• ★「金融界粛正」から「経済政変防止」へ  2017年6月22日

    by  • June 22, 2017 • 日文文章 • 0 Comments

     中国の政治経済用語で、「金融界粛正」(*金融整顿)はよく見かける言葉で、ちょいちょい登場します。ただ「粛正」される対象が異なるだけです。しかし、「経済政変」という言葉は、2015年の中国株式市場の大暴落後に出現した、もっぱら中国の資本市場で、「雲を呼び雨を降らせる」ほどの巨大な力を振るう資本界の大鰐に対する新語です。その大鰐たちの名簿は内部がしっかり握っていて、外部からは誰のことかをうかがうことはできません。ここでは、資本市場の勇敢な波乗り男たちの今昔と、今年になってなぜ、金融界粛正が、経済政変防止に変わったのかを整理して見てみましょう。

     

    金融界粛正の最中に

     新たな「金融界大整理」は今、進行中です。今年の2月から、まず、資本市場の大鰐にして「スーパー白手袋」の蕭建華が捕まりました。(何清漣 ★スーパー白手袋マン・蕭建華失踪への推理★ 2017年2月9日 )
    、引き続いて3月には、「金融界大粛正」の話が流され、5月に監督措置が公表され、つい最近には、鄧小平の孫娘の夫だった呉小暉(★安邦保険・呉小暉は「鄧一族メンバー」で居られるか?★2017年5月8日)が捕まり、「粛正の網」は次第に絞られてきました。(「白手袋」=他人のために、汚い仕事を代わってやる、の意味)

     中国で働いたことのある”ガイジン”によると、中国の実業界というのは、「誰もがみな、首輪と引き綱でつながれた犬みたいなもんだ」だそうで、なかなかうまい表現です。しかし細かく見ると、犬たちの境遇には大きな違いがあります。犬の引き綱の締め加減です。ある犬はそんなにキツくなく、ある犬はキツめとか。二つ目には、江沢民、胡錦濤、習近平の三人の総書記時代でもだいぶ違います。江沢民時代には、実業家たちは生産力の代表として、共産党に入れられました。胡錦濤時代には地位はあまり高く無かったけれども、引き綱は無いも同然でした。習近平時代になって引き締められ、金融界は大粛正されました。犬の首輪の引き綱が締め上げられたのもその一つです。
    中国——とっくにクライシス、なのに崩壊しない“紅い帝国

     米国では、政府は金融界を監督管理するのが主で、2008年のリーマンショック時のような、政府の介入による再編は比較的珍しいことです。しかし中国では、米国と違って、完全にシステムが政府の権力頼りです。中国の金融業界が、お金をもうけるのは、経営者の危険、収益、市場情報の分析などによるものではなく、レバレッジ(テコ。持ち金をタネ銭に、借金して最大限に利用する方法)情報の非対称性(*一般投資家と天地の開きの情報量)と市場操作によって利潤を稼ぐのです。

     いわゆる「レバレッジ」と言うのは、つまり銀行から資金をゲットして、特に低利息の資金を獲得する能力で、これが金融界の投資利益が、はるかに他の業界を超える決定的な要素です。中国の金融業界は、厳しくコントロールされており、レバレッジも、緩くなったり、締まったりします。ですから、中国金融の「資金レバレッジ」の質とは、「権力のテコ」の力具合で決まります。もし権力が十分に強ければ、情報を得ることによって、真っ先にチャンス(金融市場、とりわけ証券市場では、売買の時期が生死を分けます)を獲得して機先を制することができますし、また優良な(利息の低い)借り入れを行えます。ですから、権力のテコさえあれば、金融の収益は、もう幾何級数的に増加し、資源をブラックホールのように引き寄せることが可能で、不断に社会の富(他人の)財産を呑み込んでいけるのです。これが、中国の株式市場の内幕情報利用して売買することによって、巨額の利益を可能にし、その追随者たちが株価の下落によって、含み損を抱えて売るに売れなくなったりする理由です。

     今、金融大整理の対象になるのは、当然こうした「権力のテコ」を使って、資本マーケットで自由自在に「雲を起こし雨を降らせる」ような力を持った資本の大鰐たちです。

     

    「紅組」から、「白組」大鰐へ

     中国の金融市場は誕生したその日から、権力と同盟関係です。この市場は、朱鎔基時代の改革から生まれ、温家宝首相が国務院を握っていた時期に成熟し、一部の紅色家族の二代目、三代目が、自らの地位を利用して、とてつもない巨大な存在になりおおせました。2010年3月29日の英 フィナンシャル・タイムズの「お金のために生まれた太子党」(为钱而生的太子党)には、中国の第三代指導者の子供達が、次々に金融業界の秘密の奥座敷に入り込み、そこには中共の新旧常務委員の子供達の名前と企業が、ずらりと並んでいることが報じられました。彼ら、第三代テクノクラート指導者の子供達は、新太子党勃興への道路を舗装したのだ、と言われました。記事は更に、老太子党(毛沢東について中共建設に加わった開国元老たち)の子孫らは、新太子党に対して不満で、朱鎔基や温家宝の子らについて、「紅色家庭の国家統治は、自分たちの私利のためで、あれらの行為は、その他の太子党の皆に、”ゴーサイン”を出して、自分たちもおお金儲けしてやろう、それが政府の印象をどう傷つけようが構わない、という印象を与えたと感じている」とあります。特殊な経済体制と、環境の作用のおかげで、中国金融業は、他の国々よりはるかに自分の欲望の思うままに振る舞えることは、中国の現実が証明しています。2016年の例だけでも、中国の金融業界の価値増加分はGDPの8.4%を占め、世界一の金融強国の米国を超えているのです。

    中国共産党第十八次全国代表大会をめぐる激烈な権力闘争は、ついに中共のハイレベルの、新旧常務委員を含む100人の紅色共産貴族階級の財産を明るみに暴露して、天下に知らしめました。「中国オフショア金融レポートの秘密」と、ニューヨーク・タイムズの2010年の数回にわたる重量級のスクープ報道は、紅色貴族達を、歴史の上に、永遠の恥をさらすように磔にしたわけです。
    (参考 : 何清漣 世界に「盗賊型政権」を認識させた「中国オフショア金融報告」の意義 2014年1月28日)
     習近平の圧力の下で、習近平の姉夫婦や、朱雲来(朱鎔基の子)、温雲松(温家宝の子)らはみな相次いで、金融ビジネス界から引退しました。そこで中国の金融界には、蕭建華ら「白手袋マン」が誕生し、その天下になったのでした。紅色貴族階級が引退して行ったとは反対に、蕭建華の「明天系」は、わずか十数年の間に、ダミー企業をどんどん登記して、資本参加.株式所有の形を通じて、何十という上場企業を支配し、金融資本帝国を作り上げ、その資産規模は兆の桁に及びました。ニューヨーク・タイムズ紙が2014年6月4日に掲載した、「天安門事件で運命を変えたビジネスマン・蕭建華」は、重要な参考データを与えてくれます。それは、蕭建華が、「ダミー企業」を投資ツールとして利用して、真の株主の身分を隠蔽する投資を行っていた、というもので、それで「スーパー白手袋」と呼ばれるようになったというのです。今年の新たな一連の金融界粛正以前、蕭建華は香港で失踪、密かに北京に連行されました。新旧の太子党は前後してビジネス界から手を引きました。しかし、(*6月13日に”被帯走調査”されたと言われる安邦集団CEO、鄧小平の孫娘・鄧卓芮の婿だった)呉小暉はこの逆境を大発展のチャンスと捉え、2004年に設立された「安邦保険」は、わずか13年の短期間で、グローバルな保険会社として、総資産約1.971兆人民元になり、銀行、金融不動産、証券、ファンドなどの営業許可を懐にして、金融多角化の積極行動派になりました。呉小暉の身分はかなり特殊で、結婚によって「鄧一族メンバー」に成り上がったのでした。しかし、彼が果たして「白手袋」かどうかは、現在までの報道では言及されていません。

      

    シャドーバンクが中国金融界をかき回す

     近年、金融業関係の営業許可の制限が次第に緩和されるにつれて、「国営大企業によるもの」「地方政府によるもの」「民営企業によるもの」「ネット関連のもの」の「混業経営(Mixed Operation management)」が「馬場を勇んで駆け回っている」状態です。金融混業経営、産業資本と金融資本の結合が重大な趨勢となっています。

     現在、全国には少なくとも25社の「持ち株会社」が生まれています。上記の持株会社4種が、今や、銀行を使って「天下を争って」いるのが、「シャドーバックシステム」と言われ、関係する業界は、銀行、金融不動産、保険、証券、ファンド、先物などの分野です。中国銀行(央行)、中国証券監督管理委員会、中国保険監督管理委員会、中国銀行業監督管理委員会は、俗に「一行三会」と言われる監査監督管理組織ですが、混業経営になると、業界監視にもどうしても隙間・抜け道が生まれます。近年発行された各種の理財商品が、中国金融に多くの地雷を埋め込んでしまいました。国際通貨基金(IMF)によると、中国のシャドーバンクシステムは、2008年以後、急速に発展しました。中国が途方もない量の通貨を発行したために、社会に大量の融資・貸付金の需要が生まれ、伝統的な銀行では到底この金融需要を担いきれなくなってしまい、ノンバンクによる金融が大挙して介入し始めたのです。2008年以後、シャドーバンクの業務は3倍以上に増え、社会における金融の半ば以上を占め、伝統的な銀行の貸し金を超えてしまっています。中国当局が、金融を粛正する決心を迫られたのは、主に、民生銀行の30億円のニセ理財商品事件と、国海証券の「芋版偽造事件」でした(*共に、最近の偽造印章によるニセ証券事件)。中国政府が、高々と、金融のレバレッジをやめると宣言している時に、突然、レバレッジが最も盛んに行われているのは、まさに正規金融システム以外の、監督管理が困難なシャドーバンクシステムだったわけです。そして、このシャドーバンクシステムは、正規金融システムが、養い育ててきたものでもありました。

    当Webサイト連載のブログ集改訳;日中両文収録 
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     何清漣さんの「中国2015」表紙
    「中国2016 何清漣」近刊予定。

     借金だらけで、ボロボロの金融システムに直面した、習近平は、今年4月25日に政治局の集団学習で「国家金融の安全」を取り上げた時に、「金融は国家の安全の重要な構成部分であり、金融危機に対しては高度のコントロールを重視すべき」だとして、一層はっきり「中共による金融管理」の方針を打ち出したのです。当時の分析でも、これは実際に金融危機を防ぐコントロールを、前代未聞のハイレベルまで引き上げることだと言われていました。

     今、中国金融システムは、「権力のレバレッジ」に牽引されて動いています。いわゆる「党が金融を管理する」というのは、権力によるレバレッジをコントロールすること、のように思えますが、しかし、中国のこの数十年の経済を見てみると、実際の操作を行うと、しばしば「緩めたらめちゃめちゃ。引き締めたら死んでしまう」であり、金融システムはなお更そうなのです。この3カ月来の、さみだれ式の金融粛正はどうもあまり成果が上がっていませんで、6月20日、周小川中央銀行総裁は、陆家嘴金融フォーラムの席上、強硬な言葉で、「ハイレバレッジ、低資本、不良貸付金などの現象に寛容であってはならない。もし金融が不安定になれば大変なことになる」、と言いました。中国の「一行三会」のトップたちも、一斉に声をあげ、レバレッジをやめるようシグナルを送る発言しました。

     ただ、どうも変なのは、中共の「喉と舌」の役割を果たしている香港の「経済日報」が、これに対して、「中国に株価暴落が起きるのは、分析の結果、一般にその背後には外国勢力の中国空売りが存在する可能性がある」とか「あるいは、中国国内の大鰐か貴顕貴族が、チャンスと見て経済および政治利益を得ようとし、あまつさえ、『経済政変』を起こさせようとしている」と書いていることです。中国のシャドーバンクシステムという、長年にわたって作り出された各種の時限爆弾を「経済政変」だと総括しているのです。

     この(*これがどちらかという)問題は避けて通れません。「党が金融を管理する」にしたところで、性格の異なった問題には、異なった対処の仕方が必要です。金融システムを粛正するのは一連のテクニカルな方法ですし、「経済政変」を処理するのにもまた別の方法が必要です。中国共産党第19回全国代表大会をこの秋に控えて、北京は様々なチャレンジに直面しています。軍備縮小や、情報・諜報系統(*政敵の曽慶紅の息がかかっていると言われる)の粛正、海外世論にまで手を借りた内部権力闘争(*郭文貴のVOA事件など)など、頭の痛いことがいっぱいです。政権の命脈がかかった金融界の粛正を、「一行三会」のプロの考え方でやるのか、それとも、「経済政変」という考え方でやるのか、これは決して小さな問題ではありません。(終わり)

     拙訳御免

     原文は;从“金融整顿”到“防经济政变”

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