• ★カストロの死を悼む言葉に見える世界の左右の溝★2016年11月28日

    by  • November 29, 2016 • 日文文章 • 0 Comments

    キューバ革命の立役者カストロが11月25日にこの世を去り、「嘆き悲しむ全キューバ人」の他に、ラテンアメリカの左派国家群とロシアなどの専制国家が深く哀悼の意を表したのは当然予想されていたことでした。しかし、民主国家の指導者が、この「気骨ある革命リーダー」を賛美し、その死を惜しんだのは時間が歴史に持つ不思議な作用で、世の中があべこべになったような不思議な感じがします。90年代には世界で異質な社会主義の果実と見られていたキューバの独裁者が、今日では生前には人々から尊敬を受け、死後には人々に悲しまれる偉大な英雄として惜しまれるのですから。

    左派国家群は理想像と中心座標を惜しむ

    カストロはまさに時代の子であり、西側の圧政と搾取を受けていたラテンアメリカなどを、社会主義の大潮流がおそった時代に間に合ったばかりか、その死もまた時代に「間に合った」のでした。

    それは「アラブの春」が「アラブの冬」に変わり、独裁政権が次々に復活した時期です。西側世界で復活しようとしている右翼ポピュリズムに向かって、「ポリティカル・コレクトネス」で言論を支配する左派諸メディアが、「正しい用語」を用いて激しく批判している時期でもあります。

    中国国家主席の習近平は即座に溢れる美辞麗句でその死を悼みました。弟のラウル・カストロに電話で、「フィデル・カストロが不朽の歴史的功績をあげ、『国家主権と社会主義の建設という壮麗な事業を行った」とお悔やみをのべました。中国の前キューバ大使の劉玉琴は27日、「新華社」のインタビューに答え、「一代の偉人の不屈の一生」という記事になりました。これは当然、カストロがアメリカ帝国主義(後にはソ連も含む「覇権主義」)に屈しなかった鉄のガッツを褒め称えたものです。

    ロシアのプーチン大統領は、カストロを「一時代を象徴するロシアの真の盟友」と形容しました。金正恩は弔電でカストロは生涯、キューバ国家の繁栄と富強、神民の幸福のために努力した卓越した指導者であり、初めて西半球に人民を真の主人とする社会主義国家体制を系を築いた」と言いました。

    ラテンアメリカの左派国家指導者の哀悼も情のこもったもので、エルサルバドル共和国のサルバドール・サンチェス・セレン大統領がツィッター上で「フィデルは永遠に公正で尊厳と博愛のために団結して戦った民衆の心に生きている」と述べました。

    ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領は「フィデルは生涯、戦い続けた偉人たちの永遠に生きる道を歩み、最後の勝利に向かった」と、エクアドルのラファエル・コレア大統領は「一人の偉人がこの世を去った。フィデルがなくなった。キューバ万歳、ラテンアメリカ万歳」と言っています。

    民主国家でもカストロを独裁者とする声はほんの少数。

    オバマ大統領の哀悼は婉曲に含蓄に富んだものでした。26日、公に、歴史がカストロが世界に与えた影響と評判を記録することを希望する、としています。米国は「キューバ人民に友好の手を差し出した」というべきでしょう。民主主義の灯台の国の指導者として、独裁者が死んでその評価を決めるときにこうした言い方をするということは、半ば肯定したとも言えるわけです。

    欧州連合(EU)の欧州委員会委員長・ジャン=クロード・ユンケルはツィッターで、「フィデル・カストロが死んだ。世界の多くの人々にとっては一人の英雄を失った」と書き込みました。

    ドイツの左翼党首席、連邦議会副議員団長サラ・ワーゲンクネヒトとDietmar Bartschは11月25日、ベルリンで声明を発表し、自分たちは「キューバ人民とラテンアメリカ人民と全世界がキューバ革命に共鳴する全ての人民と共に、批判的態度でこの革命者の偉大な功績に想いを馳せる」と述べました。

    一番へんだったのはカナダの大統領のトルドーで「全カナダ人を代表して、この伝説的英雄がこの世を去ったことに哀悼の意を表する」との声明を発表。「カストロ氏は伝説の英雄で、急場人民のために半世紀尽くした」「私は自分の父が彼の友人だということを誇りにしていた」と言いました。

    賛美の潮の中で、米国の次期大統領のトランプは少数派になります。彼はカストロは自国人民を60年にわたり圧政を加えた「暴虐な独裁者」であったとし、その遺産は「死刑執行人と泥棒で、想像を絶する苦難、貧困と基本的人権の剥奪であった」としました。

    「マイアミヘラルド」紙が掲載したネットの様子は「キューバ亡命者たちは街中で抱き合って、古いキューバ国旗を掲げ『奴が死んだ!奴が死んだ!」と歓声をあげて、クラクションを鳴らす車のデモを町中で繰り広げた」です。

    特権を持たず、清廉だったキューバは社会主義の模範

    カストロと同時代に共産党の指導者だったニコラエ・チャウシェスク元ルーマニア書記長があの世でこうした騒ぎを聞いたら、随分不公平だと文句を言うでしょう。チャウシェスクはその昔、反ファシスト戦争の英雄で、ルーマニア社会主義国とキューバを比べたら、国内の政治的弾圧の程度でもキューバほどではありませんでした。外交では独立自主(つまり、ソ連と距離を置く)という点でもキューバに引けを取りませんでした。外交面での成功はカストロより素晴らしいものがあって、中国との友好では中国の指導者・毛沢東、周恩来、鄧小平、米国の大統領ニクソンとも会見していますし、イスラエルとも外交関係を持っていました。さらにソ連のブレジネフ時代にはチェコスロバキア侵略を非難しました。経済上でも国連重視で、経済協力や貿易発展に尽くし、自主独立を堅持し、自力更生とともに、各種の形で外国の先進技術や資本を導入し、人民の生活水準でも、キューバよりはよほど良いものだったのです。チャウシェスク夫人は確かに政治に介入し、重要な役割を果たしていましたが、それでもカストロ兄弟の権力に比べれば、やはり一段階下だったでしょう。しかしその結果は、1989年にチャウシェスク夫妻は処刑され、死後の尊厳もまるで与えられず、最も「テッパン」の仲だった中国の指導者からも一言の哀悼の辞も送られませんでした。

    でもチャウシェスクは自分の死に時については自分を恨むしかありません。ルーマニアは後に死刑廃止することによって、チャウシェスク夫妻を銃殺刑にしたことに対する後悔を表したというのが、わずかな慰めと言えるぐらいです。

    カストロの盟友であったチェ・ゲバラは終生、ゲリラ戦士として、また思想家のイメージとして世界の左派青年の永遠のアイドルとなりました。ではカストロは一体、世界にどんな遺産を残したのでしょう?

    2016年4月19日、キューバ共産党第七回大会閉会式で、10分間演説し、「私がここで話すのはおそらく最後だ」と述べ「しかし、理想は朽ちることはない」という一言は世界の左派を感動させました。「理想は朽ちず」と言うのは演説の中での「キューバの共産主義者たちの理想と信念は変わらず維持され、引き続きそのために不断の闘争を続ける」ということです。

    中国人のある記者は真剣に「カストロはなぜ、米国に政権転覆されなかったか」という記事を書きました。そこには「キューバは米国からの巨大な圧力の下でも生き抜いてきた。その中にあって堅実な国際関係と国内における政治的な要素がある。ソ連や東欧で共産主義国が転覆したのには大変重要な原因があった。それは民衆が特権階級の腐敗に強烈な不満と持っており、長期にわたって反対派が存在したのだ。この二つの要素はキューバには存在しなかった。キューバには反対派と言えるほどのものはおらず、実力のある反対派は大部分が米国在住だったから「鞭長しといえども馬腹に及ばず」状態だった。そしてカストロをトップとするキューバ指導層は、容易に民衆の憤激を買いやすい特権面に関しては自らを注意深く律してきており、いささかの隙も見せなかった」また、「キューバは収入の差は少なく、幹部は清廉で特権や腐敗と無縁で、その上、教育と衛生などの社会福祉は比較的完璧だった。まさにこうした徹底的な社会主義的なやり方が、カストロのキューバの現体制の命運を救ったのだ。事実上、派手な演説や激しい言葉に比べて、こうしたことがカストロの政治遺産の一番価値のある部分だ」と書いています。この記事は中国の実情を踏まえて書かれており、言いたいことは、特権のない、公平な社会主義制度の実現こそが存在価値がある、ということです。

    左右の深い溝が再び世界を引き裂く

    カストロへの哀悼の念の波は、こうしてはっきりと現在の左右に引き裂かれた世界の亀裂を見せてくれました。1989年、社会主義制度が人々をいかに圧迫するかは、当時の左翼でも、もはや弁護出来ないほどのひどいものとなり、社会主義は邪悪さの代名詞となりました。

    しかし、今や、あれから27年を経て、時間は再び歴史の魔術師のように再び、中国やロシアなどの社会主義国時代を身を以て体験した人々でさえ、かつての「人間動物園」での痛苦を忘れて、さらにかつて独裁者もいつの間にか民族の英雄、反米の闘士とはっきり変えてしまっています。

    ある論評ではカストロの死は一つの時代へのピリオドである、としています。カストロへの哀悼の念とそこに込められた政治的な望みを静観すると、私はカストロの死は、ただソ連が開いた20世紀社会主義革命時代への一つのピリオドに過ぎず、世界の左傾の災いは終わるどころではない、と感じます。

    専制国家の指導者連がカストロの死を惜しむのは、同じ左翼専制独裁者仲間としての愛、みたいなものでしょう。西側左翼たちの哀悼の念は左翼仲間の友情からくるものです。専制国家の中国に暮らす中国人からのそれは、一部は自国権力者への迎合と、一部は洗脳教育の成果だとおもいます。

    今、世界の若者たちは失業の大波に直面しており、一般的に左傾化するのはもう不可避の現実です。青年は未来を代表します。ですから、世界は必ずや、また左右が分裂して相争う局面を迎えるでしょう。西側の左派の発生源というべき欧州(つまり欧州連合)の命運が再び、世界の転換点の道標となることでしょう。(終)

    拙訳御免。
    原文は;世界悼念卡斯特罗凸显的左右鸿沟 

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