• ★お部屋のゾウさん 見て見ぬ振りは通じない 欧州生まれのテロリストの時代に  2017年3月25日

    by  • March 27, 2017 • 日文文章 • 0 Comments

    3月22日、英国議会前のテロ事件発生の翌日、ロンドン警視庁は犯人の身元を発表しました。英国生まれで52歳のカリド・マソードで、イスラム教徒であり、数年前、過激主義暴力活動で当局の調べを受けたことがある、と。この事件が英国に与えた衝撃は小さなものではありません。その理由の一つは、これが近年初めて英国本土で起きたテロ事件だということと、もう一つにはテロリストが、なんと英国本土で生まれた英国人だったからです。

     

    欧州への脅威は外からも内からも

     フランスの「シャルリー・エブド襲撃事件」のテロ襲撃後、テロリストが、フランス生まれのイスラム教徒二代目と三代目でした。その上、その後のテロ事件の主犯格も同様で、フランスは嫌々ながら、「フランスのイスラム教徒移民同化政策は失敗し、フランス国内に自国文化とは相入れないパラレルな社会が形成されている」ことを認めざるを得ませんでした。2016年11月のパリ・テロ事件発生後、英国の「フィナンシャル・タイムズ」は「”文明の衝突”を再度注目」などの一連の記事でフランスに「フランス本土のテロ分子の脅威は、他国よりひどい」という記事を発表しました。

     けれども、その時は自国生まれのイスラム教徒の二、三代目のテロ分子に対する再認識はまだ始まっておらず、欧州各国は「欧州にやってくる難民の中に紛れ込むテロ分子の脅威」に気づき始めたばかりでした。

     英国の「デイリー・エクスプレス」(2015年9月15日)は、レバノンの教育大臣・Elias Bou Saabがキャメロン英首相と会見した時に、数千名のISIS過激分子が難民キャンプの110万シリア難民に紛れ込んでいて、英国が受け入れた2万人の難民中に、約400人のテロリストの殺し屋がおり、難民50人あたり一人のテロ組織メンバーがいることを明らかにした、と報じました。

     最もハイになって難民を歓迎したドイツでも、メディアは「欧州は難民危機がもたらす深刻な安全への挑戦に直面している」ことを心配し始めました。「ドイツの声」は「難民政策の安全と危険」(2016年8月30日)で、刑事探偵局の発表として、当局は400人以上の難民関連で紛れ込んでいるイスラムテロリストのメンバーやサポーターの手がかりをつかんでいる、と報じました。当局は8月から62の調査を行い、イスラム分子はいわゆる「バルカンルート」への研究・利用を行なっており、例えば、2015年11月13日のパリテロ事件への参画容疑社のアルジェリア人アブドルハミド・アバーアウドら二人の犯人は、ドイツ経由でパリに入ったと報じました。

     しかし、現在、問題は一層複雑になってしまいました。西側国家は、否応無しに自国で生まれ育ったイスラムテロリストに直面することになったのです。実はこの問題はとっくに存在していたのですが、「居間の中にいるゾウ」の様に、これまでは見て見ぬ振りをされてきたものでした。それがついに駆け出してしまったのです。

      

    西側国家のISIS残留聖戦士

     ウィキリークスのメデイァ総合データによると、ISISには元サダム・フセインの元に居た失業軍人や、チュニジア、サウジアラビア、ヨルダン、トルコ、リビア、モロッコ、レバノン、インドネシアなどの各国から参加した武装メンバー以外に、西側国家からの参加者がいることを指摘しています。例えば、フランス2000人、ドイツ700人、英国600人、ロシア2400人などです。欧州文明が育てたイスラム教徒の二代目、三代目が聖戦士になる、ということは西側の価値観がこうしたグループを融合するという面では失敗に終わったことを意味します。

     2016年6月に米国・フロリダ州オーランドー市で起きた、50人が死亡し、53人が負傷した米国史上最悪の銃撃死傷事件(フロリダ銃乱射事件)の犯人は、オマール・マティーンは1986年米国生まれのアフガニスタン系米国人でした。2015年12月、14名が死亡、重軽傷者17名を出したカリフォルニア州サンバーナーディーノの銃撃事件の犯人・サイード・ファルクとタシュフィーン・マリクの夫婦は米国帰化したイスラム教徒夫婦で、夫は政府の公務員でした。2016年9月中旬、ニューヨークとニュージャージーの連続爆破事件の容疑者のアフマド・ラハミもアフガン系の帰化人でした。

     これらの事件の容疑者は皆、自分がISISに関係があると称して居ましたし、ISISもほとんど、自分たちの戦士であると認めましたが、しかし西側国家は、政治的な怠慢というべき動機から、彼らを「一匹狼の行動」であるとみなしたがったのでした。

     ドイツでは既に、難民帰還行動が開始されており、とりわけ2016年のチュニジア人アニス・アミンのベルリン・クリスマスマーケットのテロ事件以後、アミンのようなイスラム主義の危険分子とドイツで犯罪を犯したチュニジア人を元の国に送還しようとしました。しかし、チュニジア人たちの反対に出会いました。チュニジアでは1000人以上が、首都チュニスでデモを行い、ドイツに逃亡したイスラム聖戦士の”難民”の受け入れに反対しました。デモ参加者は「アンジェラ・メルケルよ、チュニジアはドイツのゴミ捨て場ではない」とドイツ語で書かれたスローガンを掲げました。ドイツは仕方なく、金銭でこの送還ルートを作るしかなく、3月3日、メルケルがチュニスを訪問。2.5億ユーロの借款を与え、チュニジア側と返還協議を行い、今後、チュニジア人を送還させるときは最大25人の専用機で送還することになりました。この前にもメルケルはエジプトに5億ユーロで、エジプトに送還する入国拒否された難民を受け入れるように頼み込みました。

     難民の送還なら理屈がありますが、自国生まれのイスラムテロ分子には送り返そうにも送り返す先はありません。困りきっているフランスだろうが、米国だろうが、自国生まれのイスラムテロ分子を、その両親の原籍国に送り返すとは考えもしないでしょう。しかし、メルケル総理は意外性の人です。「ドイツの声」3月22日の報道によれば、ゲッチンゲンでテロ攻撃を画策した二人の男子は、どちらもドイツ生まれなのですが、それぞれアルジェリア人とナイジェリア人と見なされ、送還されたのです。

      

    お部屋のゾウさん駆け出した—宗教テロ専制

     911テロ事件に対する人々の認識が大変分裂しているために、西側の左派(オバマを代表とする進歩派)は、なんとイスラム教を弱者宗教とみなし、これによってイスラム教は宗教的特権を事実上獲得しており、西側主流を、ISISとイスラム教の関係に対して深く分析しないような方向に導いてしまいました。

    ISISが最初に出てきた頃、欧州青年が次々にISISに身を投じるのを、主流メディアはイスラム主義が欧州で流行るのは、イスラム青年が失業、貧困、そして欧州の主流の社会に溶け込めないからだ、と考えました。「シャルリー・エブド襲撃事件」や、11・13パリテロ事件のあとになっても、こうした観点がメディアの最初の反応としては「テーマ曲」であり、これは西側左派連の「圧迫—反抗」というモデルの核心理論にもぴったり合致するものです。

     私は以前、「読書メモ②ーISISイデオロギーの物の怪」(2015年11月26日)で西側の関係する分析を細かに紹介しました。そこで指摘したのは、「よく認められている経済的原因以外に、宗教的な原因を探している。しかし、少なからぬイスラム学者は別の解釈をしていて、それは、イスラム教は集団主義を主張するのに対して、西側の価値観は個人主義を重んじる。この違いは欧州のイスラム青年の二、三代目がイスラム主義に帰属感を求めるもとになる。ある論評では「彼らが駆られるのは宗教的情熱というより、『バーチャルな仲間関係』の帰属感、つまり兄弟的情愛のこもった世界であり、天国でも戦友とそうした関係を続けたいという願い」と言っている、です。

     今や、「イスラム国」は実体としては、もうすぐ掃討撃滅されてしまうでしょうが、かの「暗黒帝国の死の旗、ISISイデオロギー研究」がいう通り、西側の「君たちが銃を持つなら、我々は花を」といった脆弱なものの見方では、ISISには根っから対応できない。西側の観点が間違っているのは、ISISの最もおそるべき点は、武力ではなくて、彼らのイデオロギー形態と価値観なのだ。ISISの宣伝能力は、これまでのどんなテロ組織とも違うものだ。たとえ西側が連合して、肉体的にISISを消滅させたところで、意味はない。ISISのイデオロギーは本来、世俗を超えたもので、超国家的なのだ。……宗教的な過激イデオロギーがISISの大地であり、インターネットがISISの空気であり、政権はゲーム盤の包み紙のようなもの。ISISは平気で棄て去り、またどこかで芽をふくだろう」。

     西側社会にも、さすがに現実に直面して物事を見つめる勇敢で先覚的な人々は存在します。フランス現代小説家で最も有名なBoualem Sansal(アルジェリアのフランス語作家ブアレム・サンサル)の「2084 世界の終わり」は、作者もこれが英国のジョージ・オーウェルの「1984」へのオマージュ作品としています。陶杰(*香港の著名コラムニスト)は、書評の中で、作者は、宗教テロリズムがいままさに新たな専制暴君になっている。中東の多くの国々で、欧州には爆弾攻撃が起こり、ポリティカル・ジャスティスの妖風が言論の自由と常識思考を圧してしまい、「1984」の悪夢がまさに今、新たな形で人類を脅かしている。サンサルの小説は政治的観点を変えてしまうもので、西側の左翼インテリたちとアラブ世界の多くの人々から憎まれました。…ということは、多くの支持者も勝ち得た、ということです。

     英国の政治家のPaul FarageNigel Farageは、最近ツイッターで自分の考えとして「我々は極端な主張をなんとかすることが出来なかった。それは自分が差別主義者と呼ばれることが怖かったからだ」(@Nigel_Farage:We haven’t dealt with the growth of extremism because we’re too afraid of being called racists.)と書きました。

     今、英国のロンドン議会前のテロ事件は、西側国家で生まれ、西側国家の教育を受けたテロ分子という、「お部屋の中のゾウさん」がついに走り出した、ということです。昔の植民地主義への償いとして、イスラム過激派を正面から見ることを拒絶してきた、左派の「ポリティカル・コレクトネス」は、耳障りの良いヒューマニズムではありますが、それは西側をして、テロリズムの脅威にに、生命の安全さえ脅かされるという苦境に対しては、何の役にも立っておりませんのです。(終わり)

     拙訳御免。
    原文は;房间里的大象:欧美出生的本土恐袭者 http://www.voachinese.com/a/heqinglian-blog-terror-attack-20170324/3781025.html 「部屋にいるゾウ」は「It’s the elephant in your living room.(居間にいる象)」 (同じ部屋にいる象を見て見ぬ振りをする)
    つまり、重大な問題ほど、先送りして見て見ぬふりするということだそうです。

    「中国2015 何清漣」 電子ブック発売中何清漣さんの「中国2015」表紙

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