• ★報道から読む「海航グループ」の後ろ盾の謎⑵★ 2017年5月1日

    by  • May 3, 2017 • 日文文章 • 0 Comments

     「報道から読む「海航グループ」の資本の謎(1) 」では、「海航グループ」の仰天の、1000万元から1900億元への飛躍的発展ぶりを紹介しました。そうなると次の疑問は、「コイが竜になるような大変身には、一体、どんな後ろ盾がいるのだ?」ということになります。それは当然、この十数年来、中国のメディア記者が、特別報道で掘り出そうと努力してきた理由でもあり、その報道から垣間見えます。後ろ盾の謎は、西側メディアは、郭文貴の「海航」関係の暴露資料は直接引用してはいませんが、疑いはますます深まっています。例えば、普段慎重な、「ウォール・ストリート・ジャーナル」も、ついに「海外合併減速せず—海航グループはなぜ出来るのか?」(4月30日)を掲載しています。

     ★はっきり見える「後ろ盾」

     海南省の省長だった劉剣鋒はまず、陳峰の明らかな「後ろ盾」です。劉剣鋒の官界での経歴と、陳峰の事業の軌道を照らし合わせてみると、二人の人生では、二度の重要な出会いがありました。一度目は劉剣鋒が海南省の省長だった期間(1989〜1993年)でした。1990年、中国民用航空局計画部で仕事をしていた陳峰は、海南省省長航空事務アシスタントに招聘され、千万元を省政府から得て、海南航空を設立したのが事業家としてのスタートでした。2回目の出会いは、劉剣鋒が1998年に中国民用航空局局長になって以後です。この期間中、「海航」は発展史上に残るキーポイントとなる二つの歩みを果たしました。第一歩は、1999年のA・B・H株(*「海航グループ」の資本の謎(1)参照)の三種同時上場で巨額の資金を得たこと。第二歩は、上場企業と外資提携企業の優位性を利用して、2000年に始まった中国国内航空再編の動きの中で、「えびで鯛を釣る」ように、航空再編の中で、新華航空」、「長安航空」、「山西航空」を買収合併したことでした。なぜか、中国国内メディアはこの第二歩の報道で、劉剣鋒が当時、中国民用航空局長だったことは書いていません。私は劉剣鋒の履歴を調べている時に、これを発見しました。

     当時、国営企業再編の波の中で、こうした、「蛇が象を呑む」現象が、少なからぬ業界で見られました。その場合の鍵は、その業界に関わる政府部門が誰を支持するか、なのです。既に公開された資料では、1956年生まれの陳峰の背景は秘密に包まれています。30歳以前の経歴はほとんど知られていません。公開資料では、陳峰は1984年にドイツのルフトハンザ航空運輸監理学院(ある報道によると、その期の中国人生徒はたった17人だったとか)を卒業後、中国民用航空局計画部、国家空中交通管制局で働き、海南省に行く前は中堅幹部でした。この情報は、陳峰が当時、確かに中国民用航空局の期待の英才だったことを示しています。当時、試験に合格しなければ、全国選抜され、政府から海外研修に派遣されませんでした。

     メディアの論評では、陳峰と同時期に海南で「金鉱を掘り当てた」「万通四君子」(*不動産業界で頭角を表した4人、馮崙、王功権、王啓富、劉軍)も、公務員の経歴の持ち主たちでした。しかし、馮崙らは「下海」(*国営企業から民間に転出)して、民間に身を投じて後に頭角を現したわけです。これに比べると、陳峰は、政府お名指しのリーダーで、スタートからそもそも一頭地を抜く、改革開放後の「草莽の英雄時代」のエリートだったと言えるでしょう。

     

    海外からの助っ人—ソロス登場

     こういう報道があります。

     1995年、「海航」の負債率が高止まりし、新たな資金を必要とした際、陳峰は副社長の王健を連れて渡米し、ウォール街で三ヵ月以上過ごして、最後にソロス説得に成功しました。ソロスの「クォンタム・ファンド」が株主の「アメリカン航空」は2500万米ドルで、海南航空の株式の25%を購入し、「海航」の海外最大の株主になりました。「海航」はこれで、「中国初の外国合弁航空企業」の金看板を手に入れたのでした。

     ソロスはどうして「海航」がお気に召したのでしょうか? 分析によれば、これは陳峰が、国際ルールにどうしたら合わせられるかを分かっていたからです。ウォール街に出かける前に、「海航」は三つの条件を既に備えていました。それは、① 国際会計基準。「海航」は、一流の会計士を招聘して、米国人も理解出来た。② 米国の有名な法律事務所の「スキャデン・アープス」に法律文献を作らせて、米国人を信用させた。③ 株式の私募で、ウォール街の最も権威ある評価会社の評価結果を利用した、です。

     ソロスが株主になったことで、「海航」の信用は飛躍的に高まりました。4ヵ月後、上海証券交易所のB株市場で上場を果たし、2.6億元を集めました。1997年2月には、正式に「海南航空株式有限会社」と改名し、その後はずっと順調でした。A株市場にも上場を果たし、9.285億元の資金を得ました。「中国初の外国合弁航空企業」の金看板の威力で、中国銀行、中国農業銀行、中国工商銀行から数十億元の信用を供与され、中国建設銀行と、戦略協力協議に調印を果たしました。陳峰は自分の借金能力が自慢で、「我々は中国資本市場を不断に活用して、我々の機関投資家の比率を調整している」と語っています。

     陳峰は、株式の構成がますます複雑化する時にも、株式構成を自分たちに有利な形でコントロールする能力を維持するこを忘れませんでした。2003年末、「海航」が持っていた「海南航空」の株はわずか7.3%でした。当時、「アメリカン航空」の持ち分は、最大の1.08億株、14.8%でした。2015年になって、「海航」は持ち株を増やし、比率を「アメリカン航空」より2.95%少ないだけの11.85%に高め、2番目の大株主になりました。2007年11月に、新華航空ホールディングズ公司は、大新華航空有限公司に名を変え、登録資本金を30.86億元にしました。そのうち、海南省政府の「海南省発展ホールディングズ有限公司」が48.61%、「海航」が19.07%、ソロスの「Starstep Limited」は、わずかに18.64%となって、「海航」はついに、上場企業の第一の大株主になったのです。

     

    中国国内銀行のお気に入り「海航」

     陳峰は、外国銀行からの借り入れで「銀行融資イノベーション賞」を獲得しました。この受賞によって、陳は国内銀行での自分の価値を大いに高めました。外国銀行が信用しているのに、自分たち中国銀行がぼやっとしてていいものか? というわけです。「海航」の成長拡大のやり方は、融資、再編、再融資ですが、誰だって、金融業界のサポートがなければ、どんな「名人」だって、そんなことが出来っこないのは分かります。「新京報」4月23日の「海航の『迷霧』、株式構造の秘密。国家開発銀行が千億元融資保証」の記事では、「今や、『海航』の現在進行中の海外買収では、中国の国内銀行から総計6100億元以上の信用供与」とあります。

     不断に報道のターゲットとなる「海航」の報道で、陳峰と銀行の関係に関するマイナス面の報道があります。

     2001年4月18日、中国建設銀行は、「海航」に、航空機購入のための8600余万米ドルの借款を決定し、3.4億ドルの担保も提供しました。しかし、同年12月には、同銀行はこうした信用供与を米国の会社から撤回してしまい、「海航」は航空機を購入出来なくなったことがあります。その時、陳峰と王健は、当時の頭取の王雪冰を訪ね、その後に、王は「規定通りやる」ように指示を出し、関係職員はこの圧力で、最終的に、担保額を3.4億ドルから1.95億ドルに減額する折衷案になりました。その前に、陳峰たちは王に感謝の意を表すために、一個10万ドルと20万ドルの「ピアジェ」と「パテック・フィリップ」の超高級腕時計を贈りました。その後、王は担保に関して悪評が立つのを恐れ、これらを「海航」側に返却しました。王はのちに事件を起こしましたが、陳峰はこれによって巻き込まれることを免れました。

     銀行と企業の関係が汚い中国では、企業と銀行の関係を奇麗に維持していくのは大変難しく、多かれ少なかれ、「融資コスト」を払わなければなりません。しかし、「海航」は、こんなに多くのマスコミの注目の的になっていながら、なぜかスキャンダルが出て来ません。これは二通りの解釈が可能で、① 巧妙に立ち回っている。② 後ろ盾が極めて強力、です。しかし後者の解釈でも説明がつきません。習近平の姉の斉橋橋の夫の鄧家貴は、後ろ盾が弱いとはとても言えませんが、ここ数年、外国メディアに一番、いろいろ暴露されている人物の一人です。

     2010年の18回大会権力闘争開始以来、外部にスキャンダルの材料を流すのはトップレベルの政争の主要な方法になっています。郭文貴のスキャンダルは二番目の爆弾ででした。最初の「中国オフショア金融の秘密」時と、この二番目の「爆弾」では、漏出ルートは全く違っています。第一の方は、「ニューヨーク・タイムズ」、「ブルムバーグ・ニュース」、「国際調査報道ジャーナリスト連合」などのところへ、反習近平側から匿名で、資料一式が届けられたのでした。それには、調査に都合の良いように、「平安保険公司」(*中国の四大保険会社の一つ)、萧建華(*山東の実業家)の企業などの株主名簿、株購入の時期別株主一覧なども含まれていましたし、様々な企業内情報提供者までいたのです。ですから、「ニューヨーク・タイムズ」も裏取り取材を行い、ダブルチェックの上で、記事の大型爆弾を破裂させることが出来ましたし、「国際調査報道ジャーナリスト連合」が、中国の紅色貴族の恥を世界にさらけ出した「中国オフショア金融の秘密」を発表出来たのです。(*参考;何清漣 世界に「盗賊型政権」を認識させた「中国オフショア金融報告」の意義 http://heqinglian.net/2014/01/28/capital-flight-japanese/)

     今回の郭文貴の「爆薬」は、実はこうした権力闘争の余波ですが、大一波の場合とは明らかな違いがあります。① 一番目の方は、全て匿名の人物による遠隔操作で、表に出てくる人間はいなかった。② 一番目の方は、ネタ提供元が大量の文献資料と、内部協力者によって、記者の労力さほど費やしないでも、ダブルチェック出来た。しかし、今回の場合は、郭文貴は、歯磨きチューブを絞り出すような方式で、「続きを知りたければ、次回のお楽しみ」というふうに、観客の興味を引っ張ったが、メディアはダブルチェックするルートがなく、ただ郭文貴の発表する次回情報を待つしかなかった。

     ですから、私は以前に、中国政商の黒幕を調査した「ニューヨーク・タイムズ」と「国際調査報道ジャーナリスト連合」が、郭文貴の出す「爆弾資料」の後続を調査し、それが本当かどうかを確かめて、更に深く掘り下げた調査報道をすべきだと希望を書いたことがあります。

     郭文貴の、王岐山の妻の甥と「海航」の関係についての「爆弾資料」は、今や、より掘り下げた調査が有ろうと無かろうと、既にすごい成果を上げています。習近平王の系列に暗影を投げかけ、更に、中国の民間では、一般の政界・官界に対する「どうせみな同じ穴の狢」という見方を裏付けとなりました。北京は「デマの横行」に対して、もどかしい思いで困り切っています。流行の言い方で言えば、中国政府は「タキトゥスのわな」(*政府が信用を失っている時は、何を言おうと何をしようと、民衆に悪く思われること)にとっくにはまっているのです。既に、公の信用が無くなってしまって、真実を話そうと、うそっぱちだろうと、政府側の説明を誰も信用しなくなっているのです。仮に、中国国内メディアが、自分たちの調査結果を発表して、郭文貴の「爆弾資料」はうそだと行ったところで、反応は、きっと「ここに銀三百両埋めておらず」の看板を立てた話のように、自ら墓穴を掘るだけでしょう。(終わり)

     原文は;读报撷英:海航集团靠山篇 https://www.voachinese.com/a/haihang-20170430/3832090.html

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