• ★2016年の世界(1)—雨風で視界不良とコンセンサス決裂★2016年12月28日

    by  • December 28, 2016 • 日文文章 • 0 Comments

     

    去りゆく2016年はグローバルなコンセンサスの崩壊した一年でした。欧州連合(EU)は雨と波風でお先真っ暗です。ある論評では、英国のEU脱退、トランプ当選に、フランス民主陣営の国民戦線のマリー・ルベン女史 が来年、大統領に当選するならばグローバルな情勢の逆転を意味し、世界は地獄の入り口だと言います。時を同じくして、アジアとラテンアメリカでも災難続きで、「BRICs」のメッキは剥げ落ち、次々に地金が露れています。

    更に重要なことは、2016年のこうした大事件はただの始まりにすぎず、必ずや2017年にも発酵し続け、世界の将来の方向を決定するだろうということです。

    ⑴ 難民危機がEUメンバーの共同体意識を破壊した

     

    中東とアフリカ地域の各種難民と移民は今、新たに世界人口の大移動となっています。テロリズムは中東難民危機の拡散に伴って欧州に広がり、国境の無いEU国家にずっしり重い経済的負担はもとより、自国の安全の喪失をもたらし、長らく主流の地位にあった文化的価値観を支離滅裂な状態に陥れました。ムスリム移民の移民先での文化融合はほとんど成功しておらず、逆に激烈な社会衝突を引き起こし、欧州から安全感は失われました。

     

    ドイツ人はこの「輸入された暴力」によってひどい目に遭っています。ドイツの女性はいつ強姦、強盗被害に遭うかわからず、時には殺される場合さえあります。連邦警察の2016年9月6日報告では、移民によるこの6カ月の犯罪件数は142500件にのぼり、Gatestone研究所の分析では前年比で40%増えています。1日に換算すると移民は780件の事件を起こしています。しかもこれは容疑者を逮捕できた件数に過ぎません。ドイツは長年来、「ポリティカル・コレクトネス」の呪縛状態でこうした問題を正面から見ようとしません。それどころか緑の党の女性党員は性的被害に遭った後、犯罪者に謝罪するという奇妙奇天烈な有様です。犯罪の急増以外に、何十年も耐えてなかった肺病などの疾病もドイツに復活しています。その他の国家でこうした事態が起これば政府首脳はとっくに引責辞職ものです。しかし、ドイツではメルケルはまだ来年の選挙で4選を目指しています。

     

    12月19日に首都ベルリンにあるクリスマスの買い物客でにぎわう屋外の市場に大型トラックが突っ込み12人の死者を出し、48人が負傷しました。警察はチュニジアからきた「難民」による犯行だと発表しました。容疑者はイタリーで放火罪で4年入獄していました。メルケルが国境開放した後、ドイツに避難し、既に逮捕されたテロ分子と密接な関係をもって、警察によって尋問されたのち半年間追跡監視されていて、ドイツ国内の7000人のテロ危険分子とされる一員でした。この事件は再びメルケルの国境開放策への批判となりました。チェコのミロシュ・ゼマン大統領は「今や誰もが、移民が増えるということはテロの恐怖が増えるということだと疑わない」と述べ、オランダの議員のGeert Wildersは「メルケルの両手は犠牲者の血で染まっている」とまで批判しました。

     

    フランスはかつて、自国が多民族共存の「虹色国家」になることを望み、その結果、少なからぬ「虹色家族」が誕生しました。しかし、シャルリー・エブド襲撃事件パリ同時多発テロ事件 ニーステロ事件(7月14日)の後、テロリストの多くが欧州生まれで、欧州国籍を有するイスラム教徒で移民で、個人、民族、国家の三重の身分をもち自国内の緊張と衝突を招く存在となっている現実を認めざるを得ませんでした。
     
     

    EUには国境が無いため、28の国家のEUメンバーのどの国にでも入りさえすれば、自由に欧州中を往来できます。ですから、ドイツのテロの危機、人口の危機、宗教の危機、安全の危機はみな最後にはEUメンバーの共同負担ということになります。

     

    こうした問題について、メルケルを代表とするドイツのエリートグループは自国の選挙民とコンセンサスを得られないばかりか、他のEUの指導者たちともコンセンサスを共にすることができていません。フランスとイタリーの人々はドイツのような第二次世界大戦への罪悪感を持っていませんし、来年はEU各国で選挙が行われる変化の年です。フランスでマリー・ルベンが「ブラック・スワン」(*ありえ無いと思われていたことが実現する)となって大統領に当選すれば、フランスはEUやNATOから脱退する可能性もあり、メルケルがオバマから引き継いだ「普遍的価値観の松明」は消えてしまう可能性もあります。

     

    西側の「エリートと大衆の分裂劇」

    ⑵ 

    EUと米国で発生した全ての大事件には共通した特徴があります。エリートと大衆の分裂です。しかし、この点に関してはEU国家の指導者のメルケル以外、多くは難民危機と失業が深刻だという点を認めています。もはや彼らは自国の大衆にグローバリズムは素晴らしいと説得する術をもちません。しかし、米国の民主党の代表的な人々は今になってもこの点を認めようとはしませんで、大統領選挙の敗北は選挙民の資質とロシアの破壊工作のせいだとしています。

     

    ① エリートの大衆蔑視。

     

    学問的な意味で言えばエリートとは何か、という定義は厄介なものです。しかし、普通にはマックス・ウエーバーや、シュンペーターの定義を受け入れ、民主政治の勝利者をエリートと定義する傾向があります。この定義ではエリートの対大衆、すなわち烏合の衆への蔑視をみえにくくしています。しかし、今年は欧米の大衆は自分たちの投票の権利、大統領選への権利を利用して、エリートに対しての不服従を表明しました。

    エリートたちはよくよく気をつけていないと、ヴィルフレド・パレートの定義である、の「エリート統治」と「大衆」というふたつの概念の基礎の上に、「高さ」と「素質」の両面から「エリート」を定義した定義に陥ってしまいます。(*エリートは資質が高く、草の根は愚かな人たちである、という結果論)こうして、英国のEU脱退の可否を問う投票前に、EU脱退を支持する人々はメディアとエリートによって、「失敗者や退職者、世間知らずの百姓や漁民たち」として描き出され、残留を支持する人々は、「良い教育を受けて、グローバルな企業やロンドン金融街に勤める国際的視野を持つ人々」だとされたのです。米国でもトランプ支持者へ貼られたレッテルは「経済的に困窮して、収入も低く、高等教育を受けていない」とされ、ヒラリー・クリントンは公開演説でトランプ支持者を「気の毒な人たち」とさえ呼びました。

     

    EU国家では来年、大きな選挙が次々に行われ、エリート階級が果たして大衆からとことん見捨てられるかどうかは引き続き推移を見守らなければなりません。しかし、選挙結果のはっきりした米国での民主党を見ると、米国のエリートたちはまだ選挙の敗因について本当に理解はしていないようです。自分を、少数グループや自由派、ウォール街、違法移民の救済者、性的マイノリティーの権利の擁護者と見なしているオバマ大統領は、依然として自分が大衆にアピールする力があると信じています。12月26日、友人でもある前顧問のDavid Axelrodのポッドキャスト・The Axe Filesの取材に答えて、もし自分が3戦出馬できたならトランプを破ることができるし、ヒラリーが大統領選挙で敗れたのは、選挙活動があまりに保守的だったからだと述べました。しかし、彼は重要な要素を忘れているようです。ヒラリーの敗因は、つまり彼女がオバマの支持を獲得するために、オバマの政治遺産を継承すると高らかに述べたからだということを。

     

    ヒラリー自身も反省は欠けています。自分の敗因を2度にわたるFBIのメール事件の情報のせいだとしています。12月19日、米国選挙人の投票日に夫のクリントン元大統領も、ヒラリーの敗戦は、FBIとロシアが結託した勢力に敵わなかったからだと述べていますし、ヒラリーも同様のことを言ったことがあります。

     ② 消えた共通認識—国家は誰のものか?

     

    オバマであれ民主党のベテラン政治家であるヒラリーにしても、どちらも敗因が民主党が米国の白人を主体とする主要な中産階級と労働者層を粗略に扱ったからだということは認めません。「ポリティカルコレクトネス」のイデオロギーの傲慢さによって、これらの膨大な人々が経済不況のために仕事を失い、苦境にあるのに政府は彼らのことを気にかけませんでした。ヒラリーはウォール街内部の講演で、中産階級に意を払わないことを認めています。政府は起債や軍事費削減を通じて得た福祉の行き先を少数民族の子孫や違法移民につぎ込み、これらの納税しない層が貧困救済を獲得し、無料の医療や進学補助、安価な住居など至れり尽くせりの、自国の苦労して働いている国民より多くを得ていたのです。こうした黙々として重い税負担に耐えている人々をおろそかにして、政府とメディアはすべての関心と愛情を同性愛結婚や、性転換、性的差別なしのトイレ・更衣室使用といった極めて少数の人権にかかわる事務仕事に注いできました。まさにこうしたオバマ政府への失望と「ポリティカルコレクトネス」にうんざりした人たちが「オバマの政治遺産継承」を唱えたヒラリーの敗戦につながったのです。彼女は政治遺産、経歴、財力、世論の支持、どれもがはるかにトランプよりも多かったのです。

     

    こうしたことは、西側の主流を占める左翼自由派の正解やメディアには「右翼ポピュリズムの危険な勃興と、民主制度の失敗」と総括されています。彼らは、まったく民主主義の肝心かなめな「主権在民」という事実を忘れています。民選政府はまず真っ先に自国の選挙民に責任を負わねばならないのです。オバマが自分を「違法移民の救済者」と位置付けるなら、一つ疑問が生じます。それは「国家は誰のものか? 政府は誰のために服務すべきか? 違法移民の利益を自国選挙民の利益の上に置くのは正しいのか? もし政治にあたるエリートたちが自国選挙民のこうしたことに共通認識を持たないのであれば、人民は選挙を通じて彼らへの支持を撤回するのです。

     

    英国のEU脱退の大きな原因は、一つに貧困移民・難民に対する恐れと、二つにはEUによって国家主権が消滅させられることへの受け入れ拒否です。脱退派にもエリートとメディアが参与、指導していますから、グローバリズムに対する否定の仕方にもより多くの表現があって、エリートと民衆は分裂はしていません。イタリアのレンツィ首相の憲法改正案は否決され、これは「人民の一揆」と呼ばれました。一つにはイタリア人はとっくにレンツィやメディアの、オバマそっくりの「Yes we can」といった傲慢すぎるものの言い方にうんざりしていました。二つには、中産階級家庭が経済危機で息も絶え絶えで、経済繁栄に対する子孫たちの未来に希望を失っていたこと、社会党の大統領候補のモンテブールは「レンツィの失敗は欧州緊縮政策への対応にあった。人々は彼への支持を撤回したのだ」と述べています。

    2016年の衰勢は続きます。2017年の欧米国家では価値観上の分裂と闘争は、政府が交代したからと言って、終わるわけではなく続くでしょう。いわゆる左翼自由派と右翼ポピュリズム派の勝負は、グローバリズムの方向を決めるだけでなく、これらの国家の平和と安定と興亡に関わっていくでしょう。(続く)

    拙訳御免。

     

    原文は;2016年的世界:风雨如晦 共识破裂(1)

     「中国2015 何清漣」 電子ブック発売中何清漣さんの「中国2015」表紙

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