• 中国の「グローバル・ガバナンス」の仮想と現実 2017年3月9日

    by  • March 8, 2017 • 日文文章 • 0 Comments

    李克强首相は2017年の政府の施政報告書で、「積極的にグローバル・ガバナンス改革と改善を推進する」ことに言及しました。「グローバル・ガバナンス」という言い方は、中国指導層が様々に異なる場面で何回か使用しましたが、政府施政施政報告書で使われたのは初めてです。これは形式的で中身の無いお役所言葉のように見えますが、本当の意味は中国の西部新疆ウイグル自治区に対する統治強化宣言です。

     

    中国が「グローバル・ガバナンス」と言い出した背景

    李克強は、「国際・地域問題における責任ある国として、中国は世界の平和と発展のために建設的な役割を果たし、重要な貢献をしてきた」と報告書で述べています。 読者諸氏はどうかこの談話を、いわゆる中国のグローバル・ガバナンス参加のことだと誤解しないようにしてください。

     これは少なからぬ西側メディアが中国に「新しいグローバルリーダーになって」という呼びかけに対する回答なのです。中国政府は当然、これが西側メディアによるトランプ米大統領に不満のあまりの冗談で、「おだてもっこ」のようなもので、本気に乗っかるものではないとはっきり承知しています。「グローバル・ガバナンス」の大風呂敷の中の「地域業務」が実質的な中身なのです。この「地域」には、南シナ海の紛争をめぐる明白な対決問題以外に、英メディア用語で言う、中国が最近「軍事的関与しているアフガン、パキスタン」、正確に言えば、テロリストの侵入を防ぐために、中国とアフガン、パキスタン国境で中国軍が集結している辺境地域を指します。

     イスラム問題に対しては、中国政府は一貫して注意深く、ウイグル族とその他のイスラム民族を別扱いしてきました。2014年昆明駅暴力テロ事件が新疆地区の民族矛盾の新たなメルクマールとなる転換点でした。昆明事件の発生前はウイグルと漢族の矛盾が東トルキスタン化していたのですが、事件後は、東トルキスタン問題がチェチェン化したのです。中共は、チェチェン化防止のために、漢族地域のウイグル人を大量に新彊地区に追い返し、暫時この勢いを締め付けで止めました。それ以後、新疆での治安維持は全国とは異なり、独自のスタイルを持って、対内部の管制強化としては、新疆地区には3000カ所以上の治安維持用の民警ステーションが設けられ、警報が発せられれば1分以内に警察が現場に駆けつけられるます。対外的には、つまりパキスタンへの援助によってアルカイダの訓練を受けたテロ分子が中国国内に潜入するのを防止するようになりました。しかし、これは基本的には受動的な防衛策でした。さらに一歩進んだ行動を取るには、中共当局は非常に慎重で、ISISなどの組織を怒らせて、火の粉を被ったりしないように注意深く行動していました。こうした状況が先月末まで続いていたのです。

     ISISが3月1日にネット上に発表したビデオでは、中国新疆地区から来たように見える男子が、帰国してテロ攻撃を行い、「川のように血を流す」、と宣言していました。テロ攻撃の威嚇と新疆の不穏な情勢に、中国はアフガン国境に軍隊を配置し始めました。ISISが中国に関連するビデオを流すのはこれが初めてではありません。一体何をしにいったのかよく分からない中国の回教徒・樊京辉が身代金要求の人質となったビデオ以外、ISISは2015年12月にも、北京語で歌われた「イスラム教徒よ立ち上がれ、武器を取って戦え」を流しました。これは、中国人から過激分子を募集しようとした、と考えられていました。最近のこうした威嚇的な行動が実行されかねないようなビデオが発表されたのを見て、ついに中国は介入を決意したのです。

      

    「帝国の墓場」に行くのは受動的な防衛行動

     「フィナンシャル・タイムズ」は鋭くこの点を見抜いてすぐ、「中国が『帝国の墓場』に介入する真の意図」という社説を書きました。主なポイントは、「中国の指導者ははっきり、アフガニスタンというところは、アレキサンダー大王からイギリス帝国まで、ソ連からアメリカまで多くの帝国がここで敗れた墓場だということを承知している。中国は大規模な海外での軍事的冒険をしたいとは思っていない。例え本気で国境地区のウイグル逃亡犯を掃滅するという決定以外のことをやろうとしても失敗に終わるだけで、なぜなら軍事行動の展開も、国家建設も経験に欠けるから、だとよく承知している。中国の兵隊が死体収容袋に入れられて帰国する時は、つまり北京が手を引く時だ。

     注意すべきはこの報道で「ウイグル逃亡犯」と言っているのは、事実を避けており、つまり、アルカイダによって訓練されて中国に帰国するテロ分子のことです。

    「フィナンシャル・タイムズ」の警告はべつに北京のことを心配したり擁護しようというものではありませんで、むしろ「新疆地区の民族衝突は、中共が長い間新疆の少数民族を圧迫して来たからであって、これは国際的な反テロと一緒にして考えてはいけない」という気持ちがあるからです。この見方は国際社会では代表的なものです。

    二、三年以前、中郷kの新疆ウイグル族に関係するあらゆる暴力事件では、昆明事件以外、米国、欧州の各国政府、メディア、NGOは全て異口同音に中国の少数民族弾圧を非難して来ました。難民の潮流が欧州を覆い尽くすように成って、西側各国が自国へのテロ攻撃に困り果てて後、欧米政府はやっと、中国の新疆地区での「反テロ」にせいぜい「新疆の事態にも注目している」としか言わなくなったのです。それでもメディアやNGOは依然として以前からの姿勢を崩していません。

     北京が「帝国の墓場」に関わるのは、完全に受動的な防衛的な行動です。北京の元々の目論見では、もしパキスタンというこの「テッパン」の友情で結ばれた国が、効果的に中国を助けてくれて、パキスタン国内で中国への災いを取り除いてくれるならば、北京は絶対この種の軍事介入をしないはずでした。問題は、パキスタンが中国の反テロを助けているうちに味をしめてしまい、「テロリストを泳がせて自分たちの価値を釣り上げる」産業化してしまったことです。

       

    ISISと新疆の”反テロ”は関係ありや?

     新疆の問題を論じるに当たって、避けて通れない問題はISISと中国のウイグル族の暴力反抗事件には関係があるかないかです。「独占;ウイグル族がイスラム国に身を投じる」(2015年12月27日)というニュースによると、2015年始め、マレーシアの内政部長と中国の公安部副部長が会見し、中国側は「300人以上の中国人がマレーシアを中継点にして、第三国に出国して、ISISに加わっている」と明らかにしました。トルコのアンカラのウイグル問題研究者は、現在ISISとシリアのウイグル戦士は4000人以上の可能性があり、戦死者も500人に登っていると言います。この数字は、中国政府がいう数よりはるかに多いものですが、他の情報がないのでクロスチェックは出来ません。

     中国と、「テッパンの友情」で結ばれているパキスタンは反テロで協力をしているのですが、それは主に新疆ウイグル人がアルカイダの訓練を受けることに対して向けられています。しかし、パキスタン側はこれが、もうかる新産業だということを発見してしまいました。毎年、ちょっと掃討作戦をやって、中国政府からどっさり援助をいただくのです。でも、絶対に全部をやっつけるようなことはしないで、次の機会のために残しておいて資本にするのです。この知恵は「山賊を養って自分を高く売りつける」作戦です。中国も分かっているのですが、そうするしかありません。

     ただ現在は情勢が急を告げ、西側とISISの軍事行動も最終段階に差し掛かっており、一部の聖戦分子が避難民に紛れて各国に潜入しかねず、パキスタンとアフガニスタンはそのメインの隠れ家となる国で、またウイグル族のテロ分子もおおっぴらにネットのビデオでテロを予告したりする脅威の下にあります。新疆の安全のために、たとえアフガンとパキスタンが「帝国の墓場」であると分かっていても、中国もこの「墓場」から新疆への通路を防衛して、新疆の「暴力反抗」が発展しないようにしなければならないわけです。

     最後に、中国が「帝国の墓場」で泥沼に陥ることがないかを論じなければなりませんが、「フィナンシャル・タイムズ」の記事がもっともなことを書いています。中国は海外派兵の経験もなく、確かにこの「帝国の墓場」に足を突っ込むのはよくないことだ。しかし、中国政府は現在、ただアフガニスタンやパキスタンとの国境を守ろうとしているだけであって、自分の土地の上であり、別に「帝国の墓場」に足を突っ込もうとしているわけではない。後方補給にせよ、兵力増強にせよ、別に他人の力を借りないでもできるし、どんな行動を取っても国際紛争にならないで、最大の目標は、聖戦分子が新疆に進入するのを防ぐだけだから、「帝国の墓場」も当面は、中国軍人の墓場にはならないだろう、というものです。

     本当の新疆の問題は新疆自体にあります。新疆情勢はずっと悪化を続けており、ソフトに問題を処理できる時間はもうほとんどなくなってしまいました。新疆の漢族はウイグル族との間の矛盾をどう考えようが、もはや中共政権と運命を共にするしかありません。多くの漢族はこうした将来を見据えて、条件の許す人々はとっくに”内地”に戻ってしまいました。

     2017年の中国政府施政報告の中で言う「国際・地域問題で建設的な役割を果たし、パリ協定の前進を図る」といった美辞麗句のたぐいの気候や自然環境の改善などは、本来その尺度をどう取るかで何とでもなってしまう、基本的には仮想のテーマと言えます。

     現実に実行されるのは、中国がアフガニスタンやパキスタンの国境で軍事力を派遣するということで、これは西側諸国から見ればやっかいな問題です。つまり、北京の新疆での「反テロ」を、全世界的な反テロ活動の一部をなすと見なすか、それとも従来通りISISに対するものだけが西側の認める反テロであり、中国政府の新疆への態度は少数民族弾圧である、というダブルスタンダードで行くのかです。

     中国国内の少数民族を弾圧する暴力と、ISISに対する「反テロ活動」というのは、実はある意味では、真実からほんの破れ障子紙一枚程度の違いしかない問題なのです。(終わり)

     拙訳御免。
     原文は;中国“全球治理”的虚与实 http://www.voachinese.com/a/heqinglian-blog-20170308/3755855.html

    「中国2015 何清漣」 電子ブック発売中何清漣さんの「中国2015」表紙

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