)によってこれまでは押さえ込まれてきましたが、しかし消え失せはしません。移民問題はこうして今年の米国大統領選挙の激しい論点となったのです。

    より深いレベルでの問題としては、民主国家の選挙権と納税者の権利はこれまでと違って、今や同じものではありません。普通選挙制度は事実上、初期の民主制度下での納税者の権利と責任にという政治的関係に終止符を打ってしまいました。グローバル化がもたらした移民問題が、西側国家で税金を払ったことのない人たちでも正当な名分のもとに福祉というケーキの分け前が貰えるようにしたのです。

    米国ウォール街占拠運動(ja.wikipedia.or..%81%9B%E3%82%88)の発起人代表のすべての人々が無料でケーキの分け前をもらうべきだという主張は、この世界の矛盾はウォール街のエリートを代表とする1%の資本所有者と他の99%の各層の人々の矛盾だととらえていたところからうまれました。

    しかし、この運動を失敗させたのは「我々は”53%”である(米国では所得税を払っているのは労働力人口の53%)」という人々でありました。「我らは”53%”」の支持者たちはウォール街運動の参加者は政府の税金でもって際限のない非納税者の福祉要求を満足させるべきではない、連中は仕事をすべきだ、と考えたのでした。

    ★西側国家は「福祉享受と価値の衝突」を受け止められない。

    グローバル化のもう一つの結果が移民で、欧州への難民の潮の発生の前に、移民は西側国家では肯定的な価値をもつものであり、オバマ大統領はその任期の最後の2年間にもっと大きく門を開いて歓迎する方にずっと移民制度を改革してきました。欧州各国もドイツのメルケル首相が2015年9月に初めて移民の無制限受け入れ策を宣言したので、その結果現在、難民がもたらす婦女暴行、殺人、強盗、窃盗、麻薬販売、テロの真っ只中です。ドイツの直面する問題はまさに二つのレベルでグローバル化の問題がもたらすものの反映です。

    第一のレベルはEUの内在的危機で、EU大統一の目標は欧州各国が5億人の一つのファミリーになって、欧州から国境をなくし、貨幣を統一し、財政を統一し、福祉制度を統一することでした。しかしこの目標は通貨統一だけで、まずギリシャなどの債務危機で停滞と紛争が起き、続いて、難民危機に遭遇し、各国は国境を復活させるしかなく、ヨーロッパの国家間において国境検査なしで国境を越えることを許可する「シェンゲン協定」は名ばかりのものになってしまいました。

    かつて「欧州の女王」といわれたメルケルは「理性の声」「経済繁栄の化身」「ドイツ人の母」といった名声の輝きをすっかり失いました。現在、ドイツは政治と経済の二重の危機の中にあります。メルケルは半月前にテレビで依然として「我々はやってのけることができる」との主張を堅持していましたが、それを支持する民意は8%にすぎませんでした。このような低い政策支持率は民主国家では前代未聞です。著名な米国の政治学者、フランシス・フクヤマは8月3日、英国のエクスプレスの取材に対して、「メルケルは欧州にとってISISより恐ろしい脅威だ」と仰天するような発言をしました。(SHOCK CLAIM: Merkel is BIGGER threat to Europe than ISIS, claims US professor)。

    第二のレベルの問題は数百万の難民(この数はまだ増え続けています)がドイツの財政にもたらす「慈善の罠」におちいらせる巨額負担です。ドイツのIfo経済研究所所長のハンス・ジーウェン教授は、2015年のドイツの難民への支出は210億ユーロだと明らかにしました。エコノミストのベルンド・ラッフェルフシューへンの計算だと難民危機は1兆ユーロ近くを消耗し、納税者は毎年170億ユーロを負担するとしています。もし難民が6年内に労働市場に参加するとしてもこの間に9000億ユーロが必要で、これはドイツ国民総生産の三分の一にあたります。ドイツではすでに退職年齢を69歳に延長すべきかという議論がはじまっておりますが、この「延長」は退職の年齢を遅らせることではなくて、退職後の年金支給を遅らせる話なのです。

    ドイツはEU経済の大黒柱です。ジーウェン教授は欧州中央銀行がだした銀行の耐久力テストは説得力がまるでない、とみています。ユーロはこれまでどおり問題をかかえており、現在の状況下では問題はすべての参加者が「どちらも総負け」になりかねないとしています。フランスのエコノミスト・Jacques Sapirはユーロ圏が現在の状況の下で存続するためには、ドイツは毎年2300億ユーロの補助金支出を強いられ、それはドイツ連邦の2016年財政収入の3169億ユーロの75%になり、その期間は少なくとも10年は続くだろうとしています。この割合は中国の中央政府が各地方政府のために負担する支出をはるかに超えています。さらに中国政府は地方政府から税金を取る力をもっていますが、ドイツはたのEU国家徴税できませんし、逆に補助金で支援する職務を担っています。この苦境に対して財政常識の少しでもある人々ならばどれほどの危険があるかは明白です。

    以上の目算の前提は、難民が数年後に受け入れ国の労働市場に参加するということですが、この前提も実際にはうまくいっていません。ベルテルスマンファンドの援助でエコノミストのアイバーン・マーティンが行った「欧州9カ国難民融合労働市場研究」(ドイツ語;derstandard.at/..ticle?%E2%80%A6)によると、9か国、94項目で調査分析を行った結果、難民の労働市場融合参加を果たした国はひとつもありませんでした。

    ★グローバル化を支える三つの礎石はすでに崩れている。

    以上の分析はただグローバル化の経済レベルの一側面でしかありません。つまり多国籍国家と資本主義のエリートたちはグローバル化の果実を得られる一方、西側先進国家の人民は次第に貧困日し、福祉システムは重荷に耐えられません。これ以外に文化価値のレベルや政治のレベルでの支離滅裂な状態はさらに深刻なものです。

    文化価値理念の上での支離滅裂さ。ムスリム移民は受け入れ国での文化的な融合にはまったく成功しておらず、激烈な社会衝突により欧州は安全感を失いました。

    欧州国家にやってきた外来グループのなかで、ムスリム移民は不断に入ってきて、その出生率は高止まりしたままです。このグループはすでに一番お大きな外来グループとなっています。しかし、グループとして、宗教や文化価値感、国家への認識などの方面で巨大な違いがあり、ムスリムグループは欧州社会に溶けこむ術がありませんで、欧州国家の主流社会と相離れた「平行社会」や「周辺社会」を形成しています。

    欧州国家の第二代、第三代のムスリムたちは自分たちが欧州で生まれ、生活しみな欧州国家の国籍をもっており、法律や政治的な意味では国家の公民です。しかし、21世紀以来の英国のロンドン地下鉄爆破事件、スペインマドリッド駅爆破事件、フランスの「チャーリー週刊」銃撃事件、バリのテロ事件など一連のテロ事件の実行者の多くは欧州生まれで、欧州国家国籍を持っているムスリム移民でした。欧州国家は長年にわたって「ポリティカルコレクトネス」ゆえに、こうした問題を正視しようとしませんでしたが、しかし今では渋々ながらムスリム移民は個人、グループ、国家の公民という三つの身分の上で自国での存在と深刻な緊張と衝突状態にあるということを認めざるを得なくなっています。

    二つには政治レベルでの失敗です。このレベルの失敗は数年前からはっきりした兆候がありました。自由の家の2010年の報告でははっきりと、グローバルな自由化は五年連続挫折し続けているとし、これは自分たちが40年来続けてきたレポートのなかで最も長く続く後退であるとしています。とりわけ、アフリカでは民主化は次々に敗退し、ロシアと中国の専制政権による自由、民主、人権への迫害は減るどころかさらに増加していると。2011年中東北アフリカでの「アラブの春」はやがて「アラブの冬」にかわりました。反政府勢力を次々に生み出す極端な暗黒のISISによって、すでに極めて少数ではありますが西側の学者たちに、それぞれの社会はそれぞれが独自の文化をもっているのであって、民主化を強力に推進しようとすることはしたくてもできないことなのではないか、と考えさせています。

    ハーバード大學のサンダーの見方はひょっとすると現段階での絶対多数の西側左派学者の見方かもしれません。

    彼は「右翼ポピュリズムが現在、西側で興隆しつつあるが、これは民主の観念と理想が失敗したからではなく、ただエリートたちの失敗を反映している、だから、依然として民主と多元文化を信じるべきである」。

    確かに、現在、西側国家の政権にある者たちが一般に、視野が狭くうぬぼれが強いということはありますが、しかしそれがグローバル化の支離滅裂化の唯一の原因ではありません。西側国家は確かに少し頭を冷やして、グローバル化に対して全面的に反省しなければならない時期にきています。さもなければグローバル化を進めることはおろか、逆に自国を政治的挫折の中から救い出すことだってできなくなるでしょう。

    (この文章執筆にあたり、ドイツ語資料の翻訳と細かい調査はドイツの友人・野罂粟@WilderMohnの多大な助力を得たことを感謝します)

    (終)

    原文は;支撑全球化的基石正在动摇 voachinese.com/..18/3471103.html

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