• ★2017年中国経済の最重要劇⑴—通貨の安定維持★ 2017年1月5日

    by  • January 5, 2017 • 日文文章 • 0 Comments

     1月4日、「ブルムバーグ・ニュース」が北京の内部情報をスクープし、中国は為替レートの危険に対する予防策を準備しており、必要な際には強制的に外貨の人民元への両替を行うと報道しました。このニュースは私は全く意外ではありませんでした。2016年12月の中央経済工作会議の重点の一つは「為替決済の弾力性の強化と、人民元為替レートの合理的バランスでの基本的安定」だったからです。これははっきり言えば「通貨の安定」であり、その鍵は為替レートの安定です。中国政府の新年前後のあらゆる対策を概観すると二種類に大別されます。一つは慎重に宣伝工作を進め「戦いに信念を持たせる」、二つ目はコントロールの細かい点をしっかりと詰めておくことです。

     

    通貨安定のキーは為替レートの安定

     通貨の安定の鍵は外国為替レートの安定です。この道理は簡単で、通貨の安定は主に二つの指標があるからです。

     指標の一つは通貨の購買力、つまりいわゆるインフレ率です。中国ではこの点は比較的うまくコントロールされています。一般大衆の感覚では例えば100元で数年前10斤(*1斤=500グラム)の肉が買えましたが、今では3〜4斤しか買えないといったことはさほど大したことではありません。政府の全国住民消費価格指数(CPI)をみると、中国のインフレは永遠に良性の範囲内でおさまっています。疑うならば政府の直近の発表データを見れば、2016年12月のCPI指数は同期比で1.6%しか上がっていません。これは世界の90%以上の国と比べても、アメリカでもこんな好成績はありません。いわゆる不動産価格の高騰や人民元の下落などの噂はすべて一般大衆にとっては、漠然としか感じられず、一体どのぐらい上がったのかは、やはり政府の言う通りなんだろう、ぐらいの話です。

     もう一つの指標が人民元の対米ドル交換レートです。こちらは今、資本の海外流出と人民元の圧力で、中国政府は本当に必死で、戦略目標としては「破七保三」、つまり「人民元の対ドル交換レートは1ドル=7元以下にさせず、外貨準備高は3兆ドルを割らないこと」です。このところ人民元の対ドルレートは6.95以上あたりで、先日、7元の壁が破られたという報道があって、世界が騒いだ時には政府は直ちにデマであると否定して、人民元為替レートは安定していると声明し、その後、レートも機敏に反発して、今にいたるまで7元の壁は破られていません。

     北京は当然、コントロール下の人民元が反発しただけでは、民衆の通貨への信用を勝ち得るには不十分だとしかと承知しています。なにせ中共幹部が皆、次々に資産を対外移転しているのですから。最近、結審した元江蘇省常務委員で秘書長の趙少麟が、400万元の賄賂を使って、不正に外貨4170万ドルに替えて、息子の経営する企業を通じて国外へ持ち出そうとした事件などはほんの九牛の一毛に過ぎません。

     共産党員が誰も人民元が十分強いと信じないのですから、工作の重点は民衆の信用を安定させることに置かれます。結局のところ役人は内部事情に通じており、一般大衆のように簡単には騙せません。そこで中国政府は二正面作戦をとりました。

     一つは為替レート指数のバスケットを調整し、人民元のレートを見かけ上、さほど悲観的でないようにすること。簡単に仕組みを説明しますと、

     2016年12月31日から、人民元為替レート指数の対象となる13種の通貨は、中国の中央銀行が人民元の米ドル交換政府レート(毎日の中間値)で使用する通貨バスケットを根拠の一つにしています。米ドルはその中で最も重きをなしており、26.4%になり、これが過去一年間人民元の価値変動の主要な要素となってきました。そこで2017年1月1日から、米ドルと米ドルに連動する通貨(中東のレアルや香港ドル)を新たなバスケットの中の30.5%と、これまでの33%より低めに設定しました。為替レートのアナリストによると、これは人民元の値下げ圧力緩和の助けにはなるだろうが、その作用は限られたものだ、と言われます。

     二つには政府系メディアと専門家が一斉に「大丈夫だの歌」を大合唱することです。歌詞のメインテーマは「中国は外貨不足なんかじゃない。中国の貿易は毎年黒字で、現在毎月平均200億もの外貨準備が入ってくる。米ドルも十分。制限するのは不動産ころがしを防止するためであって、人民元は今や国際通貨基金のバスケット入りした世界で通用する通貨だよ〜♪」というものです。

      

    あらゆる面で細かく制御

     外国為替安定のために、中国当局は現在急いで現金化しようとする三つの「仮想敵」が存在することをちゃんと承知しています。一つは資産の安全を図る国内企業です。二つ目は不動産などで儲けた金を外貨に現金化して保持しようとする国内の金持ちや中産階級。三つ目は外資企業の資金・引き上げや利益送金です。この三つの現金化に対して中央銀行はそれぞれにしっかり手を打っています。

     海外投資の名目で資金移転を図る企業に対して、国家外国為替管理局は早くも11月28日に新しい規則を打ち出し、合同投資や海外買収などの直接投資で、資本口座の下限が500万米ドルを超える海外への支払いは市外国為替管理局に報告して許可を受けなければならない。これ以前に批准された大型投資プロジェクトでまだ実行されてない外国為替部分にもこのルールは適用される。以前はこの限度額は5000万米ドルでした。そしてこの新ルールが適用されてから2017年9月まで、100億米ドルを超える海外投資、10億米ドルを超える中国の核心的業務以外の海外買収及び国営企業の海外不動産購入投資で10億米ドルを超えるものはすべて許可されません。

     中国で儲けた金を現金化しようとする人々には、新たな規定が設けられています。2017年1月1日から、個人が外国で不動産購入、証券投資、生命保険や投資的な保険など中国で外国企業に開放されていないものは購入禁止。このために若干の条項が設けられました。例えば銀行でドルを購入するには実際の用途を明記せねばならず、例えば学費名目ならば必ず本人のパスポートや有効なビザ、国外学校の入学許可通知書、学費証明や生活費証明を見せなければなりません。更に申請書には違反者には外国為替管理法に基づく「ブラックリスト」に載せられて、2年間、通常許されている一人当たり毎年5万ドルの外貨購入枠も使用出来なくなります。

     外国に利益を送金したい外国企業には、11月末から多国籍企業は500万米ドル以上の資金を移したい場合には中国国家為替管理局の許可が必要になりました。また多国籍企業の中国の銀行口座と外国の関係会社の口座間の資金のやりとりにも更に厳格な制限が課せられました。ある多国籍大企業のトップは「昔は100%海外に送れたのに比べれば今は30%しか外国に持ち出せない」と語っています。

     もしこの三方向同時の規制措置が無ければ、おそらく現在の「破七保三」の目標はとっくに破られていたでしょうし、メディアも「大丈夫の歌」など歌ってられなかったでしょう。2016年の経済情勢を受けて言えることは、2017年の上半期、中国の経済の中心は金融システムの安定(不動産、債権、地方財政)で、とりわけその中でも重要なのは外国為替の安定です。最悪の状況下では、この文章の最初に書いたブルムバーグ・ニュースの言う緊急準備案の強制的な外貨の人民元への両替策が必要になるでしょう。あのニュースでは更に中国の管理監督部門ではすでに一部の国有企業に対して、経常収支の外貨収入を強制的に人民元に替えるように奨励していると言います。

     

    国際社会の「前車の覆るは後車の戒めなり」とは

     外国企業のお金が動かせないということは、おそらくとっくにその母国政府に訴えが届いているでしょう。現在、最大最強の国家である米国では政権移行の途中ですから、米国がどう出るかは今後の成り行きに注目です。現在、世界の主要通貨は皆価値が下落しており、欧州連合のドイツのように、すでに強制的な通貨交換を実行しているところもあり、顧客が銀行に預けている米ドル建ての口座の米ドルも当日の為替価格でユーロに交換されていますから、中国の外国為替管理が特別だというわけではありません。

     私は2016年12月5日に、「★中国経済の外貨準備をめぐるトーチカ戦★」で、米国財務省と国際通貨基金(IMF)がなぜ中国の人民元為替レートのコントロールに対して積極的に評価しているのかを書きました。ここでは彼らがなぜそうするかという原因を分析しましょう。

     グローバル化の波が始まって後の、1995年のメキシコのペソの下落が引き起こした全世界的な金融危機がありました。当時、米国政府とIMFはこの危機対応にそれこそ真っ青になったものでした。

     1994年の12月20日にメキシコ政府は突然、15%の為替レートの切下げを発表、12月22日に、為替レートの完全変動相場制に移行を発表し、米ドルに対して30%の暴落となり、これが世界的な金融恐慌を引き起こしました。とりわけメキシコ政府に借款を提供したり、株券や債券の形で500億米ドルを投資していたニューヨークのウォール街やその関係するファンド機関、プライベートファンドではこの恐慌への恐怖感が一層ひどくなりました。(*参考;メキシコ通貨危機

     時のクリントン米国大統領と財務長官は休暇を返上して、全力でこの金融危機に対応しました。クリントン政府は1月12日にメキシコの財政に対して、米国が400億米ドルの信用保証をメキシコに与える決定を下しましたが、この決定の後、思いがけないことに世界中の誰もが予想しなかった恐るべき状態が起きてしまいました。世界の全ての重要な取引所、シンガポールからロンドン、ニューヨークにいたるまで数十種類の通貨が同時に巨大な暴落の圧力を受け、人々は次々に債券や株券を投げ売して米ドル買いに走ったのです。メキシコは最後の外貨準備を使い果たし、国家が破滅の際に達し、再び米国に泣きつきました。クリントン政権は国会の賛同が得られない条件下で、大統領の手元の基金200億ドルの全てを投入し、再びIMFに救援を求め177億米ドルを出させ共同でメキシコ救済にあたり、辛くもメキシコの地獄への旅を食い止め、世界金融市場を救ったのでした。

     この危機はもう20年前の話なので、30歳代の若い人々はとっくに忘れているでしょう。しかし、この危機を体験した人たちもまだ残っています。2008年ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマンは当然、この危機の証人の一人です。ですから彼はVOAのインタビューで「中国経済にもっと深刻な状況が出現したら、世界の他の経済体は救援できるか?」という質問に答えてこういいました。

    「できない。他の国々の最良の願望をもってしても不可能だ。中国社会と経済の規模は大きすぎる。規模がこれほど大きいからといって倒れないなどということはない。しかし救うとなると、これは大きすぎる規模だ」(not too big to fail,but too big to save)と。

     この20年前の出来事を持ち出したのは、昔、クリントン政府がメキシコ政府を救うには米国とIMFが全力を尽くしても400億米ドルしか集められなかった、ということを言いたいからです。もし3兆米ドルの外貨準備を持つ中国の通貨が安定維持に失敗したら、グルーグマンのいう通り、全世界の力をつぎ込んでも救う術はありません。これが米国財政部とIMFが、なぜ中国が人民元レートに対してコントロールしていることをプラス評価しているか、という理由です。((2)に続く

     「中国2015 何清漣」 電子ブック発売中何清漣さんの「中国2015」表紙

    Leave a Reply

    Your email address will not be published. Required fields are marked *