• ★”混合経済”で国営企業に”栄養剤効果”?— 中国企業の国営・私営の関係の変化⑸★ 2017年9月18日

    by  • September 18, 2017 • 日文文章 • 0 Comments

     国営企業がいくら「ゾンビ企業」と化しても、習近平は依然として、国営企業を強化し、強大にしたいのです。この点について、私は、2013年から、もうたくさん文章を書いてきました。今、そうした文章での分析を整理してみても、習近平の今日の国営企業混合所有制改革、企業に対する中共の党指導強化は、別に珍しくもなんともない、基本的には胡錦濤・温家宝の第二期に行った中国政府の国営企業改革の考え方を受け継いだだけのものです。

     ★中国政府の国営企業改革とは

     これまで、ボイス・オブ・アメリカ(VOA)などに書いて来た、たくさんの文章の中で、私は重点的に今日の中国国営企業改革の方向を分析、予想していました。

     2013年は、習近平が中共の権力の中心となった最初の年です。まだ、国営企業の位置づけは論争の最中で、国営企業を批判する声は、「反腐敗キャンペーン」の大業によって脇へ押しやられ、「改革60条」のうちの国営企業についての考え方は、明らかに市場派の見方の延長でした。当時、私は「《国営企業改革;成否は共産党の企業管理の終息次第−”改革60条”への疑問2》」《国企改革:成败关键在于结束党管企业——对“改革60条”的疑问(二)》(VOA,2013年11月22日)で、「習近平が宣言した、『不断に党の指導を強化すると同時に政治と企業を分離せよ』と言うのは、米国映画の『キャッチ22』と同様の、ムチャクチャに矛盾した話だ」と指摘しました。(訳注 :「キャッチ22」は小説。映画にもなった。「気が狂ったら除隊出来るが、自分でそれが分かるようなら気が狂ったとは言えない」という自己矛盾の軍規。)

    : 国営企業の深刻な腐敗をやめさせようとすれば、党の企業管理体制をやめ、政企分離をやらねばなりません。もしそれをやれば、胡錦濤が10年苦労して築いた私企業や外資企業の数万の党支部をを撤廃することになるのです。「党の指導性を強化する」と「国営企業改革の政企分離」は抜け出せない自己矛盾の構造になっています。党支部を撤廃したら、党の指導の貫徹など出来ません。しかし、撤廃せずに、どうやって政治と企業を分離出来るでしょう?ですから「改革60条」にある国有資本が経営権を握るのであれば、自ずから、業界を独占することになるので、「政治と企業の分離、政治と資本の分離、経営の許可、政府の管理監督を中心とした内容の改革」というのは、全くの空談議になります。

     習近平王の反腐敗キャンペーンの大業が一段落した後、2014年にすこぶる習近平色の強い「国有企業改革を深化させる指導意見」と「完善に公有を実現する形式の指導意見」に関しての、意見募集が出されました。その中の、「混合所有制」という重要ポイントは、意見募集が発表される前に知らされていました。これについては、私は、「国営企業改革;官民双方が弾くソロバン」《国企改革:官方民企各有盘算》(VOA,2014年9月6日)で、こう指摘しておきました。

      :   : 民営企業側の熱意はさっぱりだ。皆、「混合所有制」はワナだと考えている。もし混合したら、民営企業は株式コントロール権利を得られないまま、参加後に「懐柔平定」されてしまいかねず、もっとひどい時には「扉を閉めてから、犬をぶったたく」にされてしまう。万達グループの総帥・王健林にインタビューし、王は「もし混合というのなら、民営資本が多数を制するか、少なくとも相対的に多数でなければ、国営側が株を多くわけで、それなら、我々民営企業の銭で国営を助けるだけ。俺の頭が狂ってなきゃ出来るわけがない」と言いました。

      : : 杭州の
      娃哈哈ワハハグループ総帥の宗慶後はずっと中共支持者ですが、しかし今回の国営企業改革には独自の見方をしています。2014年に行われた中国ベスト500企業フォーラムで、宗慶後は「国営紀要改革と全員持ち株」のテーマで講演し、混合所有制については、実験ケースとして少量の株式を民営資本に譲るというのは「実際、民営資本もそんな馬鹿じゃない。高いカネでちょっとばかりの株をもらって、あんなでかい国営企業に進出したって、発言権もない、決定権も無いじゃ国営企業を変える事はできない」。彼は、中央企業という大皿には、民営企業の資本は事実上進出しても何の力にもなりえないし、最後には、また外国資金が国営企業の株式を買い占め、国営企業が外国資本にコントロールされる可能性がある」と言いました。

      : 20以上の国営企業改革に参与した復星集団の理事長・郭広昌は以上の2人よりは遠回しな言い方ですが実質的には同じ事を述べています。今年4月25日、清華大学経済管理学院30周年記念講演で自分の経験が「小株主として進出してはならない」として「管理権がないなら、もともとの国有体制と何も変わらない。それじゃ最初からなんにもならない」、「大変ハッキリしてる事は、混合所有制は経営管理方式で、民間企業や市場動向が企業の方向を決められない、経営方針を民間企業が決められないなら、考慮の価値はない」と。

     2014年から、こうした「混合所有制」に同意しなかった富豪たちは、海外に資産移転の道を求めましたが、あっというまに石の壁に阻まれてしまいました。宗慶后以外の二人がどうなったか、中国人ならもう大体ご存知でしょう。(訳者注 : 超富豪・王健林の「核の傘」はなぜ役立たずに?  2017年7月24日参照。郭広昌は、日経新聞;「「中国のバフェット」郭氏 失踪、直後に復帰の謎 」を参照)

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     ★「混合化」によって国営企業を「大きく強く」

     2015年9月に出された中共中央、国務院の「国有企業改革の深化に関する指導意見」(通称「国企改革方案」)の中で、再度「混合所有制」が強調されました。当時、各種論評がうしおのように沸いて、この目的は、国営企業を強大にするためのものだ、という見方もあれば、政府は市場化を通じて私有化を推進するのだ、という説もありました。同じものが両極端の想像を掻き立てた原因は、この案が極めて習近平色の強いものだったからです。それは毛沢東と鄧小平の良いとこ取りして、左と右をくっつけた相互矛盾する記述だらけのものでした。私は、「国営企業改革法案」の目的地は「公」か「私」か?《“国企改革方案”的风,姓私还是姓公?》(VOA,2015年9月19日)で、これは「私」を「公」のために役立てるもので、その反対ではない、と指摘し、いちいち条文を分析しておきました。ここでは三つだけ上げておきます。

    ① : いわゆる「混合所有制」とは、つまり私企業は国営企業の株を買うことが出来る。株主にはなれるけれども、株券の配分比率は国有資本が主要な部分で、私営企業は従属的地位で政策を決めたりするときに意見を言ったり決定したりする権利はないということです。

    こう書いたのですが、この点は、この8月に中国聯通(中国聯合通信有限公司/チャイナ・ユニコム)の国有・私有共同持ち株混合所有制方案の中で既に実現しており、BATJ(中国ネット企業の4巨頭、百度、阿里巴巴、騰訊、京東の4社)が、各社とも数十億から100億元の資金を中国聯通に投入し株主になっており、2015版国企改革方案の目標は実現しました。民生資本が国営企業に吸い取られてても、発言権はありません。これによって「強く」なるかどうは知りませんが、「大きく」はなりました。

    ② : 方案のポイントは、国営企業の”市場化経営機構”を養成するにあたって、また中共の指導を強化しなければならない、です。「プラン」の中の14カ所で「私有化」について言及されていますし、一見あたかも市場化が主旋律のようです。しかし、第24条をみると、「国有企業の党組織の政治核心作用を十分に発揮させる。党の指導と完全な企業経営を統一して、党建設の仕事全体を国営企業のルールとし、国営企業党組織を企業法人の管理機構のなかでの法的地位をはっきりさせる」とあります。
    「党が一切を指導する」というのは毛沢東時代の政治経済の生命線でした。「市場化」は鄧小平執政以来の国営企業改革の主旋律です。趙紫陽総書記が大変な苦労をして、政治と企業をなんとか分けて、更にうまくいったら、より一層党政を分離を広げようしたのですが、全ての努力は、1989年の天安門事件で水の泡になってしまいました。

    ③ :「発展の潜在力が大きく、成長性が強い」民営企業が国営企業改革にあたって、ぜひともお越しいただきたいという主要目標です。「プラン」の第18条は;「様々な方式で国有企業に民間企業の株を持たせることを激励する。それを国有資本の投資、運営、企業の資本の運営のプラットフォームとして作用させ、市場方式を通じることによって公共サービス、ハイテク、環境保全、戦略的産業を重点領域として、発展の潜在力の大きな、成長性の強い非国営企業に対する株式投資をおこなわせる」とあります。

    つまり、発展の前途がよろしくない民営企業は大いに安心していいのです。国営企業は、あなた方に用はありません。しかし、収益性が素晴らしい前途あるマーケット、となれば、国営企業は呼ばれなくてもやってきて、自分から一部の株式を買い上げ、あるいは資源を売ってくださるわけです。これは嫌だと言っても逃げられません。

     ★中国当局はなぜ、「公私合営Ver2.0版」を実施?

     ある国がどんな企業を助けようとしているのかは、往々にしてその利益を考えるのがポイントです。民主国家では、企業への考慮は通常、雇用が優先されます。例えば、双汇集团が、2013年に米国最大の食肉産業スミスフィールド・フーズ社を買収した時、その雇用は4.8万人で、新たに1300人増え、現地の地方政府は大変喜びましたし、別に資本の主が中国人だということは問題にもなりませんでした。

     中国の私企業が、中国人に提供している雇用数は、とっくに国営企業を超えています。政府側のデータでも、2007年に工業企業の従業員では国営企業が9.2%,私営企業が44.4%ですし、2011年1月の全国工商聯のレポートでも、中小企業が全国企業の総数の99%以上で、郷村企業就業の7割以上、新しく増加した雇用の9割を占めていました。2014年、国家工商行政管理総局の発表では、個人経営と私営企業の新増加雇用人員は、全国の年の新たな就業人口の9割でした。

     今や、外資が撤退し、農民工が大量に帰郷し、大学卒業生の半ば以上が就職先がなく、親のスネをかじっているのです。道理からいえば、政府は私営企業の発展を奨励し、就職率を上げることを第一に考えるべきでしょう。それなのに、なぜ当局は反対に、雇用が比較的少ない国営企業を「大きく、強く」したがり、「国進民退」の改革戦略を取ろうとするのでしょうか? それは二つの面からの考慮によります。

      第一には、経済が振るわなくなって、中国政府は極めて大きな財政的困難に直面しています。政府側データによれば、公共財政への貢献から見れば、現在の中国の企業数、資産、主管収入の比率で、私企業が既にに優勢で、国営企業は皆、劣勢です。しかし、国家への納税比率では、2012年の私企業はわずか13%で、国営企業は70.3%です。現有の税収源が日増しに枯渇していく中で、国営企業は公共財政を支えるという理由だけで、十分、政府が力を入れて支える理由になるのです。国有企業がより多くの雇用を生むかどうかは、もう政府の優先して考慮するところではなくなっています。李克强総理が、億の数となる就業待機中の人々に示した「自分で起業」の道は、こうした大量の失業者には起業する能力などないことを明らかにしてしまいました。(参考;★「全人民が起業家に」の無残な結末★2016/09/06)

    第二には、「方案」の中で、「丸ごと株上場」が最終目的だということです。国営企業の負債率は大変高く、2015年7月待つの中国国有企業の平均資産負債率は65.12%で、その負債の元は、主に国有銀行です。この銀行と企業の関係は、国営企業がダメになったなら国有銀行も道連れになる、ということです。過去20年来、国営企業が苦境を脱出した方法は、朱鎔基元総理の秘術で、国営企業株式の上場によって資金を集めました。しかし、この方法が、なんとうまく行かずに、2015年の株式市場の大災難で、国営企業を支える「国家部隊」は、政府の命令で、救援に駆り出された後、全軍が捕らわれの塩漬けになってしまいました。ですから、「国企改革方案」は、別の一手を考え出すしかなく、それが、国企改革で、民営企業と混合所有制を実現した後、「重点的に株上場を図る」になったのです。資産を組み替えて後、企業は新たな名前で、株式市場に新規株上場(IPO)出来るのです。
     この方案は、習近平の国有企業と私営企業に対する基本的な態度を表しています。それは、国営企業は中共の党と国の根本であり、私営企業は必ずや国営企業を助けなければならない、です。私企業の大富豪が太ってふんぞり返っているのに対して、習近平は、ずっと、いかに「混合所有制」で、私企業中の優秀な資本を、国営企業に取り込んで、国営企業を「強く、大きく」する「混」を実現しようかと考えてきました。予言できることは、中共十九回全国代表大会以後、公私合营2.0版は、引き続きエスカレートするだろうと言うことです。

     (読者諸氏へ。「中国企業の国営・私営の関係の変化」シリーズはこれで終わります。習近平が計画経済の道をあゆもうとするのかどうか、共産党資本主義はどのような未来が待っているのか、はそのうちまた分析します。)

     拙訳御免

     原文は:中国经济公私之变:坚持国企“做混做大做强

    中共幹部は如何にして資本家に化けおおせたか — 中国企業の国営・私営の関係の変化(1) ★2017年9月9日
    「私有化は許されない」建前の裏で— 中国企業の国営・私営の関係の変化⑵ ★2017年9月10日
    政治とビジネスの”結婚”— 中国企業の国営・私営の関係の変化⑶ ★2017年9月14日
    ”国体”は変わらず— 中国企業の国営・私営の関係の変化⑷ ★2017年9月16日

    当Webサイト連載のブログ集改訳;日中両文収録 
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