• ★朴槿恵の悲劇—全ては「キングメーカー」が原因で★2017年3月15日

    by  • March 15, 2017 • 日文文章 • 0 Comments

     1年以上の「朴打倒運動」の結果、3月13日に、韓国憲法裁判所はついに朴槿恵(パク・クネ)を罷免を宣告しました。憲法裁の李貞美(イ・ジョンミ)所長代行は、古代中国の法家・韓非子の名言「法を道とすれば、今は苦しいが長い目でみたとき利益がある」という言葉を引用し、法治主義の実現を強調しましたが、それでもこの事件の強い政治的色彩を拭い去ることは出来ませんでした。韓国がこの点を正視できるようになるのは10年〜20年後かもしれません。

     朴槿恵に関連する資料を整理して読んでいくと、結局がっかりするような結論に達してしまいます。朴槿恵が政界に入ったその日から、成功を納めた時までしっかりと失敗のタネは植え込まれていた、ということです。彼女と「キングメーカー」だった崔太敏(*祈祷師)父娘が代表する関係というのは、大統領府の青瓦台に就くことの保証であったと同時に、今日、その大統領府から去らざるを得なかった理由でもあります。

     

    朴槿恵の人生「擬似家族」に支えられてきた

    朴槿恵はかつて、無数の韓国人を感動させた話があります。「私は父母がない。夫もない。子供もない。国家が私の唯一の仕える相手だ」です。この「自分は国家と結婚した」と言う女性大統領が、最後には家族ではなく、家族以上の「女性の親友」のために失敗したのは馬鹿げているようですが、しかし、それには必然性があったのでした。というのはこの「女性の親友」はただの「親友」ではなく、彼女こそ朴槿恵の人生で最重要の精神的指導者であり、「キングメーカー」と言って良い崔太敏の娘だったからです。

     「キングメーカー」というのは王位継承権問題で、決定的な力を持つキーマンやグループのことを言います。彼らは、政治、資本、宗教、軍事、リーダーを批判する能力を持って、未来の君主を決定します。民主政治では、大きな利益集団が連合してキングを作ります。例えば2016年のアメリカ大統領選挙で政治、経済、メディアのエリートが連合してヒラリーをホワイトハウスに送り込もうとしたようにです。朴槿恵の人生で一番困難な時期に、崔太敏は慈雨のごとく登場し、人力、資金、精神的な慰め、全てがぴったり大地を潤すようでした。この時の慈雨のような存在がなかったら、朴槿恵は長い長い政治マラソンで勝者になることはなかったでしょう。2006年の大統領選挙の前日、「導師」であった崔太敏は亡くなっていましたが、その5番目の妻の娘の崔順実(チェ・スンシル)が、父親が朴槿恵の心の中で占めていた信頼をそっくり受け継ぎ、朴槿恵に家族より親密に、ぴったり寄り添っていたのでした。

     父娘2代の朴槿恵に対する変わらぬ「暖かい支援」は、当然、朴槿恵への愛情から出たわけではありません。朴槿恵の特殊な身分は、この種の「暖かい支援」は最初から「政治的投資」を運命づけるものでした。朴槿恵が崔一家の政治的投資の対象となり得たのは、その父親が1963年から1979年まで17年間も大統領を務めた朴正熙であったからです。

     否定しようがない事実は、アジアの価値観は特別に家族関係を重視することで、民主国家であれ、非民主国家であれ、政治と社会資本は全て、血縁関係が世代間で伝わっていくという特徴があります。北朝鮮は典型的な世襲王朝ですし、アジアでの民主国家の模範と見なされている日本ですら、その政治は世襲制という特徴を免れていません。ビルマの民主の女神・アウン=サン・スーチー女史が、長い政治レースを戦ってこられたのも、父親がビルマ人に「国父」として尊敬されているアウン=サン将軍だからです。朴槿恵の場合、他の大統領の後裔より更に、投資先として有利だったのは、(1)朴正熙は「漢江の奇跡」と言われたほどの実績を上げた大統領で、そのイメージは煌々と照る月のように韓国人の記憶に新しかった。(2)朴正熙は第5期の最初の年に暗殺されるという悲劇と、「国家と結婚」という女性の立場はどちらも容易に韓国人の心中の泣き所を刺激したからです。

     

    キングメーカーは慈善家ではない

     キングメーカーがキングメーカーである理由は慈善家ではなく、もうけるためです。中国史上一番有名なキングメーカーは、荘襄王(*始皇帝の父・異人と言った)を作り出した巨商であり、政治家でもあった呂不韋です。呂不韋は趙の国の邯鄲で商売をしているときに、秦の人質として趙の国にいた王子・異人を見て、「奇貨居くべし」と彼を秦の王にするアイデアが閃きました。自信がなかったので父親に相談し、「田畑を耕せばもうけは何倍?」と聞き、「10倍じゃ」と答えられます。「では、宝石、玉器を商う利益は?」と聞くと「100倍」と。「では、王を作り出せばいかが?」と聞くと、父は「数えられないほど」と答えます。これで自信を得た呂不韋は異人に対しての戦略投資を始め大成功、この名言は歴史に残るものとなりました。

     しかし、歴史を見ると「キングメーカー」と王の関係は終わりが良くありません。英国のヘンリー6世のウォリック伯爵は薔薇戦争時代の有名なキングメーカーです。彼は1461年にヨーク家のエドワード4世の即位を助けましたが、数年後その関係は緊張し、エドワード4世を王座から追い落とし、ランカスター家のヘンリー6世を王座に付けました。呂不韋も秦の王から「仲父」と呼ばれ朝政を牛耳りましたが、後に荘襄王の息子の秦王が力をつけると嫌われて自殺に追い込まれました。この種の関係が終始うまくいくのが難しいのは、王者が擁立されてからも、キングメーカー側は自分の力を振るいたいと思うのですが、王側も普通、王になる前のような制限を受けることを嫌うから、一旦、強弱が逆転すると関係は破滅するのです。

     朴槿恵と「親密な女の友人」崔順実の関係は当然、古代の王とキングメーカーとの関係とは違うのですが、しかし、キングメーカーが政治的な見返りを要求するという点では何も変わりません。早くも2007年の大統領選挙の前に、朴槿恵と李明博がハンナラ党(後のセヌリ党、今の自由韓国党)の大統領候補者争いの時、李明博陣営が、朴槿恵と崔太敏一家の特殊な関係に対して、「もし朴槿恵が候補者になったら、崔一家が国政を牛耳る可能性があるのでは?」と疑問が出されましたが、朴槿恵側は猛烈に反発して、「お前たちは天罰を受けるだろう」と言いました。当時は朴槿恵は国民のアイドルでしたので、この疑問はあっさりスルーされ、朴槿恵が大統領になるのに、なんの障害にもなりませんでした。

      

    朴槿恵失脚の幾つかの原因

     朴槿恵と崔太敏・崔順実父娘の二代の関係が、投資家と被投資家の関係である以上、朴槿恵が大統領になった日は、つまり投資利潤を回収する時です。崔太敏が言っていた、自分と朴槿恵の間は「精神的な夫婦」のようなものだという関係は、その後継者の崔順実にそのまま引き継がれ、例えば朴槿恵に各種の提案を行い、国事に関する相談に乗ったことなどが、朴槿恵の政治歴に埋められた地雷となったのでした。

     米国では、大統領は政治的な任命で支持者に利益をお返しします。しかし朴槿恵に対する崔太敏・崔順実父娘のロングラン投資は、そういう形にはなりませんでした。韓国の政治制度にこうしたパイプが欠けているのか、それとも大統領候補になったときに反対派に睨まれていたんで、そうしたことが出来なかったのかははっきりしません。しかし、崔順実が政府の公職に付けなかったことから、その権力への欲望は、一つには引き続き朴槿恵に、政策を立案画策するということと、二つには朴槿恵の権勢を借りて、自分の金もうけに使う、というやり方でしか実現されないことになりました。現在、一番批判されているのは、深くミル財団及びKスポーツ財団の成立と運営に関わって、大統領との親密な関係を利用して、韓国全国経済人連合会(韓国の財閥企業のボスたちのクラブ)で900億ウォン以上の資金を集めたことです。この二つの大財団は朴槿恵退職後の受け皿と、崔順実の私用の金庫になっているのではと疑われています。Kスポーツ財団は、崔順実の娘・鄭維羅(チョン・ユラ)の馬術訓練と馬術競技参加の資金提供に賛助し、鄭は馬術の特技で名門の梨花女子大に入学しました。

     
     韓国の政治に詳しい人々の分析だと、韓国政治は名目上は政党によって動かされていることになっていますが、実際は政界の人物の人脈によって動く「主人と腹心家臣団による政治」の特徴があります。一旦、ある人物が政権を握ると、その腹心たちが特別な地位や権力を握り、その地位が政治とビジネスの結合の橋渡しとなります。この特徴はフィリピンなんどの高度な腐敗が容認されている国柄にあり、大統領が倒れることは滅多にありません。しかし、韓国の腐敗の現状認識は、奇妙な分裂状態にあって、「現実政治では腐敗が当たり前で、政治家は腐敗しないとやっていけない。しかしそうした腐敗は政党間の争いで相手を倒す必殺の武器となって、1948年から今まで、韓国では16回、11人の大統領が生まれましたが、結局は「無残」な結果で、外国で死ぬか、暗殺されるか、入獄するか、名誉がなくなるか、放逐されるか、誰一人として大統領として身を全うして引退した人物がいないのです。

     国内的には、朴槿恵は親友・崔順実の腐敗をやめさせるすべはありませんでした。彼女と崔順実の家族の間の関係はとっくに「水のごとき君子の交わり」ではなくなっていて、何十年にもわたる利益共存の関係だったのです。こんなに長いあいだに、弱みを握られないはずはありませんしね。そして、対外的には、大統領の地位と権力を虎視眈々と狙っている政治的反対勢力を制御する力を持たなかったのです。ぼろきれのように引き裂かれ捨てられるというのはほとんど、この女性大統領の韓国での宿命だったように思われます。(終わり)

     拙訳御免。
     原文は;朴槿惠的悲剧:成败皆因“造王者” 
    「中国2015 何清漣」 電子ブック発売中何清漣さんの「中国2015」表紙

     

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