• ★共産党資本主義の宿命 — 富豪たちの御難 — ⑴ 2017年8月10日

    by  • August 10, 2017 • 日文文章 • 0 Comments

     世界は、この秋の中共19回党大会の人事に専ら注目をしているようですが、私の関心は、それ以上に経済政策の行方にあります。世界周知のことですが、北京はかつて、自分たちは米国の生み出した「世界的常識」に匹敵する、「北京の常識」、すなわち、「中国モデル」を創造するとしていました。その最大の特徴は、共産党政権が主導的に資本主義と”結婚”し、短時間で米国を超える億万長者グループを作り出し、同時に約8割の中国人を社会底辺層に追いやったことです。しかし、第19回大会を前に、北京の政争は硝煙のキナ臭さとともに、はっきりと「富豪抑制政策」を打ち出し、中共政権と資本家の”婚姻”の黄金時代は、正式に終わることを宣言しているのです。

     ★大物資本家に対して、スーパー級の金融監督機構を設置

     3日前に、中共19回大会前夜の掃討戦」 でも書きましたが、2013年以来、中国の大金持ちビジネスマンの中には、政界での後ろ盾を失い、敗れ去ったケースが少なからずあります。今年から始まった金融粛清の火は、いまや、「実体経済を蚕食し、資本領域で波風を立てる政官商の結託」する資本界の超大物、すなわちトップ大富豪たちに向かっています。

     2015年の株式市場の大混乱以来、中国の資本市場は、ほとんど資本界の超大物の好き勝手やり放題の天国と化していました。少なからぬ企業が、中国国内に広がった金融プラットフォームを通じて、なりふりかまわず資金を調達し、海外投資として海外に資本移転(キャピタルフライト)させ、中国の外貨備蓄3兆米ドルの防衛線に穴が空きそうになっているのを、中国当局は発見しました。事ここに至って、ようやく中国政府は、政府から相対的に独立した経済利益集団の危険性を理解したのでした。一連の持続的な政策調整と、政策検討を経て、今年の7月に、中国国務院は「国務院金融穏定発展委員会」という「一行三会」(中国人民银行、中国银行业监督管理委员会、中国证券监督管理委员会、中国保险监督管理委员会)を指導・監督する機構を作りあげました。それが意味することは、「資本の暴力の時代」の終焉です。

     この機構を成立させた目的は二つです。一つは、「国務院金融穏定発展委員会」は、行政常設機構であり、政策決定権を持ち、行政の政策結果に対して監督・管理、問責、処罰権を持ちます。その目的は、「一行三会」の間での「責任のなすり合い」と、金融機関とその商品監督基準の不統一によって、金融監督面における真空状態を解決するためです。二つ目には、銀行、証券、保険の三大業務監督の「間隙」をなくすことです。この10年来、中国の金融業界は”改革”を実施し、少なからぬ国有企業と巨大私企業は、全て銀行、証券、保険業務の金融分野でのオール許可を手にしたのに、銀行監管委、証券監管委、保険監管委の三大監督管理機関の仕事ぶりはユルフン状態でした。ですから、資本界の超大物たちは、悠々と、金融、証券、保険の三大業界のどこからでも、好きなだけ資金を集め、当局の海外投資奨励をいいことに、大規模に資金を海外転移させ、債務の危険だけを国内に置いてきました。今回、「一行三会」を監督する「国務院金融穏定発展委員会」は、こうした監督・管理の隙間をなくそうというものです。

     国内の資本が暴利を得る道を塞ぐ試みと同時に、北京はついに、数年間温めてきた自国民の海外資産の把握・管理方式を、「中国版CRS立法」として実施に移しました。2017年5月23日、中国国家税務総局、財政部と「一行三会」の6部門は共同で、「非居住民金融講座税金情報調査管理方法」を公表しました。これは7月1日から、中国国内で実施されます。これは、銀行、証券、信託、先物市場、保険会社などの金融機関が、非居住国民の金融口座を、責任を持って調べます。ここでいう「非居住民」とは、中国の国内の税収対象住民以外の、人間と企業です。2017年12月31日前に、金融機関は、国家税務総局のネットに登録して、毎年5月31日前に、結果を報告しなければなりません。国家税務総局はこの情報に基づき、口座名義人のいる外国国家の国税務主管部門と情報を交換します。第1回の対外情報交換の時期は2018年9月です。

     中国の金融機関がどうやってこれをやるかという点は、まだ現在のところ、全然分かりません。しかし、はっきりしていることは、これで影響を被るのは二種類の人間達です。一つは、脱税天国でビジネス中の国際貿易にかかわる実業家。二つは、地下銀行等の違法な方法で海外に送金している金持ちたちです。財産が明らかにされれば、中国には深刻な不安全感をもたらし、新たに税金を取られること以外に、より怖いのは、地下銀行を通じての資産移転をしたならば、政府から「あとでひどい目に遭う」危険です。

     こうした措置が出されたことの意味は、中国の金持ち達の「黄金時代」は、既に終わった、ということです。

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     ★中国モデル : 共産党政権と資本主義の血族結婚

    習近平のペースでは、中国はもうすぐ、江沢民・胡錦濤の造った「中国モデル」を終息させようとしています。中国モデルに対しては、これまでは「専制独裁制度プラス市場経済」と定義され、内外の研究者の間では、中共に受け入れられ易いように「権威主義と市場経済」という言い方をしてきました。しかし、実際は、共産党独裁政権と資本主義の”婚姻”でした。マルクス主義の学説では、共産主義と資本家は不倶戴天の敵のはずですから、これも、また中共の生み出した”奇跡”というべきです。「共産党宣言」は疑問の余地なく、「共産主義と資本主義は相容れない存在で、無産階級の政党である共産党は、資本主義の墓堀人」と書いてあります。中共政権だけが、この二つを80年代の短期的な摩擦の後に、水と油を”乳化”させるように混ぜ合わせて、「中国モデル」のエネルギーを発揮させ、中国を世界第二の経済国家に押し上げたのです。

     それでは、中国の経済改革が生んだ、この独特の政治経済制度をどのように認識すべきでしょうか。私は、これを「共産党資本主義」(Communist Capitalism)と呼びます。江沢民の「三つの代表」理論が出されてから、資本家を入党させるのが中共の流れとなり、多くの私企業経営者が、各級の人民代表大会や政治協商会議に入り、まるで「エリート集団の共和」初期段階となったようです。こうした「エリート集団の共和」の表面的な現象によって、近年、外国メディアの両会報道で増えてきたテーマが「中国の両会の金持ちぶりと米国上下院議会の議員の富の比較」です。その比較結果は、中国の最も金持ちの70人の人民代表の個人資産は、2011年に合計115億米ドル増え、898億ドル(5658億元)の最高値となりました。一方、米国国会、最高裁判所、ホワイトハウスの660人の政府高官たちの、同一時期の純資産は75億ドルで、70人の中国富豪人民代表の、一年間の財産増加分にも満たなかったのです。2017年3月、「中国富豪番付」によれば、「両会ベスト100富豪番」は、過去4年間の財産は64%増え、2013年から2016年、彼ら本人と一家の財産総額は、1兆8千億人民元から3兆人民元に増えたのでした。

     共産党指導下の、「民主集中制」の議会を体現した中国人民代表大会は、こうして「富豪・官僚倶楽部」になりました。ブルームバーグ・ニュースは「全国人民代表大会は大金持ちへの偏愛と、中共と富豪の間の融合した関係を体現している。このシステムは各階層レベルでの現地役人と企業家が結びつき合って、金持ちになることを表している」と論評しました。

     両会が作り出した、こういした「エリート共和連合」のムードの中にあって、中国の大金持ち達は、どうして、自分たちの運命が、この先、急転するなどと思えたでしょう。(2へ続く)

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