• ★”国体”は変わらず— 中国企業の国営・私営の関係の変化⑷★ 2017年9月16日

    by  • September 17, 2017 • 日文文章 • 0 Comments

    中国共産党第十九回全国代表大会(訳注 : 2017年10月18日より北京で開催される予定)を前に、中国経済政策の最も目立つ変化は、民営資本を、発言権は与えられずに国営企業に参入させられるということです。これでは、時代に逆行だと驚く人もいますが、皮相にすぎる見方です。

     毛沢東時代には一切の私有経済活動を消滅させて、計画経済にしようとしましたが、鄧小平は共産党資本主義の教条主義に固執せず、企業所有制に対して、臨機応変に対処するようにしました。しかし、国営企業が経済の主導的地位を占め、私営企業に対しては、政治的な必要に応じて調整するという点は変えませんでした。この点を理解するには、中共の独裁政治が「三つの独占」、すなわち、政治の独占(一党独裁)、資源と経済の独占、文化の独占(メディア、教育、宗教支配)を理解しなければなりません。資源というのは、土地、鉱山、森林、水資源が全て国有であること。経済上の独裁とは、国有経済が主導で、重要企業は必ずや国有であることです。そして、経済の独裁を放棄してしまえば、政治と文化の独裁を維持するすべはないのです。

     ⑴ 独占国営企業は「特殊利益集団」

     前に述べたように、1990年代後期、国有企業が利益をあげられなくなってお荷物になった時、朱鎔基は、「現代企業制度の樹立」の国営企業改革で、終始、「大をしっかり掴み、小は放つ」という方針を出しました。中小の国営企業改革によって、一群の共産党員資本家を作り出したのです。と同時に、政策を大型国営企業にそそぎ、資産の再構成を行って、民生に関わる国営企業を超大型国営独占企業にしました。鉄道、金融証券、電力、交通、エネルギー、不動産業界などが独占企業になりました。2001~2010年の段階では、こうした独占で生まれた少数の寡占状態にある企業が、中国政府の主要な経済支柱となったのです。各種政策の強力な後押しの下で、こうした国営企業は中国経済の独占企業となり、中央政府の経済政策に強い影響力を持つことが出来ました。こうした国営企業では、政治とビジネスが結託して、行政の介入によって得られる不正収入(レントシーキング)が、ごくごく当たり前の現象となりました。有力な官僚のバックを持つ、勢いある民営企業は、こうした独占国営企業にくっついて、公的権力をバックの”核の傘”として、好きなことをやり放題で、超過利潤を得ることが出来ましたし、違法な資本リターンを得る場合もありました。例えば、周永康の息子、周濱は父親を利用して、石油関係に強力なツテ・コネ人脈金脈をはりめぐらせ、暴利を貪ることが出来ました。

     胡錦濤は、2003年に政権についた後、私企業に対する経済政策と実践が分裂し始めました。国務院は、2005年に「非公経済36条」を制定しました。これで、競争的な産業は全て民営資本の参加を許可する。外資に開放される産業には、全て、国内民営資本にも開放される。さらに、非公資本も独占業界の領域にも参加して良い、となりました。しかし、実際には、まさにこの時期に、多くの儲かる可能性のある分野では、「国進民退」(訳注 : 国営企業が伸びて、民営企業が衰退する)現象が起きました。民間航空部門は、まさに典型的な例でした。国務院国有資産監督管理委員会は、また「国進民退」を主導して、国有資本が、一部の競争的な業界において、民業を圧迫する手助けをしました。2009年、中国で最初に許可された民営航空会社の「鷹聯航空」に対して、四川航空公司が2億元を出資し、同社の76%の株式を取得、「鷹聯航空」は、最初に業界から撤退した民間航空会社となりました。

     習近平時期に比べると、胡錦濤・温家宝政権の時期は、比較的、言論統制はまだ自由だったせいで、民営資本と彼らの中共党内の代理人や、一部の知識人は一緒になって、国営寡頭経済の特殊利益集団を批判することが出来ました。多くの人々が、中国石油天然気集団公司と中国石油化工股份有限公司(中石化)を代表とする独占型の国有企業を、資源と経営の独占という特権の持つ有利さ、政府が与えた価格決定権、競争排除、高コスト体質、質の悪いサービスが、価格上昇を招いている元凶だとして批判しました。さらに、人々は、国有独占企業が、無償で公共資源を占有し、政府が与えた独占的地位を利用して、超過利潤をあげながら、企業と、政府だけがその利益にあずかれるだけであること。公共資源の真の主人である一般民衆は、利益とも国民福祉とも無縁のまま、自分たちのお金を使うただの消費者になるしかないこと。こうした国営企業は社会的にも雇用チャンスを作り出す点でも、はるかに民間企業に及ばないといった点を批判しました。

     数年間の長期にわたって、国営企業は腐敗し、独占、低効率の代名詞になりました。北京理工大学の胡星斗・経済学教授はこの論戦の総括として「独占企業の十の大罪」を書き、以下の点を指摘しています。

    ①中国の現代化の実現。②専制と”人治”による法治の破壊。③市場経済秩序の破壊と官僚市場経済、権力市場経済。④深刻な腐敗。国際経済組織が154カ国を調べた結果では、国有経済の比率が大きくなればなるほど、国家の腐敗も大きかった。⑤不公平な分配、貧富の拡大。⑥一般庶民が富を蓄えられず、独占国営企業が、私営企業を市場から追放させる。⑦既得利益集団を生んで改革を邪魔する。⑧経済の低効率を生む。⑨建設を繰り返し、生産過剰の巨大浪費。⑩民族の想像力の扼殺。

     こうした問題の中で、批判の焦点となったのは、他の業界と比べて、独占型国営企業の過大な収入で、国営企業重役層の年収は、ゆうに100万元を超えて、さらにボーナス、ツケの飲み食いまであることでした。胡星斗教授は、「独占国営企業は全国の労働者の8%だが、その給料は全国の65%を占めている。国営企業の経営者は公共資源を利用して生まれた富を、例えば、中石化の陈同海が2億元の賄賂を受け取り、毎日4万元以上使っていたように、個人用の金庫にしている」と書いています。

     政権側からの反論も大変多くありました。人民論壇・特別計画組は「李荣融の苦境 — 当面の国営企業十大論争店の解剖」が、これをテーマにした代表作です。国有資産管理委員回の李荣融主任は、国営企業の重大な使命と特殊な地位が、世論のうんざりするほどの批判を浴びる原因だとします。大衆の罵倒は、経験的な主観評価とメディアの誤解曲解によるもので、国進民退、民業との競争、低効率、利益配当の過少などはすべて、「偽命題」であるとし、逐一反論した後、李荣融はこう強調しました。「公有制度を主体とする基本経済制度は社会主義の礎(いしずえ)であり、国営企業を否定すると言うのは、実質的に公有制度を否定しようとするもので、公有制を否定するというのは、おのずから社会主義制度を否定することで、社会主義制度を否定するということは、すなわち共産党の指導的地位が、次第に失われることだ、と。

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     ⑵ 国有企業が資源を飲み込み腐敗を撒き散らす経済怪獣に

     中国政府が大型国営企業の政治経済的地位を維持する必要があるのは、主に政治的必要性です。国家が大株主の大型企業は「共和国の長男」と言われ、政府は各種の政策で特別に優遇します。例えば、土地の独占、鉱物資源の独占などを通じて重要産業を独占させ、国営企業に価格決定権を与え、巨額の利益を中央財政に注ぎ込ませるのです。中国経済の一番盛んな時期には、中国国有資産管理委員会による「国務院国有資源委員回2009回顧」では、2002年から2009年の間に中央政府が管理監督する「中央企業」による、国家への税金は21.6%増加し、国営企業の税負担はなべて、私営企業の税負担総額平均値より5倍以上も多く、株式会社の平均値の2倍です。同時に国営企業は、政府の対外援助や国内政治や社会をコントロールするのに必要な資金を、いつでも取り出せる「金庫」です。例えば、中国のハイレベルの高官が外国訪問する時、大量の買い付け契約の費用や援助プロジェクト資金は、往々にして国営企業から支出されます。

     そのほか、国営企業のサラリーや福祉、職場の安定度などは、はるかに私営企業や外資系企業を上回っており、およそ中国人が職業選択上で、公務員に次ぐものとなります。ですから、国営企業は往往にして、官僚や紅色貴族たちのポストあさりの場となります。米・ブルムバーグ社の報道では、103人の国営企業のトップは紅2代で、MBO(経営者持ち株制度)によって富を築き、彼らの手にある国営企業の2011年における市場総価値は、1.6兆米ドルにもなり、中国の年度経済産出の2割強を占めます。2010年までの十年間の国営企業改革によって、これらの紅2代目はMBO方式によって、お金を出さずに大量の株式を獲得しました。資産数億から数十億の超大型国営企業では、たとえ1%の持ち株だとしても、大変な額の「ケーキの一切れ」なのです。

     国営企業と紅色家族の間で、国家と家族いっしょくたのお金儲けシステムが出来てしまえば、こうした管理職連中に欲しいままにされる企業の経営が良いはずはありません。近年の中国経済の衰退に伴って、国営企業の酒とバラの日々は終わり、銀行の不良貸付の主要原因となり、中国の国有銀行の足を引っ張っています。2014年以来、中国のメディア上には、損失が深刻で、銀行借り入れて、かろうじて操業を続ける国営企業を指す、「ゾンビ企業」という言葉が大量に登場しています。2015年末までに、中国株式市場におけるこうした「ゾンビ企業」は266社あり、1割を占めました。それは鋼鉄、石炭、セメント、ガラス、石油、石油化学、鉄鉱石、非鉄金属などの8大業界に集中しています。「フォーチュン・グローバル500 」に名を連ねる中国企業は100社ありますが、そのうち16社は赤字会社です。例えば、「中国アルミ」は「A株赤字の王様」と呼ばれ、2015年の純損失は43.76億元、「渤海鋼鉄」は債務が1,920億元です。こうした「フォーチュン・グローバル500 」入りした大型国営企業が、長期にわたって赤字であることは、中国金融システムをまるで敗血症の病人のようにしてしまい、国営企業に”新鮮な血液”として資金をつぎ込んでも、すぐ真っ黒な血(悪性債務)となってしまいます。

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     指折り数えると、これは中国の1978年の改革開放以来の、第3回目の不良債権問題です。3回の不良債権の生まれた理由は違いますが、不変の理由があります。それは、国営企業が銀行の不断の輸血によって維持されているということです。興業策略研究レポートによると、もし2年以内に、これらゾンビ企業が全部倒産したならば、7割の有利子負債が不良債権化し、影響する債務額は1兆671億元、年平均で5,300億元以上となり、そのうち1割が債券で、9割が銀行債務です。

     2012年は、中共の第十八回全国代表大会の権力交代のデリケートな時期でしたが、習近平は、中共の最高権力を手にはしたものの、政治的ライバルとの戦いに明け暮れ、国営企業問題は、しばし公共の視野からは遠くなりました。胡錦濤・温家宝時期に、国営企業を巡って行われた論争で指摘された各種の弊害では、ただ、国営企業管理層と一般労働者との巨大な収入の差だけが、解決すべき問題とされました。2016年1月、中央国有企業は、国営企業ハイレベル管理職の減俸方案に取り組み、トップと一般労働者の収入の差を、それまでの12倍から7〜8倍以内とし、全国各地の国営企業ハイレベル管理職の基本年俸を3割削減しました。全国25の省は、国営企業減俸方案によって、大多数の国営企業の経営者の基本年俸は、一般労働者の2倍以内として、総報酬も8倍以内とすることを宣言しました。減俸度合いの最大だったのは、寧夏で、総報酬は5倍以内とされました。2017年9月15日には、政府は「より一層国営企業の改革を具体化する方案」を宣言しました。このポイントは「光景企業の市場化報酬改革のスピードアップ」です。

     予想出来ることは、国営企業の運営機構が改められない限り、民営資本が、政治のプレッシャーを受けて国営企業の株を買わされたところで、ただ国営企業に、「無利子の借款」を与えるだけであり、国営企業管理職層の過大な報酬が解決されることを除いては、あらゆる問題は、依然として元のままであり、政府にとって、唯一の意義は、銀行の負担を民間企業に、転嫁するだけの話でしょう。

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