• ★地下共同溝建設—投資先の「老牛」再登場★ 2017年3月11日

    by  • March 11, 2017 • 日文文章 • 0 Comments

     少し前の中央経済工作会議が列挙した「経済重点施策」に比べると「政府施策報告」の方には一つ余分に「都市の地下に2000km以上の総合共同溝を建設し、水害に弱い都市を解消した「海綿都市」建設3年行動計画」というのが付け加えられています。つまり、今年の政府投資はこれまで通りインフラ建設を基礎にするけれども、その重点は地下に移すということで、かつてのような表面上のカッコよさを重んじて、地下の配管工事をおろそかにして、水害に弱い都市を作ってしまったことに対しての大規模な軌道修正を図ろうというものです。

     

    「老牛」再登場のサイン

     私は中国政府の投資がこの「老牛」にまた向かうのはべつに驚きはしません。というのは世界中の原油・鉄鉱石・非鉄金属・農産物など大口商品の市場では色々、予兆が見られたからです。2016年11月、中国政府がまだ「過剰生産能力の解消をしっかりやって、キョンシー企業の退場を」と宣伝していた頃、「ウォール・ストリート・ジャーナル」の11月14日付は、「全世界の大型商品市場が、おなじみの中国のお金持ち投資軍団による攻撃を受けている」というニュースを報じました。中国の投資家が石炭、鉄鉱石、ゴムを含む多様な大型商品の価格に激しく上下の波を引き起こして、一週間で鉄鉱石原材料価格が四分の一も値上がりし、このに年来の最高値をつけたのです。アナリストとトレーダーは、この価格上昇は中国の投資家がまたやる気になっているためだと見ていました。

     中国の政府側はこれに対して2017年の「両会」(*3月に開かれる全国人民代表大会と政治協商会議)の前日まで沈黙を守ってきました。同日、国家統計局が2016年の全国固定資産投資(農家を含まず)は59.7兆元(前年比8.1%増)、第三次産業に34.58兆元、インフラ整備(電力、熱、ガス、水の供給は含まず)に11.9兆元で17.4%増だと公表しました。国家発展改革委員会は、もし2016年の固定資産の投資スピードの増加が続けば、2017年の全国32の省クラス(新疆生産建設兵団も含めて)、固定資産投資規模は65兆元前後になるだろうと発表しました。
    ですから、2017年の政府施策報告で、政府投資に牽引された新都市化計画とインフラ建設というこのおなじみの「老牛」が再び牛車を引っぱることになるだろうというのは、完全に想定範囲内でした。今年2月に、パワーショベルカー販売量が298%増加し、月間記録を更新したことから見ても、中国国内の都市建設関連企業ではとっくに今年の政府投資の動向をつかんでいたと思われます。

      

    泥縄の地下共同溝建設

    今回のプランがこれまでの都市建設と異なる点は、(1)「海綿都市」という2年変えから流行し始めた中国語が初めて、政府施策レポートに登場したこと (2)李克强総理がレポートの中で特に「地下と地上建設を統括して、都市建設における地下総合共同溝2000キロ以上の建設を再開し、洪水に弱い都市問題を解決する3年計画」と特に言及したこと 
     「海綿都市」というのは、都市の雨や洪水管理の概念を表す中国式の言葉で、外国の技術用語なら「雨水の影響を低く抑える構造の建設」から生まれる言葉で、環境の変化に適応し、雨水のもたらす自然災害などに柔軟に対応出来る、という意味で「水に柔軟な対応が出来る都市」。雨が降っても、水を吸収し、溜め、浸透させ、浄化し、必要な時に溜めた水を解放することによって有効利用出来る、というようなことです。2016年3月から、中国は都市の隠れた弱点の解消のために、「海綿都市」に対して予算的にサポート。その後ですぐ北京市通州区を全国の「海綿都市」建設のテスト地区としました。今年、政府が投資重点を都市の地下の総合共同溝建設に決め、3年計画で水に弱い都市の解消にあたることにしたのは、この計画が実ったからです。

     地下総合共同溝建設開始は、長年、歴代の政府が都市建設においてさぼってきたことへの一種の補償でもあります。これまでの都市建設は地面の上ばかりみて、地下のパイプ建設をおろそかにしてきたために、中国の都市は始終、洪水に見舞われ、大小様々な災害に遭わされました。記憶に新しいところでは、2012年7月21日の「帝都水没」で、北京で37人が死亡し、数百人が怪我をし、190万人が罹災しました。2016年夏には中国の南方各地で強い雨が降り、洪水がおこり長江の中下流沿線の7つの省・市が被害に遭い、「水の都」武漢は深刻な洪水に襲われました。湖北省民生庁によると、1700万人以上が被災し、69人が死亡、16人が失踪、直接的な経済損失は270.7億元。被害が深刻な主な原因は都市の多くが冠水したからだ。(水都・武漢の冠水の痛み/中外対話08.07.2016)

      

    遅ればせながらの地下共同溝建設

     2012年7月の「帝都水没」後、私は「中国の都市の脆弱さをあらわにした下水道」《下水道凸显中国脆弱的城市生态》(VOA,2012年7月23日)を書きました。そこで中国の都市の下水道システムは遅れており、明らかに都市環境としての弱点だと指摘しました。現代の多目的都市建設は膨大なシステムエンジニアリングで、30近い専門領域に関わります。例えば都市計画、都市測量、都市設計、建設管理、環境保護、公園緑化、消防、道路、地上地下の共同パイプ・ラインなどで、そのうち下水道設計は都市計画者が本当に長期的な見通しと政治責任を持っているかに極めて深く関係します。

     更に、米国や欧州各国の都市計画の経験も紹介しておきました。例えば都市計画で、下水道システムの設計は一挙一投足が全体に影響を与えかねないほど重要な位置を占め、設計時にはその現時点の約10倍以上に耐えうる能力で考えておかなければならないことなどです。ニューヨークやロンドンが今日になっても100年以上前の下水道を使っていられるのは、設計時に長期的な展望を計算に入れ、都市人口の拡大や、修理保全の便利さ、しっかりとした基礎を考慮して、人間が立って楽々と歩ける余地があり、今日まで有効的に運用されてきたのでした。西側国家の各都市が今日の発展を遂げたのは、こうした堅実な基礎があったからです。更に重要なことは、西側各国が都市建設の記録保管を極めて重視して、多くの都市で100年以上前の都市建設記録を完全に保管して、改修時などにはこの記録が極めて重要な役割を発揮するのです。

     更に、私は文章において、下水道が今日の中国の都市建設でちっとも大事にされていないことを指摘しておきました。これは中国政治文化の特徴で、「メンツ」に関わる工事ばかり重んじることと関係します。都市の地下水道などは地上からは見えないので「メンツ」とは無関係だから地方の役人からすれば、どうでもいいような場所、なのでした。こうした「中国的特色」によって、北京や上海といった都市計画は、永遠に表面的にピカピカであることが一番大事にされ、道が広いとか、建築が華麗でかっこいいとか強調されても、都市下水システムの設計は水準以下で、依然としてソ連モデルのままで、下水管の口径も西側諸国に比べると大幅に小さく、大量の水が流れ込めば排水が間に合わないと言われます。例えば、広州の排水管の83%は「一年に一度程度の洪水の基準で排出量が計算」されているそうです。

     今年、「建設プランに入れられた」都市の総合共同溝2000キロ以上ですが、これは全国の地下のパイプ網のなかさで言えば小さな部分にすぎませんし、三年計画では全然不十分です。ゴーストタウンやゴーストビレッジがいたるところにある状況の下で、政府投資が地上から地下に潜って、パイプ作りに使われるのは賢明な企画だと言えます。というのは、都市計画建設の記録がまだ残っているから、間違いを修正するのも比較的簡単ですし、遅くなればなるほど、修正する費用は高くつきますから。

     地下の共同溝建設は政府の公共プロジェクトですが、原材料と生産供給業界の生産増加、就職増加、公共サービス改善以外には政府は直接の投資の見返りは得られません。ですから、中国政府の、「投資が無ければ経済を動かしようもない」というお手上げ状態も伺えます。しかし、兎にも角にも、これは以前の都市建設の間違いを直し、長い目で見た都市再建に効果があり、もし各地の政府が今後、いろいろな名目でそのコストを市民に押し付けてきたりさえしなければ、まともで生産的な民生プロジェクトであるとは言えましょう。(終わり)

     拙訳御免。
     原文は;地下管网建设:政府投资“老牛”再上路 http://www.voachinese.com/a/heqinglian-china-government-20170310/3761146.html 
     
     「中国2015 何清漣」 電子ブック発売中何清漣さんの「中国2015」表紙

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