• 超富豪・王健林の「核の傘」はなぜ役立たずに?  2017年7月24日

    by  • July 24, 2017 • 日文文章 • 0 Comments

    (訳注 :アジアナンバー1の富豪で、ハリウッドや欧州サッカークラブを買収しまくってきた王健林・大連万達集団=ワンダ・グループ=会長が、このほど”悔い改め”、今後は国家の呼びかけに応え、中国国内投資を重点とする、と”恭順の意”を表したその背景。)

     今回、王建林が、中共に睨まれたことでは、多くの人が仰天しました。が、実のところ、金融動静にちゃんと目配りしていれば、中央銀行高官は、早くから警告を発していたのです。今年の3月10、中央銀行総裁の周小川は、国務院の記者会見の席上、こう言いました。

      : 国境を超えた対外直接投資は、流行に乗って、加熱して、盲目的現象となっており、量的にも大変なスピードで伸びているが、スポーツや娯楽、クラブ経営への対外投資は、国家にとって良いところはない。故に、政策的指導が必要だ。

     これは大変強い警告でした。というのは、海外企業買収に熱中している多くの中国の超級大富豪たちの中で、王建林の投資だけが、サッカーチームやハリウッド、クラブ経営、豪邸買収などの分野に集中していたからです。

     ★それでも王建林は警告を無視した

     周小川のこの談話後、王建林の海外娯楽産業への投資はストップをかけられたわけですが、しかし、臨機応変の才溢れ、かつ風読みの達人の大富豪・王建林は、止めることなく、ますます力を入れて、投資資金を海外につぎ込み続けました。「南風の窓」ネット(広州)は、今年の万達は、中部のある省の商業銀行を通じて、万達グループのために、4億人民元の国外融資担保業務に応じ、6月分だけでも、万達は、ある商業銀行を通じて、1.5億元の国内保証付の海外貸出を行った、と報じました。

     王建林が、中央銀行総裁の周小川の警告を無視して、中国国内から海外へ資金移転し、金融機関もそのために便宜を計らったのは、当然、王建林の背後には、しっかりした後ろ盾がおり、それも一つどころではなかったからです。王建林について、長年にわたり調査報道を行ってきたニューヨーク・タイムズ紙のMike Forsythe( 傅才德)記者は、「万達帝国王建林 : 悠々とビジネスと政治エリートを遊弋」(2015年4月28日)の中で、「万達と中共高官の相関図」(万达股东与中共高官的关系链)を掲載し、そこには、新旧3期にわたる中共常務委員の家族は、ほどんど全て登場します。また、彼自身も各種の政府からの勲章と栄誉を与えられており、こうした栄誉は、地方の役人や潜在的なビジネスパートナーに対する、「大変深いバックがついている」という意味のサインを送っているのだ、としています。

     王建林の面倒事が起きたのは、ここ数年、中共ハイレベル政界はガラガラポンのシーパイ時期だったことです。外の政界からみると、「湯気の中の出来事」みたいなはっきりしない話ですが、しかし、結果を見れば一目瞭然です。2017年7月17日から始まって、CCTV(中国中央電視台)では、連続10回にわたる「改革派徹底的に」を放映しました。その第一回、「時代の問いかけ」では、もっぱら習近平が改革を進化させるテーマで、鄧小平との継承関係に焦点が当てられました。中共大18回3中全会以来の、全面改革深化の一連の動きにポイントを置いて、「中国が正しい方向に歩んでいる」ことを、集中回顧したものです。そこでは、習近平が大18回大会で中共中央の総書記になったのを、「重要な歴史の時であった」というナレーションから始まります。多維ニュースは、敏感にこの動きを捉えて、「時代の問いかけ — 江・胡は欠席、中共は初めて、毛沢東 — 鄧小平 — 習近平が新時代を作った」としました。しかし「今や、政府メディアの公開支持のもとに、毛、鄧、習新時代は、既に事実となった」と言ったのは、あべこべで、これは現在の指導部が「新時代」だと世の中に知らしめるために、CCTVがその命令を受けてやってるわけです。第三回では、はっきりと「九竜の治水」と言われた江沢民・胡錦濤時期の集団指導制の欠陥を批判しています。

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     ★金融の”治安維持”が政権最重要事項

     ここ数年の間、習近平は、前の王朝の”元老たちの白手袋”(政治家に代わってマネーロンダリングなどを行う影の汚れ役ビジネスマン)たちのメンツを立ててきました。それは、一つには元老達に、憚るところがあり、またそう出来る情勢にまだなかったので、動けなかったこと。二つには、「白手袋」たちのやってることが、まだ、現王朝に対してはっきりとした脅威とはなっていなかったからでした。しかし、今年の情勢は今までと違います。習近平の、前王朝時代に対する我慢は既に臨界点を越えました。

     「新たな一時代を劃する」、というのは中共政治文化においては、大変なことなのです。江沢民・胡錦濤という二人の総書記の時代の存在の正当性を否定するに等しいのです。それをあえてやる、ということになれば、当然、王建林の後ろ盾、だってもう盾ではいられません。更に重要なことは、中国政府は、去年から「3兆元の外貨準備目標」の「治安維持」をやりぬくことにしており、それが、今年1月からの「金融・通貨の全面的治安維持」になり、「経済クーデターの防止」という言い方まで登場しているのです。こうした状況下で、王建林が投資名義で大量に、国外に資産移転したのは、中共中央に挑戦しているに等しく、あまりも「あけっぴろげにやり過ぎた」ということです。

     ★王建林は二つの弱みがあった

     一つは、王建林の企業負債率が高過ぎたことです。2016年末までに、万達不動産の貨幣資金は1002億元で、総資産は7511億元、負債合計は5278億元で、資産対負債率は7割でした。そのうち、短期負債が12億元で、一年内に返済期日を迎える非流動性負債は223億元です。長期負債と期日を迎える債券は、それぞれ1183億元と817億元です。万達では、2016年末の短期負債額は、資本コストを比較的安い債券や中期手形の金策にしたことで、同期比で22.78%減少したとしています。債券の償還資金は主に企業経営活動による収益とキャッシュフローから行います。2016年のグループの売り上げと、収益はそれぞれ1298.55億元と379.76億元です。

     ということは、王建林の資産利潤率はたった5%しかありませんから、利子変換や運転資金に事欠くことになります。この膨大な債券や中期手形はすべて債務なのです。中国のシャドーバンクシステムはとっくに、借金の泥沼状態であり、それは地方政府と、無数の大小さまざまな王建林たちによってつくられたものです。

     二つは、王建林が持ち出した資産が多過ぎました。澎湃ニュースによれば、王建林は国内のプロジェクトの8割を売り払って、海外投資学は既に、2500億元(367億ドル)を超えていました。中国の外貨準備は3兆508億ドルですから、王建林一人で持ち出した資産は外貨準備高の1.2%になります。その上、国内にあれほどの負債を抱えて居ますから、銀行の巨額焦げ付きや、中小の預金者たちと投資家が、元手を失って街頭抗議デモなどやることを思えば、北京は「不機嫌」になるわけです。

     ★呉小暉事件と同じこと。政府は資産を国内に戻したい

    最近、ネットに「中国銀行業監督管理委員会の口頭による、党中央国務院の大連万達グループへの六つの国債投資プロジェクト目的の処理状況に関する文件に関して」というものが伝えられました。その内容は、万達グループの、6つの国債投資プロジェクトへの融資は、厳格に制限され、そのうちの4つは既にM&A済みのプロジェクトで、処理方法は4方面に分かれており

     ① 買収プロジェクトは、金融機関の融資を得られない。万逹グループも、プロジェクトを担保に金融機関から融資を得てはならない。
     ② 万達グループが購入した資産を、自社で株を持つ国内企業に注入して国内上場してはならない。
     ③ 買収したプロジェクトの経営に困難が生じても、万達グループは中国内から、資本をつぎ込んではならず、万逹グループの国内資産と複合再編させてはならない。
     ④ 万逹グループが他の中国企業に資産を販売しようとしても、関係部門はこれを許してはならない。また未着手の二つのプロジェクトについての届け出や、外貨、借款などを支持してはならない。

     これが流れた6月22日には、万逹の株は「ダブルプレーでアウト」だと、人々もやっと分かりました。万逹は、復興や海航、安邦などの大企業の海外資産買収と同様に、すべて監督当局の調査の下に置かれたのだと。十数日後、ついに王建林はギブアップして、今後、中国国内投資を中心にしていくと表明しました。

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     王建林のケースと、先の安邦の呉小暉のケースはそっくりです。呉小暉の安邦の海外拡張の期間と、王建林の歩調は、ほぼ同じ時期で、どちらも2014年以後、海外で、「買収、買収、また買収」を続けて行きました。安邦も理財商品を中国国内で売り出すことによって、資金を集め、投資を通じてその金を国外に移転し、中国の外貨準備を空っぽにして、海外に相当巨額の資産を持つようになりました。2016年末までに、安邦人寿保険の総資産は、1兆4500億元で、そのうち、海外の保険資産は9000億元以上となり、総資産の6割を超えました。そして呉小暉が、「自分は中国初の、グローバルな競争力を持つ国際保険会社になった」と誇った時に、中南海は、これは外貨流出だと見て取ったのでした。私は、★「金融界粛正」から「経済政変防止」へ ★ (2017年6月22日)で、現在の中共の政治任務は、お金を外国から引き戻すこと出会って、中国政府が、呉小暉を捕まえたのは人間が目的ではなく、安邦が海外から資金を回流させることににある、と書きました。王建林に対しても、当局は同じことをさせようというのです。

     金融界の超大物が連続して、事件となったことの意味はつまり、もう大局が変わって、中国は2014年以前のホットマネーの流入から、今や資本流出し、外貨準備が急速に失われる危険があって、もし厳しく制限しなければ、資産バブル破裂を招き、金融危機の発生を招くような状態なのです。借金が山のように積み重なり、あちこちがボロボロの金融システムについては、習近平は、今年の4月25日に、国家金融の安全擁護の政治局の集団学習を主催し、席上、金融の危険を高度に重視し、更にはっきりと、中共が金融を管理しなければならないと提起しました。そして、多国籍資本の流動コントロールは、かってない国家レベルまで引き上げられたのです。ですから、呉小暉が鄧小平一族の婿であろうと、王建林がどんなにハイレベルに人脈を持っていようが、政権の安定維持ということに比べれば、そんなお守りでは、明らかに不十分だったのです。(終わり)

     拙訳御免。
     原文は : 王健林的“保护伞”为何不灵了?
    中国——とっくにクライシス、なのに崩壊しない“紅い帝国

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