• ★北京フォーラム、「一帯一路」の大変身だが…★  2017年5月14日

    by  • May 14, 2017 • 日文文章 • 0 Comments

    5月14日、中国は北京で「海陸二つのシルクロード計画」(「一帯一路」)の国際協力フォーラムが開かれます。「計画」が提起されてから3年以上たった中で、最高レベルのフォーラムで、アジア、アフリカ、ラテンアメリカ、欧州連合(EU)の百以上の国家が参加表明し、「世界が、反グローバル化の逆流の中にあって、中国による土台の上で、習近平が総指揮をとる、世界各国が奏でる交響曲である」と、北京は誇らかに宣伝しています。ただ、華やかな表面の下を注意して見ればすぐ分かることですが、2013年に中国がこの計画を打ち出してから、これまでに、世界の経済構造には大変化が起きており、中国の「計画」は目的から、資本募集のやり方にも、巨大な変化が起きています。海と陸のシルクロード計画図
     
     

    過剰な生産力を輸出しグローバルの新リーダーへ、が目標

     2013年、中国は「アジアインフラ投資銀行」(Asian Infrastructure Investment Bank、AIIB)を作って、これを核として、「シルクロード経済ベルト地帯」と「21世紀の海のシルクロード」の「一帯一路」の青写真を描き、国外に大量の過剰生産力の輸出を図り、「中国のマーシャル計画」と評されました。「マーシャル計画」という言葉はすぐに用いられなくなり、「過剰生産力輸出」の「過剰」の2文字も省略されました。2016年1月の「AIIB」開業後は、中国の「一帯一路」という宣伝文句は次第に変化し、ますます大きなものになっていきました。この背景は、米国の政治的変化があります。

     トランプが米国大統領に参加して、その反グローバリズムの姿勢は突出しており、オバマ大統領のTPPをやめると公約しました。米国世論と政界では少なからぬ人々が、トランプに反対し、選挙戦開始時には、「TPPを不参加は、アジア・太平洋地域の指導者の地位を中共に呉れてやるに等しい」と予言しました。11月の選挙結果に、英米の主流メディアは一致して、米国はグローバリズムのリーダーという旗を放棄した、と大いに嘆きました。英・「フィナンシャル・タイムズ」は、「世界の大統領」の役割を二つに分けて、「中国がグローバリズムを率いる」という記事で、グローバリズムのリーダーの大任は中国が担い、「メルケルは西側の衣鉢の継承者」という記事で、西側の価値を受け継ぐ大任を担うのはドイツのメルケルだとしました。そして、経済のグローバル化の価値を支える、人権理念、自由と民主などの普遍的価値を押し広める役割は、経済グローバリズムを進める指導者には期待しなくなったのです。

     これまでずっと、「報道の自由の敵」と見られて来た中国も、「俺様の出番が来た」と張り切り、TPPが米国不参加によって流れたも同様となったので、「海陸二つのシルクロード計画」を、中国がグローバリズムのリーダーとなる最初のチャンスとしたのです。

     中国はまず、「海陸二つのシルクロード計画」を、多くの楽団員を必要とする交響楽団として、中国の習近平国家主席をその総指揮者と位置づけました。次に、「海陸二つのシルクロード計画」が既に持っている基礎的な土台となる条件を全力で推し広めました。70カ国のメンバー、千億米ドルの資本による「AIIB」(2016年1月開業)では、中国の資本が3割を出資。中国が400億ドルを投資したシルクロード基金は、「海陸二つのシルクロード計画」の経済ベルト地帯で、中国が4G時代のTD-LTE(*次世代通信規格)技術を普及させ、この地域の国家の電話通信網現代化を促進しようと言うものです。
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    重大な変化;中国出資から共同出資、共同危険分担へ

    「海陸二つのシルクロード計画」というのは、実際は「あると言えばあるし、無いと言えば無い」ようなものです。「ある」方は、「海陸二つのシルクロード」沿線の多くの国々で、もともと、中国とは多かれ少なかれ、投資や貿易のた経済関係を結んでいました。世界224カ国と地域で、中国は既に170カ国と経済貿易関係を持っています。この現実に基づいて、これらの国々を「海陸二つのシルクロード計画」に組み入れるというのは形式上の話に過ぎません。「無い」方は、「海陸二つのシルクロード計画」に組み込んだ後、中国とこれらの国々との経済貿易往来に一体、どんな変化があるか? です。 これは完全に、お金がどこから来るか、ということです。「海陸二つのシルクロード計画」構想が提起されて以来、その革新的な問題とは、以下の三つです。
    ① 投資の資金はどこから出るのか?
    ② ブロジェクトの利潤はどう保証される?
    ③ 投資のリスクはあるのか? どれほどあるのか?

     こうした問題は、周小川・中国人民銀行行長は、5月4日に中国金融雑誌の公式微信(マイクロブログ)に、署名入りの記事を書きました。その要点は
    ; 長期的にみれば、「海陸二つのシルクロード計画」の投資協力は、一方的な資金サポートではなく、それぞれが協力し合って、資金を出し合い、危険を分担し、利益を共に享受して建設していく共同体であり、同時に市場の力を借りて、市場化による融資を中心として、積極的に人民元の通貨としての役割を発揮するもの。現地の備蓄と、国際資本のより多くの往来を作り出すものだ。

     この記事は、「人民日報」を経由しないで発表されたので、各国政府や専門家の注目を集めなかったかもしれません。しかし、「ロイター通信」はさすがに鋭くもこれが予言する動向を察知し、すぐさま同日、「周小川の『二つのシルクロード計画』投融資は、市場化を中心として、積極的に人民元の働きを発揮させる」(中文)という記事で、参加国の注意を促しました。私は、既に北京に来ている110カ国がこのニュースを見たかどうかも、その真意が分かるかどうかも知りません。ですが、周小川が中国人民銀行行長の肩書きで、北京サミットの前夜に署名記事を発表したと言うことは、中国政府が参加国に向けて、それとなく意のあるところを伝えているのだと言うことです。

     

    北京のソロバン;米ドルに取って代る

    中国政府が、「海陸二つのシルクロード計画」に参加希望の国々に、「共同出資」、「共同収益」、「共同危険分担」を呼びかけたのは、これまでの海外投資が「トラブルとなったプロジェクト」がたくさんあり、特に国営企業が主体となって投資したプロジェクトは、9割以上が失敗しているからです。(中国の海外投資はなぜ面倒なプロジェクトばかり?2016年6月23日 )。ですから、この度の考え方は、当然、以前の中国のやり方より賢く、現実的です。しかし、各国が果たしてどう対応するかは、それぞれの国の考え方によります。結局のところ、世界には中国のように、巨額の投資主体になれる国は極めて少ないのです。大多数の私有性を主体とする国家では、投資主体は企業にだけがなれるわけですし、その場合、主要な考慮は、投資収益と危険度、プロジェクトに対する利益とリスクの評価であって、政府とは全然異なるのです。

     しかし、これは参加国にとって小さな失望に過ぎません。もっと大きな失望は、周小川が強調した、「人民元の働きを、『海陸二つのシルクロード計画』で発揮させ、人民元使用を、現地貯蓄やグローバル資金に使って、通貨交換のコストを下げ、金融安定維持に利することなどを含む、人民元による投資融資を有利にする」、という点です。

     参加諸国の中には、少なからぬ国家が、中国のあの数兆ドルの外貨備蓄目当てにやって来ています。中国政府は現在、外貨流出防止に大変苦労していますが、こうした国家から見れば、やはり3兆ドルという数字は、「腐っても鯛」なので、そのほんのちょっとしたおこぼれに預かっても、自国は大いに潤うわけです。ですから、周小川の発言にはいささか失望したと思われます。

     しかし、周小川が考えなければならないのは、中国の長期的な大計画です。つまり、「人民元の国際化によって、逐次、米ドルの王者の地位に取って代わること」なのです。

     「資金を受け取った国は直接、人民元を使って中国の産品を買えるから、為替市場で交換するコストが節約できる。資金提供国と被提供国の関係が密接になり、人民元収入がますます多くなり、未来には直接、借金返済も人民元で出来るから、そこでも為替交換のコストが節約出来る」というわけです。

     考えて見ましょう。中国が『海陸二つのシルクロード計画』各種の投資融資方式を使って、開発金融を行い、金融機関の相互設置、サービスの連携、資本マーケットの連結、金融インフラ設備や通信機構なども含んだ金融機構と金融サービス網を作り出したとするなら、どれも全て、中国が将来国際金融で中心的な働きをするためですが、中国が出すのは人民元です。人民元は米ドルに比べて、弱すぎます。国としてはIMF(国際通貨基金)に加盟して「5大通貨」になり、特別引き出し権(SDR)も獲得しましたが、これは「絵に描いたモチ」です。もし中国の中央銀行がこれまでと同様、通貨印刷機を動かし続けるならば、世界各国は、「人民元を受け取ると、暴落の危険が高すぎる」と思うようになるでしょう。

     なぜか? この四月に、私は「★事、志と大違いの中国人民元の国際化★(2017年4月5日)http://heqinglian.net/2017/04/05/%E2%98%85%E4%BA%8B%E3%80%81%E5%BF%97)を書きました。その中で、世界各国の中央銀行が、2016年の第4四半期に所持する人民元備蓄は845億ドルで、全世界の外貨備蓄で、人民元の資産占有率はわずか1.07%で、IMFのSDRにおける、人民元の割り当て額の十分の一、2016年10月の、IMFのSDRバスケット入りで、その比重は11%で、米ドル、ユーロよりも低く、英ポンド、日本円より高いだけだ、と指摘しました。(*米ドル-41.73%、ユーロ-30.93%、人民元-10.92%、日本円-8.33%、スターリング・ポンド-8.09%。)

     もっと大事なのは、人民元の国際決済通貨としての価値が下がっていることです。2015年の第3四半期から、2016年の第2四半期までに、国際貿易の人民元決済の規模は、2.09兆元から、1.32兆元に下がっています。同期の人民元決済規模と国際貿易総額に占める比率では、32.5%から22.0%です。

     以上述べたように、この「海陸二つのシルクロード計画」北京フォーラムに参加した国は多く、会議の交響楽は大いに賑やかで、勇壮に聞こえます。しかし、参加各国代表が今回、自分たちが手に入れられるのは、人民元と人民元割引の中国産品で、更に自分たちが資金の一部を共同出資し、危険を共同分担することに考え至れば、かなり乗り気も失せることでしょう。「海陸二つのシルクロード計画」は、「雷の音はすごいが、雨は大したことない」が、そのうち「想定内」となるでしょう。(終わり)

     拙訳御免。
     原文は、“一带一路”三年之间大变身 

    当Webサイト連載のブログ集改訳;日中両文収録 
    「中国2015 何清漣」Amazon電子ブック発売中。
     何清漣さんの「中国2015」表紙
    「中国2016 何清漣」近刊予定。

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