• ★「郭文貴のツイッター革命」の意味を考える★ 2017年6月4日

    by  • June 4, 2017 • 日文文章 • 0 Comments

    今年は天安門(六四)事件の28周年ですが、ツイッター上ではまさに「郭文貴のツイッター革命」が進行中です。これは私が2014年に書いた「1989天安門運動は再びおきるか?ー6・4事件25周年に冷静に振り返ってー」(2014-06-13)で申し上げた、「現段階で、中国人の政治認識は深刻に分裂しており、1989年の天安門運動のような共通した要求を持てない。だからあのような何カ月も続く抗議運動が出現するのは不可能だ」という分析が正しかったことを裏付けています。しかし、今年の1月から始まった「郭文貴のツイッター革命」には、中国の未来の革命が持つであろう数々のメタファーが含まれています。郭文貴ファンたちは、この革命に様々な枝葉をつけており、これは今後の中国革命の予告編です。当然ながら前提としては、そんな革命が起こる、とすればの話ですが。

    中国——とっくにクライシス、なのに崩壊しない“紅い帝国

     「郭文貴のツイッター革命」という言葉は、去年、アメリカの大統領選挙に現れた「トランプ現象」とにたような状況で、社会現象であり、郭文貴本人とはもう無関係です。

     

    「郭文貴のツイッター革命」—ファンは「誤解」のフリ

     2017年1月から米国をベースとするツイッターの中国語圏内での、奇々怪々な「郭文貴のツイッター革命」が始まりました。始めた郭文貴は、自分は国家安全部に選ばれた特命を帯びたビジネスマンであり、バックは前の国家安全部副部長の馬建とそのボスであると自称しています(ボスは江沢民時代の最有力者だった政治家・曽慶紅だと見られています)。馬建が権力闘争で失脚し、郭文貴は海外逃亡し、2年間の沈黙の末、突然、海外中国語ネットの明鏡ネットのビデオ取材を受け、「命と財産と、敵討ちのために」として、「腹黒い動機で反腐敗キャンペーンを利用している奴ら」の秘密をバラす、と称する活動を開始しました。これは海外の大量の、民権運動家と中国の”ネット上の革命党”たちを喜ばせました。ツイ友の中には、中共政権成立後、多くの反対者が次々に倒れていった事実さえ無視して、なんと郭文貴を「100年もの中国人民の屍と骨で作られた邪悪な、趙州橋の礎石けんりょくのかなめいしをひっくり返す最初の人」だとか、様々な力を発揮してくれるだろうとか言い出す有り様です。(趙州橋=中国の古代に作られた今も健在な名橋)

     郭文貴の「暴露材料」の真偽と信頼度合いに関しては、ニューヨーク・タイムズの「郭文貴—中国に譲歩を迫る亡命者」という才德、艾莎が書いた記事に詳しいです。この記事が「郭文貴のツイッター革命」を郭が始めてからの、西側のメディアのニュース原則である「ダブルチェック」をちゃんとしている報道です。

     しかし、「暴露材料」の真偽はどうも「郭文貴のツイッター革命」の進行には、別に影響しないようです。事実上、郭文貴は明鏡の最初のインタビューから、自分自身の「暴露材料」に関しては、例えば「命と財産を守り、仇を討つため」と正直に話しており、「憲政民主」などとは言いもしませんし、中共の指導層を攻撃するにしても、王岐山(中央政治局常務委員)、傅政華(公安部常務副部長)、孟建柱(中央政法委員会書記)に限っています。数百万人の反腐敗キャンペーンで失脚した「被害を受けた官僚」に代わって「正義を広く主張する」とは言いますが、習近平総書記のことは、えらく持ち上げています。その主張の目的も、北京の反応を見て、しばしば調整しているようで、どうも郭ファンの人々が喜んでいる「中共に挑戦」という感じより、北京と交渉する際のトランプゲームゲームの継続のコールのような感じがします。郭は更に、自分は「前のボス」と「そのまたボス」と今も、すごく親密な関係だと隠そうともしていません。

     以上のいろいろな説明は、郭文貴が中国人民を民主や憲政に向って指導するという予言は、つまりファンたちが勝手に郭の上に着せた「虹の衣装」のようなもので、昔、趙匡胤に部下たちが勝手に黄龍袍皇帝の服を着せたようなもので、本人が求めたものではありません。

     こうした故意に誤解する、というのは完全に中国のむちゃくちゃな政治の一種の反映です。1990年代中期から、中共当局は一切の政策転換を”改革”だと称してきました。たとえそれが、完全に改革初期の改革の定義(権利を人民に解放する)と反対のことで、人民の権利を剥奪し、各種の手練手管で人民のお金を巻き上げ、階級を固定し、利益構造の固定するようなものでも”改革”と呼んだものです。こうした希望がもてない状態の下で、民衆は変化に飢えており、このため一切の変化、統治者内部の内輪揉めから引き起こされた政治的変動まで、民主化と関係付けてしまうようになったのです。

    つまり、郭文貴がツイッター革命のリーダーとなったのは、完全に”ネット上の革命党”が長年、リーダーを探し求めていた結果なのです。私は以前、「”革命”の靴音は半分しか聞こえない(1)」(2015年6月28日)、”革命”の靴音は半分しか聞こえない…?⑵ (2015年7月6日) やその他の文章で書きましたが、革命的群衆はとっくに大量に存在していて、いまそのリーダーを求めています。今回の政治的ハプニングは、少数の中国人には分かりましょうが、外国人にはなんのことか分からないでしょう。

     

    専制独裁体制は「郭文貴のツイッター革命」の温床

     今回の「郭文貴のツイッター革命」の参加者の特徴としては

     (1) 中共政権、官僚階級、金持ちに対して、社会的な怒りや怨念に満ち満ちており、少数の人々はこの恨みを体制内人士すべてに広げようとしている。
     (2)変化を求める気持ちがあまりにも強く、どんな方向に向かうかなどは御構い無し。だから、「郭文貴のツイッター革命」の「命とお金と、敵討ち」という点は見て見ぬ振りをして、郭の習近平礼賛は、きっと一種の戦術に違いないとか決めつけます。郭文貴とその”ボス”は、ただ中共の劣勢にある勢力の代表に過ぎないのに、これを正義の味方であると見なし、郭文貴がネット動画で話している内容がどうブレようが、自分たちの気に入るところだけを見ているのです。

     この点、第三の波の民主化の訴えとは違います。第三の波の民主化の主要な訴えは政治的権利でした。「郭文貴のツイッター革命」は、中国の底辺層知識青年の要求する「経済権利」を含んでいますが、しかしこれは中東や北アフリカの失業青年の、就職する権利の要求ではありません。

     全ての郭文貴ファンが皆、富の分配を革命のメインテーマにすべきだと思っているわけではないことを、ちゃんと指摘しておきます。ネットの@Zodiac4698は、「富の分配ではなく、権力の分配なのだ。共産主義運動は最初の富の分配を通じて、デタラメを実現し、人間性の邪悪な面を刺激して、その後、2度目の富の分配で公有制と、完全な専制を実現し、多くの人間を奴隷に追いやった。”富の分配”というのは煙幕であり嘘の看板で、権力の奪取こそが目的なんだ」、「もし誰かが、自分たちの革命の目的は、富を再分配することだ、つまり他人の財産を奪って、そいつを殺す、それが革命だ、なんて言ったら絶対信じてはダメだ。それは民主革命とは無縁。民主革命の最大の歴史的経験は権力の分配を革命の目標にした、民権の革命なんだ!喚起すべきは、財産を持つ人間の社会的にフツーに分かってもらえる気持ちなんだ!」と書いています。

     しかし、郭文貴ファンの中に、こんなふうに分かっている人は多くはありません。誰かが、中国中にそんな人たちは1万人以下だろうとか言いましたが、私は1万人ということはないと思うますが、でも多くはないでしょう。”ツイッター革命党”の主流の傾向をみると、こうした底辺層知識青年を主とする”ネット革命党”を分析することは、中国の未来の変動の内容と方向を理解するために大変必要なことだと思います。

     革命には、リーダー、経費、組織、目標などが必要です。”ネット上の革命党”は、目標はもう既にあります。つまり中共を倒すことです。郭は、それ以外の3つを持っている、と”ネット上の革命党”は想像します。郭文貴は社会の底辺出身だから、暗い底辺社会のメンバーの心を分かっており、この階層への動員力を持っている。彼が成功した要素、秘密に包まれた国家安全部のバックアップ、裸一貫から起業家として得た巨額の富、有名人として必要な外見の良さと弁舌の才能、更に自分で必要なさまざまな経費は払う、と述べていることなどが、革命的群衆の想像力を大満足させるのです。ツイッター界では、数年前、艾さん信仰がありましたが、艾未未がリーダーの地位から下りてしまってからは、ツイッターには、「神」の座がずっと空位状態でしたから、現在、「天から郭文貴が降ってきた」(何頻語録)で、すいすいと「ツイッター革命」のリーダーになってしまったのです。(何頻は明鏡報道グループの設立者)

     「郭文貴ツイッター革命」の主体は、”ネット上革命党”です。大真面目で自分たちの心の中の未来革命を夢見ており、決して悪ふざけの類いではありません。彼らは、確かに郭文貴の「暴露資料」が中共の内紛を引き起こし、ひいてはそれが軍事的クーデターに発展して、現政権が覆るのを望んでいる人までいます。こうなると、もう言い出しっぺの郭文貴とは完全に無関係です。

     膨大な”ネット革命党”はどうして生まれたか? 当然、それは中共の専制独裁体制の産物です。この再生は、世界で最も深刻な富の不公平な分配を生み出し、世界最大の兆万長者の大群を生み出すと同時に、人口の約8割を占める社会底辺層を作り出しました。社会メンバーのチャンスの深刻な不公平だけでなく、紅色権力貴族が社会の大多数のリソースとチャンスを独占し、政府は結果の不公平などに見向きもしません。それどころか、司法の懲罰機構ですら極めて不公平で、「反腐敗キャンペーン」も、紅色貴族の家族と現任の政治局常務委員には及ばないという鉄則があります。こうした三重の不公平は、これまでもたくさん書いてきたのですが、そのうちまた改めて書きましょう。

     

    「郭文貴ツイッター革命」の中国メタファー

     「郭文貴ツイッター革命」が盛り上がって、海外の民主主義運動の大物たちも、次々に支持を表明しました。楊建利はおおいに褒め上げ、ハナマル評価をつけて注目されました。しかし、今回のこの「ツィッター革命」は、つまりこれまで申し上げてきたように、中共というコインの裏面にと表の面の戦いに過ぎません。A面は習近平・王岐山など、朝廷を代表する勢力で、B面が郭文貴と元のボス、です。郭文貴もこれまで自分が、しょっちゅう元のボスと話をしていることを否定していません。つまり、元のボスの指示と決定で闘争戦略を受けていることを暗示しています。ですから、郭文貴ファンが何か事が起きてほしいと願ったところで、元のボスと習近平の間の闘争ですから、中共の権力闘争の論理でしか解決しない話なのです。

     5月には中国でいくつかの大事件がありました。一つは、軍が退役軍人の転職を急いで行うと宣言したことです。二つ目は、中共が中国の情報システムをリストラして、中共中央特別行動科(政治防衛スパイ機関)という中国の影の組織の90周年記念大会を北京で挙行したことです。中共が作った情報機関システムの元老とその後継、つまりスパイの初代、二代目の代表が参加したのでした。これは中共が政権を奪ってから初めての会議で、参加者は次々に習近平支持を表明しました。この二つの動きは重大なサインです。というのは習近平は、権力集中の過程の中で、軍隊を掌握するのに苦労しており、情報スパイ系統はずっとこれまで曽慶紅の天下でした。これに続いて、中国政府が公表した情報によると、米国は中国に対して、刑事犯罪の容疑者である朱某を引き渡すという話で、これは疑いなく、米国と中国が引き渡し協議で協力しているということです。

     こうしたことに対する郭文貴側の反応は、6月1日のビデオの中に現れていました。見た人の中には、「郭文貴は習近平の朝廷に懐柔された」と形容しましたが、郭文貴本人は否定して、それは五毛の悪口だ、と言い返しました。しかし、鋭い人は戦略が転換したことを見て取ったでしょう。

    LifeTime视界@lifetimeusaは、6月1日にツイットでこう書いていました。
     ;「外部からは郭文貴と中共の戦いは分かりにくいよね。連中の戦いは見かけはすごいみたいに見えるけど、でもコミュニケーションはお互いにツーカー。だって、論理が完全に同じなんだもの」。そして、「今日、郭文貴に中国を変えて欲しいと思っている人はきっといやでもイタい教訓を得ただろうな。そんな人はいないだろうけど」と書いています。でも私は「そんな人たち」が、いることを知っています。それも少なくありません。ツイッタラーの中では、ずっと頭のクールな小悲@Zodiac4698も、自分で「きっと郭文貴の路線が中国を民主的にモデルチェンジする役に立つと思うから、支持する」と言っています。その他の有名人の同様の言葉はまだまだありましたが、いちいち挙げません。

     中共は、「郭ツイッター革命」を通じて、少なくとも「国内の底・中階層には、中共政権と関連利益集団に対して、既に和解は不可能なほどの恨みを抱いていること、短期に急激な変化を求める気持ち、がすごく強いことを知るべきでしょう。中共の力が強大な現時点では抑えつけられるでしょうが、歴史は、いかなる政権も永久に、こうした力を抑えつけ続けることは不可能だと証明しています。

     以上分析したように、私は、「郭文貴ツイッター革命」を一種の政治的なドタバタ劇だと見るよりは、中国政治を観察する一つの窓口だと思っています。郭文貴は、今後いつかは「郭文貴ツイッター革命」から退場するでしょうが、”ネット上革命党”は存続し続けます。今、このグループ層が「郭文貴ツイッター革命」で見せた特徴は、将来、ある一定程度、中国の未来を形作ることでしょう。(終わり)

    当Webサイト連載のブログ集の改訳;日中両文収録 
    「中国2015 何清漣」Amazon電子ブック発売中。
     何清漣さんの「中国2015」表紙
    「中国2016 何清漣」近刊予定。

    原文は;“郭氏推特革命”对中国革命的隐喻

    Leave a Reply

    Your email address will not be published. Required fields are marked *