• ★中米スパイ戦米国編—経済・技術分野が主戦場★ 2017年4月14日

    by  • April 14, 2017 • 日文文章 • 0 Comments

    最近、中国と米国の間で、最も声高に論議されているのは貿易戦争ですが、この戦争は話し合いのテーブルの上で論議されます。これに付随しても、テーブルの上で話し合うわけにはいかないのがスパイ戦争です。4月10日、中国の北京市国家安全局は「スパイ行為の手がかりとなる通報奨励条例」を正式に実施しましたが、これは米国が去年から、継続して行って来た中国側の各種のスパイ(米国政府官僚、軍関係者を含む)摘発と、中国側の米国軍事関係企業への浸透が言われていることに対しての、一種の回答だと見なすことが出来ます。

     

    米国籍中国系スパイの今昔

     米国は開かれた社会で、自国の制度には自信満々のお国柄です。米国の大地を踏めば、米国に忠誠を尽くすと宣誓しさえすれば、就職にも障害はありません。それに、中国から米国に来た人々には、少なからぬ理科系の英才がおり、米国で中国人排斥法(1882〜1943年 wiki;https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E4%BA%BA%E6%8E%92%E6%96%A5%E6%B3%95)という虫封じのお札が廃止されてからは、資質優秀な人でさえあれば、革新技術の満載のハイテク機密部門での仕事にも就けるようになりました。1980年代末から、米国籍中国系スパイ問題は山のように始まりました。今日の中国人の大半はもう1999年、米国議会の有名な「コックス報告」(Cox Report)を知らないでしょうが、これはもっぱら、中国スパイ問題について書かれた報告書でした。

     「コックス報告」は14章に分かれ全て、中国が米国で各種の先進軍事技術を盗んでいるとしています。主な内容としては、

     ;中国は米国の最新熱核兵器の設計データを盗んでおり、現代の戦略核兵器を設計、発展、成功させている。中国は核兵器の機密を盗み出しており、米国と同様の核兵器を設計できるデータを持っている。更に注目すべきは、中国は米国の国家研究所から核兵器の機密を盗み出すことを、70年代末期から早くも開始している。

     また、同報告書は、「Hughes Aircraft」社と「Loral Space & Communications, Inc」社が、中国が戦略的核弾頭の攻撃制度向上を助けている、と指摘しました。

     しかし、この報告書は時宜に合いませんでした。中国からの強い抗議を受けたばかりか、米国内でも様々な批判を浴びました。米国の官僚たちは、自分の管轄責任に関わる分野に対して、たちまち誤解を晴らそうとしました。1994年から1998年に、エネルギー保障と核安全保障を担当する官庁、エネルギー省情報局局長だったNotra TrulockIIIは、ロスアラモス研究施設に中国人のスパイがいたとは初耳だとし、4年間調査したが、そこでスパイ事件など起きていないと表明。エネルギー省の防諜局長のカロンも、上院のある委員会で、中国が米国の核兵器情報を盗んでいるという情報も証拠もないと述べました。そして、中国と良好なビジネス関係をもつ「Hughes Aircraft」社と「Loral Space & Communications, Inc」社も「コックス報告」を徹底的に否定しました。

     「AP通信」を代表とするメディアも「コックス報告」の真実性に疑問を呈し、同報告は根拠となる事実が乏しく、すべて「だろう」、「ひょっとすると」、「多分」「思われる」ばかりで、羅列された事実は訳がわからない、としました。米国の中国語メディアは、中国に核関係の機密を漏らしたとされた「李文和事件」(ウェンホー・リー事件;http://j.people.com.cn/2000/09/16/newfiles/a1020.html)の「確実な事実」を長年調査したが、有罪の証拠は無いとし、米国メディアはこの台湾系の物理学者夫婦は、かつてFBI(米国連邦捜査局)の協力者だったと暴露しました。

      

    ”祖国”に奉仕した不運な中国系スパイ

     「コックス報告」が腰砕けになってしまってから、中国系スパイの話題はいったん終息しました。そして、2009年、米国のボーイング社の中国系技師・鐘東蕃(*台湾生まれ)が中国の産業スパイとして、米国のスペースシャトル関係の機密を盗んでいた容疑事件が暴露されてから、米国メディアは、やっと続々と同様の事件を報道し始めました。英・BBCは「現代のスパイ」でこの問題を取り上げ、台湾人が中国大陸に使われて情報を集め、報酬を受け取っていたいきさつを放映しました。以後、この中国スパイの話題は新たに、大は軍事情報、小は訪米中の中国人学者のトウモロコシのタネ(農業技術)窃盗事件まで、米国の対中国関係ではしばしば取り上げられることになりました。以下、2016年4月までの比較的知られた事案では

    ;2016年、何則雄(Szuhsiung Ho)という、米国籍の中国系核エネルギー技師がデラウェア州ウィルミントンで、「Energy Technology International」社という企業を経営、20年間、中国国務院国有資産監督管理委員会下の原子力企業・中国広核集団 と共謀して、米国エネルギー省の許可なく、原子炉に関する機密を国外に持ち出し利用した、とされます。この何則雄は中国最大の核エネルギー企業の高級コンサルタントで、1977年から、米国の核関係の専門家を中国に紹介し、中国の核エネルギー専門家の要請に応えて援助していました。

     FBIの米国籍中国系職員・秦昆山(Kun Shan Chun,1969年広東省生まれ、後米国帰化)は別の機密事件に関わりました。「ニューヨーク・タイムズ」によると、FBI検察官のは「米国人が外国スパイとなり国家に背き、国家の安全に脅威を与えた連邦犯罪で、被告人の秦昆山のようなFBI職員であれば、なおさらその被害は大きいし、危険である」と言われています。そして「2006年以来、秦昆山は自分の親戚や、珠海市科力莱科技有限公司とずっと関係を保って、中国旅行を含む経済的利益と引き換え同社の研究に便宜をはかってきた」、として起訴されています。(参考;英文;https://www.nytimes.com/2016/08/02/nyregion/fbi-employee-pleads-guilty-to-acting-as-an-agent-of-china.html?_ga=1.128290500.992761310.1492154971&_r=0)

     中国系米人の米国海軍将校だったエドワード・リンは、台湾生まれの帰米市民で、中国に情報を流した容疑者です。告発書によれば、リンは二つのスパイ罪と三つのスパイ未遂罪で調査を受け、更に、故意に自分の利益のために秘密情報を流した、とされます。

     米国では、少なからぬ中国に情報を提供した米国のスパイもいます。今年の3月30日には、女性外交官のCandace Marie Claiborneが中国側から、お土産と現金をもらって、中国スパイに情報を提供したと報道されたのが、その一例です。

     

    米国の中国スパイ警戒は常態に

     米国籍の中国系スパイ事件が頻発したため、中国系米国人の忠誠には疑いの雲がかかっています。米国人事管理局(United States Office of Personnel Management、OPM)の公開資料では、政府は政府関係職員の信頼度背景調査に、個人のソーシャルネット上の内容など公開情報の追加調査を計画していますが、これは、直接会わないでも自動的に対象となる人物の安全性をネット上で得るねらいです。

     こうした中国系米国人に対する心配は、近年の中国による対米投資にも広がってきており、中国資本の対米投資に対する安全審査は、必ず必要とされる条件となりました。2017年3月、米国のシンクタンクのランド・コーポレーション(RAND Corp.)は、米中経済・安全審査委員会(U.S.-China Economic and Security Review Commission)に、「中国の米国航空産業への投資」という報告書を提出しました。この報告は、中国信金の米国航空産業に対する影響の分析です。2005年以来、中国は12社の米国航空会社を合併、買収し、三つの合資企業を作り、5つの協定を結び、現在、中国の米国航空業界の投資は、主に一般的な航空分野に集中しており、米国技術の中国への移転には至っていない。しかし、報告書は、「こうした合併や買収が、表面上は輸出規制や投資制限の管理規定に違反していないようだが、しかし確かに技術の移転の危険はあるし、それが米国の国家の安全と競争力に影響を与える」とあります。長期的には「更に競争力を増した民間航空業界が中国の軍事航空に将来的な、サポートとなる」とあります。

     4月11日、「ヴォィス・オブ・アメリカ」(VOA)記者の林楓は「中国のトロイの木馬、既に米軍需産業侵入」と題して、詳しく米国の安全関係のアナリストの警告を紹介しました。中国は大型国営企業による米国の軍事先端技術企業を買収しており、そうした企業は、名義上は米国の企業だが、事実上は既に中国国営企業の子会社になっていて、米国の先端技術を獲得するチャンスをもっている、と指摘しています。中航工業が子会社を通じて米国の小型飛行機製造業の「Cirrus Aircraft」社を買収したのが、その典型的な例です。この記事は中米経済貿易関係者や、両国の情報戦に関係する人には、一読に値するものです。

     以上、米国が中国系米国人のスパイの歴史をお話ししましたが、中米間の情報戦と反情報戦はとっくに、金無怠(Larry Wu-Tai Chin;CIAに潜入した中国人スパイ。1986年2月21日、獄中で自殺)の頃とは違って、今や政治の分野から産業と技術の分野に移っています。中国は大挙して米国航空企業に投資するのは、合法的に技術機密を獲得するためで、米中間の情報戦の意味合いも違ってきているのです。(終わり)
     
     拙訳御免。
     原文は;中美谍战美国篇:经济技术成主战场 

    「中国2015 何清漣」 電子ブック発売中何清漣さんの「中国2015」表紙

     
     

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