• ★中国経済 — 真実の危機と虚構の危機★2017年8月26日

    by  • August 26, 2017 • 日文文章 • 0 Comments

     中国と外国のエコノミストの中国経済分析を見ていると、やはり中国国内の学者の方が少なくとも問題が何処に在るか良く分かっているな、と感じることがよくあります。こんな感じを受けたのは、一つは最近、中国メディアを賑わせている「黒鳥(Black Swan)」と「灰色サイ」の報道と、もうひとつは、ロイターが8月24日に、匿名人士の言として伝えた、「中国4大銀行が一帯一路に何千億米ドルにもなる投資を開始しようとしているが、沿線国家は危ない国ばかりなので、世界的な金融危機を引き起こしかねない」を読んだからです。
    この数カ月の中国経済政策のポイントを見れば、すぐに前者は真の危機であり、後者は少なくとも現段階では虚構の危機だと分かるのです。

     ★中国は、とっくに「灰色サイ」の存在を承知

     最近、中国メディアが経済問題を論じる時、「黒鳥」と「灰色サイ」がよく登場します。7月17日に、金融工作会議が開かれた初日に、人民日報がトップで「効果的な金融危機の防止」を掲載し、「金融危機を防止解消するためには、危機意識を高め、黒鳥も灰色サイも防がねばならず、様々な危険に油断したり放置したりしてはならない」と書いたことからです。この二つの用語は、中央财经领导小组办公室の主任で、国家发展和改革委员会副主任の劉鶴が、ある本の序文に書いたからです。そのタイトルは「いかなる危機も、金融監督の失敗を意味する《每一次危机都意味着金融监管的失败》」です。

     劉鶴が特別な存在感は、彼の官僚としての身分の高さ(第十八期中央委员)だけではなく、習近平が最も信頼している経済の知恵袋だというレジェンドな立場にあります。中国では、皇帝に上奏出来るこの身分は大変重要で、外国人も高く買っています。

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     2016年、西側メディアは「黒鳥」という言葉を、英国の欧州連合(EU)離脱や、トランプの当選に使いました。この言葉が、8年前にある本(訳者注;ナシーム・ニコラス・タレブが2006年に刊行した著書「ブラック・スワン」のこと)から生まれたことを知らない人でも、「黒鳥」が、予測し難く、確率の低い事件を指すことは、皆知っています。「灰色サイ」とはなんでしょう? 同様の文章に「黒鳥よりおそるべき灰色サイとは何か?(比“黑天鹅”更可怕的“灰犀牛”到底是什么)」があり、これが中国にどんな”灰色サイ”がいるかについて、最もよく説明した文章でしょう。

     それによると、まず「灰色サイ」は、米国の学者でグッゲンハイム賞受賞のミシェル・ウッカー氏が、2013年1月にダボスフォーラムで提起しています。その前に、彼は「灰色サイ : いかに確率の大きい危険に対処するか」を書いています。そこで、「黒鳥」は、巨大な影響を持つ事件だが起きる確率は低いもので、「灰色サイ」は、起きる確率が大きく、かつ影響が広範に及ぶ潜在的危機だとしています。

     この文章は更に、中国には3頭の「灰色サイ」がいるとします。そのおそるべき突進力による爆発の危険は間近に迫っており、そのうち、不動産バブルが、疑いなく中国最大の「灰色サイ」で、世界のあらゆる不動産バブルの持っている二つの特徴を備えています。一つは周期の長さ、一つの値上がり周期が10年を超えること。二つには、バブル破裂時には天地を揺がすほどとなり、雪崩や土石流のような奔流になりかねず、逃れることも困難、です。第二頭目の「灰色サイ」は、「通貨下落、資金の流出」で、1997年のアジア金融危機のような金融の動揺を引き起こす。第三頭目の「灰色サイ」は、銀行の不良資産増加。政府は、今年の6月末までに、不良借款や注意を要する貸し出しは、5.3%だとしています。

     「灰色サイ」は勿論、この3頭だけではありませんが、この3頭が全体に及ぼす問題に比べれば、地方債務や理財商品の危機は、枝葉末節のことで、「大河」と「支流」の関係です。私が一昨年から発表してきた経済関連の文章では、大半がこのいくつかの問題に関わる分析でした。指摘しておかなければならないのは、銀行の不良資産率は、はるかに中国政府の認める額より高いということです。

     中国銀行業界は、もうとっくに巨額の不良貸付を抱えています。それがどのくらいの貸し倒れ金になるかの見積りをめぐる論争は絶えません。政府側の数字でも、中国の商業銀行の不良貸付残高は1.4兆元で、不良率は1.75%ですが、外国の銀行の見積もりでははるかに多く、Hayman Capital Managementの創始者であるKyle Bassは、3.5兆(23兆人民元)だと言っています。今年8月、Fitch RatingsのアナリストCharlene Chuは、51兆元、つまり7.6兆ドルだと言いました。この計算だと、不慮貸付金は34%で、中国政府の認めている金額の5倍以上になります。つまり、実際のそれは、政府発表より6.8兆ドル多い、ということです。

     ★「一帯一路」が世界にもたらす危険は小さい

    ロイターが8月24日に伝えたニュースの情報源は匿名ですが、中国の四大国有銀行が、一帯一路に千億ドルもの融資を行うといいます。しかし、一帯一路の沿線の各国は、どこもここも危険がいっぱいの発展途上国です。学者の間では、大量のプロジェクトが予想し難い問題に直面しかねないとしています。ドイツのメルカトル研究センターのBjörn Conrad副総裁は、中国国有銀行の危険ということは間違い無く、全世界の銀行システムの危険になると見ています。

     そう聞くとなんだか大変な問題のようですが、しかし、今年5月に北京が開いた一帯一路サミットの状況を理解し、北京が現在、自国の資本を対外投資を制限していることや、呉小暉(*鄧小平の孫娘の夫)を捕まえ、王健林(大連万達グループのトップ)が、今後は資本を中国に留めると表明したことを見れば、この匿名の消息元の言うことは、いささか疑わしいことが分かります。

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     今年5月半ばに、中国は北京で、一帯一路の国際協力サミット・フォーラムを2日間開きました。大変、スペックは高い会議でしたが、しかし、一帯一路は、もう、提起されてから3年も経っており、その間に中国の外貨状況には大きな変化が起きています。3年前は、中国は「お金がどっさり」あったのが、今や「お金がちょっぴり」になっています。お金がどっさり時代には、中国政府は、資本の外国流出の巨大なパワーを見くびっていました。しかし外貨準備の4分の1が消え失せてから、政府は財布の紐を締めにかかり、もう「バラマキ」は出来ません。北京サミットの前日、中国中央銀行の周小川総裁が、中国金融雑誌の政府ウィーチャットに署名記事をのせました。その要点は、

     長期的に見れば、一帯一路の投融資の協力は、一方通行の資金サポートでは無く、各方面との共同作業になり、共同支出、危険分担も共同で、利益も共同でという共同体であり、同時に、必ずや市場の力を借りて、市場化の融資方法を主として、積極的に人民元の国内通貨としての力を発揮させ、それを元手として、さらに多くの中国の備蓄と国際資本をひっぱってくるべきで在る。

    でした。

    この話ははっきり言ってしまえば

    ① 今後、一帯一路の沿線国家への投資へ出資するのは、中国だけでは無く、各国の企業や、投資機関からの出資を得て、危険を共同分担しなければならない。
    ② 中国は人民元を主として投資する。米ドルのバラマキはしない。

     中国が外貨保有を防衛するために、対外投資を制限する、というのはつまり、しばらくの間は一帯一路プロジェクトに巨額のバラマキはせず、バラまいたとしても人民元であり、さらに共同出資、共同危険分担、ということですから、中国側の「soft budget constraints」(「非効率な企業が事後的救済によって生き残っていく現象」)や、グローバルな危険を引き起こす可能性は、相手側が人民元を受け取ることを望み、かつ共同出資したいと願う場合以外は、大幅に減ったのです。

     中国商務部の発表によると、2017年の1〜6月、中国企業の一帯一路沿線の47カ国への非金融直接投資は66.1億米ドルで、3.6%減です。この投資の中には、大量に必要な建材の鉄鋼材料やセメントなど各種の建築材料などの実物出資を含みます。

     現在のところ、各国が人民元の投資を受け入れる可能性は大きくありません。私は、★事、志と大違いの中国人民元の国際化★( 2017年4月5日)で、人民元が国際通貨基金(IMF)特別引き出し権(SDR=加盟国の準備資産を補完する手段として、IMFが1969年に創設した国際準備資産)の通貨バスケット入りを果たしてからの備蓄通貨としては、人民元はさっぱり人気がないことを分析しました。人民元が各国の備蓄資産に占める割合は、たった1.07%で、SDRの中の人民元の占める割合も10分の1でした。同時に、人民元が国際貿易の決済通貨に占める割合も下がっています。2017年2月8日のロイターによると、英国のスタンダード・チャータード銀行の指標ですと、2016年、主要国際金融センターの人民元使用量は減って10.5%で、12月には、29カ月ぶりの少なさになりました。

     ★中国経済の危険がグローバル経済に与える影響

     フランス興業銀行(ソシエテ・ジェネラル)が、2016年第4四半期に出したレポートで言う「五羽の黒鳥」では、全世界の経済成長の前途で出会う危険性について、中国がG5国家の中で、「純経済」の危険が比較的大きな黒鳥だとしています。住宅の大量の過剰、高い債務水準、不断に現れる不良貸付問題が、中国の「2割のハードランディングの可能性」という危険をもたらします。その他に、「経済構造の改革不足」が中国経済に「失われた10年」の重大な危険をもたらす、その恐れは4割だと言います。

     こうした心配は大変普遍的なものです。2016年11月17日、ノーベル賞受賞者のポール・クルーグマンはワシントンで開かれた研究会で、二つのキーとなる問題について、VOAの取材に対する回答は代表的なものです。記者は、「いったん、中国経済に更に深刻な状況が現れたら、世界の他の経済体は、それを救えるか?」に対して、クルーグマンは「無理、どんなに最良の結果を望んだところで、不可能。中国社会と経済の規模は大きすぎる。大きすぎるからつまずかないということはないが、大きすぎるから救えない」(not too big to fail,but too big to save)。彼の見方では、中国経済がいったん、深刻な状況になれば、政治面での改革が必要になるが、中共政権は強圧強硬な手段で事態をコントロールしようとするだろう。中国の政治の開放領域は既に後退しているが、そのときはもっとひどく後退するだろう、といういうものです。

     中国の現実は、クルーグマンの予測が正しいことを証明しています。経済分野で、いったん、事がおこれば、中共政権はまたしても高圧的な手段を採るでしょう。中国政府は現在、世界的に金融危機は起こり得る事で、現在、唯一やりたいと思っていること、やらねばならないことは危機を起こさせないように、コントロールすることです。つまり、「灰色サイ」は必ずやって来るでしょうが、一つにはその上に、軛(くびき)をつけ、二つにはコントロールを通じて、3頭の「灰色のサイ」が一度に襲いかかって来ないようにしようということです。(終わり)

     拙訳御免。

     原文は、中国经济的真实危机与虚假危机

    中国——とっくにクライシス、なのに崩壊しない“紅い帝国

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