• ★ホワイトハウスの暗雲★ 2017年05月24日 程暁農 ・何清漣

    by  • May 26, 2017 • 日文文章 • 0 Comments

     最近、トランプ米国大統領に対する一連の批判が、世界各国の注目を集めています。かつてのニクソン大統領時代の「ウォーターゲート事件」を真似て「ロシアゲート」、「秘密漏洩疑惑」、「録音問題」と三つの大事件が引きも切らず発生し、ホワイトハウスの上空に暗雲が垂れ込め、今にも嵐が到来しそうです。中国の「瞭望智庫」(*中国国営通信社「新華社」系のシンクタンク)は3日前に、「トランプの旗はいつまで保つか」(特朗普的红旗还能打多久)を発表して、トランプの地位が深刻に揺らいでおり、弾劾されるかもしれないとほのめかしています。この「黒雲」はどこから来て、どの程度の「暴風」になるのか? メディアによって掻き回された水中から、どの程度の手がかりが発見されるのか? ここでは、読者の参考になればとこの三つの事件を分析して考えて見ましょう。

     

    三つの事件は一つの事件。「ロシアゲート」がキモだが

     まず、「ロシアゲート事件」と「秘密漏洩疑惑」、「録音問題」の三つの事件を簡単に見ておきましょう。いわゆる「ロシアゲート事件」疑惑と言われるのは、トランプ陣営が去年の大統領選挙期間中に、ロシア政府と通じて、米国選挙に干渉した、と言うものです。「秘密漏洩疑惑」とは、トランプが最近、ロシアの外務大臣と会見したときISISテロ組織が、ノートパソコンを民間航空機に持ち込んで爆破しようとしているという話をした、という事で、これによってトランプは”敵国”に秘密を漏らしたのでは、という疑惑です。「録音問題」とは、トランプが解任した、オバマ大統領が留任させたコミー連邦捜査局(FBI)長官に関してです。「ロシアゲート」の捜査を継続をしようとしたコミー長官解任に関して、トランプが録音があると言ったと言うのですが、事実かどうかはまだ分かりません。メディアの圧力の下で、米国司法省のロッド・ローゼンスタイン司法長官代行(司法副長官)が、「ロシアゲート」調査するよう、コミー長官の前任者のボブ・モラー氏を特別検察官(Special Counsel)に任命しました。

     この三つの事件を別々に見ると、こんがらかっていて、何が何だか分かりにくいのですが、しかし、表面下の関係を見れば別に複雑ではありません。事実上、この三つの事件は一つなのです。問題は、トランプの「ロシアゲート」事件であり、後の二つは、「ロシアゲート」事件の疑惑と、それに対する批判が成立するかどうかで、その衝撃度が違って来ます。メディアがしつこく「秘密漏洩」にこだわるのは、これを利用してトランプの「ロシアゲート」を証明しようと思ってのことです。「録音問題」は、トランプが果たして司法に干渉して「ロシアゲート」調査を阻止しようとしたかどうかが鍵となります。もし、「ロシアゲート」の調査で「ロシアと通じた」という非難が証明されなければ、「秘密漏洩」は別にさほど重要な話ではなくなり、「ロシアゲート」の疑惑もその土台を失います。反対に、「ロシアゲート」事件の調査結果で「ロシアと通じていた」と証明されようものなら、「秘密漏洩」も「録音問題」もたちまち重要性が倍加して、トランプに致命的な打撃となるでしょう。

    中国——とっくにクライシス、なのに崩壊しない“紅い帝国

      

    「秘密漏洩」の重要ポイント 誰が漏洩したか?

     「秘密漏洩」問題でトランプが国家の機密をロシアに漏らしたというのは事実上、根拠がありません。というのは米国の関係法規では、機密情報の気密度は司法省や国会が決めるわけではなく、行政部門のトップ、つまり大統領が判断し決定するものだからです。もし大統領がある情報を機密では無いと判断したら、それは機密ではなくなります。ですから、トランプ大統領は法律上、ある情報が他の国家の官僚と共有できるか否かを判断する権利を持っており、法律上は秘密を漏らしたと断罪されたりしないのです。

     法律上、トランプの「機密漏洩」が成立しないので、メディアは「秘密漏洩」問題を一ひねりして、存在しない違法性の問題を、道徳上の問題に置き換えています。トランプがロシアの外務大臣に、ISISの新たなテロ活動の手口を漏らしたことは、ロシア側がその情報源を探って、中東地区に潜伏している情報員の安全を危険にさらした、という話にしたわけですが、しかしこれは可能性に過ぎず、またこれによって大統領を弾劾することは出来ません。

     大変興味深い点は、本当に機密を漏洩したのは、実のところトランプではなく、これを報道した米国メディアだという点です。トランプとロシア外相の会談の際には、別に情報源を提供したわけではありません。メディアが「機密漏洩」説のために、自分たちが得た機密情報を公開したのです。つまりトランプが話した情報は、実はイスラエルからのものであった、ということをです。その上で、トランプがイスラエルの情報部門のスパイの身を危険にさらしたと責めたわけです。メディアは、まるで自分たちが、もしイスラエルのスパイが面倒に巻き込まれても、それは実際に情報源を漏らしたわけでは無いトランプの失策であって、故意にこの情報源の話を漏らした自分たちメディアのせいではないと思っているようです。

     実際、メディアがこうしたことをやるのは、自分たちが道徳上間違っていないかなどということには興味がなく、これによってイスラエル政府がトランプを非難して欲しいと願ってのことです。メディアの意図がどこにあれ、こうしたやり方はいささか汚いやり口です。滑稽だったのは、トランプを道徳的責任から解放するのを助けたのが、実際はイスラエル政府だということでした。トランプのイスラエル訪問時に、イスラエル政府は、この問題をトランプとの話し合いの席で持ち出すつもりはないと言ったのでした。実際、米国メディアもこの機密漏洩の道徳的な問題を引き続き追求したいとは思っていないでしょう。というのは「骨を切らせて皮を斬る」ような話になるのは明らかだからです。と言うわけで、「機密漏洩」事件は、まだ十分広がりを見せないうちに、もう雲散霧消してしまったと言えるでしょう。

       

    「ロシアと通じた」は、「選挙でグル」かどうかがキモ

    文字の上から見ると、「ロシアゲート」のポイントは、トランプ陣営がロシアの官僚と個人的に接触したことと、ロシアが”敵国”であるというのがポイントです。だから「敵に通じた」という疑いがある、ということになるわけです。この非難の問題点は、もしロシアが”敵”でなければ、「敵に通じた」話にはならないという点です。”敵国”には二種類あります。一つは双方の国家が戦争状態で、外交関係も断絶してしまった場合ですが、いったん戦争状態が終われば、互いに正常な外交関係に戻りますから、”敵国”ではなくなります。もう一つの「敵国」は、政治上米国を不倶戴天の敵とし、おおっぴらに米国を消滅させると公言している”敵対”国家です。これは主に冷戦時期に生まれました。ロシアを”敵国”と指弾すると言うのは、この冷戦時期の概念に沿った考え方で、ソ連が大量の核弾頭ミサイルを米国に照準してまた長い間、資本主義制度を覆し、全世界に共産主義制度を実現すると言っていたからです。しかし、もしこの考え方に沿っていけば、面倒な話になります。まず、現在、核ミサイルで米国に照準している共産党専制政権というのは一つしかありません。昔、「全世界の人民は団結して米帝国主義を打倒しよう」と言っていた国家です。しかし、ニクソン大統領がこの国を訪問したわけですが、これは「敵に通じた」ことになるのでしょうか? 次に、もし専制政治体制の中国に行ったことが「敵に通じた」ことにならない(米国ではニクソンに始まり歴代大統領もこの見方に賛成すると思いますが)、それなら、ロシアは現在、表面的には既に民主政体を取っています。民主政体の下で存在する数々の専制的な特徴を持つ国家は皆、敵国という話になってしまいます。これは、どうも無理があるでしょう。

     まさに、この「敵国説」が成立しないが故に、一部の米国メディアは「ロシアに通じた」問題を、事実上、「敵に通じた」ではなくて、ロシアが米国の大統領選挙に干渉し、それで民主党が負けたのだという話として非難しているのです。しかし、クレムリン、ホワイトハウス、選挙干渉というこの三角関係で、「ロシアゲート」事件を広めている人々の本当に打撃を与えたい相手は、ホワイトハウスのトランプです。クレムリンのプーチンではありません。もし、トランプが当選する前にロシアに、米国大統領選挙に干渉させたという事実を証明できなければ、「ロシアゲート」事件は、おおげさに言い立て過ぎです。と言うのは、ただ単に、ロシア政府とトランプ陣営が陰で接触していたというだけでは、大統領選挙と関連づけられません。また、ロシアが米国大統領選挙に関与したと非難するだけでは、これまたトランプ陣営が「大統領選挙に干渉した」ととも言えません。トランプ陣営とロシアの官僚がこっそり接触したというだけでは、もともと「敵に通じた」というような話にはならないのです。

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     去年の米大統領選挙では、「ウィキリークス」がヒラリー陣営のメールを大量に暴露して、その中にはヒラリーに不利な話もありました。しかし、米国のメディアはこうした情報の真偽を論議しようとしませんでした。逆にロシアの情報部門がヒラリー陣営のサーバーに侵入して、こうした情報を盗んだことを非難したのでした。しかし、ロシアの情報部門がそうした行動をしたということ自体は、それがトランプ陣営の差し金だったという証明にはなりません。もし、よほど確かな証拠がなければ、ロシア情報部門が情報を盗んだという話を、トランプとロシア政府が大統領選挙にグルになって関与したという効果的な非難にするのは難しいでしょう。ですから、「ロシアゲート」のポイントは、トランプ陣営がロシアの官僚と密かに接触したかどうかではなく、こうした接触は、米国大統領選挙に関与を図ろうとするものだったのかどうか、という証明がポイントになるわけです。明らかに、後者を実証するのは、現在始まった「ロシアゲート」調査が、果たして十分信頼出来る証拠を提供できるかですが、その点、大いに疑問です。今まで、「ロシアとグルになって選挙にどうたら」という話は、推理の上に建てられた一種の仮説にすぎません。もし特別検察官の調査がこの仮説を実証できなければ、「ロシアゲート」という非難もオジャンになります。

     ★弾劾は困難。では狙いはどこに?

     「ロシアゲート」の調査結果がどうあれ、もし国会議員がトランプを弾劾したいと願ったなら、トランプを引きずり降ろせるでしょうか? 米国憲法では、もし半数以上の下院議員が投票して、大統領が「反逆罪」、「収賄罪」あるいは他の深刻な犯罪行為や、だらしない行為があった場合は弾劾手続き(大統領の起訴に相当)を開始できます。そして、上院での審議の結果、大統領が有罪かどうかを投票で決定します。20世紀の初め以来、米国の下院が弾劾に成功した唯一の大統領はクリントンで、理由は司法の公正を妨げた罪でしたが、当時は民主党が多数を占めていた乗員は、無罪と認定しました。

     もしトランプを弾劾するのなら、理由は「国家に背き、司法の公正を妨害した」です。しかし後半部分には、前提があります。それはトランプがロシアとグルになって大統領選挙に干渉して、FBIの「ロシアゲート」の調査をストップさせる動機があったから、「司法の公正」の妨害になるのです。ですから、主要な理由は、やはり「ロシアとグルになって大統領選挙に干渉した」であって、それが「国家反逆罪」につながります。もし、この説が不成立ですと、司法の公正の妨害の方も、単独で犯罪とはなりにくいのです。いわゆる反逆罪は、具体的な規定はありませんから、議員は法律的な角度からでも、自分たちの政治的な希望からも好きに解釈はできます。しかしながら、もし法的なレベルでの確かな証拠が無いまま、ただトランプに反対する議員が自分の勝手な想像と解釈でやろうとしたら、おそらく弾劾成功は望めません。そして「ロシアゲート」問題では、ロシア政府が出てきて、トランプとグルになって大統領選挙に干渉した行動を証明しない限り、トランプ陣営のメンバーからだけでは、確かな証拠を探し出すのは大変難しいでしょう。というのは、「実際に関与」したという鍵は、トランプ陣営ではなく、ロシアにあるのです。そうなると、ロシア政府が、「自分は確かにトランプの意を受けて行動し、その目的は米国大統領選挙に干渉することであった」と、しかと証明しなければならないことになります。が、しかし、そんな「自傷行為」をロシア側するのは、まずありえないでしょう。で、ロシアが協力しなければ、いわゆる「トランプがロシアとグル」になって「大統領選挙に干渉した」という二つの非難をもって、トランプ弾劾を果たそうとしても、法律的に依って立つ「因果関係」が成立しません。そして、ロシア側からの「因果関係」の固い証拠がなければ、トランプへの非難は、確かな事実によって支えられようもない、憶測なのです。ただの憶測だけに頼っていては、弾劾は成功しません。ましてや、米国議会は上下院ともに共和党が握っていて、共和党議員たちも反対党のいうままに一緒に踊ったりはしますまい。

     弾劾がかくも困難なのに、なぜメディアと民主党は依然として「ロシアゲート」、「機密漏洩」、「録音問題」とその背後の「弾劾」に熱を上げているのでしょうか? 実は、意図は別のところにあります。本当にトランプ打倒するというのが、決して簡単ではないことは、関わる人々は十分承知しています。その真の目的は、あらゆる機会を捉えて、トランプの顔に泥を塗り、あれこれ奔命に疲れさせて、トランプのイメージを落として、来年の中間選挙に影響を与え、民主党が国会の多数派奪回を果たそうというのです。トランプは、これまで政治や行政の業界内にいたことはありません。その業界外の人が大統領になってしまって、多くのこれまでの古い既得権グループの陋習を打破する可能性がありました。しかし、業界外の素人は簡単に間違いを犯します。これは、古手のクロウトから見たら、明らかに幼稚で不慣れであり、大きな欠点に見えます。しかし、それこそが業界外の人々から見れば変革の希望です。もしトランプが職業政治家のように”フレキシブルな”人物であれば、「プロの世界」の「おいしいミルク」(*既得権益)に触れてしまう政策など提案しなかったでしょう。こうして攻撃されて、トランプもいかなる重大な政策の変化も、ただある程度の民意の支持だけでは全く不十分だ、と思い知ることでしょう。現在のところ、トランプ大統領の「学習塾」はまだ卒業には至らないように思えます。
     
     ホワイトハウス上空の黒雲、雷鳴……変革は簡単ではありません。そして古今東西、それは変わらないのです。(終わり)

     これは作者の個人的な見方です。

     拙訳御免。原文は;白宫上空的乌云
    《中国人权双周刊》(第209期,2017年5月12日—5月25日)

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