• ★米中冷え込みの時期、なぜ馬雲が「民間大使」に?★2017年01月14日

    by  • January 14, 2017 • 日文文章 • 0 Comments

     今回の馬雲とトランプの会談で、若い馬雲が出来るはずもない100万の雇用を米国に作り出すという大ボラでトランプ老を丸め込んだ、といった見方をする人が大勢います。そしてそれがうまくいって、トランプにツィッターで「馬雲と大仕事をする」とか言わせたばかりか、初めての記者会見の席上で唯一名を挙げられた中国人が馬雲だったという結構なお話は、あっという間に世界中のホットな話題となりました。

     

    双方が満足の会談

     当然、米国の中西部の中小企業の生産品や農産物を中国やアジアで売ろうという馬雲とトランプ間でのお話の目標が、全く大変ロングショットであることは知っています。それに中西部のファッションは中国人に全然魅力的でないし、農産物を中国に輸出するのは、許可制度の関係もあるし、中国の食料関係は国営企業の独占で、馬雲のアリババはそんな稼業はやっていません。それでいてどうやって地球を半分回って、食料だのファッションだのぶどう酒の商売ができるなどというのだ? というつもりもありません。ただ、ではビジネスに明るいトランプは当然、そんなことは知っているはずなのに、どうして馬雲の話を信用したのでしょう?

     それは馬雲の役割が、中国の民間大使たったからです。両国関係が冷え込んでいる時期、トランプはまだ大統領に就任していませんから、この接触は民間人が「大使」になって来た、ということなのです。誰でも分かることですが、純粋に民間人ならこんな大任を担えるはずがありません。でも馬雲はビジネス界に片足を、もう片足は朝廷の廟堂にのせている人物です。「ニューヨーク・タイムズ」の記事「アリババ上場の背後にある紅二代の勝ち組」(2014年7月21日)のおかげで皆、馬雲のバックが強大な顔ぶれであることは知っています。(参考;アリババの「開けゴマ」の霊験 2015年2月6日)
     馬雲がトランプに会う重要性とは、友好協力の姿を見せることにあり、「ネズミが鍬を引きずって、大事な部分は後から来る」です。その「大事な部分」は、既に中国政府の経済代言者の林毅夫が、「米国での大規模インフラ建設に協力したい」とトランプに申し出ています。

     トランプは、米国メディアとヒラリー陣営によって選挙中、おしゃべりで嘘つきの成功したつまらないビジネスマンだ、というイメージを作り出されていますが、実は大変賢い人物だと私は思っています。証拠は、彼の育てた何人かの自慢の子供達です。バカな両親の下では、決してあのような優れた子供達を育てることはできませんし、この点はヒラリー女史も認めざるを得ませんでした。ですから賢明なトランプは当然、馬雲を歓迎しました。更に大事な心理的要素もあります。大統領選挙でもうたくさんというほど泥仕合をしてきたお陰で、多くの国々の政府やメディアは、みな当選したトランプ大統領は「世界を地獄に引っ張り込む三つの指標の一つ」だと思い込んでいます(他の二つは、イギリスのEU脱退と、まだ実現していないフランスのマリーヌ・ル・ペンがフランス大統領になること)。こうした状況のもとでトランプは社会からの認知、特に外国からの認知を必要としています。ですから馬雲の謁見はトランプの痒いところに手が届く、ということです。つまり中西部の雇用と外国の肯定、です。

     トランプは世界一の強国の大統領になりはしましたが、彼のマクロ経済のプランに欠乏しているのはお金です。オバマは任期中、9兆ドルの国債の借金を残し、それ以前の十数兆ドルと合わせるとトランプには20兆ドル以上の国債が残されました。「一人当たり平均」でいうと、米国人一人あたり6.13万ドルで世界第二です。もし納税者一人当たりで計算すると16.7億ドルで世界一です。すぐにでも建設に取り掛かりたいメキシコ国境の壁だって作れません。そこへ、中国皇帝からの私的な使者たる馬雲が絶好のタイミングで登場して、彼の持って来た銭袋からはジャラジャラを黄金の音が聞こえるということです。

     会談の後、トランプと馬雲は更に友好的な中米関係を強化すべきだということで同意しました。馬雲は更に「双方の関係と貿易問題の正門は大きく開かれた」と言いましたが、この言い方はアリババ集団の総帥というよりは、まったく中国の全権特命大使の口ぶりではないでしょうか?

     まだ信じられなければ、外交部(*外務省)の1月11日の記者会見で、「アリババ総帥の馬雲と米国の次期大統領のトランプが会談するというのは、政府に連絡はあったのか?」という質問に対して、外務省のスポークスパーソンの陸慷は「それは知らないが、米国次期大統領のトランプ氏とアリババの馬雲会長が会見したニュースには知っている。中米貿易関係は本質的にはウィンウィン関係だ。中国と米国は世界のトップ1.2の経済体であり、両国経済は高度に補完しあう関係でウィンウィン関係の協力を行う巨大な潜在力を持っており…我々は両国政府が引き続き双方の企業が協力強化を継続することを奨励しており、このために更に有利な条件を作り出し、更なる便宜を提供する」 —— これは政府が口には出さないが認めている、ということです。

      

    なぜ馬雲でなければいけない?

     米国で投資活動をしているビッグな中国人は別に馬雲だけではありません。ではなぜ、この時期にトランプの客間をこじ開けた一番バッターが馬雲だったのでしょう?

     私は、馬雲の特別な資質が決めたと思います。馬雲は香港の小説家・金庸の武侠小説ファンで、2006年相互援助目的の「江南会」や「江湖令」制度を作った時から、金庸ファンだということを開けっぴろげに武侠世界のファンだと公言してました。2016年に金庸が92歳の誕生日に、馬雲がお祝いするビデオは広汎に流れましたし、その中で「金庸の小説の大いに影響を受けた」「会社つくったとき18人いて、16,17人は金庸ファンだった」と語っています。微博で馬雲が使っているハンドルネームの「风清扬」というのは金庸の小説「笑傲江湖」から取ったものですし、自分の部下達にも武侠小説から取ったあだ名をつけています。

     中国系には金庸ファンがいっぱいいますが、好きな理由はいろいろです。私は金庸が武侠世界にバーチャルな場をつくって、そこで人生の移り変わりや人間の美や悪を描き出すのが好きです。台湾の武侠小説家の古龍を好きな人も多いのですが、私は一冊も最後まで読んだことがありません。金庸は人間を真に描いているけれども、古龍の描く武侠の世界は黄金荣、杜月笙の実際のヤクザとあまり変わらないような気がするからです。

     馬雲が金庸ファンなのは、武侠世界の自分たちの自由な心の喜びに対してなのでしょうけど、でも別の一面では彼は、武侠世界と朝廷との関係をはっきり理解しています。「権力貴族と交わる」社会資本がなければ、彼の思いのままの悠々たる江湖の境遇や、資本の安全も保証されません。

     別の面では彼は普通の世間の人々とつながりも大事にしています。私の住むアメリカのニュージャージー州には二つの小さな中華レストランがありますが、どちらにも馬雲がそこの主人と笑顔で一緒に写っている写真が飾ってあり、ここに馬雲が降臨したことを永遠に記念しております。馬雲の名声が高まるにつれて、どんどん写真を掛けてある位置が目立つ場所になってきましたね。そのうちの一軒は持ち主が四川の女主人になって、その写真も無形資産として次のオーナーに引き継がれました。これはつまり馬雲が上流貴顕人士と交際すると同時に、庶民レベルでも気さくにやれるということで、こうした度量が馬雲が大仕事をやれる力となっています。

     アリババが米国で株式上場して以来、馬雲の交際相手は中国から世界中に広がり、メディアも馬雲の「世界交友名士録」を列挙し、その大部分は馬雲が各種の国際経済会議で知り合った人々で、オバマ大統領やロシアのプーチン、イタリーのロマーノ大統領、オーストラリア前首相のケビン・ラッド、単独会見ではオランドー仏大統領、インドのモディ首相など。中にはベルギーのフィリップ国王のように二度会ったケースもあります。メディアは特にフィリップ国王は馬雲を30分引き止めて会談し、「みんなに愛される馬雲さん」と言ったとも言われます。

     こうした上にも下にも大人気で、太っ腹な性格は侠客の特質で、これがあるのは馬雲だけです。「ニューヨーク・タイムズ」ですら、「馬雲—アリババ神話の独立独歩の男」という見出しでその業績を紹介したことからも、「太っ腹な親分肌の馬雲」の人気のほどがうかがえます。米国での巨額投資というのなら王健林の財力のバックは馬雲に引けを取りませんが、馬雲のような資質がありません。王は真面目過ぎ、またその交友録も馬雲ほど華麗なものではありません。さらに馬雲は、2015年までに中国に3000万の雇用を生み出したと宣言していますから、それからすると米国に今後5年間に100万の雇用を生み出す、というのもまんざらホラばかりとは言えません。王健林が米国に何億も投資しているといっても、二万ほどの雇用しか生み出していません。さらに大事なのは、選挙の期間中、ハリウッドの映画スターは大半がヒラリー支持で、みんなで競ってトランプを笑いものにしましたが、王健林はハリウッドの投資家です。ですから懸命に知恵を絞ってトランプと会おうとしても、トランプはあまり愉快ではないでしょう。

     さらに馬雲は、何を大事にすべきかちゃんとわかっています。各国のビジネス界のトップや政界の要人といくら付き合いがあったとしても、そんなものはお飾りの羽のようなものだと知っています。彼の運は2014年に米国で上場したことから始まるのですが、その運命の転換点はどこから来たのか十分、誰より承知の助なのです。外国の政界の要人が自分を「誰からも愛される」というのは、別に全て自分の魅力のせいだなどとはおもわず、少なくとも一部は背後に控えるたくさんの紅色貴族権力層のおかげだということをです。ですから、決して中国中央テレビの傲慢な司会者だった芮成鋼のような「おれはクリントンのポン友だぜい」みたいなことを口にしません。芮成钢が牢屋に放り込まれた時、世界中にいたはずの「昔のポン友」たちは影も形もありませんで、中国人をがっかりさせ、誰かが「芮成钢の昔の友人たちで誰も助けないのか?」という文章まで書かれたものでした。馬雲は大変はっきりと、世界中の国王や大統領、総理大臣、酋長を知っていたとしても、自分の身の安全は、自分の国の皇帝陛下が握っておられることを百も承知しており、皇帝は一夜にして自分のすべて、資産のすべてをゼロにしてしまえることを知っています。金庸の小説の武侠世界でも、いくら気勢をあげた英雄豪傑たちだって、小説「笑傲江湖」の、「江湖を統べる英明無比な黒木崖の日月神教の総帥」だって、誰も朝廷には逆らおうとしないのです。

     こんなに長々と書いてきたのは、読者の皆さんに、馬雲がネット商売で米国に100万の雇用を作り出せるかどうかなどという無駄な論議をやめて、馬雲がやろうとしてるのは、マーケットではなく、中国式の政治経済学だということを理解したほうがいいですよ、と言いたいからです。米中関係が冷え切っているこの時期に、彼が市民大使となって、皇帝陛下を安心させ、トランプ大統領に歓迎され、彼の交友録は更に光彩を加えたこと、これは三者がみなウィンウィンウィンな関係だ、ということなのです。(終)

     拙訳御免。
     原文は;中美遇小寒,为何是马云充当“公共大使”?

      「中国2015 何清漣」 電子ブック発売中何清漣さんの「中国2015」表紙

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